2015/08/09 のログ
流布堂 乱子 > 「そうと決まればれっつぺっとらいふ。
使い魔とかなんとかで学園に連れてってる人も多いようですから問題なしですね。
……ああ、そうか。サボり神様が授業に出席とか有り得ませんでしたね、失言でした…」
私としたことが、と無表情に呟く乱子。読み方はさぼりがみさまです。

「住んでいた土地ではブドウ栽培が盛んでしたから。
もちろんワインのほうが一般的に飲まれましたけれども。
……学生証を見ますでしょうか?特にびっくりすることは書かれてませんよ?」
すっと懐から取り出したるは偽造学生証。
前に登録した本物と違うところはいくつか有るが、
氏名は流布堂乱子、所属は風紀委員会、年齢は……20才。
「とはいえ、ご主人様はお酒買えなさそうですから……
コーンスープですか。確かに好きですね、いいと思います。
猫舌が熱いものが苦手という意味なのを除けば。」
「別にお酒じゃなくても…その、ドラゴンは火酒を好むというのは昔言われた冗談なのです。
いつの間にか自分でもそうなっていただけで。
…好きな人から言われた言葉は影響力が有りますから。」

「さすがはサボり神様。バレてしまっては仕方ないですね。
そしてサボり神に加えて破壊神でもあるとなるとこう……
退廃的ですよね。学業と就業と訓練から反対方向を向いてる感じが。
……いえ、就業はしてましたね。」
そこはかとなく自宅警備業か何かと疑われている。
「でも、人間に飽きるのは凄いですね。ひとりひとり潰すことへの楽しみが有るとかそういうタイプの破壊神様かと思いましたけど。」
あくまでも自分になぞらえての話だし、そう思った根拠はこんなふうに立ち話に付き合ってくれているからでも有る。

「いえ、サボりネタはもうやりましたから二度重ねるとちょっとなと思いまして」
ざっくりとトークスタイルに厳しい評価を下す乱子。
ただ、重ねて言われた、『最低限の仕事はしている』という言葉と、
風紀委員を気遣っているような態度に、思うところがあったからだが。
「そうですね、今度本部に一緒にいくことがあったら制服を着た姿も見せていただければと思います……
ところで思うのですけれど、仕事を離れて考えてみるとあの建物をブチ壊したくなるのは割と当然の帰結だと思うのですよね。ふつーですよふつー。」
主に乱子自身の仕事の邪魔に対しての感情の帰結なので普通なはずはない。
とはいえ正義や権力とやらに対しての反発心と反骨心という基準で考えても、恐らくみんなそうなはずだ(落第街調べ)
一番おかしいのは仕事を離れればという発想そのもの、仲間意識の欠如の方向なのだが。

「いえいえ。悩み事じゃなくて思い出の話ですよ。
ちょっと悲しい別れの過去を思い出していただけですもの。
……私も純情な乙女ですから、それくらい言っても許されるでしょう。」
少しだけの作り笑いを浮かべてから、また無表情に戻っていく。
「そういうわけでむしろ他人の恋の話に乗れないくらい乙女なのです」
不機嫌か。

少女が嬉しかったのは、先輩が自分を抱えて飛んでくれるからではなくて。
酷薄ぶってみたり、給料泥棒ぶったり、破壊神ぶったり、可愛いと言われると反発したり。
ちょっと強がりなところのあるこの先輩が、
『掴んでてあげるよ』
という言葉のとおりに、自分を助けてくれたのが嬉しかった。
『いい子の後輩なら可愛がる』
なんて、そんなふうに言いながら、自分のことを後輩としてちゃんと見てくれていたのが嬉しかったのだ。
「すみませんでした、蒼穹さん。
……助かりました。ありがとうございます。」
麻薬のように。誰かに認められた気持は心中に染み入って。
本当に夏を終えた時にこの赤い制服を脱げるのかどうか、心配だった。

