2015/08/08 のログ
ご案内:「大時計塔」に蒼穹さんが現れました。
ご案内:「大時計塔」に流布堂 乱子さんが現れました。
蒼穹 > (夏休み。
あまり何もする事がなく、暇と言う時間が多いこの頃。
特に意味のない、散歩の様な外出だった。…立入禁止だけれど、案の定見張りも何もないので容易く入れる。
忍び込むのではなく、堂々と、真正面から。
そうして、階段を見上げれば。ゆっくりと登り始める。)
…ふぅ。
(夏も真っ盛り。紺碧というに相応しい、南国の如き昼間の青い空が横たわる。
一歩、一歩。階段を登る音を立てると共に、この夏の暑さを作りだすお日様に近づく。
別にたいして汗をかいたわけじゃないけれど、おでこを手のひらで拭ってみる。)

あ、あー、ちょっと…休憩しよっかな。
(どのくらい、登ったろうか。
見上げる階段と、見下ろす階段。その二つの長さは、丁度同じくらいに見えた。
時計塔の下の自販機で購入したばかりの飲み物はもう、生温い。)

流布堂 乱子 > 尾を手すりにからませて、ゆっくりと階下から上がってくる少女が一人。
昨晩に汚した制服を洗って干しておいたら、昼前に乾いてしまって夏を実感したところ。

その制服を物干しから取り込んでいたところで他の学生から声をかけられて、
ああ風紀委員って面倒なんだなと思って立ち入り禁止エリアまでやってきたところでも有る。

ポニーテールの少女が言うには、次の15日の例大祭が忙しい
(例えば実家に帰るとか、トコヨマーケットに参加する為とか)
人たちのために、
夏祭りとまでは行かないけれども、有志だけで常世公園辺りで手持ち花火大会をするんだとか。
それが、例の風紀委員本部襲撃がどうとかで風紀委員の付き添いが必要になったのだそうだ。
その時はなんとなく雰囲気に圧されて頷いてしまったものの、
これ以上訳の分からない頼み事を押し付けられてもたまらない。

きっと、自分に声がかかった理由は明白で、他の風紀委員が軒並み忙しいからなのだろうけれど。
今日に関しては特に依頼もなく、街に出るつもりはさらさら無い。
目につく獲物も居なければ、こうしてのんびりと塔など上がることも、悪くはなかった。

「……おや。」
回想にふけっていたせいか、先客の存在に気づいたのは階段を中腹まで上って、その姿が目に入ってから。
…少女はほんの少し考えると、前々から試してみたかったセリフを吐いた。
「ここ、立入禁止ですよ。気づきませんでした?」

蒼穹 > (呑気な幽霊委員の己はと言えば、
そんな後から来る少女の押し付けられた仕事や頼み事の存在も知らず。
暇だと毎度悠長に過ごす。
この間風紀委員の施設襲撃なんかがあったが、それすらも状況見に行こうかなって、そう思うだけ思ってやめた。
というか、襲撃犯の1人は知り合いだからこれがまぁ何とも言えない。

因みに、忙しくない風紀委員は結構近くに居たりするけれど、この状況では気付けないだろう。
何せ風紀委員の制服も来ていないのだから。
前置きはさておき。)

…ん?
(あれ?と二度見。…足がない?…それでどうやって階段を登ってきたのだろうか。
いや、魔術なり異能なり、それとも普通に飛べる種族なのかもしれないけれど。)

あっはは、そうだったの?知らなかった、って事にしといてくれると嬉しいな。
(勿論知らないはずなどない。
ひらっと手を振れば、色々と気になる格好だけれど、
取り敢えず立入禁止地帯に入った事で罰せられてはかなわないととぼけて。)

逆に聞こうか。ここ、立ち入り禁止らしいけど?
(逆に聞こうと言いながら、肝心の質問の内容は濁して聞いてみた。
ここは、良い場所で。疚しい事をする者は滅多と集まらない。
暇を潰したり、悩み事があったり、綺麗な景色を見たかったり、学内の全域を見下ろしたかったり。
兎角、平和的だと己は認識している。緩い世間話みたいなもの。
いやしかし、個人的にはどうやって登ってきたのか、の方が聞きたいのだが…それは聞いてはいけないのだろうか。
視線は彼女の足元を頻繁に泳いだ。)

流布堂 乱子 > 「せっかく得た権力を利用しようとしているのに、なぜ見逃したりしなくちゃいけないんでしょう…?」
ごくごく平坦な表情で少女は碌でもないことを口走った。
呼吸するかの如き風紀委員への風評被害。心ある者でこれを聞いて怒らぬものは居ない!かもしれない。
「タダでは済みませんよ、タダでは」
スカートの左側面に垂れるポーチの群れの一つを開くと、冷えたアップルジュースの缶を取り出した。
ちらりと向けた視線は、蒼穹の手の中の飲料に向かっていて。
……賄賂を要求している。自分の分を見せつけた上で。

そして、ここを訪れた理由を尋ねられたなら。
「…それはもちろん決まってるじゃないですか。
立入禁止なのですから、この制服で来てると他の方には遠慮していただけるんじゃないかと思いまして」
高所を独占しようと考えるのは、人の性かそれとも龍の本質か。

手すりから左手を離しているというのに、少女は尾を少し前方に絡ませて体重を預けると、右足をもう二段上へ進めた。
規則正しいとはいえないが、それなりに階段を登っていける、らしい。

蒼穹 > …ふぅん、あれ、権力?…ほう、キミはそういうやつか。怖い怖い。
(そういえば、彼女…色々デフォルトとは違うが、風紀委員の服装だろうか…?
あれ、権力だと対等な気がするのだが、…こっちは風紀委員の制服を着ていなかったのが仇となったか。)

こっ…こいつぅ…!
(あくまで自分の分を持っていながら他人の者を要求するその精神。
彼女がポーチから取り出した、如何にも冷え切ったと言うべき、
缶の周りに水滴さえ付いていて美味しそうなアップルジュースに憧憬の一瞥。
一方こちらは最早水滴の1つもついていない生温さが伺えるサイダー。
何だろう、この、貰ってやる、それで許してやるよと言わんばかりの視線は。
少し反抗的な眼差しを向けながらも…。)
仕方ない、くれてやるさ。
(ああもう、と。そんな態度を滲ませながら、ぶっきらぼうにペットボトルを押しやろう。
別に権力に負けたわけではない。生温くなったし飲みたくなくなっただけだ。断じて。)

ほーう。そういう事か。
ああ、んじゃあそうだね…概ね天辺で一人になりに来たってのが、キミの目的ってわけかな?
この間もそんな子がいたなぁ…悩み事でも?
(彼女の所在は、未だ知らない。あくまで、互いが互い人間であると認識していると、少なくともこちらは思っている。
それであるが故に、竜としての本質も見えず、ただ人として高所に一人でありたいと思っている風にとらえたが果たして。)

器用…。
(足に馳せた視線。
少したどたどしく見えるが、転ぶこともなく、ちゃんと登っているのは中々なもの。
ぼそりと下に呟きを落とせば。己も何故か追従する様に数段上に登って。)
…ん?…尻尾?
(何となく見ていたが、漸く彼女が、少なくとも「地球」の「人」ではなさそうだと思った。
獣人か、悪魔族か…それとも。尻尾だけで何とは一概に判断できないのだけれど。)

流布堂 乱子 > 「そう、権力…持つものと持たざる物の関係という物が如実で明確な感じですね。
はい、ありがとうございます。」
手が一本しかないのだから、受け取ろうにもその缶ジュースを持っている左手を差し出す他になく。
段を上って距離を詰めていた少女は、蒼穹の頬にとりあえずジュースを押し当てようとするだろう。
搾取するばかりではなく、
挙句の果てには相手の差し出すという行為さえ無為にするかの如く
冷えたジュースを渡そうとするとは、なんと傲慢なのであろうか…
「どうにも、常温のほうが好みなんですよね。あ、早く受け取ってもらえると助かるのですけれど」
天をも恐れぬ振る舞いであった。

