2017/09/05 のログ
ご案内:「大時計塔」に加賀智 成臣さんが現れました。
加賀智 成臣 > 天を衝く時計塔。常世島にあって、最も高い場所。
その頂上に、それは居た。

「……………。」

泥に汚れた衣服。伸び切った髪。ひび割れた眼鏡。皮膚の裂けた足。
浮浪者でももう少しマシな格好をしているであろうと思わせるそれは、かろうじてかつて学生であったものの面影を見せる。

もはや何者でもないそれは、何かを見つめるように時計塔から快晴の外を見つめていた。

加賀智 成臣 > 耳の中に、何かがへばりついたように声が聞こえる。
頭の中に響くそれは、男とも女とも思えない声でただひたすらに呟く。

『滅ぼせ』と。『裁きを下せ』と。

意味はわからない。理由もわからない。だが、やらなければいけない気持ちになった。
まるで、魂がそう騒いでいるかのように。
そして何よりも、それができる力が彼にはあった。世界を思うがままに書き換える、神の力が。

しかし、彼にはそれを実行に移すことはできなかった。
何の事はない。彼には勇気がなかったのだ。
意気地もなかったし、根性も甲斐性もありはしなかった。

力がある。それだけの理由で力を振りかざすほどに、彼は他者へ横柄になれなかった。

加賀智 成臣 > 「……………。」

気まぐれに、手を伸ばす。住宅街が見える。
きっとあそこには、沢山の人が住んでいるのだろう。自分のような廃棄物とは縁のない、幸せな人々がいるのだろう。

妬ましくないわけではない。恨めしくないわけでもない。
だがこの手を握りしめれば、まるでその一角が手の中にあったように潰れ、沢山の人が死ぬ。
そうなってしまうと、頭の中で確信できる。

夫を喪った妻が。妻を亡くした夫が。両親が消えた子供が。
沢山の人々が、悲劇の中に巻き込まれる。

それだけで、彼の凶行を彼自身が止める理由になった。

「…はぁ。」

一体いつぶりに自分の声を聞いただろう。
枯れた喉から絞り出されたのは、じっとりと重みを帯びたため息一つ。

自らを死に追いやることも、他者を破滅に押しやることもできない。
彼は、どこまでも中途半端な根性だった。

ご案内:「大時計塔」に伊都波 凛霞さんが現れました。
ご案内:「大時計塔」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  

「おーいっ」

声が聞こえる、女生徒の声だ
その声は遠く下方、地上のほうから

「あぶないですよー!そんなところいたらーっ」

声を張り上げる女生徒
新学期がはじまり、ありきたりな式典を終えたあとだろうか
加賀智少年の姿を時計塔の上に見つけ、慌てた様子で大声を出していた

伊都波 悠薇 > 「あーあー……おっきな声出して……」

やれうあれと肩を竦めて。前髪を掻き上げる。
全く、気がついたら即行動は新学期になっても変わらないらしい。

くあああっとあくびを一つ。

対して、妹は特別関心がないように――

加賀智 成臣 > 「……………。」

見下ろす。そこには女生徒が二人。
一人は聡明そうな。一人は大人しそうな。
この時間帯に、ということは…そう思ってふと思いついた。世間はもう新学期なのだ。

……そのことにも、さほど関心はなかった。
もはや自分には何の関係もない世界の話なのだから。



ひゅう、と突風が吹いた。
それに煽られたのか、彼が自ら乗り出したのかは定かならず。
しかし彼の体は現に

宙に浮かび、そして沈んだ。

伊都波 凛霞 >  
「おっきな声も出すよお。
 強い風でも吹いたら…」

空を飛べる異能持ち、かもしれないが
もしかしたらそうじゃないかもしれないわけである

「あっ」

バタバタと風が煽る
髪が流れスカートがはためくがそれどころじゃない

「危なっ…!!」

思わず駆け出していた
駆け出してどうにかなるものでもないのに、反射的にというやつだ

伊都波 悠薇 > ――ふぅん?