蒼穹 > お、おう。…トカゲ飼うって何か斬新だけど精一杯世話させてもら―――ぁ?!
(すっかりサボり神様扱い。
授業に出席とかあり得ないとか言われても、ちゃんと楽しい授業は出ている。楽しい授業だけは。
しかして、この。何とも馬鹿にされ切った言い方に語尾が上擦り言葉が止まってぐぬぬ顔。
確かにサボり気味だけれど、何もそこまで言わなくても…。そう心の中で反論した。)

ん、ブドウ…西洋のフランスってとこ?
どれどれ…あれ、成人してたんだ。流布堂ね、大分と変わった名前じゃん。
(それが偽造と気付くもなく。ただ意外そうに年齢のところをチラリ。)
まぁ、御主人様は見ての通り乙女だからね。お酒飲む年齢には見えないでしょっ。
あっはは、冬場はココアとコーンスープが良いよね。今は夏場だけど。
それでも暑い飲み物好きなのかな。
…うぅー…ペットが虐めるよー。
(間違いに指摘されればしゅーん、と背を曲げて小さくなる。)
へぇ…そうなんだ。
ま、大切にしなよ、思い出。そうは言っても、その分じゃ到底忘れないだろうけど。

ねぇ、さっきから何なの?!御主人様って言ったりサボり神様って言ったり。
いやまぁ、御主人様でもサボリでも神?ん?いやまぁ、邪神様でもあるんだけどさぁ!
いや、さり気なく破壊神様ディスらないでほしいね。
確かにそうだけど!全部ぶっ壊しまくって笑ってるやばい奴だけど!
…あの、まぁ…そうだけど…学業も就業も訓練もあんまりやらないけど…。
ッ、失礼なッ!
(何を言ってくるかなどおおむね予想がついた「あいつはNEET!」とでも思われているに違いない。
別に働いたら負けだと思っているわけじゃない。断じて。)
ん?そうだね。面白い、楽しい人間がそれだけいれば飽きる事はない。
けれど、同じ楽しさや面白さじゃダメ。一人一人違わないと。
勿論、踏みつけて叩き潰すのも良いけど、私は規模が大きいからね。嵐みたいなもんだよ。分かるかな。
(分からない説明をまた一つ。一人一人いたぶるのも良いが、ビルをへし折ったり鉄塔をひん曲げたり。
大きな、大量破壊を望む事を仄めかしている。一人一人甚振ると言えば、己の脳裏にドSクールな旧友の、楽しそうな笑みが浮かんだ。)

冷たくない?!
(冷淡に話を切り捨てられた。ちょっとビックリ。)
ん、あれ?…割と意外な返事だね。
まぁ、ぶち壊せるならどこでも良いんだけど。
もしかしてあそこ壊したかったりする?襲撃してみる?…あっはは、これこそ、なーんちゃって、だね。
(こてん、と首を傾げてはにんまりと物騒な冗談を溢す。
だが、これを真顔で言ったら、何となく彼女は首を縦に振りそうな、そんな気がした。)

ふーん、…ああ。成程ね。
(さっきの好きな人とやらと繋がるのだろうか。)
おっけ、20歳でトカゲさんでも乙女なのね。覚えておくよ。
いやまぁ、新しい恋見つけなよ。青春楽しもうっ?
(からっとした返事を一つ。)

どういたしまして、かな。
あっはは、私からもありがとうって、それからごめんねって言わせてもらわないとね。
これを落とさなかったらこんなことにならなかったんだし。
これを拾ってくれたから、こんな事になったんだし。おかげさまで、新品同様のまんまだよ。
(ちら、とポケットに目配せ。先程落とした端末に一瞥。「これ」とはその端末の事。)
こーの、可愛い後輩めっ。
(最後には、安定しなかった呼称も己の名を呼んでくれて。
無愛想で、不敵不遜な振る舞いを見せながら、そうやって謝罪も謝礼も言ってくれるなら、当然嬉しい。
彼女が、どういう立場の、どういう存在なのかは、己はまだ知らない。
風紀の、ちょっとトゲのある可愛い後輩として扱っている。
このまま、鉄塔の頂上へとたどり着けば、互い、炎天下の元暇つぶしという名目の為また長らくゆるりとした時間を過ごすのだろうか。
最初、塔の中腹で話していたその時よりは。
無表情の中に多少とも表情らしい表情が見え、少しは砕けて話してくれてるって、そんな気がした―――。)