「悩み……は無いとは言いませんけれど、一人で解決できることでないのも自分で知っておりますので。
今日はオフを満喫しに来た方向性ですね。
多分、貴方と同じく。暇をつぶしに、ですよ」
ルフスが今のところは蒼穹を"獲物"だと思っていないのは確かだった。
こうして傷を負っているとそれほど躍起になって探す気にもならないけれど、
少なくともそう判断していればこうも和やかに話したりはしていない。
それ以外の何だと思っているのかは…

「お褒めに預かり光栄です。……飛べばいいんですから無駄な技能の発露ですけど」
腰を手すりにあずけて、背からもゆっくりと翼を広げる。
鱗が柔らかくたわみやすく、一見してそれと分からない子供でも安心なデザインの尻尾とは違う、
赤赤として翼膜を備えたそれは、悪魔のように鋭利で。
尻尾と合わせて見れば、その正体の一端も掴めるかもしれない。
……いや、流布堂乱子という存在そのものが『龍に変身する風紀委員』というカカシづくりである以上、
理解させるつもりでやっていると言っても過言ではないのだが。
「同じ道ですもの、連れて行きましょうか?」
「…手が足りないと思うかもしれませんけれど、そこは器用な尻尾がちゃんと捕まえておきますから。」

蒼穹 > 権力っておっそろしいよねぇ。あれには私もかなわないね。
…どういたしまして。
ひゃ……あーはいはい。
(彼女はそっちも欠損していたのか。やれやれ困ったと、しかしこれはこれで美味しそうだなぁ、と思いながらアップルジュースを一瞥。
したも束の間、緩みきっていたが故か、そのまま押し当てられて、吃驚した一声。
彼女が竜であると知ったら、この不遜な振る舞いも頷けるのだが。
夏の日差しに照らされた頬が、冷えたジュースで中和される。)
ああもう!分かったから、分かったから。ほらっ!
(ぶるん、と振り払うが如く距離を取れば、冷たいそれを受けとって。
改めて己の生温いサイダーを入れ違いに押し付けよう。
常温の方が言うと言うが、炭酸飲料を常温で飲む気持ちは、あまり理解できない。
ただ、何故だろう…別に敗北したわけでもないのに悔しい。
何かしら後で逆襲してやろうと怨嗟が募ったのだった。この振る舞い、絶対後で崩してやる…っ!と。)

そう、…ま、ここは景色良いからね。
ああ、それとも…下層で蠢く愚かな生ある者達を見下しに来たのかな?
(皮肉の一つでもと言ってみたが、これまでの振る舞いを見るに彼女ならイエスと言いかねなさそうな気がする。
もし「中二臭い」と返ってきたらいよいよ怒ろう。それはもう盛大に。)

別に褒めてないし。事実言っただけだから。
…ああ、何だ。飛べるんだ。多いよね、何だかんだ言っても飛べる人。
(己の前に広げられたその翼は、紛れもない"武器"に見えた。
今までかなり殺ってきた感じの人だな、この人。と、勝手に認識する。
こういう、何処かズレた、普通から大きく離れた存在がよく、この鉄塔に登って居るのは、
皆何だかんだ、一番上に居たいからなのだろうか。人と言うより、生き物としての本能なのかもしれない。
一目見て魔の者と近しい何かを感じたが、結局それが何であるかは至らずじまい。)
ああいや、折角だけどお構いなく。私も飛べるからさ。
それに、その器用な尻尾にグルグルされて飛ばれると痛そうだしね。
…何ならこのまま空中遊歩といくかい?
(不遜な振る舞いを見せながらも、何だかんだ己を突っ撥ねることも、完全に無関心であると言う事もなさそうだ。
人1人持ち上げて飛行できることを仄めかすという事は、それ相応の力はあるのだろう。
それに、何より暇つぶしだったし、話し相手はいた方が楽しいのは事実。
…少々何処か毅然として孤高たる振る舞いが癪だけれど。
そうであるが故、知らず知らず、彼女と暫く話ていようかという前提で会話を進めた。
尚、こちらは羽根も翼もなく、魔術で飛ぶしかない。
彼女がその日差しを反射し赤く煌めく竜鱗の翼をはためかせれば、己も追従する算段。)

流布堂 乱子 > 押し付けられたサイダーを受け取って、たたらを踏む…
と危ないので尻尾で手すりを強めに掴んで。
「可愛らしい反応でしたので著しく満足した気分になれました。
権力はやはり正義ですね、麻薬のようです。」
ゆるやかに微笑んで、受け取ったサイダーはポーチにしまった。
再び手をフリーにすると、ゆっくりと階段を登るのを再開する。

「……でも、足が生えた時に、ちゃんとこの麻薬を止められるんでしょうか……?」
わなわなと震える手。目の前の少女と同じく、
自分でも敵わないと思っていた力が、これ程に甘く人を毒するものだと知っていればこんな遊びは初めなかったのに。
変わっていく自分が怖い、いずれは人を踏みつけにして何も思わないような…
それは元からか。
「風紀委員って怖い…こんなにも恐ろしい誘惑に耐えていたんですね…」

「あ、いえそんな誘惑については感じたことはないです」
いよいよバッサリであった。
「……活気があって何処も好きですよ。この島の事は。
それが例え薬漬けの売春窟でも人の営みです」
踊り場の開けた眺望を背にして階段を登りながらのそれは、ルフスの偽らざる思いで。
灰が降る終末の地よりは、悪徳の栄える退廃の都のほうがまだマシだった。
「あ、いえ、島の秩序を乱すのは個人の好みとは別としまして、良くないと思います。当然ながら。」
「……その、貴方が何かを見下しに来たりするのも、個人の好みですから否定するわけでもないですけど」
あまり個人の意見を押し出していい立場ではないんだったな、と思って付け足したフォローはさり気なくとても残念だった。

「いえ、人が飛ぶのは良くないと思うんですけれども」
「厳密に言いますと羽とか無しでそのまま飛ばれるとこう、遣る方無い気持ちになるのも仕方ないと思いませんでしょうか。
いえ、こないだの風紀委員本部でアレコレ見てたんですけれども、
ただ翼のお陰で空を飛べるだけの大型生物というだけでは生き残れないような危機感はありましたね」
人間が飛ぶ話になるとちょっと早口になるトカゲである。
飛べると言われればちょっと非難めいた目つきさえ向けて、首を振る。
「…いえ、いいです。歩きましょう。どのみち暇つぶしですものね?時間を使いましょう」
相対的な飛行能力の低さについては自分でも思うところがあり、
一緒に飛んで下手だと噂されるとちょっと恥ずかしいかなという思いは特に表情には出なかったが、さっきからの発言内容で駄々漏れである。

蒼穹 > くっ…この鬼畜!ド外道!悪魔!
(ひゃ、なんて言わなければよかったと物凄く後悔した瞬間であった。
完全に負けたよこの腐れ破壊神。)
まぁ、ね。権力はおそっろしいけど、私はそう言う感じだから正義なんて嫌いなのよ。
あと、言っとくけど私も風紀だから。中堅戦力扱いだから。
(今更過ぎる言葉だった。取り敢えず冷えたアップルジュースを手に出来たのだからプラマイギリギリゼロとしておこう。)
んで?これ貰ってもいいのかい?
(一応念のためにと確認。しゃかしゃかと上下に冷えた缶を振りつつ。)

ま、権力に情報力に、始めたらやめらんないのは分かるよ。あと給料。
いいんじゃない?…ま、こういう可愛い遊びしてんならいいけど。
どうせ権力でろくでもない事やってんでしょキミ。そういうもんだと思うけど。
(麻薬なんて形容する事だから、実に犯罪の匂いがする。
委員会に入りこむだけでやれることは多くなるのは事実。
権力に任せて暴虐を尽くすのもまぁ難しいことでもないだろうし。)

