2016/07/16 のログ
ご案内:「大時計塔」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 「ある程度広くて、且つ人目につかないとなると此処くらいしかねーか……」

夕暮の時計塔に、普段以上に周囲を気にしながらやってきた七生。
先客が居ないかを確認するため、そーっと扉を開いてゆっくりと辺りを見渡して、

「大丈夫そーだな……よし。」

後ろ手にそーっと扉を閉めると、一息ついてからは普段通りの足取りで時計塔の屋根へと上る。

東雲七生 > 「んー、相変わらずの見晴らしの良さ。」

時計塔の屋上から、更によじ登って屋根の上。
そこから眺める常世島は、端から端まで夕陽の朱に染まっていた。
反射光の眩さに目を細めながら、ぐるっと一周、パノラマを見渡してから、七生は大きく息を吐く。

「そろそろ真面目に、コレとも向き合わねーとなー……」

少しだけ思い詰めた様な、本人にとっては真面目な表情で取り出したのは小型のナイフ。
斬り付けるより蹴り付けた方がよほど威力の出せる七生の、文字通りの最後の手段の引鉄である。

東雲七生 > 「でもなあ、嫌なんだよなあ。」

だって痛いもんなあ、と手の中のナイフをくるくる回しながら逡巡する。
異能と向き合う、と決めたものの。流石に異能が発動するまでの過程とは中々向き合えない。
自分を傷付ける行為そのものに、多大な後ろめたさを感じるからだ。

「……ホント、何で血なんだよ……。」

溜息と共に畳まれているナイフの刃を出し、一度小さく息を吸って、吐く。
静かに掌に刃先を当て、そのまま一気に線を引く様に、自分の手を切り付けた。

東雲七生 > 傷を負わなければ発動しない力。
最初に知った時は、何だか格好いいと思えたものだったが。
傷を負う状況なんて大抵碌な状況じゃない事くらいすぐに理解出来た。

「……入学したばっかの頃だよな。」

再三立ち入らないようにと注意を受けた歓楽区と異邦人街のその奥。
落第街と呼ばれる区域に入ったのはまだ制服も新品で何も知らなかった頃だった。
破落戸に脅されていた同級生を助けに入って、激昂した相手に肩口をナイフで刺され。
そこから流れた血液で腕を作り、反撃をして追い払ったのは良かったものの。

──何故か助けた同級生から向けられたのは怯えと不安の入り混じった目。
制服に付いた小さな傷口と、腕全体を染めた真っ赤な血の痕。
“彼をそうさせたのは他ならない自分だ”とその少年の目は無言でいて遥かに雄弁だった。

「……後悔させたくて助けに入ったわけじゃねえのに。」

掌に付けた傷が、紅を滲ませる。
その色を見るたびに、その時の後悔が臓腑の中から滲み出て口の中に苦く苦く広がっていく。

東雲七生 > 「あれからどれくらい強くなったんだろう。」

落第街の破落戸くらいなら、素手で圧倒できるだろうか。
片手で器用にナイフを畳んでポケットにしまいながら、ぼんやりとそんなことを考える。

「……って、いかんいかん。異能の方に集中だよな。」

向き合うつもりで来たのだし、もうそのつもりで手に傷まで付けたのだから。
雑念を頭から追い払って、じわじわと掌に広がる紅の液体を見る。
掌に意識を集め、液体の暖かさを感じ取れば、掌で液体はふるりと震えて、小さな渦を巻き始める。

「……さーてと、何作ろうかなー。」

東雲七生 > 適当に頭の中で幾つか選んでみる。
その度に手の中で紅の渦がぐねぐねと意思を持つように動き、姿を変える。
剣にするか、槍にするか、はたまた銃か。
すぐに作り上げられるのなら……と考えて。

「よしっ」

一つに定めれば、それを細部まで明確に思い起こす。
目を閉じ、意識を集中させ、手の中にそれを握るのをイメージすれば。
一際大きく、七生の手の中で紅い奔流が動いて、瞬きする間に深紅色の短剣が出来上がった。