ご案内:「大時計塔」から流布堂 乱子さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」から蒼穹さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」にミザリーさんが現れました。
ご案内:「大時計塔」にダナエさんが現れました。
ご案内:「大時計塔」に参加希望者さんが現れました。
ダナエ > (先日受けた教員採用試験の合否判定。1~3で不合格、4~6で合格) [1d6→2=2]
ダナエ >  
──ゴ、ッ…………ゴ、ス………………
  ゴ、ッ…………ゴ、ス………………

重い重い、いつもより更に重い足取り。
大時計塔の一階に、深い海の底そのもののような全身鎧に身を覆われた人影が現れる。
この場所に似つかわしいとは言い難いこの人物は、つい先ほど常世学園の教員採用試験の結果を聞いたばかり。

結果は、不合格。

「…………動く箱、えれべーたーは…………どこだ?」
かすれた声で呻くように呟き、きょろきょろとあたりを見回す。
合否を聞いた後の事務員との雑談で、あまりに気落ちした様子を見ての慰めだったのだろうか、この大時計塔の見学を勧められたのだった。
その際に上下に動く箱、すなわちエレベーターがありるのでそれで最上階へ行くよう教えられた、のだが。
「箱など……どこにもないぞ」

あいにく、上下に動く箱と聞いて想像したのはコンテナか棺桶のような本当の箱の形で。
まさか扉の向こうに小さな部屋のような箱があり、それがエレベーターなのだとは思いもよらず。

ダナエ > 「まさか、事務員に騙されたのか……?」
被害妄想が膨らみかけてフルフェイスのガードの奥の目がギラつくが、あることを思い出す。
「……待てよ。
 確か、箱の上には数字が書いてある……と言っていたな」

──ゴ、ッ…………ゴ、ス………………
  ゴ、ッ…………ゴ、ス………………

「この扉の、向こうか……?」
上部に各階の数字の刻まれた扉を見つけ、立ち止まる。
両手を扉に押し当て、開けようとするも手甲の素材的に滑ってしまう。
手甲を外し、左右の扉の合わさった部分に指先を掛けて再挑戦。
「むむむむむ……!」
だが扉は開かない。一旦扉から手を離し、
「何故開かない!
 ……いいだろう、こちらも本気を出してやる!」
怒鳴り散らす。
不合格の悲しみと苛立ちをぶつけるように、腕に力を込める。

「ぐぐぐ、何のこれしき………………!!」

ダナエ > 「セイッ!!!!」
ダナエ > ゴォン!という音と共に、エレベーターの扉が強引にこじ開けられる。

「はぁ、はぁ、はぁ……。
 どうだ、私に本気を出させたおまえの負けだ!!」
ビシッと扉に指を突きつけ、勝ち誇る。
端から見るとかなり怪しい光景。

そっと覗いてみた扉の向こうに床はなく、数メートル下に機械類が見える。
そしてそこから、太いワイヤーが数本上に向かって伸びている。
「なんと……ここは一体…………?」
謎の空間に気を取られていると、

──……ゥンゴゥンゴウンゴウンゴウン

「はっ!?」
大きな音に上を見上げれば、天井が垂直に降りてくる。
慌てて後ろへかわすと兜の一部をコツッとかすめたので、
「!!」
反射的に背中の大盾を体の前へ立て防御体勢。

