2016/07/17 のログ
アリエンティア >  
「や、だめだめですーーーたすけ――……?」

何やら変なモノではないらしい?
言葉を信じるなら、だけど。

「……? あれ、どこかであったことありました、っけ?」

クエスチョンを頭の上に描きつつ、口元に指をあててじぃっと顔をよく見る。

「……んんー?」

思い出そうとして必死なのか、少しずつ寄ってきて。よってきて――

顔がめっちゃ近い。こつんっと、額が当たった。

「……???」

でも思い出せなかったようで……

松渓つばめ > 身長に合わせて膝を折ってたのが仇となったらしい。
「おぅっ」おでこをぶつけられた。痛くはない。
が、……脳内で鼻血が。

「はは。あたしも同じ寮に住んでるから、さ。
 んまあ、知らなくても当たり前かもね。結構外出てるし。
 つばめ、って呼んで。あたしの名前」

にかっと笑いかけた。白黒可愛いなぁと思う。

アリエンティア >  
「す、すみません。覚えてなくて」

しゅんっとしつつ、そのあたりのスキンシップは慣れている? のか。さすが外国人というところか。
――いや、ただ認識してないだけだ。と気づくだろうか。

「つばめ、つばめさん。名前、覚えました。寮で同じなんですね……」

今度こそ忘れませんっと、気合い入れつつ。
笑顔には笑顔を返して――

「……あの、つばめさんはどうしてここに?」

松渓つばめ > どうしてここにと聞かれれば、答えてあげるがなんとやら。
不法侵入だ!と咎めてくるわけでもなさそうだし。

「あたしはね、魔術の練習。ここって相当高いじゃん?
 ジャンプとダッシュで駆け上がるの。
 結構気持良いからお風呂あがりの夕涼み兼ねてね」

もちろん普通に落下すればペナント化は避けられない高さ。
そういう魔術、をつかってるのだろうとだけは想像できる言い方。

「あとは、ほら景色良いし。アリエンティアもそれでここに来たんじゃないの?」と眼下を示す。
 不夜城だったり街の明かりだったり。大都市には敵わないが遠くに海が見えるのはポイントが高い。

アリエンティア >  
「……魔術。魔術を使えるんですね」

すごいっと、きらきらしたまなざしを向けつつ。
ジャンプと、ダッシュでこんなところまで、というと本当にすごいとしか言葉が出てこない。
語彙力がないのが恥ずかしい。ドイツ語ならどんな賛辞でもできるのに……と内心で悔しく思いつつ。

「――まぁ、そんな感じです」

ちょっと、違うけれど。気分転換には間違いない。
風呂上りと言われれば鼻がぴくぴくと。

いい匂いがした

松渓つばめ > ”慣性の操作”は学んで練習すれば誰でも使える類のものでしかない。習熟度の程度の差さえあれ。
むしろ『普通の風火水土な魔術』が中途半端なつばめはむしろダメな方だ。

それでも尊敬されると嬉しすぎる。特に、異能は『努力と関係のないもの』なだけに、努力で手に入れた魔術は。
「んん?まぁね。だからここから飛び降りても大丈夫、便利でしょ。
 ――ほらほら、電車っ。あれ島を何周もしてるって凄くない?」指差した先には住宅街に停まった列車。子供のようにはしゃいで見せる。

アリエンティア >  
「私、魔術はてんでダメなので。うらやましいです」

ふわり笑って――、指の先を見れば。

「綺麗ですよね……すごく――」

はぁっと見る。初めて見たときは感嘆しか出てこなかったものだ。

「……と、飛びおりるのは、その。私の心臓がばくばくするので、やめてくださいね?」

冗談でも想像してダメだった時を考えると、さぁっと青くなる

松渓つばめ > 「そうなの?」と隣を見る。
魔力視。ほんの少しだけ勉強中な魔術だが、『まるで魔術適性無し』じゃないことだけはわかる。
授業レベルの『火の玉がポンと出る』くらいなら、とは思う。
だから思ったとおりに言ってしまう。
「でもあたしには本当に魔術使えないようには見えないかなあ。大丈夫、すぐできるようになるって」と、初級レベルの話をしている。
もちろん彼女の裡にある強力であろう力には気づかず、心配するような言葉には「そーねー」と笑った。

