2015/07/18 のログ
ご案内:「大時計塔」に模下 紫さんが現れました。
■模下 紫 > 人は高所から落ちれば死ぬ。
魔術や異能の存在するこの学園の一生徒である彼女もその例から漏れる事は無く、
細い螺旋を描く階段の壁に開いた穴から身を乗り出せば容易く命は砕けるであろうし。何故なら女には羽がないからだ。
何かしらの理由ゆえ一般的な倫理からみた正常な判断をしかねて、現実からの逃避を選んでしまうような心の揺れやすい生徒がこの先
一人も現れないという核心などないのだから。きっとこの場所は立ち入り禁止。となっているのかもしれない。
「んー、手が疲れた、疲労こんぱい。限界リミット大制限。これさ、ほんとに意味あるの?」
かりかり、かりかり。と
時計台の天辺から地面まで、ちょうど中間地点辺りの、中心軸側の壁を。上の段に右足、下の段に左足を乗せて、身を屈めながら。
デザート用スプーンで削りつつ、物理的にまったく削れては居ない。気の抜けた苦言を垂れる。
不可解そうに寄った眉。少女の肩と耳の間には、次世代科学ファンタジーものの映画に被れた模様の折りたたみ式携帯電話。
立ち入り禁止と言うからには、立ち入ったものには小さからずリスクがあるわけで。
放課後の時間を意味無く費やすことには慣れているものの、"ちょっとしたずる”で入り込んだ女生徒自身も、
その行動に理由や意味があるかは理解できていないようだった。
「今無くなった? 確率? 修正? よく分かんないけど。もうやめていいんだよねー?」
「おっけーおっけーうんうん。 それじゃぁまた」
ここ一時間ほど怠惰に腕を動かし続けた成果は、少し傷のついた程度の壁が証明してくれる。
つまりはゼロ。
ただ女生徒は特にその行動の不可解さを追及するつもりもないようで、ポケットから取り出したチョコ菓子を齧ると。
固まった筋肉を解す様唸りながら立ち上がり。壁に開いた穴、つまりは窓から外を除く。
特に乗り出したりもしなければ、少し曇って灰色染みた景色を楽しむことのできるのだ。
一応違反行為中である自覚はあるようで、あまり長居をする気はないようだが。
もうしばらくここで他愛のない事を考えたり考えなかったりする時間を楽しむことに決める程度には、規則に少々疎いらしい。
ご案内:「大時計塔」に眠木 虚さんが現れました。
■眠木 虚 > 彼女がちょっとした余韻を楽しんでいる大時計塔に男が一人、入り込む。
赤い風紀委員の制服を身に纏っている。
軽い違反行為の真っ最中の彼女にとっては都合の悪い人物であった。
銀髪ウェーブに笑みを浮かべたその男の目に紫の姿が入り込む。
「おや、珍しいね。
こんなところに人がいるだなんて、お邪魔だったかな?」
まるで彼女が犯している行為に気にも留めないかのように声をかける。
■模下 紫 > 「んぐっ」
完全に気が緩んでいたらしい。不意をつかれると含んでいたチョコ菓子を噴出しそうになり、慌てて飲み込む。
数回咳き込んで、隠すように菓子の袋をポケットに突っ込むと振り返り。おおよそ貴方の頭部の右上の辺りに視線をやった。
人物こそ面識がないはずだが、粗相の良くない彼女は幾度と無く注意されてきた。いわゆる苦手意識のある組織の服装だ。
「い、いえ。その、あれだったんですよ。えぇとですねー。あ、そうですそうです。ここの景色が気に入っちゃいまして」
視線は決して貴方とはち合う事はなく彷徨う。とりあえずの言い訳をしておいて。
「堪能したらちゃっちゃと帰りますし見逃してくれませんかー。なんて」
「あはは。あ、もしかして。風紀委員さんも景色目当てなやつです?いいところですからね。もっと高いところもあるんですけど」
時計塔を上ったのは今日が始めてであるため、これより上部に窓があるかなんて彼女には知るよしもなく。
怒気を感じない相手であることをいいことに、適当にくっちゃべる。
機会さえあればさっさとこの場を離れてしまえば。面倒な注意を受けずに済む。とか考えているのかもしれない。
■眠木 虚 > 「おっと、驚かせてしまったかい?
