2015/07/30 のログ
ご案内:「大時計塔」に神宮司ちはやさんが現れました。
■神宮司ちはや > 特別講習を今日も受けて、お昼休みの休憩に入る。
この間せっかく開拓してみた新しい場所にこっそりと忍び込んでみた。
大時計塔の屋上は風が強い。ひとくくりに結んだ髪が風でなびく。
もう夏も半分、日差しは昨日よりは弱いけれど暑い。
慌てて日陰のベンチに座る。
■神宮司ちはや > 購買で買ってきたおにぎりとお茶をかばんから取り出し膝に乗せる。
昨日はビアトリクスのお陰でぐっすり眠れたけれど、朝食は少なめに食べた。
なんとなく夏の暑さにも負けて、食欲が落ちてきた。
せめてお昼ぐらいはきちんと食べないといけないとおもいつつも、どうしても食欲がわかない。
身体を悪くしてはまたいろんな人に心配や迷惑をかけてしまう。
どうしたものかと、小さなため息を吐いた。
■神宮司ちはや > とりあえず水分だけでもとっておかなければ。
そう思ってペットボトルの口を開け、お茶を一口流し込む。
基本的にお茶ならなんでも好きだけれど、一番好きなのは緑茶だ。
冷たく苦味のある水分が喉を潤すとほっとした顔になる。
そのままぼんやりと遠くへ視線を移す。
眼下に見える街並みは相変わらず美しくて変わらない。
空も多少雲はあるが、良い天気だ。
その下に、自分が今まで知らなかった世界が隣り合って存在していた。
ご案内:「大時計塔」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
■谷蜂 檻葉 > カツン、カツン。 と、生徒立入禁止のこの区域に遠くから足音が聞こえる。
勿論ちはやは動いておらず、つまり自分以外の誰かがここへと登ってきている事に他ならない。
隠れるにせよ、相対するにせよ。
聞こえてからそう長くない時間で一人の女生徒がひょっこりと顔を覗かせた。
「……あら?」
■神宮司ちはや > その足音に反応して慌てて振り向く。
どうしよう警備の人とか先生だったりしたら見つかって怒られてしまう!
焦って、隠れ場所を探そうとするがこんな見晴らしの良い所でそんなところはない。
あわあわとペットボトルをしまおうかおにぎりをしまおうか悩んでいるうちに谷蜂とうっかり視線があってしまう。
「あっ…………
こ、こんにちは……」
びくびくと怯えながらとりあえず挨拶した。
■谷蜂 檻葉 > 「こんにちは、初めまして。 ……ここ、景色いいですものね。」
見慣れぬ、というよりは完全に初対面とはいえ。
”この場所”に慣れていないだろう様子に、どことなく先輩風を感じてしまってクスリと笑みを零す。
「興味本位? それとも、誰かのご紹介かしら?」
言いながら、やや錆びた寿命の近い手すりの近くまで進んで、街を見下ろす。
■神宮司ちはや > 「は、はじめまして……」
軽く会釈をして改めて現れた彼女を観察する。
背はそれほど大きくないものの、その落ち着いた雰囲気を見れば自分より年上かなと感じる。
眼鏡もまた知的で、落ち着いた感じを受けるしよく似合っている。
問いかけられて慌てて答える。
「あ、えっと、さ、最初は……興味本位でした……。
今は、ちょっと気分で……入っちゃって。
ごめんなさい、本当はいけないことなんですよね?
お咎めはちゃんと受けます……」
しょぼしょぼとしおれ、頭を下げる。
■谷蜂 檻葉 > 「あはは、良いんじゃない?