アリエンティア >  
「いえ、私に使えるのは一個だけですので」

そこだけは断言できる。ほかは絶対に使えない。
でもその一つに絶対の自信がある――が。
他のことができる人をうらやまないわけではないのだ。

「………………」

でも、そういってもらったのはうれしいので。
そっと身を寄せつつ、笑顔で見上げながら。

「つばめさんって、優しいですね?」

松渓つばめ > やさしい、とまで言われるとキョトンとしてしまう。
一緒に景色を楽しみながら、誰でも言うような掃いて捨てるほどあるセリフを口にしただけだから。

だから、そんな言葉の裏を思うのは、仕方のないことなのかも。
「んー何?もしかして元気なかったの?――ママとケンカでもしたとか?」
距離が縮まったのを感じて、頬を指先で軽く突っついてみようと悪戯心。

アリエンティア >  
さて、どうだろう。
ちょろい、といわれればそういう人種だ。
なにせ”やさしさ”の定義が緩い。
軽いといっても過言じゃない。

「けんか、はしたことないですね。喧嘩するような仲でもないといえばいいですかね」

苦笑しつつ――頬をつつかれればきょとんっとしたままで。
どうかしたんですかというような――

「元気はなかったです。一応、日本に。常世に来た目的が達成できないことがわかってしまったので……」

松渓つばめ > 「常世に来た、目的?」
狐耳がつばめの頭から飛び出した。私にそんなものあったかなあと思って。
しかし『達成できないとわかった』以上つばめが言及、助けられることもあまりないのだろう。ヘタに聞いても……

「目的があるなんてスゴイじゃない。あたしなんて毎日自堕落そのものだわ。毎日楽しいし」それが目的っちゃ目的なのかと思うけれど、いや違う。
「たぶんその目的、あたしには関係の無いことだと思うけどサ。そこに向かう方法っていろいろあるって、きっとね」
と、無責任な一般論連打だ。

アリエンティア >  
「はい……でも、来てよかったのは間違いないので」

うんっと、うなずいて。しかし、それで割り切れるほど大人でもない。わかっていても消化ができるかといわれれば、そうじゃないのだ。

「――学生は、目的、目標を探すものとかそういう意味ではつばめさんは学生らしいのでは?」

くすくすと微笑み。
いい人だと思う。無責任な一般論。
でも、それを押し付けたりはしない、提示してるだけ。
こういう道もあるんだよと。深く追及もしないのは空気を察しているからというのもあるし――

「……でもちょっと元気出ました。あなたに会えたので」

松渓つばめ > 目的なんて探してないなーと思うが、そこは数年大人な姿を見せなきゃ、無責任を貫けない。
だって自分のような感じになったらダメだし。
「フフ、そーかも。あぁでも、元気出たなら良かったかな。
 あたしもよかったわ。だって……アリエンティアかっわいいし!」

口の中にハートが見えるような顔で抱きつきにいった。懐いてくるちっちゃな子に軽く限界。
上手く行ったら少し頬ずりまでしてしまうかもしれないが、最後はきっと「ゴメンゴメン」とあっけらかんと謝るのだろう。

アリエンティア >  
「かわ!? はっ、う……ぇぇ!!?」

さすがにそこまでのスキンシップには慣れてない。
でもむげにはできない、だって悪意はない、はずだし。
なので恥ずかしいけど耐えるしかない。
今はあいにく二人だけ。ならばうん……

「かわいくはなぃです……」

消え入りそうな声でそんなことを言いつつ

松渓つばめ > ほんの十秒。それでも満足。
あんまり強くすると折れてしまいそうだ。というか折れる。つばめならやれる。やらない。
しかし女の子とスキンシップすると、『彼女』とどこか比べるような事を思ってしまうのはきっと良くない。

「あんまり遅くても良くないし、一緒に帰ろっか?」と離れながら、手を取るように動いて。「それなら飛び降りたりしないで良いでしょ」と

アリエンティア > 「……は、はぃぃ……」

目をぐるぐる回しながら、手を引かれていく。
すごいお姉さんが寮にはいると、アリエンティアは脳内メモに記したのでした

ご案内:「大時計塔」からアリエンティアさんが去りました。
松渓つばめ > 「ん、それじゃいこうっ」と、手をつないで扉をくぐる――
ご案内:「大時計塔」から松渓つばめさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に比良坂 冥さんが現れました。
比良坂 冥 > かつん かつん ゆっくりと階段を登る音
やがて時計台から顔を覗かせたのは、雪のように白い髪と肌を持った女生徒
どことなく虚ろな瞳で辺りを見渡せばそこには誰もいない