へー、そうなんだ。…純粋にそれは趣味が悪いなあ。
(それこそ蠢く愚かな生ある者。果たして薬漬けの連中が生きている、若しくは活気があると言えるのかさえ甚だ疑問だが。
この下には確かに人が在るとは言える。彼女の思った終末の、文字通り何もない様な世界よりはマシなのかもしれない。
…勿論己は彼女の事など知らないので同意する事も出来ないわけだが。)
あらら、残念。
そういえば島の秩序乱れるって言ったらこの間風紀委員会襲撃されたんだってね。
(己も風紀委員なのに悠長な閑話を挟んで。)
秩序も何もないんじゃないの?たった二人に蹂躙されるんだから笑い話にもなんないね。
…ああ、大丈夫大丈夫。私はあんまり見下すのは趣味じゃないから!
キミはどうか、と思ったんだけど存外見下したりはしてないんだね。ならいいよ。
(あれ?呆れられた?と、冷淡に、それでもフォローとして紡がれた言葉にちょっとした否定と言い訳。)

…私は人じゃないんだけど。まぁいっか。
うん、一理あると思うんだけどさ。じゃあキミUFOに同じこと言えんの?
(飛躍。確かに羽根の意味がなくなるのは分かるけれど、羽根がなくても飛ぶやつはいるではないかとここぞとばかりに反論してみる。
その気持ちは分からないでもないけれど。)
ありゃ、そうなんだ…私はその時居合わせなかったけど…襲撃どうだった?
そう…何があったか知らないけど、何か自信がゆらいじゃったんだね。
重力魔法でも覚えればマシになるんじゃないかな。
…あの、もしかしてあんまり飛べな―――。
(それ以上はいけないだろうか。あれ、ひょっとしてこの子、と何かを察した気がした。)
…うー分かった分かった。歩くよ。
暑いけどそりゃ仕方ないね。……うーん。
(真っ赤な竜の鱗は、見ているだけで燃えそうに体が熱くなりそうな色合い。
この暖色は冬には有難いだろうけれど、夏には視覚的にも目が焼けそう。)
ま、いこっか。
(残り半分。全てを見下ろせるこの塔の階段の数は、言うまでもなく、多い。
普通の人ならこんな時間に外に出るのも億劫だろうに。
そう思えば、目の前の彼女は"普通"でも"人"でもないんだろうな、とこのやりとりの間で察しきった。
如何にも落第街とかをうろついていそうだ。)

流布堂 乱子 > 「つまり鬼畜でド外道で悪魔の中堅層……」
指折り一つ一つ数えてから。
「の、私の先輩ですね。どうも風紀委員会の方から参りました、流布堂乱子と申します。
お近づきの印にどうぞ差し上げますとも、可愛らしい先輩さん。」
冷えたジュースを好きでもないのに持ち歩く理由があるなら、他人に渡すため以外の何が有るだろうか。
この時季の冷えたジュースの対人火力には、十分に期待できるのだ。今回はサイダーを巻き上げただけだったけれども。

「……それはやっぱり先輩も鬼畜でド外道で悪魔の一員としてそういった活動に精通されているのでしょうか。
それとも恐ろしい誘惑に耐えてらっしゃる方でしょうか?今日もこうして塔を登りながら自らの内なる欲求を堪えているとか。」
人に向けた罵倒は自らが最も言われたくない言葉だ、という俗諺が有るが。
少なくとも塔を登って自分を抑えているのは、少女自身のことでもあって。
「それに比べれば私なんかは、とてもとても及びませんよ。」
表情もなく呟く言葉の裏で、つい先日売却されたであろう違反部活員の売上額を考えながら、
こうして軽犯罪法に引っかかりながら詐称しているだけの自分のお遊びと比べれば、
実際に委員会の権限を私欲に使っている人間を追いかけるほうが大変なのだろうな、
という想像は簡単についた。
「……まあ、これからも小物だからこそ見逃されてる感じは維持していきたいですね。先輩がサボれなくなるようなご迷惑はかけない方向で。」

「……あれ、つまりさっきの質問って純粋に私の事を趣味悪そうって思いながら聞きましたよね?
そして想定の上をいく趣味の悪さだなってことですよね?」
否定してみたら『ならいい』と言われる質問にちょっと不安を覚えつつ。
「まあ、確かに先輩の言うとおり、景色でも眺めるほうが趣味はいいのでしょうね。
羨ましいですね、仕事をサボって眺める風景はとても気分が良いのでしょうから」
その人の営みを喜ばしいと思うのは、自分の半身がまた焼き払うものが出来たと思っているからなのだろうけれど、趣味は趣味。
同じく立場の有る人間としてそれを口に出していいのかなと思いながら、自分さえ巻き込んで乱子は手のひらを返してサボりを糾弾する――!

「ああ、本部のことですか?
そうですね…先輩がご不在の間に正面玄関で戦えていたのは私一人といった感じでしたでしょうか。」
平然と、表情ひとつ変えずに大嘘をつきながら。
「…戦えていた、といいますか。アレはアレで、自分たちは負けに来ているとでも言うようなパフォーマンスだった気もいたしますけれどね。
たった二人のパフォーマーとして見るなら。名演だったと思います」
倒れていた他の風紀委員について仲間意識など持ちようもない、乱子にしか思いつかないような意見を述べた。

「その時に見てしまったんですよね、他の風紀委員がちょっと目で捉えられない早さで空中を移動しているのを…」
「最高速とか最大移動距離ではそう遅れは取らないと思いますよ?加速だって走りだすのと同じくらいには出せますけど……けど、その、なんというか。」
「UFOとか戦闘機とか対空兵器とかに負けるのは許せますけど、ヴィジュアル的な問題ですよね!」
なんだか恥ずかしくなったので翼を消しつつ、階段を登るのは止めない。
「……先輩はその、どれくらいお飛びになれるんでしょうか。」
おずおずと、目も合わせずにそう切り出した。ツバメに機動性で勝てるとか言われたら立ち直れないかもしれない。
たとえ人じゃなくても、ヴィジュアル的に人っぽいことが十分に問題なのだ。

蒼穹 > …ぶっ…?!
(言葉による強烈なクロスカウンター、頂きました。クリティカルヒット!
度胆を抜かれた様な表情で唖然としてしまった。…どうやら一枚も二枚も上手の様だ。口で戦えそうもないと察するべきか。
暫し、ダメージエフェクトを晒した後ぶんぶんと首を横に。)
あ、ああどうも、ランコと呼べばいいのかな?よろしく。蒼穹《ソラ》って言います。一年。
風紀委員の方、ね。…ん、同じく幽霊だけど風紀委員。じゃー、頂きます。
(消防署の"方"から参りましたというフレーズが彷彿とさせられた。
可愛らしいという言葉が素直に喜べない。腹いせと暑さのごまかしに頂いたばかりの缶ジュースを数瞬で飲み干せば。)
ご馳走様。
(御挨拶と共に空き缶を握り潰して消した。)

ねぇちょっとまって。お願い待って。
(自分の言ったフレーズをもう一度クロスカウンターされればがばぁっと猛ダッシュで、
階段を数段登って彼女を追い越し前に立てば、ストップと言わんばかりに右手のひらを向けよう。
まさか自分の言葉を返されてこんなに悔しい思いをさせられるとは。)
分かった分かった。悪かったから。私は鬼畜でもド外道でも悪魔でもないから。
ついでにそういう内なる欲求を秘めたり堪えたりしてないから。ウッ、俺の右手が…!とかないから。
悪魔の誘惑に魅入られて邪気眼が…っ!とかもないから。
(実演で己の右手を抑えてどうでもいいジェスチャァ。
頻りに手を左右に振る姿は文字通り必死にそれを否定したそうである。)
…あれ?…いやまてよ。存外それも否定できない…?
(散々ぶっ壊しまくっておきながら、まだ足りぬ、壊したいと思うのは確かに鬼畜で外道で悪魔のソレ。
ちょっとアレな言い方だが内なる欲求と形容も出来なくもない。)
やってること自体は否定はしないんだね。
ま、やっていようといなかろうと、私に害がなきゃ何もしないけど。
生憎私も外道風紀委員だし。
(遂に開き直った。)
あっはは、わかってくれてたんだ。
ありがたいなぁ、そうそう、先輩たる私に適度にお給料を与えつつサボらせてくれたまえよ。
…うん?
(そう笑いながら言い切って、後から違和感が過った。
…今更だけど、もうサボリって看破されてる?いや、自分で言ってしまったのだろうか。
何だか常々サボっている相手に対するもの言いではないか。いや実際そうだけれど。)