ご案内:「大時計塔」に岡部 吹雪さんが現れました。
岡部 吹雪 > 「おいおいおいおいマジかよオイ!」

ナンパ行脚の失敗を重ね、気分転換がてらに遊びにきてみれば
目の前で繰り広げられるはダンジョンアタック。
いつからこの塔は魔王に支配されたんだよと毒づきながら、慌てて駆け寄ってきた。

「それ壊すと修繕費やべーんだって!
 ちょっとマジで何してんの!?」

ダナエ > 突如掛けられた声にびくりと肩を上げ、そのまま大盾を相手へと向ける。
防御対象変更。

「こ、壊してなどいないぞ。開けただけだ」

大盾の向こうからくぐもった声が響く。
本人的には、建て付けの悪い扉を開けただけという認識。

岡部 吹雪 > 「ンなことしなくても開くんだよ!
 ったく……管理会社がスッ飛んでこなけりゃいいけどよ……。」

ぶつくさ言いながらも中に入って状態を確かめる。
エラーランプは未点灯。少なくとも監視カメラでチェックされないかぎりは暫く平穏だと言えた。
当たり前のように開閉スイッチを押した姿に、彼女は何を思うのだろうか。
そんなことはこの時点の彼は知るよしもない。
よし、と声を上げて彼女の前まで戻ってきた。
指先にバイクのキーを絡ませて、からからと回しながら。

「確かに『開けただけ』だったよ。安心しな。
 今のトコは異常なし。いつでも乗れるぜ。」

キーをポケットに捻じ込みながら、壁に背中を預けてもたれかかる。

「上に行きたかったんだろ?」

ダナエ > 相手が指先で壁の小さな模様に触れると、扉は先ほどのような大きな異音なくスムーズに開閉するのだろう。
「…………おお!!」
口を大きくぽかんと開けているのだが、兜のガードで幸いなことにそれは外からは見えない。

「なんだ今のは……アンロックの魔法か!?」

相手は魔法使いなのだろうか。
それとも相手が触れた壁の小さな模様に、魔法が込められているのだろうか。
壁の小さな模様、すなわち上へ行きたいですボタンを大盾越しにしげしげと見る。
上に行きたかったのだろうと問われれば、
「あ、ああ……」と頷くが、まだ土肝を抜かれたままの様子。

大盾を構えたままゆっくり進むが、エレベーターの前でしばらく躊躇。
「……ここで乗らぬは騎士の名折れ!
 神よ、どうぞ未知の怪異から私をお守り下さい!」
天を仰ぎ、覚悟を決めて。
ゆっくりゆっくりと、エレベーターに乗り込んでみる。

岡部 吹雪 > 変わったな奴だなと正直な感想。
どうも、そういった技術のない文明圏からの来訪者らしいことは伺えた。
生活委員絡みの仕事で、異邦人絡みには数多くの縁がある。
少なくとも悪意も敵意もない相手というのは、それだけでありがたいものである。
残念なことに、この島に来訪する者の中には侵略者の類も少なくないのだ。

「俺も丁度そんな気分だったしな、ついでに連れてってやるよ。
 こいつが"扉の開閉"。で、こっちが"何処に行くか"。
 魔法ってワケじゃねーけど、押したらそうなるって思ってくれればわかりやすいだろ?」

行き先を指定すれば自動的に扉は閉まる。
ゆっくりと二人を引き上げたエレベーターは、あっという間に目的地へと到達。
扉が開ければ風景も変わる。彼女が先程見やった星空は、いくらか大きく見えるだろう。

「俺は岡部だ。この辺で教師をやってんだけど。
 教師ってのは……まあ流石にわかるよな。
 アンタは? 別にココへ、魔物狩りしにきたワケじゃねーんだろ?」

ゆっくりと最上階の床を踏みしめながら歩きだす。
夏風が運ぶ緩やかな潮の香りは、この島、この時計塔最上階ならではのもの。
岡部の白草めいた髪が、ゆるやかに棚引く。

ダナエ > ぐるりとエレベーターの中を見渡してみる。
「……これが、“えれべーたー”………」
ダナエは かしこさが1あがった!