別に私は見まわりでも無ければ、公安さんや風紀の人でもないし……。」
それに、と ちはやの方へ振り向いて。
「こんなに良い景色なんですもの。
完全に見れないようにするのは勿体無い、って思っちゃうな。
君みたいな真面目そうな子なら、そうそう落ちたりしないでしょうし。」
そうでしょ? と。
塩揉みされた青菜のようにヘタれた少年に、顔を上げるように促す。
■神宮司ちはや > 女子生徒が見回りの人ではないことがわかるとほっと安堵してベンチに背中を預ける。
「そ、そうだったんですね……ごめんなさい勘違いして。」
振り向いた谷蜂に微笑を向ける。彼女の意見には快く頷いて。
「はい、ぼく初めてここに来た時すごくびっくりしたのを覚えていて。
本当に綺麗な景色ですよね、常世島全部見渡せそうで。
あ、でもそしたら、あなたもここにはよく来るんですか?」
なんとなくそう尋ねてみる。
■谷蜂 檻葉 > ちはやの疑問に軽く頷いて
「そう、ね。 今年になってからだけど、気晴らしとか……あー、そういうのでよく来るわ。」
少し語尾を曖昧に濁して肯定する。
「こうして遠くまで見てると、此処に来る前を少し思い出せるしね……。
街に、遠くに山、海もちょっと霞んでるけど見えて―――」
少し、遠くを……此処ではない遠くを見るような目つきになった後。
返しの疑問を投げる。
「ところで、女子寮で見たことないけど……どこか家を借りてるのかしら? それともいわゆる"異邦人"の人?」
■神宮司ちはや > 「そっか……あなたみたいに落ち着いていて、真面目そうな人でも約束事に目をつぶって
やっぱり気晴らしで来たくなっちゃうほどここの景色には魅力があるんですね」
曖昧に濁した部分は触れず、ただ肯定されたことに納得する。
懐かしそうな視線を景色に向ける相手に
「ここに来る以前はどちらにいらっしゃったんですか?
日本本土とかでしょうか?それとも……異世界?」
首を傾げながら聞いてみるが、彼女の疑問を聞くと
一瞬意味がわからないようにぽかんとする。
女子寮?なんで今女子寮の話が出てくるんだろう?
数瞬の間をおいてよくよく会話の内容をなぞってやっとわかった。
わかったが、それはとてもショッキングな発言だった。
「ぼ、ぼく女の子じゃなくて……男子です……。
神宮司ちはや、一年生で……だ、男子寮に住んでいます……」
真っ赤になりながらぷるぷると俯いて肩を震わせる。恥ずかしいし何故か屈辱だ。
ここに来てからよくよく女子に間違われることが多い。
いや来る以前から女の子っぽくって気持ち悪いとからかわれまくっていたが。
■谷蜂 檻葉 > 「そう思ってくれるのはちょっと光栄だけど、言うほど真面目でもないわよ。」
クスクス笑って、純朴そうな子だなぁ。と和む。
最近交流したような男子は奇抜か奇天烈か不気味な男ばかりで、
(そうそう、あんなのばかりじゃないわよね。)と、苦笑いが出てきてしまう。
「ええ、本土に居たわ。珍しく異世界と関わりも少なくて『まさしく田舎』って感じの街だったけど、こうして振り返るといい街だったかなって思えるのは不思議ね。」
そう答えた所で、ちはやの顔が不思議そうな顔から、赤面し、俯いて震え始めて首をかしげるが、その回答を得て 「やってしまった」といった表情で額に手を当てた。
「……あー、ごめんなさい。 その、ちはや君が随分綺麗だから勘違いしちゃったわ。
一応こちらも名乗りましょうか。 二年の谷蜂檻葉です。
……本当に御免なさいね?」
クラスに一人ぐらいはいた、”かわいい男子”枠というのは理解し、反応からして今までこういった勘違いや、からかいもあっただろうと、気まずそうに謝罪した。
■神宮司ちはや > 言うほど真面目でもないと言う相手にそうかな?と首を傾げながら同じように谷蜂へ笑いかける。
「そうだったんですね。それじゃあ学園に来るまではあんまり異世界のこととか魔術のこととか遠い出来事だったんですね。
ぼくも似たような、山奥で暮らしていたからなんとなく親近感がわきます。
ここに来るまでそういう不思議なことは自分と関係ないうっすらしたものだと思っていたから」
謝られると慌てて顔を上げて首を横に振る。
「い、いえ!勘違いされやすい格好しているぼくが悪いんです!