いや、その。…まぁ、ね。
流石に初対面の人の頬にジュースの缶を押し当てる子が趣味が良いとは思わないでしょ?
…で?この賑やかで真っ黒な街を見下ろすのが楽しいって事かい。
確かに暇つぶしには良い所だけど、景色見るか見下す以外やることないって思うな。
…おおおい!?ちょっと待って御願い。なんでさっきからキミはトゲトゲしい言い方するの?!
いや、確かにそうだけど!サボリだけど!サボって眺める風景は凄く気分が良いけど!
別に全然仕事してないってわけじゃないんだよ?
(結構なダメージを受けながら、よくある言い訳を繰り出した。
事実、一応働いていない事はないし、適当な書類纏めと本部への顔だし。
それからちょろっと落第街をローラーしたり、本人なりには十分すぎる働きをしているらしい。
本人なりには。)

ん、そう。凄いなぁ。襲撃者もキミも。…ん?ああ、続けて。
(何か明らかにほかの人がBBSに情報あげたり交戦していたって話が合ったけれど、まぁ、良いか。
ころっと騙された。)
ん、そう…やっぱり公権力にゃ敵わないね。
あの襲撃者の一人が知り合いでさ。白崎玲刃君ね。
何でもやる男って聞いてたし、無茶する奴だとは思ったけどいよいよやらかしたね。
私としちゃまぁまぁ複雑だよ。だけど、そんな名舞台だったら野次馬したかったかな。
…被害は大きそうだけど。
(多分建物も人命もあんまり気にしてはいなさそうだな、とは察した。
しかして、彼女の風紀委員という役職に胡散臭さを感じ取った気がした。
ただ名演と称するのは、あまりに無感動ではないだろうか。
最も、あまり死傷は出なかったと聞くから、無理はないかもしれないが。)

まじかよ…なんだそれ。光速?
いや、言いたい事は分かるよ。巨大な翼を広げる鳥が戦闘機に負けても良いけど。
こう…明らかに飛ばなさそうな見た目の奴に負けたらちょっとショックって事だよね。うん。
…収納可能。
(便利なもので。この間会った魔王様の第三の目といい。人間らしからぬ部分は付けたり外したりが本人の意思でできるようだ。
翼が消えたその先には、普通に階段を上る少女。)
ん?私?…そうだなぁ…UFO並には飛べると思う。
(かんっかんっ、と、階段を登る己も視線を向ける事はなく。
途中立ち止まり、ううん、と一考すれば摩訶不思議な答えを示したのだった。
要は鳥の様に風と羽根の力で飛ぶのではなく、宇宙的なソレの様に重力を無視して飛ぶとの事。
この言い方で伝わるかどうか甚だ疑問であるし。
問題の答えになってるかも分からないが…顔は結構真剣だった。)

流布堂 乱子 > 「最近この服に袖を通したばかりですから、皆さんを先輩と呼んでいては区別もつきませんし…
でしたら私は蒼穹さん、と呼ばせていただきますね。
同じくこちらも一年ですから、先輩、と心のなかでだけ付け足しておきます」
遠回しな表現を継続しつつ、少し微笑んで自己紹介を返した。
ダメージエフェクトについて看過する姿勢は後輩の鏡であろうか。
皮肉でもなくどちらも同じ穴のムジナと思っているのであろうか。
「また喉が渇いたら言って下さいね、先輩という権力をどんどん発揮してくださって構いませんから。
……片手でスチール缶を10円玉サイズに縮められる蒼穹さんの前では私なんてちっぽけなトカゲ同然ですからね」

「……っとと。」
回りこまれれば歩みを止めて、バランスを崩しそうになる体は再び手すりを尾で掴み…
左手はブンブンと振られた蒼穹の手を掴むようにするだろう。
「鬼畜でも外道でもない幽霊の蒼穹さんとしてもやはり、
自らに潜む欲求は否定出来ないのですね。
いえ、一度は否定して見せても人は自分を騙せないものなんです…あ、幽霊でした。
え、じゃあ人ではない幽霊の蒼穹さんって一体何者なんでしょうか…?」
アイデンティティに深く悩みそうになる階段の風景であり、
「つまり幽霊外道風紀委員?それとも後輩を支えてくれるありがたい先輩でしょうか。」
結論は行動で示すしか無い、という主張が後輩からは発せられた。
「あ、でもあんまり力を入れないで下さいね。さっきの缶みたいになるのはゴメンですから」
さっそく積極的に迷惑をかけていく少女。まずはラインを見極めようという発想である。

「いえ、初対面でも人は選んでますから。多分この人なら可愛い反応をするかな、と。
……その"人選の"趣味が悪いと言われてしまいましたらそこまでですけれども」
趣味の悪さについては責任を転嫁することを忘れずに。
「景色を見に来た、とは思うのですけど…結局こうして話してばかりで。
そろそろ屋上に着こうかという頃合いですけれど、
このまま帰りそうな程度に暇をつぶせてしまった気がします」
「全く街では同僚の皆様が指名手配犯の追跡で必死でしょうに、
こんな形でサボって暇をつぶしてしまうと休日をフイにした特有の罪悪感と相まって胸が痛みますね。」
彼女が蒼穹をサボりと断定したのは、その情報が根拠で。
風紀委員本部に顔を出すこともなく、正規の手段で要請されることもなく、
ギルドの依頼にかまけて風紀の無線を聞くこともしていなかった彼女は、致命的にそこのところを間違えていた。

「玲刃さんと知り合いなんですか。彼も顔が広いですね。……いえ、業種から言えば当然でしょうか」
二度目の邂逅は、良い結果には終わらなかったけれども。
語っていた言葉はよく覚えている。
「仕事はよく選んでいる、と言っていましたから。きっと自分で選んだ道なのでしょう。
私が交戦したのはもう一人の方でしたけれど…彼のための陽動としか思えませんでしたし。」
「そういうわけであれほど被害が少なかったのでしょうね。」
明確に食い違う言葉。
「正面玄関の涼やかな有り様ときたら一見の価値はありましたから、今度が有ればサボらずに駆けつけたほうがいいと思いますよ」
学生通りを三回ほど融解させた少女としては、生活委員会にだけは手を出せないし頭も上げられないという思いはあるものの。
こうして制服をまとうようになったところで、風紀委員を仕事の邪魔をする連中、とも感じることは未だに変わらない。

「ええ、何分体が大きいとその…多分木偶の坊感が際立ちますからね」
言いながら、少女は(あるいは手をつないでいる)先輩へと懇願するような目を向けた。
「……そうですか、UFO……大きな光の羽とか出したりしないでその機動なんですよね?そうなんですね?」
ダメなカテゴリーに間違いなくヒットしていた。

蒼穹 > あー、そうなんだ。
んじゃ新任なんだね。風紀。りょーかい。お好きに呼んでくれたらいいよ。
………。
(さらっとダメージエフェクトを流されたので突っ込んでくれないのだろうかと期待。
しかしながら、残念なことに否定できないのが悔しい。後輩に自分が勝手に踊らされる先輩。)
ほうほう、んじゃまた今度、厄介そうな風紀の仕事が回ってきたら先輩権限発揮しちゃうねー。
いやまぁその…鍛えてますから。
…トカゲだったのね。…あれ?トカゲって羽根生えてたっけ。

