2015/08/13 のログ
■ウェインライト > 十分に美しい。
その言葉は賛美たるものだった。
けれどもそれで満足せぬのがウェインライト。
頭を振って肩をすくめ、赤い瞳が君を見据える。
「僕の美は至高のもの。
けれどね。己の美に甘んじるものは堕落してしまうよ、ミス」
美の礼賛者/美の探求者
そのいずれもウェインライトを指す。
己の美が至高だと断じてなお美を求める傲慢さ。
それがウェインライトの美道である。
ビューティフルロードに妥協はない。
だから彼女の提案に顎に指を添えて思考。
柳のような眉を寄せて、吐息をこぼす。
「嬉しい提案だが、なるかならないかを決めるのは僕さ。
まずはミスの講義を受けてみなければ答えは出せないよ」
美を礼賛する者。
だからこそ己の道は己で見定める。
それがウェインライトという吸血鬼だ。
「君の教えが美しく在るならば、僕は喜んでその講義を胸に入れるだろう」
■ウェインライト > 「もし講義をするならどこかに掲示してくれたまえ、ミス・ミザリー。
この僕は常世学園を駆ける一陣の美しき風……。
君の教室を吹き抜けることもあるだろう……」
抱えた両手を広げて空を仰ぐ。
まるでウェインライトを祝福するように風がそよいでいく。
「あ」
そしてその美を攫うように、強く強く吹きつけた。
落下するウェインライト。
決して曇ることはないその美しき笑顔。
「そう、僕は常世学園に吹き抜ける一陣の美しき風――」
遠ざかっていく二度目の言葉。
天高く届く落下音。
まるでそこには誰も居なかったかのように、
地上にその痕跡が残ることはなかった。
#死因・千の風になって
ご案内:「大時計塔」からウェインライトさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に東雲七生さんが現れました。
■東雲七生 > 夜の時計塔の階段を上る。
一歩一歩踏みしめるように上っていく。
今日が“一応”夏休み最終日だ。そんな日の終わりに、東雲七生は時計塔を訪れていた。
──目的なんて、いつもの様に 特に無い
ただ高い所に行きたくなって、思い付いたのが時計塔だった。
それだけだ。
「……にしても、ほんと長いなぁこの階段。」
■東雲七生 > 「で、高いなあ。」
塔の半分ほど上ったところでふと足を止め、時計塔の下を眺めてみる。
普段、授業のサボり場所として使っていた植え込みの陰も、真上からでは丸わかりである事を知った。
──次はもっと上手い場所を探さないといけない。
「……まあ、授業中に立ち入り禁止区域に入ってる方が、
サボりよりよっぽど性質が悪い気がするんだけど──」
あくまで立ち入りを禁じられているのは生徒のみで、
教員は普通に立ち入りを許可されてるであろうことは頭から抜け落ちていた。
■東雲七生 > 見える所をぐるっと見回した後、再び足を動かして階段を上がり始める。
何故か一歩進むごとに気が重くなるが、それがどこに起因しているのか分からない。
思えば研究区の自宅を出てからずっと重かったような気もするし、階段を上り始めてからのような気もするし。
ともかく、気が重くてしょうがなかった。
胃の腑に鉛でも流し込まれたか、って気分。鉛なんてもちろん飲んだことは無い。
ご案内:「大時計塔」に鈴成静佳さんが現れました。
■鈴成静佳 > (一方その頃、夜の時計塔の屋上では……)
(少女がひとり、倒れていた)
Zzz………。
(否、寝ていた。床で。)
(眠り姫、などというロマンチックなものではない。風に吹かれてシャツはめくれ上がり、陽に焼けたおへそが丸見え)
(風にかき消される程度の音量だが、いびきもかいている)
■東雲七生 > ──考えることがいっぱいあった。
朝から色んな事を取り留めも無く考えていて、頭はそろそろ使い物にならなくなりそうだ。
そもそも自分は頭よりも体が動くタイプだと昔から思ってるわけで、
こういう“体を動かしても解決しない問題”はとことん苦手である。
学校での授業も、同じく。
「う~……。」
呻き声とも唸り声ともつかない奇声を上げながら階段を上り切る。
心地良い夜風と共に屋上へとたどり着いた七生を迎えたのは。
「……は!?」
倒れているように見える、少女だった。
■鈴成静佳 > (ごろん、と階段の方へ寝返りをうつ少女)
(東雲さんは一度会ったことがあるはずだ。鈴成静佳……)
……ムニャ……零くん、次はどんな体勢でヤるんスか……
(胡乱な寝言を口走るが、屋上に吹く夏の夜風に阻まれてよく聞き取れないかもしれない)
■東雲七生 > 「あ、生きてる……」
寝返りを打った鈴成を見てまずはほっと息を吐く。
夏休み最終日に時計塔殺人事件に巻き込まれるなんてたまったもんじゃない。
それでなくても街中を狼に乗って移動したりした姿を不特定多数に目撃されていたりするのだ。新学期早々変な事で有名になりたくは無かった。
「……あ。ていうか鈴成じゃん。
なんでこんなとこで寝てんだよ、寒くは無いけど、風邪ひくぞ……?」
とりあえず起こそう。
そう決めて近づいた七生の耳に入ったのは、何だか聞かなかった方が良かったような寝言だった。
■鈴成静佳 > ……んにゃ?