気になさらないでください……。えっと、二年生……じゃあ先輩ですね。
谷蜂先輩、よろしくお願いします。」
恥ずかしさを隠すように、相手を気遣って苦笑する。
■谷蜂 檻葉 > 「そう、よね……ふふっ、今ではこんなにも身近なのにね。
なんであの頃も、全然別の世界の出来事だと思ってたのかしらね。」
客観的に教えられない限り、教わってきたモノ、そして目に見えたものが”普通”でありそれ以外の『見ていないこと』は全て別の世界の出来事。 本当は、薄皮を隔てたすぐ横に居たはずだったのに。
理解しているからこそ愚痴るようにそう呟いて、しばし、無言で掌を見つめた。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど……。ま、良いならいいか。」
フォローをするちはやに、それで流すのはどうかと思ったが、逆にこの話題に触れ続けるもの良くない。 と、頬をかく。
「ええ、宜しくね。ちはや君。
―――それと、苗字の音が好きじゃないから檻葉でいいよ。 たにはち って、ちょっと言いづらいでしょ?
って、私も神宮寺君の方がいいかな?男っぽくて格好いいし。」
どっちが良い? 口元の笑みは隠さずに真面目そうな顔を作って首を傾げる。
■神宮司ちはや > 「そうです、ね。今こうやって穏やかに話して、ここから下に見えるどこかで
誰かが魔術や異能を使ったり……見えない部分の世界が動いているんですよね。
ここに来なかったら、一生知らないままだったかも……
谷蜂先輩……?」
じっと自分の手のひらを見つめる谷蜂を不思議そうに見る。
「は、はい……本当気にしないでください。
あ、じゃあええっと檻葉先輩、でしょうか。
ぼくの呼び方はなんでも、”しんぐうじ”って長くて面倒だし
それに間違われて書かれちゃうことおおいから……」
人差し指で宙に『司』とかいてみる。
「かみのみやのつかさ、って漢字なんです。面倒でしょう?」
ね、と同じように合わせて首を傾げてクスクス笑う。
■谷蜂 檻葉 > 「どこかで誰かが世界を救っているのかも…… なんて、ファンタジックな事が本当に起こっているのかもしれないわね。 それこそ、私達がフィクションだと思ってた作品がノンフィクションの伝記だった―――なんて事もあってもおかしくない。 そう思うと、面白くも怖くも思えるわよね。
……なんでもないわ、ちょっとぼんやりしちゃっただけ。」
問われると、すぐに肩を竦めて首を振った。
知らないからこそ恐ろしく、見えないからこそ笑い話にできる事は数多く。
こうして知ったことがどちらに転ぶのかは神でしか―――神ですら、わからないかもしれない。
ただ、そんな哲学的な事は言いもしない。少なくともこのほんわかした少年との会話には必要ない話題だろうから。
「うん、それでいいよ。 ……?
ああ、『じんぐうじ』って”寺”じゃないのね。家系的に神道寄りなのかしら?」
■神宮司ちはや > 「きっと、今まで秘密にしなきゃいけなかったこともフィクションだってことにしておいて、
本当のことを紛れ込ませていた人達も、いたかもしれませんね。
ちょっと怖いなっていう気持ちはわかります。知らないことで相手を傷つけることもあるから……」
なんでもない、と肩をすくめられると自分もそれ以上は何も言わなかった。
ちょっと初対面で変な話題になってしまったかもしれないし。
「ええと、おじいちゃんが神社の宮司をやっているから、きっとそうだと思います。
でも僕は全然、そういうことに詳しくなくて……」
両手をぱたぱたと前でふる。大したことがなくてごめんなさいとでも言うように。
「でも先輩、よくわかりましたね?苗字でもそういう法則ってあるんですか?」
■谷蜂 檻葉 > 「法則かどうかはわからないけど……。
”寺”を使わずにわざわざそっちを使ってるってなるとそうなのかな。ってね。 苗字の由来の大半は地名や職業よ。 それで神職かな、って所で『神の宮の司』……なんて言い回しをしたから、そうかなーってあたりをつけたの。
ただ伝えるなら司書の”司”でいいものね?」
谷蜂じゃあ、どんなお仕事だったかわからないでしょうけど。
そういって、当てられてよかったわ。と少し得意げな笑みを見せた。
■神宮司ちはや > 檻葉の解説に興味深そうに聞き入る。
なるほどなぁ~と感嘆すると
「それじゃあ、先輩の谷蜂も職業なんでしょうか?