なんて。言いながら、風に泳いだ髪を手で抑えて。
走った姉。
動かない妹。

いつも通り――……

「間に合うのかな? 間に合わないのかな。天秤、は。どっちに傾くのかな?」

ぎぃぎぃっと、いう嫌な音が頭に響いて

「飛び降り自殺、なのかな?」

動かないのではない。動けないのは、誰が知る

加賀智 成臣 > 結果だけ言えば、彼は死んだ。
鮮血をぶち撒け、肉片を撒き散らし、彼だったものは肉と骨片の塊へと再構築される。

誰が悪いわけでもない。姉は無罪。妹も無罪。風も、塔も、天地の遍く全てが、彼の死に責を負う義務がない。
間に合わなかったのは、ただの結果。何が悪いわけでもない。



なぜなら、彼は死んでいないのだから。

「……どうも。」

実にダルそうに、その頭を掻く青年。

飛び散る鮮血も、千切れる臓物も、砕ける肉もそこには存在しない。
まるで悪夢を見たかのような後味の悪いビジョンが、網膜に焼き付くだけ。

彼の力は既に、瞬時に世界を再構築するまでになってしまっていた。
生物が…否。この世のありとあらゆるものが認識できない、デジタルの0が1に切り替わる瞬間。
それだけで彼は、世界に楔を打ち込む。

伊都波 凛霞 >  
「ひぇっ……えっ、あれ?」

思わず眼を擦る
落下地点へと走ったからこそ見えた、聞こえた
なのにまるで夢現

天辺にいた少年は普通に生きていて…

「…大丈夫?…なの?」

不思議そうに問いかける女子生徒、けれどハッとしたようにして

「あ、あのね!君が空を飛べたりする力もってるのかもしれないけど、
 あんなところにいたら危ないってみんな思うよ!
 落ちたら死んじゃうんだから!」

だからこそ時計台は立入禁止にもなっているのだ
自分が見た映像は…なんだったのか、とりあえずは置いといて…

「…もー、はるかも何でそんなに落ち着いてるの…?」

まるで自分だけが空回り
力が抜けたように、はぁ、とため息を付いて肩を落とした

加賀智 成臣 > 「………はい。
 すいません。死ねなくて。」

どろりと濁った瞳は光を吸い込むように黒い。
会話もどこか要領を得ない。そもそも会話を成立させるつもりがあるのかも分からない。

「………。」

この期に及んで、誰かに会いたいと願ったのか、自分は。
どこまでも救いようがない。
…そう思いながら、目の前の女性から目を逸らす。

伊都波 悠薇 > 「――タイムリープ? ううん。違うね。因果の操作? やばいなぁ、”アレ”」

視た、そして理解しなかったからこそ、理解した。
でも足がかりだけ。ただ、重さの調節をしただけで

「だって、ほら。騒いでも私じゃ何も出来ないのはお姉ちゃんがよく識ってるじゃない? だから、うん。慌ててもしょうがないなぁって」

ゆっくりと、近寄りながら。少年の”眼”を視た

「あぁ、んっと……そうなんだ?」

首を傾げつつ。

「……謝られても困るなぁ……」

伊都波 凛霞 >  
「…?」

ぶつぶつと何か呟いている妹
そして返ってきた言葉はなんとも冷静なものだ
まったく自分だけが慌てている
そこではっと天秤のせいかと気づいたけれど…

「出来るとか出来ないとかじゃなくってさ…はぁ、まぁいっかぁ…」

やはり普段から妹の異能を意識することは難しいのだという実感を得ただけだった

「うーん…謝るくらいならああいうことしないの。
 ほんとに大丈夫?怪我とかしてないの?」

言いながら、少年の肩へと触れようとする
……君が死ぬ瞬間が見えた、なんて言葉。口にするのも憚られる

加賀智 成臣 > 「……大丈夫です。
 触らないほうが良いですよ、汚いので。」

実に淡々とそんなことを述べる。感情も感動もなく、ただ機械的に事実を述べ、ついでに自らを侮蔑する。
ある意味器用ではあるが、あまり好ましいものではない。

「………。」

あまりに淀んだその瞳は、まるで世界が互いを理解し合うことを拒んでいるかのように……
『別の生物なのではないか』という錯覚すら引き起こさせる。
それほどまでにこの青年…加賀智成臣は、『人間離れ』していた。