んおっと。とごめんごめん。
(ちょっとオーバーリアクションだったかな、と。
また片手が欠損していることを思い出せば、冗談めいた素振りを止めて素直に掴れよう。
それから、ゆっくりと体勢を立て直せるように引き上げつつ。)
ちょっと待とう、いやもほんとにまって。御願い。
何か哲学的な話になってるから。いや確かに私は幽霊だけど幽霊じゃないから。
ほれ、見てごらん?生きてるから。んで幽霊の蒼穹さんは幻想の存在だから!
今ここにいるのは幽霊"風紀委員"の蒼穹さんだからね。そこ勘違いしないで。うん。
(手を握って引き上げる姿勢で、結構迫真してうんうんと自分の論を述べつつ正面から訴えかけて。)
ごめんね。ダメな外道で幽霊な先輩は後輩を支えてあげられないんだ。
代わりに温いサイダーをあげることくらいしか。
…はいはい、力加減は程々にしとくよ…普通は人間と変わらないから安心してっ。
それに、あれくらいキミにも出来るんじゃない?
さて、これどうしよう。離したらどうなるかな。
(結構弄ばれたが、いよいよ己にも機が廻ったらしい。
どうよどうよと掴んだ手を緩く上下に。握手に見えなくもない。)

いや人選の趣味っつーかそれ私を選んだ時点で私からしたら十分趣味悪いんだけどー?!
多分キミが選んだ人は往々にしてみんな私と同じ事言いそうだよ。
(悪いのはこちらであるなら、皆そうだと言い張る理論を展開したのだった。)
ん、まぁ…ね。
何よりここって物好きが集まるからさ。
客人も色々だよ。面白い場所だよね。ここ。
ありゃ…帰っちゃうの?行く宛はあるの?

ん?…あれ。指名手配犯って…まぁいいか。
良いじゃん別に。どうせ誰かやるさ。
そんなつまんないサボりで罪悪感感じてたら胃に穴が開いて死んじゃうよ?
(襲撃の日もそんな感じで「どうせ誰かやるさ」とサボった手前。
違和感は感じたが追求する義務も義理もなかったので、その辺りは話を合わせておいた。
風紀委員にモグリがいるかもしれないが、その辺りも幽霊たる己の関与する事ではない。
それに、今ここで疑って掛かったって何のメリットもないだろうし。)

ん…レイハ、さっきも言ったけど滅茶苦茶な人だよあの人は。
戦い方一回見たけどあれやってたらいつか死んじゃうって思ったね。
一応前に一度だけ依頼したことがあってね…あと私のお友達の恋人。
難儀だよね、良い女の子の恋人なのに。苦労してそうだって思うな。
ま、ともあれ今回の一件は擁護のしようがないけど、御とがめなしじゃすまなさそうだね。
前にも公安連中に指名手配されてたけど―――
あっはは、ランコには興味ないかな。
(話中の人物に思う所を喋った。共通の知り合いがいれば、自然話は弾む。
語る口調は少しだけ嬉しそうに、次々と喋り始めようと思ったが、途中で口を噤んだ。)
そう、じゃあ彼は道を踏み外して落ちたんじゃないかな…。
もう一人、ね。まあ情報から察するに派手な術を使ってたみたいだから、陽動にはとっておきだったんだろうね。
…んー…?
(結局、被害は大きかったのだろうか、小さかったのだろうか。
人的被害は小さかったと聞いたが、放火していたと聞いた。
何分幽霊であるが故情報が少ない。だから、言葉が食い違ったとして、自分の記憶に自信が持てなかった。
それに、彼女は現場に居合わせたのだから、そちらの記憶が正しいという判断が妥当だろうし…。
何故か噛み合わなさを感じながら「ん?」とクエスチョンマークを浮かべる。)
へー、そうなんだ。あれ?もう修復されちゃったのかな、正面玄関って。
そうだね、覚えてたら次くらいは連絡受けたら野次馬に行くよ。りょーかい。
(緩くぴしりと左右逆の敬礼して見せた。
そもそも風紀委員を襲撃する奴なんて十年に一度にも表れなさそうだが。そうでもないのだろうか。)

ああ、…成程。うん、そうだね。…その。頑張れ、飛行訓練!
キミは飛べる!トカゲよ、大志を抱け!
(片手は彼女と繋ぎ、もう片手は空を指差して。しっかりと相手を見据えれば、うんと頷いて。
飛んだ様を見たこともないのにそんな事を言ったのだった。)
大丈夫だよ、光翼展開とかどっかのゲームみたいな展開は一切なし!
ええっと、UFOってどれくらいの…。
(すっと、片手を下ろす。それからその片手のみで端末機械を弄る。
片手なので結構時間がかかるがそれは人間の体ゆえの御愛嬌。
して、UFOの機動力を見れば驚きの結果が。)
…秒速34キロ(≒マッハ100)での飛行を可能とする?!わ、私も飛行訓練がんばろー…。
頑張ったらいける、うん。そうだ時間を止める魔法を使えば…?!
いやでも…どうすりゃいいんだろう、瞬間移動繰り返せばいけるかな…。
(かちゃん、と間抜けな音を立てて時計塔の階段の上に端末が落ちた。
片手で頭を抱えれば思考に落ちたのだった。
因みに普通そんなに速度を出したら摩擦力で千切れるか燃える。
UFOは大気との間に真空の膜を作るので摩擦で燃える事は無いらしい。)

流布堂 乱子 > 「散々にパシリに使われて、
『乱子?ああ、あの羽の生えたトカゲね、私のペットだから』
とか言われていろんな先輩に貸し出されたりもしてしまうんですね」
一ミリもダメージが通ったことを信じていなかったがゆえの看過…!
「実際に羽の生えたトカゲが目の前に居る以上はそれはもう、居るんじゃないでしょうか。」

「そう、こうして目の前に幽霊で外道な先輩がいる以上は形而上とか幻想の話とかではなく、
後輩の眼の前に現れるとぬるいサイダーを押し付ける幽霊は実在するわけですよ…?」
ゆっくりと引き上げてもらいながら、左手をにぎにぎして。
「…いえ、確かに幽霊にしては柔らかくてあったかいですけれども、」
上に揺れる手に合わせてゆらり。
「こうして外道なのは否定できませんし」
下に揺れる手に合わせてゆらり。
「優しくて親切で可愛い蒼穹先輩の方の実在を証明するには、ちょっと現実が足りてないですよね?」
離されたらどうなるかといえば、貴方の存在が消えるのですとか言い始める後輩。
「それにこうして揺らされてみると、
どうしてこんな人が可愛いと思ってしまったのか…
確かに人選を疑ったほうがいいかもですね」

「いえ、行く宛はないですけれども帰る宛は女子寮に有りますから。」
現状は偽造学生証による不法居住だが自信満々に。
「それこそ、噂では時計塔で泊まった人もいるとか聞きますけれどね。」

「いえ、休日をムダにするほうの罪悪感が消えてないんですけれども、
やはり蒼穹さんは万年サボり術による日々永年休日法を習得していたんですか…?」
どうやら自分の知るサボり魔とは一段か二段は上に存在するサボり力に恐れおののく乱子。
「一体どれだけのサボりを積み上げてくれば『そんなつまんないサボり』なんて言葉が…?」

「義務でもない、とは言いますけど、ね」
全く義務でもない。職務もない。だったら、嘘偽りなく、今感じているのは何か。
「そのうちあの方も捕まるでしょう、熱心で優秀な他の誰かさんが捕まえるとかで。」
「そうしましたら彼の幅広い知り合いさんが詰めかけましてアレコレ聞くかなとは思うわけなんです」
自分が知り合いに含まれるかどうかには疑問を呈する言い方で。
たとえ含まれても最後尾に居ることは確信しながら。

「……恋人さんが居るなら、それはそれは質問攻めで2日くらい寝かせないんじゃないですか、この状況。しかも前にも手配されてて、なんてもう、それは…」
「それは、ともかくとして。」