「おーし、上出来上出来。」

短剣の柄をぐっと握って強度を確かめ、更に刃の方も指で軽くノックする様に叩けば、重い音が響く。
とても血液で出来たとは思えない光沢を持つ刃は、金属のそれと酷似していた。

東雲七生 > 「んんー……」
       ・・
以前見たような暴走の気配は微塵も無かった。
たった今自分が作り上げた短剣を見つめながら、七生は首を傾げる。
体調に左右されたのか、精神に左右されたのか、はたまた。
考えられることは、まあまああったが、どれもこれも憶測どころか妄想の域を出ない気がした。

「まだまだ分かんない事だらけ、か。
 確かにもうちょっと異能の事知るべきなのかも、だけど。」

やっぱり過程が邪魔をする。
静かに短剣を懐に納めて、七生はゆっくりと屋根を下り始めた。

東雲七生 > 「ふわぁぁ。」

昨日の授業をさぼったツケがまだ残っていた。
急に重くなった様に感じる目蓋を軽くこすって、もう塞がってしまった掌の傷を一度見てから、
眠気で足元がおぼつかなくなる前に、と足早に時計塔を後にした。

ご案内:「大時計塔」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に松渓つばめさんが現れました。
松渓つばめ > 時計塔には時々、鍵を開けた形跡は無いのに人が居たような跡だけが残っている。――もしも常世学園七不思議があったらノミネートをギリギリ逃しそうな、そんな不思議の原因が、彼女である。

「そーーーーれっ!」と、安全のための柵を乗り越えて、時計塔の頂上に飛び込んでくる。
……魔術の練習、といえばそうなのだろうが、大味なやり方だ。

「ここの景色気に入っちゃったな」と、くふふと笑う。夏には珍しく見事な星空だ。

ご案内:「大時計塔」にアリエンティアさんが現れました。
アリエンティア > 「――はぁ……」

ためいきをつきながら、ぎぃっと扉を開けて、とぼとぼと。
ちょっと門限ぎりぎりだったりするけど。
高くて、風がいい感じで、少しすっきりしたい気分だった。

「……あ、れ?」

飛び込んでみたものを見れば――

「え、えええええ!!?」

驚愕する。だって、ひとがひとが!?

松渓つばめ > タッ、と時計塔の石畳に飛び降りた。
ゆらりと立ち上がると星と歓楽街を背負った逆光だ。
ちょっとキマってるかもしれないが、娘はそれを知る由もない。

「――んんっ??先客?」
とそっちに意識を。
空気の影響か青みがかった髪がキレイダナー。いやそうじゃない。
ふむ、少し思案。……彼女は寮でちらと見たことがあるような。
「あらあなた、あたしが見えるの?」口の端で笑いかけながら、一歩を踏み出した。なんだこのジョーダンは。

アリエンティア > 「……み、見えますけど……え!? え!? み、見えたら変ですかっ。ぴ、ピーターパン???」

あわわあわわ。
突然やってきた妖精? に慌てふためく。
冗談だと思ってないようで、真に受けてすごいことになってます。

「――た、魂は美味しくないので体をどうぞ!!? ――ん?」

変なことを口走った、ち、ちがくてええーっとっとめっちゃ、テンパってます。たまに、ドイツ語も出たりしちゃったりして

ご案内:「大時計塔」からアリエンティアさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」にアリエンティアさんが現れました。
松渓つばめ > 何を言ってると引かれることを予想していたので、驚いたのはこっちだ。
「ちょ、おーい?あたし幽霊でもカニバリストでもないって!」
流石に肩に手をやって落ち着けようと。
そして、近くで見たら思い出した。

年齢関係無く色々な学年に在籍者がいる常世学園。
が、本土でその年齢で『高校』とやらの学力を身につけた上でこの島に来たものがいる、と少し話題になったのだ。
なお、つばめは島産まれ島育ち。少し聞き慣れない単語だ。

「あー、きみアリエンティア、でしょ」発音が思い切り『ありえん+ティア』になったのは、頭良すぎありえんで覚えたから。

「あたし知らない?あたしからは寮でちょーっと見たことあるんだけど」