「心配なら、もう一度しましょうか。」

伊都波 悠薇 > ひどく、既視感を覚えた。
あぁ、この子、あの子と一緒だ。

「”姉さん”、”姉さん”。それ、前のあの子と同じだよ。同じじゃないか、成れの果てか」

くすりと笑って、見つめた。
なるほど、こうなるかもしれなかったのか。いや。
むしろこうなるべきだったのか、なんて思いながら。

「その人にそんなこと言っても無駄かもよ? あ、ちなみにもう一回、なんていってると平手打ちが飛んできちゃうかも?」

伊都波 凛霞 >  
「汚いって…まぁ、洗濯はしなきゃね…どうしたの?この服…」

泥まみれの服装といい、一体何があったのか…

「もう一度、って…!」

心配そうな表情をしていたものの、
続いた言葉に思わずその少年の頬を軽くはたいてしまった
あんな光景をもう一度見せようとでもいうのだろうか
見間違いではなく、少年の何かによるものだということを知り、つい感情的になってしまった

妹にものの見事に看破されちょっとバツが悪い

「そうやって周りを心配させるようなことやったり言ったり、よくないことだよ」

ごめんね、とつけくわえて、その手を引っ込めた
感情的なところはどうにもなおらない

加賀智 成臣 > 「……。」

ぱしん、と乾いた音が響き、首が曲がる。
折れるほどではなかった。すぐに、顔を正面へ戻す。

「………こんな廃棄物を心配する人なんて居ないから大丈夫ですよ。
 心配してるなら多分、時間の無駄です」

真顔でそう言い放つ。
感情も何もない。ただ『そう思っているからそう思う』というだけの語り口。
本気だ。…彼は本気で、自分を『そう思っている』。

「ああ、でも。
 ……汚いものを見せてしまいましたね。そこは謝ります。」

ぺこりと、ボサボサに伸びた髪をかきあげることもせずに腰を曲げる。

伊都波 悠薇 > 「あぁ、だから言わんこっちゃない」

苦笑しつつ。そして未だ、態度が変わらない少年を見つつ。

「姉さん、わかりやすく言ってあげる。姉さんのいない悠薇みたいなものだよ。だから、もう末期症状。どうにかしたいなら、そうならないといけないよ?」

わかってる? なんて。言って。

「――キミは似てるね。私だった人と。なんでそうなったかは、知らないけれど。知ってる? そこの人、心配とかに価値とかないの。したいからしてるだけなの。貴方のことは、関係ないの」

そこまで告げてから。

「――”貴方”と一緒で」

伊都波 凛霞 >  
自分を廃棄物なんて言い方をする少年
少しだけ言い返したい気持ちもあったものの…

「どうにかって…そういうわけじゃないけど。
 心配も、しなくていいなら別にしたくないよ」

はぁ、と再び肩を落とした

「関わって欲しくないっていうのはよくわかったけど…、
 その服!その髪!それに今やってたこと!
 どれもこれも目立つことばっかりだよ?
 私もまあ、おせっかい焼きかもしれないけどさ……」

頬をかりかりと掻きながら少年へと言葉を向ける

一方、妹はその言葉といい、少年に何か感じる部分でもあったのだろうか

加賀智 成臣 > 「………。聖人ですか?凄いですね。」

はぁ、とこちらも小さくため息を漏らす。
無私の慈愛。なんと素晴らしいことか、だからこそ自分などと関わって欲しくない。
悠薇へと視線を向け、再び視線を土へ落とした。