「ほう……」
操作の説明を真面目すぎるほどの前のめりの態度で聞く。
「動力源は魔力ではないのか。
 では魔力のないものにでも扱えるわけだな、
 便利なものだ……」
エレベーターの扉の開閉システムに感心。

エレベーターが動き出せば、腹部を襲う浮遊感に、「!?」とおののきながら。

到着。
開いた扉から吹き込む風に、「!」と軽く大盾をガタつかせる。
すぐに外へと繋がっているとは思っていなかったらしい。
相手の後について、大盾をまだ構えたままゆっくりとエレベーターの外へ。
周囲を夢見心地で見渡し、ほうっと息を吐く。

「オカベ、か。私はダナエだ、案内感謝する」

ふと視線を周囲から相手に戻し。

「……む、きょうし?
 今……教師と言ったか?」

先ほど教師になり損ねたばかりなので、つい声が尖ってしまう。

岡部 吹雪 > そのまま適当な資材の上をイス代わり。
ぐるりとダナエに向きなおる。

「ああ、そうだけど。
 何だ、うちの学園に何か用でもあったのか?」

異邦人の拾い上げに関しては、一部風紀が後先考えずやらかして、公安が調整するハメになったと聞いていた。
それすらもひと悶着あったようだが、面倒事といえばその辺りだろうと考える。
ダナエは見るからに異邦人であるからして、言葉に乗った感情の変化から考えれば、大方そのあたりだろうと。
まあ、今回はまったくの的外れではあったわけだが。

ダナエ > 相手が急に眩しく見える。
相手はただのオカベではない、オカベ先生だったのだ。

「何か、か…………。何かは、あった。
 だからこうして、私はここにいる…………
 ただ失意の中に……」

暗号めいた言葉を吐き出し。
立ちのぼる、もの凄い悲壮感とシリアスのオーラ。
だが理由は教員採用試験に落ちた、というシンプルかつありがちなもの。
プライドを守るため、そんなことを話せはしない。

「だが、それをここで貴公に話す気はない。
 絶っっっ対に、だ」

小学生のような口調で早口で言い、ぷいっと(鎧が立てる音的にはゴコッと)そっぽを向く。
教師に嫉妬し、八つ当たりをしている。

「………………先生と呼ばれるのは、さぞ楽しかろうな!」

岡部 吹雪 > こりゃマズいことしたかと口元に手を当てる。
だが考えうる限り直接的な原因はない。
第一ゲームでないのだから、人の心情は選択肢や好感度で計りきれるはずもない。
破損箇所がわからねば、取り繕うこともままならない故、彼はそのまま言葉を返した。

「そりゃあ楽しいさ。
 クソみてーに忙しい日なんて山のようにあるけどよ、それでも格別の充足感ってのはあるぜ。
 別に生徒が下で俺が上ってワケじゃねーけどよ、わからねーことを教えてやれるってのはいいモンだと思うぜ。
 なんせこんな雑多な世の中だからよ、せめて上手いこと生きられるようにしてやりてえからな。
 オトナにはオトナなりの責任ってのがあるからさ。」

