2015/08/05 のログ
ご案内:「風紀委員会落し物係受付」にルギウスさんが現れました。
■ルギウス > カツン、カツンと足音を響かせて男が現れる。
舞台にスポットが当たるかのように、現れた後に音を立てて自分を主張したと思えるかもしれないし本当に歩いてきたのかもしれない。
「間食中に失礼しますよ、ここ風紀の落し物受付であっていますか?」
張り付いた笑みを浮かべた男の手には大きめの紙袋。
■切野真智 > 大慌てでごきゅん、とクッキーと紅茶を飲み干す。
「っと失礼いたしましたっ。」
机に両手をついて、頭を下げる。
どこかふざけた雰囲気はあるが、長めの前髪に隠れた額には冷や汗が流れているかもしれない。
そして、頭をあげるも、申し訳なさそうな苦笑い。
「あい、その通りっす。本日はいかがされました?探し物ですか?それとも届け物っすかね。」
と、書類を用意しながら。
■ルギウス > 「いえいえ、空腹では作業効率も落ちるでしょう。
別に吹聴したりしませんよ……ここで女性とイタしているわけでなし」
その場合は、まず証拠の動画とかを確保してから考えます。
「ええ、届け物です。
商店街の待ち合わせスポットに置いてあった代物でして」
紙袋をテーブルの上へ。
「耳を澄ますと、変な音が聞こえるんですよねぇ。
カチコチ と」
■切野真智 > 「アッハッハ、そんあ相手がいりゃあ良いんですがね。」
と頭をぽりぽりと掻きつつ。
むしろそんなことができれば、何でもするからお願いしたい。
卒業したい。という欲望が…。
「っと、届け物ですね。お名前と取得場所、お時間等をココにご記入ください。」
取り出した書類の一枚を差し出す。
その後は、それぞれの枠を指さして、指示をしていくだろう。
(カチコチ…ねぇ。まっさか時限爆弾でもあるまいし。)
なんて、訝しげにじぃっと紙袋を眺める。
耳を澄ますと…確かに、かち、かちと時計の様な音が聞こえるようだ。
コレを忘れた本人を疑うべきか、それとも、コレを持ってきたこの人を疑うべきか・・・。とりあえず自分にできることをしよう。
念のため、気取られぬ電話の横の応援要請のボタンを押す。
誰か来てくれるような風紀委員がいることを祈りつつ。
■ルギウス > 「モテそうですのにねぇ……もったいない。
いっそ風俗でも利用されたらいかがです?」
夏場は色々と開放的ですよ、などとのたまう。
「ココですね」
一応確認をとってから記入を開始。
名前:やまだ たろう
拾得場所:商店街 待ち合わせ広場
時間:昼(朝方から見かけていた)
堂々と偽名を使っていくスタイル。
「これが時限爆弾なら物騒ですよねぇ……色々と事件が起きているこの島ですから」
■切野真智 > 「おっと、これ以上は悲しくなるから勘弁してくだせぇな…。」
慰めが逆に自分の心にグッサリと。
純粋すぎる彼には、風俗という言葉の方がグッサリ言ったのかもしれない。
ぷるぷると小刻みに震えながら、片手で顔を覆いながら、話を遮る。
ふぅ、と一旦落ち着いてから。
書類をほいっと受け取る。
「ご記入有難うございますっと。
ヤマダ タロウ様…商店街の、朝方から…。
はい、確認いたしました。ありがとうございます。」
ここまで偽名みたいな名前の人間いるのか…。
なんて疑問に思わない訳ではない。
しかし人の名前を疑う程失礼なことも無いだろう、と諦める。
それも次の手順でわかるか。
「すいません、あと最後に一つ。
身分証のご提示をお願いいたします。」
■ルギウス > 「いいですか?若い男女が同じ空間にいるなんていう状況がすでに恵まれているのですからね?
社会に出たら男所帯や女所帯で出会いがないとかザラですからね?」
追い込んでみるが、遮られればそこまで と。
「身分証ですか……コレは、身分証の代わりになりますかねぇ?」
懐から途切れた五芒星のペンダントを取り出した。
「いえ、私は異邦人でしてねぇ。
こちらでの身分を保証するものがまだ無いんですよ」
嘘ではない。
■切野真智 > ものっすごく耳が痛いが、ココは堪えるしかない。
堪えるしかないんだ。ものすごく辛い。
これ以上俺を追いつめてどうしようと言うのだッ!!!