うーんとうーんと……たとえば、蜂を育ててはちみつを採る谷住まいの人、とか?」
なんとなく当てずっぽうでそう答えてみる。
そういえばいまさらだけど、先輩はずっと立ちっぱなしだ。
そそっと、ベンチの端に移動するとどうぞというように隣を勧める。
「喉乾いていたり、おなかすいてたりしませんか?良かったらこれ、食べます?」
まだ封の開いていないツナマヨおにぎりを見せた。
■谷蜂 檻葉 > 「あはは、養蜂家かぁ。 そうね、そうかもしれないわ。
苗字の由来、それに名前の意味。 さり気ない情報でも、考えてみると面白いことってまだまだ有ると思うわ。」
ベンチの隣を促されると、ありがとう。と一言断ってから横に座る。
「え?いいの? ……えっと、その、ご馳走になります。」
実は此処に立ち寄ったらお昼にしようと思っていたので既に胃は空っぽ。
丁度、座った拍子にきゅるると虫が鳴いていた。
聞こえてないよね?と、ちょっとドキドキしながらおにぎりを貰うと、手早く封を解いて齧り付く。
「んん~っ、コンビニのおにぎりって久々に食べたけどやっぱ美味しいわね。
ちはや君は何が好き? 私はコレとか、イクラとかだけど。」
満面の笑みで食べ進めながら話題をふる。 一口一口は小さくともパクパクと食べ続ける当たり結構重度に空腹だったらしい。
■神宮司ちはや > 「あれ、違いました?うーん一生懸命考えたんだけどなぁ」
外れたことに少しだけ残念そうな顔をするが、
隣に座っておにぎりを食べる檻葉を見るとその幸せそうな顔ににこにこと笑う。
よっぽどお腹が空いていたらしい、お腹の鳴る音には素知らぬふりをした。
「ぼくはツナマヨもすきですけど……おかかとか高菜とか、あとサーモンめんつゆも前に食べて美味しかったです。
それは、コンビニのじゃなくて、手作りだったんですけど……」
サーモンめんつゆを初めて知ったのは正親町三条楓とともに常世の自然公園でデートした時に食べたおにぎりだ。
あれはとてもおいしかったな、なんて思いだす。
檻葉の食べっぷりにもう一つおにぎり買っておけばよかったかな、ともちょっと考える。
■谷蜂 檻葉 > 「ああ、そうじゃないの。 判らない、って意味ね。 家系図が途中からになってるみたいでね。 最初の”谷蜂家”は養蜂をしてたかもしれないと思うの。」
それか、蜂の多い地域に居たか。ね?
そんなことを話す間に、あっと言う間に食べきって、ハンカチで軽く口元を拭う。
「うんうん、おかかとか高菜も定番――サーモンめんつゆ? って、何?漬けみたいなものかしら……。 えっ、あ、ごめんね?随分綺麗に留めてあったからそうだと思ったんだけど。 と、ともかくご馳走様でした。とっても美味しかったわ。」
両手を合わせて感謝を告げる。
「んー、次あった時にでも何かお礼をしてあげられればいいんだけど。」
■神宮司ちはや > 「ああ、そっか……。でも家系図が残っているなんてずいぶん古いお家なんですね。」
家系図というと頭に古い巻物が思い浮かぶ。
それを12畳の大広間で広げてもまだずらずらと連なるようなそんな巻物。
相手がおにぎりを食べきればお粗末さまでしたとお茶のペットボトルを差し出す。
は、と気づいて慌てて飲みくちをハンカチで拭いた。
危ない、女性相手に間接キッスはいけない。
「あ、いえサーモンめんつゆを初めて知った時のおにぎりが手作りだったんです。
今食べたのは普通の、購買で買ったおにぎりです。ややこしくてすみません。
サーモンめんつゆは……うん、そうですねめんつゆとごま油?のタレにサーモンが漬けてあるような……
そんな感じでとても美味しい物でした」
お礼の件に触れられるとあ、いえそんなと遠慮を示す。
「たいしたものじゃないのでお礼とかは気にしないでください。
あ、でもその、また会ってくださるっていうのは……嬉しいです。
友達、たくさんできると嬉しいですから」
ふふ、とそれが大切なことのように微笑みかける。
■谷蜂 檻葉 > 「……多分、神宮司家と規模が違うと思うけれどね?」