「……」

特に何をしに来たというわけでもないが、
教室で誰かが言っていた「高くて眺めが良い」という話を思い出して、ふらりと足が向いたのだった

比良坂 冥 > 確かに高い
島を一望できる、という話は本当で
決して小さくはない常世の島をぐるりと見渡すことができた

「……こんなに」

ぼそり、呟く

「こんなに広くて、たくさん人がいるのに」

色素の薄い瞳に陰が落ちる

比良坂 冥 > 陰を落とした瞳は暗い

「……誰もいない」

小さくつぶやいた言葉は先程の言葉の続きなのか、そうでないのか
手すりから身を乗り出し、視線を落とす

高い

学校の屋上よりも更に高いそこから、
学舎の窓越しに授業を受けている生徒達や、
運動場で汗を流す、屋上を語らいの場にしている、部室棟まわりで騒いでいる
たくさんの人が見える

「……」

比良坂 冥 > 此処に来てから、未だ自分へ触れてくる人間には出会ったことがない
あんなにたくさん、ひとがいるのに

寂しさ、侘びしさ、人恋しさ
それらが渦巻いて捏ね合わされて、淀んだ瞳の色へと変わる

「……此処から飛び降りたら、楽になるかな……」

死んだ後はどうなるんだろう、と考える
何も残らないのか
それとも宗教家が言うような、先があるのか

……どのみち、その先でも自分は独りな気がする

比良坂 冥 > くだらない
ここから飛び降りて潰れたトマトになろうが、きっと誰の記憶にも残らない
死の先があったとしても、今と何も変わる気もしない

景観を見るのをやめて、ぺたんとその場に座り込む
ちょうど日陰になっているのもあってひんやりと心地よい

落第街にでも行こうか

あそこなら一時的に気が紛れる
刹那的といえど、人の熱を肌で感じることができる
単なる性欲の捌け口としてでも、誰かに求められることは心地よい
そこに生きていることを実感できる

ご案内:「大時計塔」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
谷蜂 檻葉 > カツン、カツン。 と
冥が登ってから暫く、そして相応の時間が経ってからその背後から靴音が響き、近づいてくる。

「―――とに、たまには静かに一人で…… と、あら?」

何か、ブツブツと独り言でも呟いていたのか僅かに聞こえた言葉がひょっこりと顔を出す事でクリアに聞こえだす。
現れたのは、赤みがかった金髪緑眼、シャラリシャラリとその背に3対の虫翅を揺らす―――

人、かどうかはともあれ。
同じ学校の女生徒だった。

「こんにちは、初めまして ―――だよね?」

彼女はアナタの顔をジッと見つめると、数拍置いてからにっこりと微笑んでそう尋ねた。

比良坂 冥 > 「……あ」

足音、警備員でもきたのかな、と腰を浮かせようとすると
現れたのは翅を持った、同じ制服の女性

自分よりも少し大人びて見えた彼女は、きっと先輩であるのか
人懐こく見える微笑みをこちらに向けて言葉をかけてきた

「……こんにちわ。初めまして」

遅い喋りだしから、鸚鵡返しのような挨拶を口にする
じっと見つめる視線に対してこちらもじぃ…っと
ただしその視線はどちらかといえば顔というよりもその全身へ、そして

「……翅、ついてる」

ぼそりとそう言葉を零すのだった

谷蜂 檻葉 > (………なんか、こう、ぽやーってしてる子ね。)

互いに何かを探りあうように視線を向け合えば、チラチラと眼と眼が合うのも自然な話。
興味か、警戒か、それともただ不躾なだけか。

檻葉はいくつか浮かぶ予想をポジティブに捉えて、視線を受けた。

やがて、ポツリとつぶやかれた言葉に微笑みを深めてゆっくりと歩み寄る。

「ええ、半分妖精の図書委員、谷蜂檻葉―――名前で呼んでくれると嬉しいなっ。
 貴女は…ええと、景色でも見に来たの? 
 ここ、ぜーーんぶ街が見渡せて、なんだかスッキリ……スッキリ?うん、気分が晴れやかになるわよね。」

