2015/09/13 のログ
ご案内:「大時計塔」にヒビキさんが現れました。
ヒビキ > 深夜、日は完全に沈み月が真上から西へ向かって沈み始める頃、
ヒビキは警備員に見つからないように時計塔の中へ侵入していた。
いつものヒビキならば人気の無い所で身体を鳴らして演奏を始めたり、
歓楽街でロードライブ始めたりするのだが今日はどこか違う。

(別にコソコソやりたい訳じゃない。
 ウタえない訳じゃない。
 そんな証明する必要があるのかと言われれば悩むけど…歌える時には歌いたくなりたい)

そんな気持ちで時計塔の階段を駆け上がる。
ここまでくれば警備員が中に侵入することは稀であることは今までの経験で知っている。
だからこそ何も考えずに上へ、上へと駆け上がる

ヒビキ > 時計塔最上階、常世学園を一望出来るスポットの一つ。
その場所にたどり着けば鞄を半ば放り投げように雑に地面に落ちていく。
その中に財布や携帯もある。
それでもヒビキは鞄を放り投げる。
風のイタズラで鞄が風の影響をうけて外へ落ちるかもしれない。
それでもヒビキは鞄を放り投げた。

この気持ちを出来るだけ遠くに届けようとしているのか、両手で口を包み込んでから深呼吸をする。
肺が膨らむイメージ、でも声はお腹から、強弱の調整は喉で。
5年前ぐらいに習った事を思い出す。そして―――

ヒビキ > 「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
ヒビキ > 時計塔の中心で叫ぶ、なんて題名をつけられそうなそんな叫び声。
自分の喉は真っ直ぐ、島全体に自分の叫び声を届かせるような、眠っている人を安眠妨害させるかのような、そんな叫び声…のつもりだが

現実は真っ直ぐ線を引いてるつもりなのに、何故か線が曲がりくねってしまうかのように声の高低は不安定で、
島全体に届くが、目覚めさせた人の首を傾げさせるかのような声であった。

「…あー、楽しかった。」

そんな不安定な音を何より一番近くで聞いていたヒビキが何より満足した表情でいた。
彼女のストレスの元となっているその声を出す事になっても
ウタえない彼女なりのストレス発散方法なのかもしれない。

ヒビキ > 「…ま、帰ろうかな」

あまりのんびりしているとこの声を聞いて駆けつけた警備員に捕まりかねない。
自主的に入る事がなくとも、奇声が聞こえたともなれば時計塔に侵入せざるを得ないだろうから

鞄を持ち上げて中身の安否を確認していると自分が出したアルバムCDにヒビが入っているのに気付く

「…そういえば、あのサボり先生元気かな」

運が良ければまた会えるかもしれない、がその機会が日に日に狭まって行く事にヒビキが気付くのはいつなのか――

ご案内:「大時計塔」からヒビキさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に清水凪砂さんが現れました。
清水凪砂 > 秋の気配が、段々と強まってきている。
それを象徴するかのように、この時計塔の屋上にも、一つ、少し肌寒い風が吹いた。
「ん……」

ほんの少しだけ、その肌寒さに身震いをした。
気が狂いそうなほど、綺麗な青空を一瞥し、吐息を漏らす。

清水凪砂 > 此処へ来て、もう1年以上が過ぎる。
自らの異能の研究の為、そしてひいては――を知るために、此処でこうやって過ごしている。
されども、それは一向に進展の気配はない。――いやそれは、ただし言い分ではない。

異能の研究は、少しずつ乍ら進んでいる。だけども、本当に知りたい、理解したい、届きたいそれには――なんら、届いている気がしないのだ。

「ア、ハ……」
手すりに寄りかかりながら、一つ、空(くう)に向け、右手を伸ばした。

清水凪砂 > 異能を発動させるときの、いつもの動作だ。
こんな動作をする必要はない。
ないのだけれど、それはただ、届きたい、という気持ちの表れであり、そして祈りにも似ているのかもしれない。

「――は、ぁ」

どこか熱っぽい吐息を吐き出す。
まるで、何かに恋するかのようであり、まるで、その思いを誰かに届けようとするかのようでもあった。

そして今、確かに――その異能は成された。

清水凪砂 > また一つ、風が吹いた。
何も起こらない。“いつものように”何も変わらない。

(そうやって今日も――)
「……あぁ、生きてる」

――どこかで誰かの悲鳴が聞こえた気がした。
されども、それはきっと気のせいだろう。
だってアタシは。

「アンラッキーガールだから」

清水凪砂 > もう一つ、屋上に風が吹くころには、そこには何もなかった。
誰も、なにも、何一つ、日常と変わりない姿を残して、異能を使ったことなど、何も変化がない風景だけが残っていた。