そう告げると胸ポケットから煙草を取り出し、夜風に掻き消されないよう慎ましやかに火を灯す。

「……あ。そういや最近採用試験があったな。
 あー……もしかして、ああ。そう……。」

何とも言いがたい微妙な顔。

ダナエ > 楽しいかと問うたのは明らかに間違いだった。
その輝くような返答が、分厚く堅い装甲をも貫いて次々に胸に刺さる。

曰く、格別の、充足感。
曰く、分からないことを教えられるということは、いいもの。
曰く、大人の、責任。

「…………ぐぐぐ……!」

しかも察されてしまった様子に、一瞬白目になる。

「さ、採用試験だと?
 ……フン、何の話だかさっぱりわからんな。
 私はそんなものに落ちてなどいないぞ。

 ……ああ、街が光っている。
 この国は夜になると街が光るのだな。
 幻想的で、まるでおとぎ話の中にいるようだ」

そっぽを向きながら、夜景の話に話をすり替える。

岡部 吹雪 > 「……っく、はは。 そうだよな。
 俺はなんにも聞いちゃいねえよな。」

紫煙をくゆらせながら大口を開けてからからと。
彼女の言葉につられる様に外界へと視線を下ろせば、睡眠を知らぬ街並が広がっている。
列を成す車のヘッドライトが、流れ星が連なるように流れていく。
普段気にも留めない情景が、今夜はどこか眩しく見えた。

「……確かにな。言われてみりゃ不思議なもんだ。
 おとぎ話にしちゃ喧(やかま)し過ぎる気もするが、俺もわかる気がするよ。」

ダナエ > 「……何故そこで笑う!」

笑われて苛立ち、ゴンッと大盾を床に打ちつける。

「そうだな、確かに音はうるさい。
 昼より夜の方がうるさいのではないかと疑うくらいだ。
 あのデンシャという乗り物……
 あれはひどい、あんなうるさいものを夜中に走らせるべきではない。
とてもまともに眠れたものではないぞ。
 教師の権限で、何とか夜だけでもデンシャを止められないか?」

忌々しげに言い、無茶ぶり。
自宅の激安アパートは線路沿いに面しており、
電車が通る度に部屋が震え窓ガラスはガチャガチャと音を立てるのだった。

岡部 吹雪 > 「そりゃ無理だ。生憎俺は鉄道委員会にゃコネがないからよ。
 あんなうるさい乗り物でも、なきゃねえで困る奴もいるみたいだからな。」

自分は悠々自適な単車生活のため、鉄道のありがたみは非常に薄い。
だがアレはアレで重要な要素を担っているのは理解があった。
具体的な指数はまるで知らないが、感覚的には知っている。

「何処で寝てるか知らないけどよ、もっとマシな場所に引っ越すってのも手だぜ?」

ダナエ > 「鉄道委員会……?
 そこなら何とかできるかもしれないわけか」

少しの希望。
引っ越せば、というストレートな意見には、

「……それは、無理だ。少なくとも今は」

金銭的にも無理。
部屋の紹介者や、頻繁におかずを分けてくれる心優しいおばあちゃん大家への義理的にも無理。
大盾を背中に戻し、じろりとガードの奥から相手を見る。

「部屋が気に食わなきゃ引っ越せばいいという、その発想……
 学園の教師は給与も良いと見えるな」
引っ越し代や敷金礼金を気にしない、どこぞの王妃のように自分には聞こえる発想を羨む。
今日は嫉妬ばかり。

岡部 吹雪 > 「ンな卑屈になるなって。
 心まで貧しくなっちまったら人間終わりだぜ?」

そう言いながらポケットから安い飴玉を投げ渡す。
よくある包装で包まれており、"スイカ味"と大きくプリントされている。

「ま、最悪教員用の寮に入っちまえばいいわけだし、そのあたりは確かにお前の言うとおりかもな?
 逆に言えば、教員ならお引越しも簡単ってワケだ。
 どう? 目指してみない?」

ダナエ > 「卑屈になってなど、……ッ!?」

投げられた飴玉を反射的に受け取る。
握った手のひらを開けば、そこには包み紙にくるまれた小さく丸い何か。
残念ながら、つい先日ひらがなの練習を始めたばかり。
よく見ようと目元のガードを上げ、注視してもカタカナはまだ読めない。
「何だこれは?」と、怪訝な表情で相手を見る。

教師のスカウト?の言葉には、

「言われずとも目指している!!!!」

今日教員採用試験に落ちたばかりの傷口に、
塩を塗り込まれたような気持ちで逆切れ。

岡部 吹雪 > 「やっぱ目指してんじゃん。受かるといいよな。」

からからと笑いながら、携帯灰皿に短くなった煙草を捻じ込んだ。
たびたび声を荒げる彼女の目の前で、自分も飴玉の包みを手に取った。
あたりまえのように切って開けて、あたりまえのように口に入れる。
凛とした甘味とかすかな塩味が心を満たした。