涙目になりそうなのを堪えて、必死に業務を再開する。
「折角ご足労いただいた所申し訳ないんですが、身分証が無いと受け取れない決まりになってまして・・・。
学校側から仮の学生証等発行されていたりはしませんかね?」
あくまで、身分証が無いと受け取らない、という構え。
申し訳なさそうに、という顔はしているが、その目からは、可哀相だから受け取ってやろう、などと言った甘い感情は読み取れないだろう。
(物が物だしなぁ…ちょっち気分が悪いけどなぁ。)
■ルギウス > 「嗚呼、それは残念……そういう規則であるならば仕方ありませんねぇ。
落とし主が探しているかもしれないので 拾った場所に戻す としましょう。
その結果として、何が起こったとしても……そう、誰も悪くない。
貴方は規則に従っただけであり、罪は無い。
例え、その行動で何人の命が失われたとしても」
■切野真智 > あー、あー・・・そう来るか。
早めに増援が来ることを祈ろう。
「はっはっは、まさかヤマダ=サン、中身知ってるんじゃないですかぁ。
教えてくださいよォ。」
と、おどけて見せる。そして、なにやらおもむろに煙草を取り出し火をつける。
「ココは仮にも風紀委員の詰所も兼ねてるんです。
オイタをしてっちゃダメでしょうが。」
とニヤニヤと笑って煙草の煙を余所へとふっと吐き出す。
正直漏らしそうだ。
怖くて仕方がない。
辛い。帰りたい。
…だが、その言葉は、一人の委員として、聞き逃す訳にはいかなかった。
■ルギウス > 「ははは、例え話ですよ例え話」
朗らかにニヤつくという器用な事を行いながら。
「おやおや風紀の詰所で喫煙ですか?
悪い人ですねぇ」
男は、笑いながら続ける。
「さて、受け取っていただけないようですので……私は先ほどの宣言どおりにしようと思いますが。
何かしら“勘違い”や“規則の抜け落ち”があるならお渡ししますよ」
■切野真智 > 「…ったく、心臓に悪いなぁ。やめてくださいよ。」
じりりと煙草を携帯灰皿へ。
(多分嘘ではないんだろうな。あー怖い・・プロに任せよう・・・。)
「あっはっは、禁煙と書いていない方が悪いんですよ。」
煙草にしてはふんわりとした甘い匂いが辺りに残っている。
机のライトがこっそりと光る。
どうやら危険物を処理する能力を持つ助太刀がそろそろ到着するらしい。
ココでこの人を逃がすの正解か。
…いや、重要参考人として、紙袋と一緒に差し出そう。
「まぁ折角ですし、もう少しだけお話していきましょうよ。ね?」
(殺されませんように。)と神様に祈りながら。
そして、受付の両脇を塞ぐように、鋼鉄製であろうシャッターが降りるだろう。幻覚を見抜けるのなら、何も感じないかもしれないが。
音、質感、は充分過ぎる程リアルではあろう。
■ルギウス > 「よく、悪趣味だとは言われるんですけれどねぇ」
くっくっと笑う。
「そもそも、タバコは二十歳になってからと法で定まっていませんでしたっけ?」
笑ったままで付け足しつつ。
「さて、シャッターを降ろした上でのお話であるなら……何をされたとしても文句はなし と解釈してよろしいでしょうかね?