それが、彼女の異能である。

ご案内:「大時計塔」から清水凪砂さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に綾瀬音音さんが現れました。
綾瀬音音 > (以前着た時よりはずっと軽い歩調で階段を登る。
登り切った向こうに見えたのは、相変わらずの街の明かりが灯る島と、星空と、黒々とした漆黒の海。
大分気温は下がりつつあるが、長い階段を登れば身体は温まる。
うっすらと額に滲んだ汗を指で拭って、海が見える位置で柱に身体を預けた。
少し乱れた呼吸を整えるように深呼吸を数度、繰り返す)

――――は、ぁ……
(さわさわと頬を撫でていく風が、心地良い)

綾瀬音音 > (元々いた――本来自分が居るべき、なのかはさっぱり解らないが――日常を過ごす毎日は、思った以上に穏やかで、それは尊いものだ)

―――ん――
(遠く、曖昧な水平線と空の境界線を探すように眺めてから、自分の手指を少し持ち上げて視線をそこに移す。
特に手荒れもしていないし、爪は短いけれど綺麗に磨いたばかりなのでピカピカだ。
自分で言うのも何だけれど、悪くない手だと思う)

――やりたい、ことかぁ……
(日常が落ち着いてきて、友人に言われた言葉が、妙に蘇る。
やりたいこと、は特に考えたことはない。
日常的なものは兎も角――将来的なものや、強く渇望するような、そういう類のことは考えたことも望んだこともなかった)

綾瀬音音 > (強く一緒にいたいと思う、人はいた。
だけど、それはやりたいこととはちょっとだけ、違う気がするのだ)

(何だかんだで恵まれた環境だったのだろう。
幼少期から金銭的な不自由は感じたことはなかったし、どんなに酷い怪我をしたって癒やし手の祖父が傷跡も無く治してくれた。
ちょっとねだれば大抵のものは与えてもらってきたし、ここに来るまでは双子の片割れが常にいた。
現在も仕送りは過剰なくらいにもらっているし、学校生活は楽しい。
全く不満や後悔や悲しみがないわけではないが、折り合いは付けられてきたし、それは悪くないことだろう。

――何かを強く望む必要も、ない環境だった。
将来の夢でさえ)

…………考えたら、凄くつまらない人間だよねー……
(将来の夢は? と訊かれたらとりあえず
「まだ未定」と答えるタイプである)

綾瀬音音 > (何がしたいのか、なんて考えたって、上手く浮かばないのが現状なのだ。
遠く見える空と海の間みたいに曖昧で無いように思う。
まずはそれを探すことから始めないといけない)

…………でも何処から手を付けたらいいんだろう、こういうものって
(かくん、と首を落とす。
なにせモノが漠然としていて、取っ掛かりが無い。
あーあ、と溜息を吐き出すと天井を仰いで少しマーガレットをはおり直す。
汗が引くと身体が少し、冷えてきた)

ご案内:「大時計塔」にリヒットさんが現れました。
リヒット > ――ふわり。
周囲に比肩する建物のない、開けた空間に屹立する高い高い時計塔の屋上に、どこからともなく一粒のシャボン玉が流れ着いてきます。
……なんとも不可思議な現象です。こんなところまでシャボン玉が流れ着いてくるなど、そうそうないこと。

数秒遅れて、スモック姿の青髪の小人が、風に流されて飛んできます。
それは時計塔の屋上の転落防止用柵に器用に手を引っ掛けると、そのまま風に煽られてくるりと宙返りし……

「ぷー、いたい……」

その勢いで、お尻を屋上の床にしたたかにぶつけてしまいました。着地失敗です。
大開脚状態のまましばし痛みに悶絶していた小人は、ふと顔を上げ、屋上に先客がいたことにようやく気付きます。

「……おねーさん、こんばんわ。おねーさんは、学生?」

立ち上がり、裸足でよちよちと歩み寄ってくると、風にかき消されそうな甲高い声で、鳴くようにそう尋ねます。

綾瀬音音 > ―――あ。
(見えたシャボン玉に、目を瞬かせる。
流石にここまで高いところまでシャボン玉、というのは珍しい。
それを視線で追おうとした次の瞬間には、スモック姿――幼稚園児を思わせるそれである――男の子が風に流されて――――

流されてる―――!??!?!)