急に声をかけてしまって申し訳ないね」
指差した先を横目でチラリ、しかし視線は直ぐに紫へ注がれる。
「なるほど、キミの言いたいことは解る。
ここから眺める景色は学園でも特別だ、不思議な雰囲気がある。
隔離されたこの空間は学生の隠れたスポットと言えるだろうね」
同意の言葉を述べるが、じわりとしたような独特の視線。
彼女の目が泳ぐのは致し方がない。
「そうだね、ボクも時間があればそうしたかったのだけれど。
残念だけどそれは出来ないことになっている。
なんたってこの大時計塔は『立入禁止』なのだからね」
人差し指を立てた手を前に突き出して口角の上がった笑みを浮かべた。
残念ながら、逃げるという希望はあっさりと打ち砕かれたようであった。
■模下 紫 > 不運にも目論見は外れた。というかそもそも計画性が皆無であるから当然だった。
9割がチタン性頭(模下の偏見が9割)の人物で構成されている風紀委員には珍しく見た目穏やかそうな雰囲気だから。
と云々期待はしたのだが。
彼女からしてみると、自身はいたって普通に校則違反者であるため特に返す言葉もないのである。
強行突破は大概失敗するので嫌い。選択肢に入らない。若干肩を落としつつ、諦めがついたのかへらへら笑っている。
まるで手錠でもかけろと言わんばかりに、両腕をくっつけてそちらへと差し出されていた。
「わかりましたわかりました。立入禁止ですよねその通りです。おぁっしゃるとおり。私悪い子ですねー」
「で、反省文です?私反省文描くのは得意なんですよ?何しろ場数を踏んでますから。停学は嫌だなぁ。
暇なんですよね、家にずっといるのって。そう思いませんか風紀委員さん」
貴方の独特な視線と、少女の落ち着きの無い視線が噛み合うことはなく。
あまり行いに対して反省や後悔の念を抱いているようでもなければ、自身の行動を阻害されていることにこれといった苛立ちも浮かべていない。
女生徒は風紀委員である貴方の対処、結論を、他の生徒にも人気らしい窓の景色を横目に待っているようだ。
■眠木 虚 > 「あっはっはっは、結構素直じゃあないか。
でも逃げないのは正しい、さらに罪が重くなってしまうからね」
差し出された両腕に手錠をかけるような仕草。
実際、こんなことでは手錠をかけないし、手錠をかけるのは別の課の仕事だ。
「自覚できることは良いことだよ。
でも罰から逃げることは出来ない、周りには示しがつかないからね。
そう、今回のことについては反省文を原稿用紙二枚ってところだ」
両手を体の前で開く。
「ただ、キミが前科を犯していなければね。
えぇと名前は……?
いやちょっとまってくれたまえ今から当てるから」
楽しそうな表情でタブレット端末を操作している。
「そう、キミの名前は……風見ヶ原龍之介だね?」
見当外れの違う名前が出てきた。
しかも男子生徒らしい名前。
■模下 紫 > 「せーふ」
校則的にはアウトなのだが罪状は軽かった。内心で胸を撫で下ろすと両腕は引っ込める。
冗談のつもりが本気でかけられてしまったらどうしようか、なんて彼女の思考回路にはないようで。
風紀を守る立場の人間。という存在に違えない思想を右耳から左耳へと流しながら。
癖でポケットに引っ掛けてある携帯を弄ろうとして、止めた。
「りゅうのすけ…りゅうのすけ…聞いたのことのあるような、ないような」
泳いでいた視線が大きく上へと浮き上がる。と同時に顎が少しもたげ、右手の人差し指が唇と重なった。
何かを考えているような仕草だ。今回はどちらかといえば、記憶を探っている。
「でも、外れだよ風紀委員さん」
「私は紫。っていう名前があるし、勿論偽名じゃないのは調べれば分かるだろうし」
「それに、りゅうのすけ、って名前の女の子。私は見たことないけどなー」
残念ながらそれに該当するものは見つからなかったようで。
特に貴方から逃げ出す、と言う分けではなく。景色にも飽きてきたのだろうか、気まぐれに階段を下へと降り始める。
濁った銀髪が、朱味を帯びた光を反射し、塔へと入り込む涼しげな風に揺らいだ。
頭だけ、いまだ少し上段にいるであろう貴方へと向ける。視線は相変わらず逸れたまま。
「その人には前科があるの? 風紀委員さんがわざわざ気にするようなさ」
■眠木 虚 > ハズレという言葉に首を傾げ、再度タブレット端末を操作する。
画面を見て少し驚いたような顔。
「あっはっはっはっはっ!