短気な方なら、それはヨーイドンの合図になるわけですが」
ご案内:「風紀委員会落し物係受付」に久藤 嵯督さんが現れました。
■切野真智 > 「まぁその辺も含めてゆっくりお話しましょうよぅ、ヤマダさん。
僕らの仲じゃあないですか。」
今までよく頑張った、といわんばかりにぶわっと汗が溢れる。
なんとか顔は笑顔を保てている。0か1かで分けたら、ぎりぎり1に分類される程度か。
経った今喧嘩を売ったばかり…もう手遅れかもしれない。
ああ、神様と心の中で小便を漏らしながら、次の手を考えるしかできなかった。
■ルギウス > 「ええ、私たちの仲ですものねぇ……。
武芸者の方がよく仰っておられるのですが、拳や剣でも語りあえるそうですよ?」
ずるり と 掌から肉と骨でできたような剣の切先が姿を見せる。
「閻魔にあったら宜しく言っておいてくださいよ、受付の人。
私、地獄で出会った事ないんですよねぇ」
そのまま剣を振りかぶり―――
■久藤 嵯督 > 左手の強化ピアノ線こと『糸』で道の先を探りながら、現場へと駆けつけていく男が一人。
機械は苦手だが、爆弾処理ならばイヤというほど訓練してきた。
多少複雑な造りであろうと十分対応できる。あとは、時間との勝負。
受付も近付いてきた頃、『糸』と『自分』の感覚にズレを感じた。
先ほどまで受付の周囲を這っていた糸が、自分がシャッターを認識した途端、シャッターに張り付いているように感じたのだ。
よってそれが幻覚であることを認識した嵯督には、すぐにシャッターが見えなくなっていた。
それから見える光景には、考えるより先に体が動く。
「―――学内での喫煙は控えるよう言われていたハズだが? 落し物係、切野真智」
剣を振りかぶったその手には金属製の糸が巻きつき、その手を封じることだろう。
■切野真智 > (わぁすげぇカッコいい台詞…俺も言ってみたかったなぁ。)
人間、死の恐怖が現実となると、途端にどうでもいいコトを思うもので。
仮にも命を守ろうと、脇の曲尺を取って身を守るよう構える。
…これが不必要であったことを喜びつつ。
新たな声の方を向く。
「く、久藤クンッ!!(きゅんっ)」
とりあえず九死に一生を得たのか。
ソレを理解してほっと息をつく。
■ルギウス > 「ああ、増援の方ですか……受付の切野さんよりは手馴れていらっしゃるようで」
手から生えてきた魔剣が邪魔をするなと言っているようにカタカタと鳴る。
男が久藤を一瞥すれば、珍しく ほう と面白げな感嘆をもらした。
「まったく、“クドウ”とは妙な縁がありますねぇ……。
戯れるのもまたよし ですか」
「命拾いしたと思うのは、まだ早計かもしれませんよぉ?
私が遠隔破壊系の異能者であれば、魔術師であれば。視界内は射程距離と同義語ですからねぇ」
発言と同時に祈りを捧げ始めた。
■切野真智 > 「いやぁ、一難さってまた一難ですねぇ…」
(視界内、か。これは良いことを聞いた気がする。
いや、すがるしかないか。)
まだまだ汗が止まらないのを感じる。
曲尺は、手汗でぬるりと握りづらくなっていく。
とりあえずは逃げなくては。
受付横のドアをバンと蹴って、中へと転がりこもうとする。
■久藤 嵯督 > 「気持ち悪い表情でこっちを見るな……だが、よく引き止めてくれた」
糸を巻き取り距離をつめつつ、左腰の刀を抜く。
糸を解除する代わりに刀を構え、切野の前に立つ。
「爆弾はひとまず風紀の『取り扱い室』に転移させておく……
こっちは俺が引き受けるので、お前は生徒の避難誘導を」
離した糸で爆発物を取り囲めば、転移の魔術が発動する。
あらかじめマジックカートリッジによる魔力注入を行っていたのか、首元に青紫色の筋が張っている。
これで一本消費、残りは四本。
「クドウ…だと? お前、一体何を知って――」
祈りを捧げ始めた自称ヤマダに向けて肉薄。
磨きに磨いたその技術は、達人が相手でも引けを取らないものだ。
「――『KUDO』について何を知っているッ!」
■ルギウス > 「ただし……呪術、とりわけ東洋の類は名前を知っていれば使えるでしょうし。
破壊の余波が視界どころで収まらないのもよくある話でして」
肉薄されればいつもの事である と涼しげな顔で。
『フォース・イクスプロージョン』
と呟いたのと同時に周囲に衝撃波をぶちかます。
クドウが避ければ、背後にいる逃げる最中のキリノを吹き飛ばすだろうし、それを嫌いクドウが庇えばやはり衝撃波で距離が開く。
どちらに転んでも基本的には自分が損をしない戦術。