ちょ、ちょ――、だ、大丈夫……?
(慌ててその少年に声を掛けた頃には宙返りをしてお尻で着地をしている状態。
言いながら近づいてくる様子に思わずかがみこんで、覗き込みながら)

え、ええ、うん。こんばんは。
私? 私は学生だよ。
君は――学生だよね。
迷子?
(裸足で痛くないのかな、と不安になりながら頷いて。
学生というよりは幼稚園児のようだが、この常世島では学生の括りになるのだろう。
教師と言う選択肢は浮かんでこなかった。
ふわふわっとした雰囲気に思わず彼には不名誉な質問も付け加えて)

リヒット > 顔を覗き込まれれば、少年も浅海のような紺碧の瞳をくりっと丸く見開き、口を半開きのままで見つめ返してきます。
かなり背は低いです。

「リヒットは大丈夫。あと、リヒットも学生。つい最近、学生になったよ。
 いっしょだね、おねーちゃん。でも、制服を着てないから、わからなかった」

そう呟く少年のスモックには、他の制服と同様の『たちばな』をあしらった紋章が小さく刺繍されています。

「リヒットは……うーん、迷子といえば迷子だけど、ここにはリヒットが来たくなったから来た。
 下のほうは夜でもあちこち明るくて、目が疲れちゃうから。ちょっと、高いところから見てみたくなって。
 階段の扉は重くてリヒットは開けられないから、飛んできた」

つまり、夜景を見に来たようです。

「おねーちゃんはここでなにをしてるの?」

首がいたくなりそうな程にグッと上を向きながら、リヒットはつややかな青髪を夜風にたなびかせています。

綾瀬音音 > (あ、可愛いこの子。
基本的にこの少女は子供は好きな方である。

しゃがみこんでもこっちのほうがどうしても大きくなってしまう)

ああ、なら良かった。
じゃあ最近この島に来たのかな。
そうだね、一緒だね。
制服は、今日は学校お休みだったから
(スモックに刺繍された橘の紋章を見れば、間違いなく学生なのだろうと納得する。
嘘を吐くようには見えなかったし)

迷子なの? 後で風紀員の人探さないとかなぁ。
……そうだね、夜でも大分明るいから。
でもここから見ると、一つ一つが遠いから、凄く綺麗だよー。
確かにリヒットくん、軽そうだもんね
(そう言って、指差したのはそこから見える夜景。
キラキラと宝石箱をぶち撒けたような島の夜景と、星と月の空と、漆黒の海。

飛んできた、のは先ほどの様子をみればなるほど軽そうだと笑って)

んー、お姉ちゃんはね、考え事。
したいことって何かなーって
(ちょっと首が痛そうなので、脇に手を入れて目線が合う位置まで持ち上げてしまいたい。軽そうだし。
嫌がられればあっさりと手を引くけれど)

リヒット > 「ぷー♪」
持ち上げようとすれば、リヒットは抵抗はしません。歌うように鳴き声を上げますが、表情は仏頂面のまま。

……この子、やけに軽いです。身体が小さいとはいえ、赤ちゃんや大きめの猫と同等のサイズではあります。
なのに手に感じる重みは、枕やクッションでももう少し重く感じるだろうというレベル。まるで水中で浮力が働いているような感覚。
おまけにスモックは全体的にしっとりとしており、その下に感じる肉体の感触は、人間のモノとは思えないほどに冷たいのです。夏場の水道水くらい。
暑い中であれば抱っこすればさぞ気持ちいいかもしれませんが、秋の気配を感じる9月の夜風の中だとどうでしょうか。

抱き上げられたまま、リヒットはくるりと首をひねり、西の方を向きます。転移荒野のほうでしょうか。

「そう、リヒットは最近『とこよじま』に来た。……んー、ちがうかな。なんか、いつの間にか来てた。
 リヒットは元のところに帰りたいけど、帰り方がわからない。そういうのは、『迷子』って言っていい気がする」