「私にだって聞きたいことの一つもあるわけですよ。
結局は首が回らなくなった破れかぶれなのか、
しがらみから自由で居たいといったくせに、相棒が居るのは何なのか、とか」
常に存在を意識してきた商売敵。
組織の力を否定して、自由に生きるためと言ってのけた姿は忘れようがない。
ある意味では先輩と言っていい存在へ、聞きたいことは幾つもあった。
「…だから誰よりも先に見つけないといけない、と思うわけですよ、指名手配犯なんてものを」
「結局聞きたいことがまとめられなくて、こうしてサボっちゃっているわけですけれど」

「いえ、風紀委員が軒並み凍りまして、それはもう冷え冷えとした現場が広がったんです。
……とはいえ、生活委員会が居る限りは常世島の建物で直らないものはない、と私はそう信じていますからね。
未だに本部には行ってませんけれども。」
きっと奴らなら夏季休暇を切り上げて実家から戻ってくるに違いない、という思いがあった。
大迷惑な職人信仰である。

「でも、上空を飛び回ってる不格好なトカゲが居るって学園で噂になったら恥ずかしいですし…
もうちょっとこっそり飛べるような訓練施設が有ればいいのにと思いますけれど…
それこそかっこいい翼なら私が出したいです」
弱音を吐きながら、蒼穹さんの携帯を覗きこめば。
「いや、え、マッハ100はたとえ異邦人でも出せる人はそういなさそうですよね?
と言うか幾らこのご時世になったからといっても実際にいる存在と居ない存在は切り分けないとダメなような、気、が、あれ?」
蒼穹さんのリアクションに驚きながら、落ちそうになった携帯端末へと尻尾を伸ばしてキャッチしようとし、

自分の支えを失って、自分が落ちそうになった。
「あ……」
屋上への扉まであと僅かというところで。体が傾ぎ、リカバリーできないことが直感的にわかる。
少女は先輩の手を振り払い、尻尾で携帯を押し付けると、
奈落の底へ向かうように、重力に抗うことさえ許されない落下運動を開始しようとしていた。

蒼穹 > ねぇ、ちょっと待って。私そんな鬼畜じゃないよ?!いやまぁさっき鬼畜って出たし多少なりとも鬼畜であることは認めるけど…。
ちゃんと良い子にしてる後輩は可愛がるから。やめてね?
(酷い言われであった。理由は言葉通りである。)
ああうん、…そうだね。
私の知らない間にトカゲも進化したのかー。…人、それを魔物《モンスター》と呼ぶ。
キミ…トカゲだったのね…そう。トカゲとかもやっぱり進化したら人間っぽくなるんだっ。
(色々勘違いを孕みながら、未だにトカゲトカゲと連呼するのは、天然故である。)

ねぇ待って。幽霊じゃないって言ってるよね。ねぇ?聞いてる?おーい。らんこちゃーん?
私は幽霊じゃないよー?
(透けてもないし、怨念の塊でもない。まして氷のように冷たい訳でもない。)
ほらみろ!やっぱり私幽霊じゃないんだって!
柔らかくて温かい幽霊なんていないよ?!ねぇ、聞いてよ。ねぇってば!
(半分破れかぶれになっている。揺らす手は更に上下に激しく。
まるで訴えかける様に、がっつく様に…気迫だけは十二分に語り掛けた。)
ああああー、分かった分かった。離さないから。
私の存在は消えないけど取り敢えず離さないからそろそろ毒吐くの止めようか!
もー!…ん、ありゃ…可愛いって言ったり可愛くないって言ったり優柔不断だね。
(いやしかし、放されたら落ちるという状況で手を離すとか脅す奴が可愛く見えるはずないのだが。)

ん、そう。寮住まいだったんだ。
…この時計塔で止まるのは…ないと思うなぁ、普通。
(最も、普通なんてこの島にはほとんどないのだが。
ただ、彼女が不法侵入者だとかはやっぱり知らない。知っても何もしなさそうだが。)

ん?そうだね、やることはちゃんとやればいいのさ。
いるでしょ、学校で教室を掃除するとき、1人は毎日サボってるヤツ。
あれと変わんないよ。ただ規模が大きくなっただけ。
んとね。BBS見てみて?
(片手でつかんだ端末でBBSを操作。それから一件の記事を突きつけよう。
http://guest-land.sakura.ne.jp/cgi-bin/BBS/c-board.cgi?cmd=one;no=136;id=#136)
この記事をよーく見てごらん?
指名手配の手続きを頼むとは書いてるけど、指名手配するとはどこにも書いてないね。
それに、指名手配の伝令も少なくとも私は聞いてない。
だからそもそもサボってる事にはならない。どーよっ、この完璧なロジック!
あと、襲撃の件も別に招集がかかったわけじゃない。だからサボリにさえならない。
…物は言いようって、ね。
(再び端末を仕舞い込めば、悪戯心に湛えられた笑みを向けた。
普通の風紀委員から見ればきっと、最低な発言であろうが。彼女は普通の風紀委員ではなさそうだし。)

ん、義務でもないけど…。
ああ、そうだなぁ、確かに色々情報知っちゃってるし、何より顔も広いしね。
…それで、それがどうしたの?キミもアレコレを聞きたかったり…?
(さっきからの話を聞くに、彼女は話中の人物と知り合いなのだろう。)

災難だよね。私もその時は指名手配されたし、その恋人もされてた。
いやぁ、懐かしいなぁ…っ。でも、追われてたのは実質その二人だけだったけどね。
心配で心配で泣かれたり質問されたりで大変だろうね…きっと。
ん。
(兎も角、と言う言葉に頷けばこの話は切ろうか。)

あ…やっぱりそういうことなんだ。
…さあね、その辺は本人に聞きなよ。
レイハの自宅なら…場所だけなら知ってるよ。大まかに。
(思わせぶりに一つ振って、引いてみた。教えろと食い付いて来るだろうか。それとも。)
ふーん…。そうだったんだ。
さっさと見つけた方がいいんじゃない?死刑なり禁固なりされたら当面会えないと思うよ。

ああ、そういう事だったの。
愉快犯にさえ見えるね、風紀委員を凍結させるなんて。馬鹿馬鹿しいね。
生活委員会って言ったら…色々愉快な人が多いよね。川添君とかその妹さんとか。
あんまり知らないけどあそこも面白そうだって思うなぁ。
と、話がそれたけど…その辺は生活委員会様様じゃないの?
散々殴り壊された建造物直してくれるんだからさ。
(あまり彼女はいい気分で言葉を発していないのが分かった。故にちょっと違和感。)

怪奇現象だねそりゃ。フライングトカゲ。…んー、有るんじゃないかな。学園は広いし。
研究区とかにも色々あるし…でも、高所で飛ぶとどうしても目立つよね、何処でも。
…いっそここで訓練してみたら?
(ちら、ちら、と上下に目配せ。十分な、十分すぎる高度。)
幻術とか使って見せかけだけの翼を作りだすとか。
工作してかっこいい翼を取り付けるとかどーよ?
(そうして軽口を叩きながらも思い出すは、あの真っ赤で暑い色をした鋭い翼。)
…あれも十分かっこいいと思うけどね。

いや、普通に出せると思うけどな。この世の中だし。
摩擦だけ何とかできれば行け―――ッ?!!
(これも、オーバーリアクションだったか。
気付いた時には手が払われて、落ちた携帯は、正しく掬い上げられる形で己の方へと、
飛んできた。ぱしりとそれを掴みとると同時に、視線は幾許か落下運動を始めて時間が立った彼女の方を。
彼女は飛べる筈だ。落下したとしてさほど問題はない…と思いたい。
だが、この落下運動の原因は間違いなくこちら。
彼女が飛ぼうと、飛ばまいと―――ダァン!と今居る階段の段の一つ上を斜めっから豪快に蹴りつけて。
それから、幾十段飛ばしの階段飛び降りを御目にかけよう。
跳躍ではなく、降下。向きは最初から斜め下。
重力によって加速する物体を、同じ重力の中で追うには、初速度が勝っていないと追いつくことは物理的に不可能だからだ。
幸い彼女は静かに落ちて行った。初速度は無い。
余計なお世話だったかもしれないが、鬼が出るか蛇が出るか―――?)