「ご自身の特性と類似性をもった家系をお調べになると楽しいかもしれませんよ、“クドウ”。
中々に深い情報でしょうけれどねぇ」
■久藤 嵯督 > 「……致し方がッ!」
結果として切野を庇った嵯督。味方を簡単に捨ててしまうのは、『風紀委員』のやることではない。ただ、それだけのこと。
衝撃波を”なるべく刀身に負担をかけるように”して弾く。が、それも完全ではない。
切り裂いた衝撃の余波はやはり、嵯督を押し戻すことに変わりないのであった。
「何をわけのわからないことを……惑わせているつもりか?」
距離を離された瞬間、両腕の袖から苦無を取り出し、それぞれ心臓・脚に向けて投擲。
人の肉体を持った神が残した、『神の髪』。その遺伝子の持つ『無形の因子』から生まれたクローン、それが『クドウサスケ』。
『無形』は神話上に存在する妖怪・邪人であり、その特性についてしか嵯督は知らないのである。
目の前の男は、自分以上の何かを知っているのか? いや、そんなことはムショで聞けばいい。
■切野真智 > お陰様で衝撃波、などという物騒極まりない物を避ける事が出来たようだ。
ドアから飛び出すと、曲尺を腰にさし、久藤を背に走っていく。
正直、振り返って確認するのも信頼というヤツなんだろうが、
今すべきはソレではないことを知っている。
戦闘向きではないが、大人数への指示は自分の能力の方が向いている。
ならばその期待へと応えなくては。
「ああ、了解したぞっ!!」
(アレ、俺の方が先輩なんだけどなぁ。気持ち悪いってひどくない…。)
一筋の涙が頬を伝っていく。
きっとコレは、異能の発動のために新たに加えた煙草の煙が目に沁みるからだ。
ああ、早く辞めたい。
■ルギウス > 「ああ、逃がしてしまいましたか残念残念♪」
ちっとも残念そうに聞こえない声音で悔しがる台詞を喋る。
くつくつと笑いを堪えているようにも見えている。
「避難誘導先でロマンスがあるといいですねぇ」
その背中にちょっとしたからかいを投げかけて。
「惑わせるだなんて、とんでもない。
貴方のルーツは何処の誰でしょう?
『無形の因子』が遺伝子に宿っているならば……ねぇ?」
ずるり と 魔剣をすべて抜き出して、改めて構える。
「カリバーン、今回は防衛だけを許可します。
目的は達したので適当に引き上げますよ」
■切野真智 > (無事逃げた後は、各階を周り、幻覚による避難誘導を無事完遂した模様。
ただし、相次ぐ幻覚による魔力消費によって、入口付近でぶっ倒れ、無事保健室へと搬送された。)
ご案内:「風紀委員会落し物係受付」から切野真智さんが去りました。
■久藤 嵯督 > 自分の態度が先輩や教師相手でも生意気であることは置いといて、切野が無事であることは声で確認できた。
とはいえ、ヤマダに共謀者がいないとは言い切れない。
やるときはたまにやると評判の彼だが、果たしてそこまで想定出来ているのだろうか。
『手』が足りない現状、生徒の安全管理に関しては彼に頼るほかない。頼んだぞ。
「………」
プロジェクトイノミナンダム
目の前の男は『無形計画』について知っている…? だとすれば、生徒の前で色々と喋らせるのは不味い。
情報の速い委員会上層部の事だ、自分の出自などあっという間に調べ上げてしまう。
そうなっても致命的ではないだろうが、行動が制限されかねない。だからコイツは、ここで始末しておく事が理想的だ。
「……お前は、その答えを知っているのか?」
ああ、敵を前にして何を問い掛けている。
わかっているハズだ。今は迷っている暇なんてない事を。
迷いは剣を鈍らせて、そして、良くない結果を招き入れる。
理由が必要だ。迷わない理由が。――の為に戦う理由が。
「―――答えろ、魔術師!!」
糸がヤマダの周囲に結界を張り巡らせて、逃げ道を塞ぐ。
口には反魔術の遡行詠唱を待機させ、壁や天井をスーパーボールのように跳ね回りながら切り掛かる。
■ルギウス > 「私の知る解答が、正解である保障はありませんがねぇ。
疑問に思った事はありませんか?
なぜ、自分は生まれたのか と。
なぜ、このような力があるのか と」
答えを返しながら、剣が閃く。
魔術を一切使わず剣技のみで、あちらこちらを跳ねて襲い掛かってくる攻撃をいなしている。
不満があるように、剣はカタカタと音を出しているが。
「さて、カリバーンが我慢できなくなる前に帰りますかねぇ。
ごきげんよう『クドウの落とし子』よ。
貴方はいつまで正気を保てますかね……」
■久藤 嵯督 > 放つ斬撃は全て、いなされ続けている。しかも、これで加減されているだと?