そしてまた、音音さんのほうに向き直ります。

「おねーちゃんは、したいことを考えてたの? したいこと、みつからないの?」

綾瀬音音 > (するん、と持ち上げらられてしまい、こもってた力が行き場を失って、空振った。
とは言え、彼に影響するほどではないだろう。
軽いだろうとは思っていたが、想像以上に軽い。
持ってはいない、と言うほどではないが綿か何かを持っているみたいに軽い。
ついでに冷たい。
濡れてる感じだし、その奥の皮膚もきっと冷たいだろうと感じさせる体温。
とは言え持ち上げた以上下ろすのも嫌だし仏頂面が可愛いので持ったまま。
水系の種族なのかなぁ、とこの島に来て2年の少女はのんきなものだ)

ああ、門が開いた時に巻き込まれちゃったのかな。
ん、確かにそれは迷子だね。
いつか帰れると良いんだけど……
(視線を彼と同じ方向にむけて、そうは言ったものの戻れる可能性は幾許か。
門は無数に開き、世界も無数にあるのだから)

んー、そうだね。
何かこう、したいことって改めて考えると何も浮かんでこなくて。
お腹いっぱいお菓子食べたい! なら浮かぶんだけどね
(そう言ってへらっと笑って。
冗談めかして言う言葉)

リヒット > 「もん……」

言われてリヒットは、『その時』のことを思い出そうとします。川で泳いでいるところを、いきなり水流が変わって何かに呑み込まれる感覚……。
何か巨大な魚の顎を通ったような錯覚がありましたが、もしかするとそれが《門》だったのでしょうか。

「……そうだね、きっとそう。『もん』に呑み込まれて、気付いたらからからの地面の上。
 ここには他にもそういう子がいるって、入学のときに教わったよ。『いほーじん』っていうらしいね。
 ……おねーさんは、にんげん? いほーじん?」

話す相手のことはよく知っておきたい、そういう一心でリヒットは率直にそう問います。
人間とほとんど違いないような者が、異邦人と名乗り異邦人街に住んでいたのを見た記憶もあります。見た目じゃわからないものです。

「んー、お菓子……リヒットは果物のほうが好きだけど、あまいものはいいよね。
 ……でも、そういう話じゃないんだね。ぷー……」

音音さんの冗談をなんとなく冗談として受け取れた様子のリヒット。
抱えられた脇を軸にしてぷらぷらとお腹を揺らしながら、音音さんとその背後の夜景を交互に見つめています。
風に膨らむスモックから、柑橘とラベンダーを配合したような石鹸の香りが漂ってきます。爽やかでいて、どこか落ち着くような香り。

「……したいことじゃなくて、なりたいものの話かなぁ?
 リヒットも、先生って人にあって、最近よく考えてるよ」

綾瀬音音 > (何かを思い出そうとする様子を黙って見つめている。
そして口を開けば頷いて)

ん? リヒットくんは元々水の中か……もっと雨とか降ってるところから来たの?
そうだね、私の友達にも門の向こうから着た人がいるよ。
私は人間だよー、この世界に元々からいる人。
ああ、そう思えば名乗ってなかったね、
綾瀬音音だよ。
(子供独特の舌っ足らずな発音が可愛らしい。
問われてのんきな口調で、笑顔で答える。
ついでに名乗りも付け加えて)

果物もいいよね、柿とかこれからだと美味しいかなぁ葡萄とかも秋だっけ。
…………うん、そうだね。
もうちょっと、難しいお話。
それこそ、なりたいものとか、そう言うお話かな
(ハーブのような香りが鼻をすくぐって、なんとなくリラックスした気分になりながら。のんびりと言葉を返して。
揺られても軽い体重なので落とすようなこともなく、脇に手を入れて持ち上げたまま。

確かに、したいこと、は突き詰めればなりたいもの、なのかもしれない。
職業とかではなくて、“自分はどういう人間になりたいか”
そんな気がして、頷いてから)

リヒットくんは、何かなりたいものはあるの?