「………すみません。次は目立たないようにします。
 だから早く忘れたほうが良いですよ。人生の汚点です、こんなゴミに数分を使ったなんて。」

今には珍しい、正義感に溢れる若者。眩しすぎて直視はできなかった。
……ああ、誰か居たような。他にもそんな女性が。



         忘れた。

思い出す資格もない。

伊都波 悠薇 > 「くすくす……まぁ、聖人といえば聖人かも? だってよ、姉さん。聖人だって、ふふ……ふふふ……」

なにがツボったのか、お腹を抱えて笑った。

「無理でしょ。だって、貴方、他人にそんなこと言っておきながら、他人なんて関係ないんだもの。目立たないようにするなんて、他人を気遣うこと出来ないじゃない?」

目尻に涙を浮かべながら。

「世界がどうなろうとも、貴方は自分のしたいようにするだけでしょう? 自分がこんなゴミだからなんて免罪符にして。ふふふ、ホントそっくり。そっくりだ。ねぇ? 姉さん」

伊都波 凛霞 >  
「はるか」

何かを窘めるように、少しだけ強い口調で名前を呼ぶ

「この人はゴミなんかじゃないよ。
 命もあるしこうやって言葉も交わせる。
 同じ人間なんだからそういうコトは言っちゃダメ。
 …君もだよ?」

ずい、と前に出るようにしてそお真っ黒な瞳を覗き込む

「私の人生と私の時間は私のものなので、無価値だとか汚点だとかは私が決めるの。
 そんなことまで決められちゃったら、まるで神様と会話してる気分だよ?」

最後に冗談のつもりだったのかくすりと笑って、妹へとむきなおる

「そんなに楽しそうにしないの。
 そっくりかもしれないけど、この人はこの人。はるかははるかなんだからね?」

加賀智 成臣 > ばき、と何かが割れる音がした。

目の前の顔が、いつの間にか。黒い空虚が大きく開いたものに変わる。
風が抜けるような声が、顔に開いた穴から漏れ出す。

「私は何もしたくない。私は何にもなりたくない。私は誰にも会いたくない。私はどこにも行きたくない。私は死にたくない。私は生きたくない。私は目立ちたくない。私は救われたくない。私は見捨てられたくない。私は離れたくない。私は近付きたくない。私は他人を慮りたくない。私は他人を蔑ろにしたくない。私は誰にも関わりたくない。私は誰かに捨てられたくない。私は」



しかし何も起こっていない。
先ほどと同じ真顔で、覗き込んだ瞳を見つめ返す。

「……そうかもしれないですね。
 救われてはいけないモノです、私は。生きていても、何も…益にならない。
 私のような人でなしは。」

伊都波 悠薇 > 「はぁい……でも、ほら――」

姿勢を正して、とんとんっと、靴のつま先で地面を叩いたら。

「――自分の価値、自分を理解されたいくせに。自分本位のくせに、そうやって何かに縋るしか無いのよね」

はーあ、なんて息を吐いて。空を見た。男性が落ちたところを視て。

「結局、あなた達が話し合ったところで平行線だよ。交わらない線。だって、もうふたりとも決めちゃってるんだもの。ふふふ」

とんっとんっとステップを踏んでいく。

「知ってるよ、私は”悠薇”だもの。姉さん」

くすくすと笑いつつ、ゆっくりとその場を離れていって。

「私、先に帰るよ。コレ以上居たら、お腹がよじれちゃうから」

バイバイ、またね、少年くん――

なんて手を振って

伊都波 凛霞 >  
「………!」

一瞬、ぞくりと妙な寒気を感じた
顔に穴が開き、まるで呪いのように言葉が溢れ出したきたのだ
……それもまた、気のせいだったというように…すぐに彼の顔へと戻っていたが