図らずしも、谷蜂家の家系図も同じく巻物ではあったが、一本分。それもあまり長くはなくどちらかと言えば各代毎にどのようなことをしていたのか、そういった詳細な内容は書かれていたが。
「あ、良かった。手作りと間違えちゃ失礼だものね。……でも購買かぁ、パンばっかり買ってたけどご飯系も買ってみようかな?」
サーモンめんつゆ、自分でも作れるだろうかと思案しながらお茶を貰い喉に潤いが戻る程度だけ飲むと、わざわざごめんね。と、苦笑してそのまま返す。
「そうね。私も、もうちょっと交友関係増やさないとなーって最近思い直したところだし。 これからも、適当におしゃべりしましょ?」
宜しくね。と、微笑みを返した。
「私は図書委員だから、結構な割合で図書館にいるけど……ちはや君は何か委員会とか部活に入ってるの?」
■神宮司ちはや > 「え、いやいやあんまり詳しく聞いたことないですけど
うちもそんなに大したこと……ないと、思います」
たぶん、詳しく祖父に聞いたことはないがまぁ神社をやっているなら結構古いのかもしれない。
いえいえと首を振って、ペットボトルを受け取りしまう。
「ぼくもいつもはパンだけなんですけど、今日ちょっと食欲でなくて……
何食べていいかわからないからおにぎり買ったんですけど美味しかったなら良かったです。
あ、じゃあえーとこういう時、お友達になると携帯の番号とか交換するんですよね?
ぼくあんまりメールとか疎くてしないですけど連絡とりたい時とか便利ですよね?」
ごそごそと脇のかばんから今どき古臭い二つ折りの携帯電話を取り出す。
表面に何かルーンのようなおまじないの文字?記号が刻まれたシルバーホワイトの端末。
三毛猫のストラップがついている。
「あ、ぼく式典委員会にこの間入らせていただきました。
檻葉さん、図書委員さんだったんですね!ぼく本をよく借りに行くので運良くお会いできるかもしれませんね。」
半袖のシャツについた、式典委員会の腕章を指で摘んでほらと見せてみる。
なったばかりなのがわかるように、その腕章はまだ新しい。
■谷蜂 檻葉 > 「友達なら――って事もないけれど、そうね。連絡先は交換しましょうか。
メールが疎い……って、結構アナログな生活してたの? あ、はいこれ。私のアドレス。」
檻葉の取り出したのは最新の一つ型落ちのスマートフォンタイプの携帯電話。
かつての最大勢力であるガラパゴスケータイを少し物珍しげに見ながら、表示したアドレスを交換する。
「取り敢えず、テストメール送るわね。
あら、それなら既にどこかで遠目には見ていたのかもしれないわね。 しかし、式典委員会かぁ……。」
もう大分前にはなったが、例の『室長代理』と一緒に現れた少女、『正親町三条楓』の事を思い出す。まさしく”食えない人”といった印象を受ける子だったが、少し心配になる。
■神宮司ちはや > 「はい、これも初めて持った携帯電話でこの間買ったばかりなんです。」
大切そうに端末の表面を指でなぞる。
おぼつかない手つきで一生懸命キーを叩き、檻葉のアドレスを記録した。
一大仕事を終えたようにふうと額の汗を腕で拭った。
テストメールがくるかどうか緊張してじっと端末を見つめる。
「? 式典委員会に何かありました?」
心配そうな顔の檻葉にきょとんとした表情を向ける。
■谷蜂 檻葉 > 「それはまた、随分……。」
檻葉の倍近い時間をかけて交換を終えたちはやに、
困ったような笑みを見せて、お疲れ様。と声をかける。
同時に、ちはやにもテストメールが無事に届き着信音が鳴る。
「いや、何かあるってわけじゃないんだけど、式典委員会で唯一知ってる人が……こう、なんていうのかしら。変わった人だったから苦労しないかな、なんてね。」
全然悪い意味じゃないから気にしないでいいよ、とフォローはするが。
声からは心配しているという色が見えた。
■神宮司ちはや > 『ニャーン♪』
メールの着信通知の音は可愛らしい猫の声だ。
中身を確認して檻葉からのメールであるとわかると嬉しそうに笑う。
「うん、無事届きました。ありがとうございます。
唯一知ってる人?誰だろう、ぼくが知っている人かな?