どうやら間違って別人のデータを開いてしまったようだ。
ちょっとした間違い、その生徒には前科はないみたいだけど果たしてキミはどうかな?」
人差し指を立てた手を前に突き出してウインク。
もう一度、名前を元にタブレット端末で検索している。
「模下紫……なるほど、データも顔写真も一致したね。
どうやら以前にも警告を受けているようだ。
ボクとしては残念だよ、キミが何度も注意を受けるような悪い生徒だなんて」
悲しそうに目を閉じて顔を横に振る。
「でも、原稿用紙二枚のところを四枚に増やすだけだ。
安心してくれたまえ、風紀委員はこの程度じゃ厳しい罰は与えないさ。
生徒がちゃんと心を入れ替えるように指導する。
それが『風紀委員会生徒指導課』の役目だからね」
紫に向けて笑顔を浮かべた。
■模下 紫 > 「なーんだなーんだ。ただの間違いかぁ。私としても残念。りゅーのすけのせいだ」
1枚、2枚、3枚、4枚…かぁ。嫌だなぁ。
とか、ボヤキながら指を一つ一つ折って行く。
至って清々しい爽やかな理論と、それに釣り合った笑顔を向けられて、この女生徒はがっくりと肩を落とすことしか出来なかった。
自業自得である。
「はーい」
「これからはこころをいれかえて、がくえんのせいととしてはずかしくないよう、ぜんりょーなせーとをーめざしまぁす」
いわゆる前科を犯した際。復唱するよう言われた言葉そのまま。
彼女自身が本心からそう思っているか、は、普段よりさらに抑揚のない口調から判断できるだろう。
皆無であり。
つまり、眠木自身が言うように、彼女は悪意こそないものの"何度も注意を受けるような悪い生徒"なのだった。
「ところで、降りてこないのー? 風紀委員さん」
拘束されているわけではないので、貴方とすれ違うように先ほど歩みだした模下はどんどん下の段へと歩いていく。
軽いものとはいえ、これから罰を与えられる校則違反者とは思えないほどのんきに。
ちょうど身体が柱に阻まれて、見えなくなる程度の位置まで来ると、不思議そうに貴方に問いかけるのだった。
■眠木 虚 > 「こらこら、カレのせいにするんじゃないよ。
今回のことに無関係だから……ね」
違反を犯した生徒への罰は風紀委員の裁量によって違ってくる。
この男の場合はこのことに関して非常にまともであり重くもしたり軽くもしない。
そして見逃すということは一切しなかった。
「はい、よく出来ました。
それじゃあ期限……明後日までに所定の場所に提出するように。
……よろしくね」
これでおしまいと、紫を開放する。
無理に引き止めることもない、それは指導にはならないからだ。
「あぁ、先に降りて行ってくれたまえ。
ボクはちょっと一周りしていくからさ、先に行ってくれたまえ」
姿の見えない紫の声を背中で聞き、言葉を返した。
この隔離された空間はこの男にとってもお気に入りの空間だ。
留まるのもある意味、風紀委員としての特権でもあった。
紫が出て行くのを足音で聞き分けるとしばらく目を閉じて気分を味わう。
そしてその場から離れていくのであった。
ご案内:「大時計塔」から眠木 虚さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」から模下 紫さんが去りました。