リヒット > 「おとね。おねーちゃんは、おとねおねーちゃん。これはリヒット。シャボン玉だよ、よろしくね」
抱え上げられたまま、小さな指で自分の鼻っ面を指差しつつ、リヒットも名乗ります。これまでに散々名乗っていましたけどね。

「リヒットは川の中に棲んでたよ。今は『いほーじんがい』の池に棲んでる。ホントは『じゅーたくがい』の方が気楽に過ごせそうだけど。
 リヒットのいたとこは、雨はそんなに多くないけど、ここよりは涼しいとこだよ。ここの夏は暑くてつらいね」

その夏もそろそろ過ぎ去ろうとしています。冬は暖かいのでしょうか、それとも……。
異郷の地の気候はまったく読めません。

「なりたいものの話。あってた。『あっち』でも、学校に通って勉強させられてた友達はみんな、そのことで悩んだりしてた」

学校に通えない子は、そういう悩みとも無縁のことが多かったのも思い出します。なんせ、家の農業や鍛冶業などを継ぐしかないんですから。

「リヒットはねー、なりたいもの、あるよ。先生になりたい。
 べんきょうして、学んだことを、リヒットも他の人に伝えたい。先生を見てたら、そう思った」

表情も、くりっと開いた大きな瞳も変えることなく、吟じるようにそう呟きます。
学生になったのもつい数日前の話。この夢も、つい一昨日に芽生え始めた夢です。

「おとねは、なりたいもの、あるの? いくつかあって困ってる? それとも、ないの?」

綾瀬音音 > うん、リヒットくんよろしくね?
(抱えあげてるので握手は出来ないけれど、代わりにおでことおでこをこつんと合わせようとしながら。
シャボン玉、との言葉は疑問に思ったが、多分匂いからするに石鹸の妖精なのかなぁ、と勝手に納得した)

池……? 寒くないの、って涼しいところから来たんだ。
まあ、夏はこっちの人でも暑くて辛いくらいだからね、涼しいところから来たんだったらしかたがないよ。
でも、もうちょっとしたらもっと涼しくなるよー、そろそろ秋だしね。

(異世界の気候はよく分からないけれど、こちらの感覚では過ごしやすくなってきているのは事実だ。
もうちょっとしたら、本格的に涼しくなってくる)

……学校に通ってた子……?
でも、やっぱり将来は何になりたいかは考えちゃうよね。
そっか、先生かぁ。
じゃあ沢山勉強しないとね、きっと学んだことだけじゃなくて、リヒットくんのお話も聞きたい人、出てくると思うよ
(良い教師は、話しているだけで楽しいものだ。
そんな教師に彼がなることが出来ればいいと、心から思う。
表情は変えずとも、きっとすらっと言えるその夢は、心からのものだろうから)

私は――ないんだ。
何がしたいのかもよく解らないし、何になりたいかも、良く解らない、かなぁ……
(ぼんやりとすら浮かんでこない、“なりたいなにか”。
こんな小さい子でも夢があるのに、と少しせつなくなって、目を伏せた)

リヒット > おでこが触れ合うほどに顔を近づけても、リヒットは表情一つ変えません。どうも、感情表現が苦手な様子。
それでも目は真ん丸に開かれ、まっすぐに音音さんの目を見つめてきています。嫌がってはいないようです。
その瞳を間近で見れば、まるでその中で魚でも泳いでそうな程に澄んだ青。端っこに映る常世島の夜景は水底の白石のかがやきのよう。
……リヒットの吐息もまた、石鹸の香りです。

「『あっち』では、お金があって学校に通える子と、お手伝いが忙しかったりで通えない子がいた。
 リヒットはシャボン玉だからおべんきょうはしなかったけど、『とこよじま』は学生じゃないと住めないって話をされたから。
 だから、リヒットはべんきょうをする。今は、先生にもなりたい。もっと、なりたいものできるかも?」

なりたいものがないとボヤく音音さんをよそに、リヒットは夢いっぱいのようです。

「ぷー、おとねは、なりたいものがわからない。……リヒットには、ちょっとよくわからない。
 おとねが『なれる』モノって、ある? あれば、それになればいいと思う。いくつもあれば、その中にきっと、『なりたいもの』はある」

抱えられたまま、細い手をパタッと振るリヒット。
すると、その指先から、いくつかのシャボン玉が生まれ、夜景を反射しながら夜風に舞っていきます。

「リヒットはいままで『シャボン玉』でしかなかったけど、先生に会ったら先生にもなりたくなった。だから、なりたい。
 おとねは『オトナ』だよね。リヒットよりもいろんな『オトナ』に会ってるよね、きっと。
 おとねがなりたい『オトナ』、いなかった?」

ここでいうオトナとは、リヒットの故郷の世界の基準です。まぁ、大した差ではないでしょう。