変わった人……はたくさんいるからわからないですけど……」
俗にお祭り三人組と呼ばれる式典委員の男子達はその筆頭だ。
この夏のスイカ割りも壁殴りも彼らの提案だと聞くし、人一倍祭りへの熱意に満ち溢れている。
心配されていることを声音から察すると大丈夫と微笑んで
「変わった人はたくさんいますけど、いい人達ですから大丈夫です。
たくさんいろんなことを教えて下さいますし、親身になって面倒見て頂いていますから」
安心させるようにそう言った。
■谷蜂 檻葉 > (思った以上にかわいいな…!?)
まさかの猫着信に小さくビクッと肩を揺らす。
いいのか? いいんだろう。本人が決めたものなら…!
「なんていったかしら、女の人よ。 変わってるって言っても変人とかそういうんじゃなくて、食えない人っていうか……なんかミステリアスな人っていうのかしら。」
ミステリアスという言葉にするには黒さが多かった気もするけれど置いておいて。
「うん、そういう仲間が居るなら大丈夫よね。 委員会、頑張ってね。」
そう言って、ベンチを立って軽く伸びをする。
気づけば、結構な時間を話していたような気がする。
「さて、そろそろ戻りましょうか。」
■神宮司ちはや > 「女の人……ミステリアス、食えない……おいしくない……?」
口元に手を当てて何名か思い当たりそうな人物を頭に思い浮かべるもヒットしない。
そう、ちはやはこれっぽっちも楓のことを変人だとかミステリアスだとか思っていないのだから。
そして食えない人というより、ちはやを食う人という方が客観的には正しかったから……。
結局最後まで楓の名前は出ることがなく、檻葉に促されれば荷物をまとめて立ち上がる。
「はい、お話ありがとうございました。檻葉先輩」
きちんと頭を下げてお礼を言う。
それから登ってきた階段口にいくと、早く早くというように檻葉へ手招きをした。
■谷蜂 檻葉 > 「いえいえ、こちらこそ。 それじゃ、また何処かで会ったらお話しましょう!」
そう言って、ちはやとは逆の方向。
―――背の低い柵しかない、外/空へと向かう吹き抜けのアーチへと足を向けて
「またね♪」
軽い靴音を響かせ、
存在しない足場に踏み出して、消える。
まるで自殺のような光景だったが、それを追って確認すれば見えない”何か”によって飛ぶようにして姿勢を制御しながら、魔術か異能か。 なんらかの術を使って無事に地上まで降り立った姿を見れるだろう。
驚き固まって、確認せずに急ぎ地上まで戻れば想像してしまうスプラッタな光景が何処にもないことに首をひねるだろう。
ご案内:「大時計塔」から谷蜂 檻葉さんが去りました。
■神宮司ちはや > あ、と叫ぶ暇もなく檻葉の姿が宙空へと落ちる。
慌てて走って鉄柵へ身を乗り出して確認すると、ゆっくりと降下していく檻葉の姿。
それがなんであるかなんて当然わかるはずもないが、
とりあえず無事を確かめるとへなへなとその場に座り込んだ。
「はぁ、びっくりした……どうしようかと思っちゃった」
まだ心臓がバクバク言っている。本当にこの学園はなんでもありだ。
知らないことだらけで、でもそれが当たり前に隣にある日常。
もっと世界をよく知らなければならない、自分のために、友達のために。
しばらく心臓が落ち着くまで座り込んだ後、立ち上がってお知りの汚れを手で払う。
ゆっくりとちはやは自分のペースで時計塔の階段を降りていった。
ご案内:「大時計塔」から神宮司ちはやさんが去りました。