流布堂 乱子 > 「いい子にしてるペットは可愛がるんですよね、ええ、わかります。
ですけれども、あいにくとこのトカゲは飼い慣らすには少々手を焼きますよ…!」
物理的に。いや、今は火は使えないふりをしているのだからこの場合は
「火炎瓶とか出ますからね、知恵を持ったトカゲは恐ろしいですよ。
多分一説で言うにはドラゴンとか呼ばれるあれもそうなのでしょう」
爬虫類人の恐怖みたいな言い方をしているがその方向で良いのだろうか。
流布堂乱子はトカゲ人間である、みたいな方向性の存在を作り上げてはいまいか。

「ええと、なんとなくでは有りますけれども、
聞いてない、メールが届いてない、体調が悪かった、鉄道が遅れていた、
おばあちゃんの葬儀が有った、制服を洗いに出していた、
なんとなく職場の先輩が感じ悪い、等々の理由を駆使すれば
永年休日法は現実のものになり、
神は7日休んでもう7日休んだ、となる訳ですね…!?」
創世神話さえ裏切って破壊し尽くす伝説の秘術。何が労働だ知った事かという思いだけが現実を貫くという…!
「……それでその、そこまでしてサボって何になるのでしょう?」
そう、蒼穹さんの理屈に従って言えば
そもそも風紀委員ではない乱子はサボり魔ではないのだ。あいにくとサボり初心者なのでよく分かっていない。

「そう、ですね。」
指名手配はされていないという事実に眉を顰めながら。
それでも、優秀な風紀委員たちがいずれ彼を見つけ出す可能性は非常に高い。
「確かに私みたいなのが会えるのは、あの方がおじいちゃんになられるまで掛かるかもしれませんし。」
「…でも自宅には帰らないでしょうね。
あれだけしまい込める『蔵』の持ち主なら荒野に身を隠したって何年か持たせられるでしょうから。」
「まあ、出来る範囲でやることにします。ありがとうございます、蒼穹さん」
組織に属する限りは、自由では居られない。
こうして風紀委員のふりをするのがお遊びでしか無いと言うのは、明確にギルドの所属者としての自己があるからだ。
いつまでも遊んでは、居られない。……それでも、もしも運が良かったら。
「…蒼穹さんは、何か聞きたいこととかはないのでしょうか?」

「やっぱり趣味が悪いと、そう思われてしまったのでしたら謝罪しないといけないでしょうね。
…あまり楽しげにする話でもありませんでした」
身内が凍りついて、涼しげで面白かった。
要するにそういう発言を不快に思うくらいには、やっぱりこの人も風紀委員なのだな、と。
感心とも警戒ともつかない感情を抱きながら、表情を変えずに。
「ええ、もちろん。生活委員会は尊敬していますよ。…日々何処かが壊れるような学園ですからね、ここ」

「かっこいい、なんて言ってもらえたら」
「ちょっとくらいがんばろう、って思えちゃいますね」
階段に触れそうなほど近くで、甲鱗に覆われた翼が広がる。
風を掴む。空間を蹴り飛ばすかのように、羽ばたきが重力に抗う。
落下速度を打ち消そうとも、体勢を整えられない限りは背中からの着地という運命を変えられず。
だけれども、左手を伸ばしたままの少女に可愛くて優しい先輩が追いつくだけの減速は十分に成し遂げられた。

蒼穹 > ほう。それは僥倖。この間氷の魔法使いと一発やってきたり、転移荒野で雪浴びしたからね。
温めてくれるなら結構な事だよ。
では今度も飼いならすために餌をやろうかな。どうよ。好きな飲み物とか教えてくれない?
(愚かにも餌付け策。しかし己からサイダーを搾取したのを見ると、何でも飲むのだろうか。)
ねぇ、トカゲから火炎瓶が出てくる理屈が知りたいんだけど。
ドラゴン…ああ、…成程。漸くわかった。キミドラゴンだったんだね。
(手をぽむりと打って頷く。やっと正解に行きついたらしい。
といってもトカゲってドラゴンというか、恐竜の仲間ではないだろうか。)

…神は七日休んでもう七日休んだら一体いつ世界作るんだいランコちゃん。
しかしまぁ、よくもそんなに言い訳思いついたね。
怠惰過ぎないかなそれ…。
(呆れたように苦笑い。
そんな神いたら腹の底から嘲ってやろう。あ、私かそれ。)
…んふっ。
(自分の事だと思うと、滑稽で笑えた。)
んーとね。
そもそも私はあんまり風紀委員として仕事する気はない訳。
最低限はするけどね。
んで、風紀委員って、情報と給料が良いから、席を置いてるって事。
あと制服とか嫌いだから刑事課ね。一応。
(要は、不労所得に近しいものである。
幽霊と言う名にふさわしく、まるっきり風紀委員らしくもない振る舞いばかり。
服装は毎度白色主調な動きやすい格好と実にやる気のなさが伺える。
…といっても、働いていない事はない。事はない、だけだが。)

そういう事。
だったらさっさと見つけたらどうだい?…そう、んじゃま、どういたしましてって言っておこうかな。
でも、生きてたんならこの優しい先輩に情報くれてもいいよ?
(彼が置かれている状況は、きっと一触即発に他ならないだろう。
指名手配されていないが、犯罪者であることには変わりない。
一個の大権力に喧嘩を売ったのだから、その一端に断罪されても仕方があるまい。)
自宅には帰らない、か。どうだろうね、愛する乙女がいる場所に帰らないなら、
恋人にはとっくに愛想つかされてるだろうに。
ペアリングまで買って、同棲して、行きつくところまで行ったって関係の二人がそう簡単に離れはしないって、私は思うよ。
…ん、とそうだね。元気にしてる?って、それだけ聞きたいかな。
(何だかんだ、彼は友人の一人と、少なくとも己はそう思っているが故に。)

あっはは、そう深く考えることでもないけどね。
ま、一人二人風紀にも知り合いはいるから…あんまり気分は良くないかな。
それはお前ら風紀が弱いから自業自得だろって言われたら私は何にも言えないけどね。
あんまりだよ、あんまり。気にしてないさ。
(眉を上げるが、それだけ。本当にそれだけ。
大して思い入れも強くない。友達と言える人が果たして風紀にどれだけいるか。)
壊れても、すぐ直るけどね。生活委員会の御陰かな。
よくもまぁ、すぐこう再生できるよね。本当、すぐって言葉が正しい気がする。
風紀委員本部ももう修復されたかな。

あっはは、頑張れ…いくよ―――っっ!!
(減速…いけるか。よし、と。もしもこの状況でなければ片手をぐっと握りしめていたことだろう。
詰まる距離。
転落しているかのような―――実際転落と何ら変わりない―――速度で、翼を広げた少女に迫る。
彼女の左手を己の左手で取れば重力方向からすれば垂直下向きに位置する、翼を広げたその背中の方に斜めから手をさし入れ。
御姫様だっこを大分崩したような形で空中を落下する。)

ああ、もう…っ!私も飛ぶしか…ないよね、これっ!?
(この斜め方向への落下は、ともすればこのままいくと階段全段飛ばしになりかねない。
彼女の方は、この姿勢では満足いくように飛べない様だし…。
早いことこの状況から切り返さないと、…いや、このまま落下してもこちらはちゃんと直立できる方向だから良いのだが。
もう折角だし、このまま飛んで、そのついでに時計塔の天辺へと上がったらどうだろうか。
とさえ考えた。言葉はとても早口。目は、早く飛行許可をくれと言わんばかりにせかせか動いて。
落下しながらの言葉は、果たして届くかどうか。)