(自分を呼ぶ声に、ようやく静佳は目を開ける。気だるげに身を起こし、目の前の少年の方に目をやると)
あら、東雲くんじゃん。お久しぶりぃ。……ちょっと暗いッスね、電気つけて……。
……えっ!?
(びくりと肩を震わせ周囲を慌ただしく見回す。間違いなく、今は夜だ)
東雲くん、いま何時ッスか!? うわー、アタシこんなとこで寝てたんスか! 東雲くんいつから見てたんスか!
あーもう、タイムセール終わっちゃってるかもー!?
(せわしなくまくし立てながら、ポケットのスマホを漁ったり、ペチペチと自分の頬を張ったり)
……というか、こんな時間にも時計塔に来る人なんて居るんスねー。夜景が綺麗なのかな?
東雲くんはなにしに?
(落ち着くと、澄ました笑みを取り戻し、しゃがみこんだままで問う)
■東雲七生 > 「お、おっす。ひさしぶり……」
ぎこちなく片手を上げて引き攣った笑みで挨拶を返す。
今のは気のせいだったことにしよう、そう、きっと気のせいだ。零くんなんて知らない。
何やら慌てている鈴成を前に、先の寝言は密かに心に秘めることにした。
「いつからって、俺は今来たとこだけど……
ていうか、鈴成こそなんでこんなとこで寝てたんだよ?
俺は、ほら……何て言うか、眺めが良いからさあ、ここ。」
そう言って夜空を指差した。
満天、とはいかなくとも確かな星空が広がっている。
■鈴成静佳 > 今来た所かー、アハハー。じゃあびっくりさせちゃったかもね。
(いそいそとシャツを正す。夏とはいえ夜で、高所ゆえに涼しく風もある。お腹が冷えたかもしれない……)
いや、アタシ夏休みも働き詰めでさー、仕事帰りに暇潰しにココに来たら、疲れててそのまま寝ちゃったようで。
……そういや、もう夏休み終わりッスね。慌ただしかったなぁ……。
(とはいえ夏という気候はこれからが本番だ。湿り気を帯びた夜風に、目を細める)
東雲くんは夜空を見に来たんスね。
(と言って自分も釣られて真上を見上げ……そのままはずみで、コロンとまた仰向けに寝転がってしまう)
……ああ、本土の田舎ほどじゃないッスけど、綺麗な星空ッスね。すぐ近くに歓楽街とかがあって明るくて、見やすくないのが残念ッスけどね。
(腕を頭の上で組んで枕にしながら、そのまま空を見上げる)
(隣にいる東雲さんのほうへ視線をやると)
……むぅ、なんか、東雲くん元気ないように見えるけど。どうしたん?