「…今……ううん」

聞こえた気がする
最後の方に確かに──

「あっ、はるか!
 …はぁ……一緒に帰るって言ったのにもう……」

元のあの子には考えられないくらいスタンドプレーが増えたな、なんて内心思いつつ…

「……人でなし、かぁ…。
 じゃあ、見捨てられたくない、誰かに捨てられたくない、って。
 私の聞き違いかなにかだったのかな───今日は白昼夢が多い日だね」

そんなことを言いながら、此方へ走り寄る際に放り出したバッグのところで歩いて行く
拾い上げてぱっぱと砂を払って肩へ担ぐと……

「ねぇ、君。
 案外人間って放っておかないものだよ?
 その人がどれだけ自分のことをマイナスに落としこんでも、
 勝手にプラスを信じちゃって放っておけなくなるものみたい」

私もそうだったからね、と笑ってそう付け加える

加賀智 成臣 > 「……。」

小さく口を開け、そして何も発さずに閉じた。
何か言いたげに、去っていく妹らしき女性を見て。

「……何のことでしょうか、それは。
 ………お疲れなのではないでしょうか。ゆっくりお休みください。」

真顔でそう紡ぎ……姉らしき人物に掛けられた言葉に、少しだけ目を細める。
この人物にとって、人を信じ救うことは、呼吸をするようなものなのだろう。
やはり、聖人…聖女と呼ぶべきか。

「…なぜ、でしょうか。プラスなど無いのに。
 ……見るだけ無駄だというのに。信じるだけ無意味だというのに。
 救おうとするだけ、無価値だというのに…」

伊都波 凛霞 >  
「んーっと、ねぇ」

口元に指を当てて、考えるポーズ
程なくしてやはり笑顔でそちらを向き直った

「人の価値が、自分だけじゃ決められないものだから、じゃないかなあ…」

うん、と自分の言葉に頷く

「本当に、そこにいてくれるだけで他の誰かには意味があるものだったり、
 なんとなーく、いないと寂しいなーって思うようなことがあったり、
 例えば学術的芸術的はてには利用価値、そういうものが一切ないものだって、
 誰かの思い出の品なんかにはなったりすることもあるわけじゃない?」

ね?と笑って
その隣と歩いてすれ違うようにして…

「自分だけで決めちゃダメだよ。
 もしそう思い込んでるだけだったら、色々損だもん」

すれ違いざま、服の肩についた泥をぽんぽん、と払って──

加賀智 成臣 > 「…………っ。」

ずきり、と頭が傷んだ。軽く眉をしかめる。
頭の中の声が大きくなる。

『お前にそれ以外の価値など無い』 『裁きを』 『全ての悪に断罪を』

そんな声が、ぐるぐると頭を回る。

「………私が居なくても、全ては上手く回るでしょう。
 もし仮に、そうだとしても…私という存在に、何かの価値があったとしても。」

『その価値に』
「その価値に見合わない傷を齎すなら。……私は、誰かと関わりたくはない。」

少しだけ、その淀んだ瞳が歪んで見えた。

そして、その姿も。歪み曲がり、足元から薄く。かなりの規模を伴う現実改変の兆候である。
『誰にも会いたくない』という思いが、その現実を蝕み、砕いていく。

伊都波 凛霞 >  
肩を払い、すれ違った、数瞬後
彼の呟いた言葉……
そんなことを言ったら、きっと誰だってそう
自分がいなくてもなんてIFは、往々にしてまわってしまうものだ

「あのね───」

お節介焼きの血が騒ぎ、もう一言くらいと思い振り返れば…そこにはもう誰もいない

「…あれ」

まるで二度ほど見た幻?白昼夢?それらのように、彼自身の姿がこつ然と消えていた
帰ってしまったのか、にしては足が速すぎる

「………何だったんだろ」

右手をちらりとみれば、払った泥がついている
少なくとも、夢や幻ではなかったのだと思いつつ、小走りに妹の後を追いかけてゆくのでした

ご案内:「大時計塔」から伊都波 凛霞さんが去りました。
加賀智 成臣 > 『ウトナピシュティムの子らよ』

『再び』


彼の姿は溶けるように掻き消えた。
残ったものは、何もない。

ご案内:「大時計塔」から加賀智 成臣さんが去りました。