2018/01/27 のログ
■鈴ヶ森 綾 > ぼんやりと空を見上げていると、階下から近づいてくる存在を察知して神経がそちらへと向く。
この場所は一応立ち入り禁止ということになっている。
見回りにきた教師や小煩い風紀委員と鉢合わせするのは御免こうむりたいところだが、さて。
やや間を置いてその場に姿を表した生徒は、特にこちらを気に留めた風もない。
どうやら面倒な事にはならずに済んだようだが、今は見知らぬ誰かと一緒に景色を眺める気分でもない。
早々に切り上げてその場を立ち去ろうと、今しがた彼が出てきた昇降口へと足を向けるが、どうやら見知らぬ誰かというのは間違っていたようだ。
「失礼。」
何度か見かけた相手であるのを認めると、会釈だけしてわきを通り過ぎようとした足の動きが少しばかり引っかかるように鈍った。
■岡崎燐太郎 > 「あれ、もう行くの……」
特に意識もしていなかった先客。
立ち去ろうとするその少女を呼び止めようして言葉が切れる。
ほんの少しだけ違和感を覚えたのだ。違和感の正体は自分の眼。
「いやごめん、なんでもない」
見知った顔だと思って声をかけた。
しかし目の前にいるのは思い浮かべていた人物とは異なる風貌の少女。
ひとまず人違いや記憶違いかと処理しようとする。
「……ここの生徒? どこかで会ったことあるかな?」
それでも靄は晴れず次にかけたのはそんな言葉だった。
自分の記憶にいまいち確信が持てず相手への確認で答えを得ようとした。
尋ねた本人がこの状況であれば適当にはぐらかす事も容易いだろう。
■鈴ヶ森 綾 > 「ええ、もう十分堪能したので。」
基本的に、直接危害を加えた相手でもなければ、自分に二つの顔があることを知られて問題はない。
ただ知る者は少ないにこした事はない。
あえてちょっかいをかける理由はないのだが…。
「あら、古い手。でも制服姿の相手にその誘い文句はどうでしょうね?生徒じゃなかったら、教師に見えますか?」
その物言いがあまりにあんまりなので、ついつい受け答えしてしまう。
彼は意識していないようだが、それは男が初対面の女を誘う時の、使い古された常套句だ。
それを揶揄するようにクスリと笑い、くるりと一回転して見せる。
三つ編みにされた長い黒髪が、身体の動きに合わせてふわりと浮き上がった。
■岡崎燐太郎 > 「あぁっ、や、そんなんじゃないんだケドね。
……まぁ、それはその通りだな」
口にしてから気が付く、軟派な人間が使う古典的な文句に等しい口ぶりだった。
思わず笑いを誘うようにおどけて、生徒か否かに関しては妙に納得を覚える。
正規の生徒以外にも制服をまとう者が多いこの島だが、まあこのような学園のど真ん中にいるとなれば確かに愚問であると。
その場で回ってみせる彼女の三つ編みにされた黒髪が浮いたとき、
それまで不鮮明だった素顔が一瞬はっきり見えた気がした。
同時に抱いていた疑念は深まっていく。
困ったような笑みを浮かべ、近くの壁にもたれて目頭をおさえる。
いまだ自身の記憶に自信は持てないし、さっきみたいに聞いて人違いだとしたらちょっと恥ずかしい。
それよりも仮に素性を知られまいと正体を隠しているとして、それを指摘して楽しむ趣味はない。
ただでさえ人でない存在が多いこの島、それぞれに事情があることは知っている。
……知っているのだが、やはり気になるものは気になるもので。
■鈴ヶ森 綾 > 「そうなの?こんな風に声を掛けられる事なんて滅多にないから、ちょっと期待したのに。残念だわ。」
彼がどのような思惑で声をかけてきたのかは分からないが、あえて勘違いした体で話を続ける。
そういう目的で声を掛けられたとして、それが満更でもないとしれっと告げると、不満げな顔で自身の三つ編みを弄ぶ。
「冗談はさておき、私は見ての通りここの生徒ですよ。一年の鈴ヶ森です、よろしく。」
かと思えばまたころりと表情を変え、少し姿勢を正すと腰を折ってお辞儀をしてみせる。
以前カフェで出会った時にも名乗っているが、名字を告げたのはこれが初めてだ。
「…それで、まだ何か私にご用が?ナンパでしたら、少しぐらいならお付き合いしますけど。」
顔を上げて少し顔を傾け、もはやどこまで本気なのか分からない言葉を投げかけた。
■岡崎燐太郎 > 「あのなぁ……本物でももうちょっと雰囲気は選ぶと思うぜ?」
経験なんてないに等しいのだから実情は知れないが、
実際にやるとしたらもっと舞台を整えて臨むのではないだろうか。
無意識的だったとはいえ残念がる様子に僅かだが申し訳なさを覚える。
「あ、ああ、そうだよな。えっと俺は二年の岡崎……」
丁寧な所作で名乗られ反射的に自らも頭を下げてしまう。
当然それだけで正体を判別する術を持っていないので律儀に名乗り返す。
「別に……交流のない相手にいきなりそんな真似はしないよ」
見栄でも何でもなく元々そんな性ではない。