■東雲七生 > 「いやまあ、確かに驚いたけどさ……」
色んな意味で。
「へえ、仕事。
そうだよなあ、普通は夏休みとかバイト三昧になるよなー。
はは、お疲れさん……」
どんな仕事なのだろう、と少し気になったりもしたが。
それよりもさっきの寝言の方が気になってそれどころじゃなかった。
雑念を払う様に首を振って、寝転んだ鈴成の隣に腰を下ろす。
「そうなんだよなあ。
開拓地区の方まで行けばもっときれいに見えるらしいんだけどさ。
流石に向こうの方は、ちょっと行くのに勇気要るっていうか。
……元気、ない?
えー、そう見える?……階段上がって来て疲れたかな。」
ふにふに、と自分の頬を軽く揉み解しながら。
自分でも気づかないうちに疲労が顔に出るほど溜まってたかな、なんて呟く。
■鈴成静佳 > いやー、大変ッスよ。保健委員の仕事と兼任でね。海岸や実習区を見回りしたり。
もう片方の仕事もどっちかというと体育会系というか? さすがに少しは痩せたかなぁ……フフッ。
(少なくとも痩せたようには見えない)
東雲くんは何か仕事してたんスか? 今の言い方だととくにやってはいなかったようだけど……学費は大丈夫ッスか?
開拓地区かぁ……なんかそっちの方は、バケモノが出没するって噂ッスね。
確かに行きたくないな。誰か強い人に守ってもらえるならいいけどさ。
天体観測ならむしろ、南のほうの農業区とかのほうがいいんじゃないかな?
(寝っ転がりながら、南の方を指差す。とはいえ静佳はまだそっちにも行ったことはない)
(そして再び、東雲さんの顔を眺める。じぃっと)
……んー、東雲くん運動してる方でしょ? このくらいの階段どーってことないじゃん?
なんというか、疲れているというよりも、考え事してるっていうか。そんな感じ。勘だけどね。
最近、アタシもそれに近い顔してるから分かるっていうか……フフッ。アタシのはしょーもない考え事だけどね。
(……あるいは、彼の童顔は以前に会った時よりも大人びているような気がした。フゥ、と息を吐く)
■東雲七生 > 「そっか、委員会とバイトと掛け持ちかあ。
何気に大変じゃねえの、そういう奴他にもいっぱい居そうだなぁ。
あ、俺? 俺の方は大丈夫。学費に関して何か苦労してるって事は無いしさ。
たぶん、実家から送られてるんじゃね?」
確認したことは無いけど、と軽く肩を竦めて笑みを浮かべた。
全て“研究費用”の内に含まれてる事は、七生自身も知らない。
「そうらしいんだよなあ。
まあ、そんなわけで興味あるけど中々行けなくて。
農業区の方かあ……それもアリだと思うんだけど、遠いんだよなぁ家から。」
居住区からならそう遠くも無いのだろう。
しかし七生が済むのは研究区。農業区は学園を挟んで島の反対側だ。電車を利用するとしても、少し遠すぎる距離。
「ううん?考え事……かあ。
まあ、確かに最近色々考えさせられる様な事が多かったしさ。
顔に出てたんかなあ……嫌だな、眉間に皺とか残ったら。
鈴成も、考え事?……何か意外だけど、まあ委員会のこととか、バイトの事とか、俺よりも色々ありそうだもんな。」
少しだけ羨ましそうに目を細めて、そのまま笑みを浮かべる。
■鈴成静佳 > あーそっか、東雲くん研究区に住んでるんだったよね。そりゃ確かに開拓地区のほうが近いわ。
……というか普通に考えて、研究区に住んでる人ってそうそういない気がするけど。
東雲くん、なんかの研究職のお手伝いでもしてるんスか?
(「よっ」という声とともに反動を付けて上体を起こし、東雲さんに並ぶように座る)
まぁぶっちゃけ、考え事の1つや2つもない少年少女なんているはずもなくて。
アタシのやつはいろんな人に話していろいろ意見も聞けたから、だいたい落ち着いてきた感じはあるけど。
(南東のほうに目を流す。歓楽街の方角はこれからがかき入れ時、人を引きつける明かりで眩しいほどだ)
……だから、話せることだったらアタシが話を聞いてあげるッスよ?
いいアドバイスができるかどうかは聞いてからじゃないと分かんないけど、ほら、話すだけでも気楽になることだってあるだろうし?
(東雲さんのほうに向き直り、ニッと歯を見せる無邪気な笑みを浮かべる)