そのまま、少し通り過ぎるようにして先程まで貴女が立っていた場所に立って景色を眺めながら言う。

「―――あんまり見たこと無い気がするし、もしかして一年生かしら?」

そのまま、少しの間景色をぼぅっと見ていたが、やがてまたクルリと冥へと向き直って小首を傾げる。

比良坂 冥 > 「……比良坂、冥。そう、一年生。まだ越してきたばっかり。
 …谷蜂檻葉……それじゃ、檻葉って呼ぶね」

やはり遅い喋り出しから、自分の名前らしき言葉
続いて反芻するようにその名前を呼び返した

やっぱり先輩だろうか、図書委員と言っているし、本が好きなのかな
色々を疑問は浮かぶものの言葉となって出ることもなく…


彼女の言うとおり、眺めは良かった、けれど広い島に自分独り、というのを感じただけで

「……景色、教室で男子が言ってたから見に来たんだけど…、景色は、景色だった。
 …翅は妖精の翅なんだね。絵本でしか、見たことなかった」

谷蜂 檻葉 > 「なるほどなるほど……。 それで、貴女のお名前は比良坂、冥さん ね。
 ……あ、この前業者さんが来てたけどそれだったのかな? 女子寮住まい?」

冥のゆったりとしたしゃべりとは対照的に、
矢継ぎ早とは言わずとも打てば響くようなペースで次々に会話を継ぎ足していく。


「景色は景色、か。 気に入って貰えると嬉しいけど、まぁそんなこと言っても仕様がないわよね。

 そう、由緒正しい妖精の翅♪
 ……他の翼の在るようなヒトに比べえて引っかからなくて良いぐらいしか良いところ思いつかないけどね。

 気になるなら、触ってみる?」

そう言って、またゆっくりと貴女へと近づくと、ほぼ真正面で足を止めた。

比良坂 冥 > 「……そう、女子寮。
 本当は家族でこの島に来たのだけど、事故があって」

少し、瞳に陰を落とす

「……妖精の翅…綺麗、飛べるの?」

触ってみるかという問いには応えず
じぃっと、自分に近づいた檻葉の姿を見上げる

谷蜂 檻葉 > 「―――なるほど、ね。」

そこで、ピタリと言葉が止まる。
少し視線が宙をさまよい、困ったような表情になってまた戻った。


「ええ、飛べるわ。こんな感じにね。」

そう言って、トン と軽く地面を蹴れば、まるで重力がプッツリと切れたかのように静かに檻葉が中に浮く。
翅はうっすらとした切れかけの蛍光灯のような弱い光から、淡いながらもしっかりとした緑光で周囲を照らす。
三対の翅はせわしなく動くこと無く、ゆらゆらと水を泳ぐかのように揺らめき、檻葉もまたそれに合わせてふよふよと揺れる。


確かに、その光景は”妖精らしい”といって申し分ない非現実的な―――幻想的な光景だった。

比良坂 冥 > 「……まるで、魔法みたい」

幻想とも思えるそんな光景を濁った瞳に映して、そう呟く

表情はまるで動かないけれど、その、代わりに
その瞳が淀み、まるでぐるぐると渦巻くように深い色へと落ちてゆく

「……昔、ね」

ぼそり、言葉を零す

「綺麗な蝶々をつかまえたんだけど、すぐに飛んで逃げちゃうの。
 綺麗だからずっと一緒にいて欲しかったのに、ひらひら飛んで、どこかにいっちゃって。
 ……それが嫌で、翅を毟ったら…綺麗じゃなくなっちゃって…だから、魔法みたいな綺麗な翅って良いよね」

谷蜂 檻葉 > 「――――、そうね。
 翅をもがれて、動けなくなれば……それは”蝶々”ではないから。

 全部揃っているからこそ、惹かれるものよね。」

脳裏に、”誰か”が写ったような気がして知らずため息が出る。

そして―――冥の瞳に映る宙を舞う自分が”蝶々”のように見えて、無意識に高度を落として地に足をつけた。

「あー……ええっと、貴女も飛んでみたい?
 一人ぐらいなら一緒に『翅で飛ばせる』わ。 二人三人ってなると違う方法を使うけどね。」

急激に深く落ちていく冥の瞳から逃れるように小さく頭を振ると、
表情を切り替えて軽く微笑んでそう提案した。 学友には、そこそこ好評だった。”高い高い”みたいで、なんて。