流布堂 乱子 > 「つまりペットによって凍った心を温めてほしい、ですね。わかりました。
寂しい蒼穹さんの心に忍び寄るペットブームに便乗させていただくとします。
好きな飲み物は…ブランデー、ですね。
あまりご主人の懐に負担をかけるのも心苦しいので等級は低めで全く構いませんから。」
そうは言うもののかつての習慣であって今の体では舐めたこともないのだけれども。
「そうそう、つまりドラゴンは火酒を好む、ということです。
……それ以外でしたらまあ、何でも飲みますね。氷水を出されるとちょっと喜べないですけれども。」
十年ほど時間を越えてこの世界に帰ってきて、良かったと思うのは常温飲料を売るのが一般的になっていることだと思う。

「……いえ、それは……」
蒼穹さんが気づいて笑ったところで、乱子も少しだけ微笑んで。
「まあ、世界なんて作ってもそのうち壊れるだけですから、やる気が無くなるのもわかりますけれどね。
蒼穹さんが創造神でしたら人間はいつ出来るやら、です」

「あれ、意外と身近にいるものなんですね巨悪…あ、嘘です、今のは言葉の綾です」
さっき風紀委員のふりだけしている自分を軽犯罪に例えたが、
正真正銘の給料盗賊が目の前に居ようとは。
「えーとその……なんというべきでしょうか……」
「ああそうだ、蒼穹さんのこの制服姿は見られないわけですね、残念です。」
先ほどつい思った通りを口走ってしまったのでなんとか言い繕おうとして出た話題は、
本人が嫌いと言っている服装についてだった。
職務についてとかはとっさに出なかったのだから忘れよう。
つまるところ、蒼穹さんがサボっているのを見たら遠慮なく声を掛けていいということはわかった。

「そういうもの、なのでしょうか…絶対に捜査の手がかかっていることまちがいなしだと思いますし、
なんだったら恋人さんの方に監視が付いているものだと思うのですけれど」
自分に置き換えて考えて見るならば。たとえ指名手配を掛けられても、会いに行くべき人は居たか。
…思いついた顔には首を振った。
どっちが先に裏切ったかはわからないが、彼女の埋葬は自分がしたようなものだ。
「……なんだか蒼穹さんの言い方には含蓄が有りますよね。意外にも恋愛の大家とか。」

「そうなんですか?…いえ、ご本人がそう言うのでしたら構いませんけれど。」
あくまでも個人的な印象として、先ほど自分が得た感覚を打ち消すには少し弱い気がした。
とはいえそれこそ本人の言うことで。
水掛け論をするくらいなら判断はまた別の機会にすれば良いことで。
「ええ、多分本部ももう直ってるんじゃないかと思います。
……言ってはなんですけれども、私と蒼穹さんのどっちが先に本部に行くかわからないような頻度ですし、
次に確認する頃にはもう直ってて当然というくらい期間が空いてそうですよね。」
モグリとサボりの二人には荷が重すぎるのではなかろうか。

「頑張りましたけど…やっぱりUFOには敵いませんでした!」
左手を取ってくれた先輩へ頷きながら、少女は近づく階段を見た。
自分勝手に、床に擦れそうな翼を消すと、お姫様抱っこもどきに体を預けて。
「ええ、飛んじゃってください!最初からこうしてればよかったのかもしれませんね!」
これまでで一番大きく表情を変えて、笑った。

蒼穹 > …あの。何でその…いや、まぁ。良いんだけど。
(ツッコミどころがあり過ぎて、むぬぬと口を歪めながら困惑。
心に忍び寄るって誘惑とかそんな類に聞こえるのだが気のせいだろうか。)
ふーん、ブランデーね。
…?ブランデー?!…ちょっとまてらんこちゃんよ、キミ成人してるのかい?
あれはお酒だった筈なんだけど…?!
(少女と言うに相応しい外見の無表情な彼女は、何を思ってブランデーをと言ったのだろうか。)
あとさ、自販機で買えそうなヤツにしてくれない?
御主人様の為に。
(ううん、と腕組みして。ともすればもにょもにょした黒い糸が絡まりまくったあのマークを頭上に浮かべつつ。)
ふーん、そういう事か。属性的には火って感じなんだね。猫舌って言うんだっけ。冷たいのが駄目なの。
ん、じゃあ…コーンスープとかどう?美味しいよ。ホットだし。
…酒じゃないとダメなのかな。
(やっぱり、アルコールだし体内で燃やして炎の魔力につくりかえたりするのだろうか。
燃料みたいに使って、火力強化に使われてそうだな、とイメージ。)

「いえ」じゃないでしょ。「いえす」でしょ、その顔。
(やっぱり私の事かと思っても、笑いしかこみ上げず。)
あっはは、違いないね…残念ながら。万物流転、無常観っていうのかな。
んー?さぁね。破壊神の私に創造神の気持ちなんざわかりゃしないよ。
ああでも、もし人間を作ってもすぐ飽きて潰しちゃいそうだけど。
(さらっと述べるのは比喩ではなく事実だが、この流れなら比喩にしか聞こえない気がする。)

言いたい事なら好きに言いなよ?
ほら、「先輩給料泥棒しながらこんな鉄塔で間抜けっ面晒すなんて言い御身分ですね。」って。
(何を言われるかは大体想像がついているのだが、
こういう事言う人に限って言った本人も働いていないことが多い。
故に、切り返しは出来る所存。)
ありゃ、面白い事言ってくれるじゃん♪
何よ、そんなに私の風紀委員服が見たいなら見せてあげてもいいよ?一瞬だけ。
(にんまりと笑みを湛えて。嫌いだと言ったのはどこへやら。
ただし、着て活動する気はさらさらない様子でしっかり一瞬とは後付する。
相手が返答に困って紡ぎ出した言葉であったのに調子に乗った。)

んー、そうだね。多分そうなってるって思う。
監視とかそれだけは徹底してるからね、この学園。それ考えると嫌になってくるよね…。
…どうかした?悩み事かい?
(彼女が何を考えたか分からないけれど、表に仕草として首を振るのが外に出ていたのが見えた。
無意識だろうけれど、場所も相俟って己には悩み事を思わせた。)
いや、私は見ての通り天真爛漫で純情可憐な乙女だからね。
あんまり恋愛経験は豊富じゃないんだ、忘れちゃったって言うのが正しいかもしれないけどね。
…その二人は今頃キミの言う蔵で逢瀬の時間を過ごしているのかも、ね。
(何となく、何処ともなく遠くを見遣りながら小さく笑う。
今頃、あの熱々の惚気た二人は何処で何をしているのだろうか。考えるだけで微笑ましく思った。)

ん。…あんまりだよ、あんまり。
話題がなくなったら良いかもしれないし。ま、襲撃の件は寧ろ羨ましいってさえ思ったからね。
私も一切合切後先考えずぶっ壊しまくってみたなー…なーんて。
ああ、自分でも何言ってるか分かんなくなっちゃったね、適当に流しといて。
(ひらっと片手を振って、言葉を締め括った。
彼女の前では、何となくいつにもまして口数が多くなっている気がするのだが…気のせいだろうか。)
そうだね。…ああ、ならどうだろう。
良かったら今度、一緒に行ってみる?どうせ完治してるだろうけど。

やったね、んじゃ、UFO浮上するよ!
(ぱぁっと、晴れやかに笑い返して見せて。
足に魔力を流せば、重力をぶち壊す重力操作の魔術を行使する。
彼女の様に目に見える様な、立派な翼は無いけれど。或いは、そのまま天を駆ける様に。
御姫様だっこ紛いの格好で、階段から逸れたアウトコースを浮遊して登り始めた。
翼があったら、見せ場にもなったろうに、
見るからに人の見かけをした己が空を歩いていたところで、格好良くもなんともないか。
龍でも戦闘機でもUFOでもなく、まるでエイリアンじゃないかとも思うけれど。
だけどまぁ、格好良くなくても、それはそれで良い。
何だかんだ、笑顔と取れるその表情を見せてもらったし。
ずっと表情の変化が薄かった分、それがとても嬉しくて。泥臭いなりに、紺碧の空を駆け上り、塔の天辺を目指し始めた。
未だに御姫様抱っこ紛いのそれをしたままなのは、故意か、知らずか。)