「スイカ味。最近暑いからよ、熱中症対策。
 ちょっと塩入ってんだぜ? 試しに食べてみろよ。うめーから。」

そう言って、切られた包みを指先に摘んで見せた。

ダナエ > 「…………!」

口を滑らせ、自爆したことに気づく。
悔しい、非常に悔しい。

飴を食べる流れるような所作に、目を見開く。
「なるほど、携帯食か……」
手の中の飴玉を見下ろす。
躊躇。相手を見る。飴を見る。また相手を見る。
「……教師が毒を渡すはずはない。貴公を信じよう」
包み紙を切ろうとする。
が、手甲をしたままだったので袋は切れず、代わりに中の飴が砕けた音が響いた。
「…………」
何事もなかったかのように手甲を外し、少し苦戦したのち袋を切る。
中から出てきた割れた飴の一つを摘まみ、顔に近づける。
ほのかに香る甘く爽やかな香りを、くんくんと犬のように嗅ぎ。
「ほう。すいかか……果物か何かか?」
指先で何度か飴を弄び、思い切って口へ放る。

「…………、……!!」

甘い。旨い。そしてちょっとだけしょっぱい。

「こ、これがすいか……!!」

残りの割れた飴も口へ。
しばらくもごもごやったのち、口は空になる。

「…………これは素晴らしい携帯食だ。
 食したあとも口の中がすいかの味だな……。

 食糧を得たからには、礼も食糧で返したい」

鎧の中でゴソゴソ。

「これはフォンビィ──
 私の国の携帯食に、よく似た食べものだ。
 味はともかく、栄養は、あるぞ」

異邦人街で見かけて懐かしさのあまり買ってしまった、
荒いビスケットのようなそれを差し出す。
味はともかく、口の中の水分の9割8分を奪い去る恐ろしい食物だ。

岡部 吹雪 > 「へえ、サンキュ。
 けどお前、折角の食べ物に『味は兎も角』って前置きすんのはどうかと思うよ俺は。
 流石に食えねーわけじゃねえと思うけどさあ……。」

大丈夫かよと呟いて、試しに一欠けら口に含む。
例えるならそう、スポンジのように急速に咥内から水を奪っていく。
乾パンを硬くしたような、そんな感覚が非常に近かった。
飲みかけの緑茶の小さなペットボトルがそのままポケットに納まっていたことを、彼はここまで感謝した日はなかった。
暫く口に多めの茶を含んで、潤わせてからしっかりと流し込む。

「……おっまえ、えげつねーもん持ち歩いてんな……。
 固形ブロックの栄養食は結構喰ってきたけど、ここまでパッサパサなのは流石に驚くわ。
 あー……豆乳とか合いそう。メシ喰ってる時間ねえときなんかにゃアリだなあ。
 この辺で売ってるの?」

ダナエ > 相手が携帯食を受け取るとニヤリと笑い、その笑いを慌てて隠すように目元のガードを下げる。
少しドキドキしながら相手の反応を伺い、そして──

「ハッハッハ!
 どうだ、口の中が砂漠となった感想は!」

今度は自分が笑う番だと嬉しそうに高笑いするが、
相手がペットボトルを取り出したのを見ておとなしくなる。
悔しそうに「運がいいな……」と息を吐く。


「ほう、気に入ったか?
 これよりパサパサ具合がもう少しましな本物のフォンビィでさえ、
 異国から我が国に来た者は大概嫌がっていたのだが……
 面白い男だな。
 このフォンビィもどきは、異邦人街の商店街で売っている。
 大通りの、丸が三つ付いたような紋章の、朱色の看板の店だ」

意外そうな口調。迷わないよう丁寧に店を教える。