比良坂 冥 > 「……どうしようかな、私は、それより──」

ゆったりとした動作で立ち上がる

「檻葉のことをもっと知りたいな……?」

暗い瞳をまっすぐ向けながら、近づいてゆく
一歩一歩に重さを感じさせる。まるで獲物を追い込むように

「折角知り合えたんだもんね…」

谷蜂 檻葉 > 「わ、私の事? ええと、図書委員だとか貴女と一緒の女子寮住まいとかそういうこと?」

『知りたい』とゆっくりと此方に歩を進めだした冥に、僅かに乾いた笑みで返す。
その右足は僅かに下がり、”万が一”に備えて駆け出せる姿勢になっている。


「ええと…比良坂さん…?」


ゆったりと、蛇のような印象を持つ静かな歩みに、頬が僅かにこわばる。
―――ただ、それでも逃げ出すようなことはせず冥の言葉を待つ。印象が、印象だけで済むことを願って。

比良坂 冥 > 「……クス」

それまでぴくりとも表情を変えなかった冥の唇が歪む
歩みは止めずに、そのまま顔を顔へと近づけて

「……名前で呼んでくれていいよ?私だって檻葉のこと、名前で呼んでいるんだもの…。
 綺麗な瞳…(どんな涙を流すのかな)、綺麗な唇(どんな味がするのかな)、綺麗な肌(どんな体温を感じさせてくれるのかな)
 たくさん檻葉のこと、知りたいなぁ…言葉で伝わるものだけじゃなくて……」

ぺろりと自身の唇を舐める舌の赤さを、アルビノの白い肌が際立てる
あの時の蝶々みたいに…やっぱり私から逃げるのかな?

谷蜂 檻葉 > 「っ、ちょ、ち、近いっ……比良… 冥、ちゃんっ! ちょっと顔近いっ!」

ゾクリ。と、近づかれた顔から溢れる吐息に背筋が震える。
同性同士の戯れは、何度か経験がある。
こうして顔が近づく事なんて”冗談”の範疇で気にも止めることはない。

(……だってのに、なんのよこの子ぉ……!)

直感的な『危険』を覚える接近。
蛇のような、という印象は此処に来て正鵠を得ている。

「い、嫌だとかそういうんじゃないけど初対面でそういうのはどうかなって思うんだ私!
 言葉で!言葉でお願いしたいな! スキンシップはもうちょっと知り合ってからでも遅くないと思う!!」

訳もなく赤くなる頬のまま、肩を押さえるようにして冥を止める。

……未だ、逃げること無く、一歩も動かなかったのは”先輩としての意地”というものなのだろうか。

既に『型なし』ではあるが。

比良坂 冥 > 「そうね、近い。檻葉の吐息が顔にかかるくらい。それに、良い匂いもする」

いつの間にかあの遅い喋り出しもなくなり、常設に口がまわる

「言葉よりも、ずぅっと色んなものが伝わるよ…?
 どうせ言葉なんてみんな嘘ばっかり…身体をくっつければ、嘘はわかっちゃうから。
 あ…大丈夫、檻葉がそうだって言ってるわけじゃないから…ただ、私がそうやって───」

肩を抑えられても尚、強引に前へと進もうとする
二人の影が重なろうとした時

キーンコーンカーン………

「……時間切れ。
 じゃ…また会おうね…檻葉……」

すっと離れた少女の様子は、最初に見た時のまま
小さく片手を振って、階段を降りていくのだった───

ご案内:「大時計塔」から比良坂 冥さんが去りました。
谷蜂 檻葉 > 「     ……っはあぁああ……!!」

かくん、と去っていく比良坂の背を見送るままに膝から力が抜けてぺたんと地面にお尻を付けて座り込む。

谷蜂 檻葉 > 「び、びっくりした……ビックリしたぁ……!!」

ふと、目元に溜まった水分を弾いてもう一度大きく深呼吸。
数分もどこか呆然としていたが、やがて叫ぶように―――いや、実際に叫ぶ。

「な、なんなのよ本当に、あの子ぉ!!」

もー! と、両拳を上げて怒りの意を示す。
なんだか怖かった……という、印象が「してやられた」と、プンプンとそのまま拳が揺れる。

というか凄いドキドキした。
頬が熱い。

「……これが、吊り橋効果……みたいな……? っていうか本当に心臓に悪かったぁ……。」

たっぷりと時間をかけて立ち上がれば、すこしばかり足が痺れて痛い。
あのまま、鐘がならなければ――― 鐘?



「あ、ちょっと私も行かなきゃ!! ち、遅刻するーーっ!!?」


眺めの良い吹きさらしの『窓』へ駆け出し、地を蹴りだして空を走る。
―――風になった檻葉の頭からは、もう先程までの恐怖感と『また会おうね』という言葉はサラリと撒かれて消えていた。

ご案内:「大時計塔」から谷蜂 檻葉さんが去りました。