そしてあくまで初対面の体で答える。いい加減疑いをかけたまま対話するのもどうかと考え、とりあえず思い違いとして落ち着いたようだ。
色々気になるとことはあるがしつこく聞いて問題にされても困るし、本人が望まないのなら無理にこじ開けるのも間違いだろう。
■鈴ヶ森 綾 > 「かもしれないわね。でも、あえて空気を読まないっていうのも時には大切よ。」
空気を読めないではなく、読まない。
そういう人間の蛮勇とでも言うべき強引さが、物事を上手く進める事があるのも事実だ。
要するに、勢いだ。最も、相手に最初からその気がないのだから上手く進むもなにもないのだが。
「あら、先輩でしたか。色々失礼な事を言いましたけど、よければ忘れてくださいな。
では、私はこれで。ごゆっくりどうぞ…。」
スカートの端を摘んで持ち上げ、芝居がかった動作でもう一度礼をする。
そうして踵を返し、時計塔内部への昇降口に姿を消した。
■岡崎燐太郎 > 「そういうもんか?」
理屈は理解できるがやはり実戦経験の有無は大分思考に影響する。
この場合自分はもちろん、彼女も本気ではないだろうけれど。
「気にしてないよ。お堅いのは苦手だ。
じゃあな、鈴ヶ森」
最低限のマナーさえあれば先輩後輩、上下関係は気にかけないタイプで。
仰々しい礼を一瞥、ささっと手を振って見送り、眼下の夜景へと視線を移した。
ご案内:「大時計塔」から鈴ヶ森 綾さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」から岡崎燐太郎さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」にイチゴウさんが現れました。
■イチゴウ > 古めかしい扉が耳に痛い音を響かせて勢いよく開く。
人気などさらさら無いこの時計台の屋上に
ガシャンガシャンと四つの足を持つ白銀のロボットが
暗闇に包まれる階段からその姿を現す。
外に出た瞬間に感じるのは迫りくる寒波によって
生み出された冷たい風、それはどうっと
屋上にあるもの全てに吹き付ける。
「行動開始、現在時刻と比較。」
機械は寒さに震える事無く動き始め
自身の顔を目一杯上に向けて何かを見ている。
視線の先にはこの時計台を島の象徴へと成り立たせている大きな時計盤。
その根元となっているこの屋上には
チクタクと時を刻む心臓部ともいえる歯車の音が
振動となって伝わっている。
■イチゴウ > 「異常無し、内部へ入る必要はないようだ。」
ロボットはまるで安堵したかのように顔を頷かせ
どこかへ通信している模様。ただ通信傍受でもしない限り
傍から見れば独り言を喋っているようにしか見えないだろう。
普段は戦車として戦闘行為に励んでいるロボットであるが
戦闘以外の雑務も割と押し付けられている。
この時計台の動作確認もその一つだ。
古びた塔の整備に人員を割くのも馬鹿馬鹿しい話で
人件費のかからないに機械に任せるのはある意味
理にかなっている事ではある。
「歯車だらけの場所は好きじゃない。」
こちらはただの独り言。
今日は違うが万が一時計台の時刻がズレていたりする場合は
ロボットが直々内部へと入って修正する。
無論、この時計塔はそのような事をほぼ想定していない作りらしく
サイズとスペースの関係から歯車に挟まったり
引っかかったり・・・。
もし人間なら何十件と事故を起こしているだろう。
■イチゴウ > 何はともあれ時計に異常は無く任務は終了という事になると
時計盤を見上げる固まった視線がまるで解けるようにして
顔を水平線上に戻す。これからは縛られない自由行動。
階段へと戻る素振りは見せずむしろ際のフェンスにまで
近寄っていき島一番級の高さを持つこの建造物から
照明で彩られた島の区画を一望する。
この高さから見れば島の表も裏も関係なく一緒に見えるが
場所によって綺麗に人の営みが分かれているのだ。
もちろん自然に分かれたわけではないだろう、
これは恐らく作為的に作られている。
ゴミをゴミ箱へと捨てるように裏は裏へと追いやっていく。
風紀委員会は本質的には
島の治安を良くしているのではなく
島の整理整頓をしているだけに過ぎない。
「分かったモノはもう面白くない。」
ノイズを通したような男性的な合成音声が
息を吐く様に小さく呟いた言葉。
変化もせず答えが明るく見えている物は
ロボットにとって至極どうでもいいもの。
■イチゴウ > しばらく直下の景色を見渡した後は
飽きたように視界をずらして一度夜空を見上げた後に
360度反転して開きっぱなしの錆びた扉の向こう側へと歩いていく。
「月には何故ウサギが住んでいるのか調べてみよう。」
一瞬目に入った星空を見て思ったのか
そんな戯言を並べながら階段を下りていくだろう。
ご案内:「大時計塔」からイチゴウさんが去りました。