既に『限定』は一つ外しているが、これでは二つ目を外しても怪しいか……
学園がシステムダウンを起こしてしまう恐れがあるが、三つ目の解除も視野にいれるべきかもしれない。
「……生まれたことに…意味なんて無い!
それこそ俺なら、生まれてこなかった方がマシだってぐらいには…なッ!」
光あれ、光あれ。どうか、光あれ。
そう望んだところで、天はこれを良しとせず、ただ闇が在った。
今も黒雲に包まれた道では、剣の煌きだけが暗闇を照らしている。
眼前で舞い散る小さな火花は、見えぬ星よりも断然明るい。
故に道標はただ一つ。
「―――意味があるとするなら、戦いの今だ!」
もう一度、更にもう一度。何度でも打ち続ける。
逃がすワケにはいかない。相手が油断している内に、何とかしてその足元を掬ってやる。
そして阻まれ続けたその果てに、刃が折れてしまった。
《ガギィィン!!》
しかし、それさえも利用する。
根元から折れた刃の中心からは、圧縮された『水』がレーザーのように飛び出してくる。
一瞬だけ許された長大な刃で、ヤマダを袈裟斬りにせんとする。
二つ目の『限定』を外したその一閃は、星まで届くような間欠泉のよう。
■ルギウス > 溜息。
「知らぬ事は幸せであり、不幸ですねぇ……いや、実に」
何度切り結んだだろうか。
「人形と戯れるのは、戦いとは言いません。
私を倒すのであれば……血の通った英雄を用意していただきませんと」
言い終わるのが先か、クドウの刃が折れるのが先か。
放たれる水の刃での手ごたえは確かにあった。
髪が一房、宙に舞う。
「ああ、残念……死んでからクドウになれると思いましたのに。
まだ死ぬときではないと、神が仰っているようです」
司祭服に血が滲んでいる。斬られはしたようであるが。
鋭すぎる切れ味と、自動治癒が噛み合ってしまったらしい。
そのまま大仰に一礼し。
「またいずれ……次は、私からも手を出しましょう」
スポットライトが消えた。
■ルギウス > なお、カチコチ音の落し物 であるが……。
『恐ろしく時限爆弾に似せた普通の時計』だったそうだ。
ご案内:「風紀委員会落し物係受付」からルギウスさんが去りました。
■久藤 嵯督 > 「流れているさ……こんな俺にも、一応」
生きている。それでも。血は通っている。
外せぬ枷に塗れてたって、それでもずっと歩いてきた。
俺は此処にいる。
俺は
「……クソッタレが」
折れても尚突き立て続けた刃を、床に向けて投げ捨てる。
仕込み付きの刀は大量生産品なので、またすぐに用意出来る。
『限定』を二つ外した今は、空腹感と疲労感で一杯だ。
後始末は他の委員に任せるとして、自分は一足先に休ませて貰うこととしよう。
簡単な事後報告を終えた後、久藤嵯督はそこからいなくなっていた――――
ご案内:「風紀委員会落し物係受付」から久藤 嵯督さんが去りました。
ご案内:「風紀委員会本部」に白色のローブを羽織った少女さんが現れました。
■白色のローブを羽織った少女 > 始めに述べよう。
白色のローブを羽織った少女の正体は、創造神ミウである。
しかし、その事実を知る者は、これから起きる事件の共犯者しかいない。
~~~まことに勝手ながら、これまでのあらすじ~~~
クラーケンと戦闘を繰り広げたあの日、ミウは玲刃君に無数の剣と数本の神話級の剣を与えた。
ある日、玲刃君は落第街の路地裏にて、恨みを募らせる五十人の人物に襲われてしまう。
その場は数人の助太刀もあり、玲刃君はなんとか切り抜ける事ができた。
だが、その戦いで玲刃君は傷を負って気絶し入院、さらに三本もの特殊な剣を失ってしまう。
その内の二本が、後に電離剣『布都御玲』と持ち主に銘を与えられる事になる剣、そして前述した神話級の剣のひとつ真空を放つ剣である。
ミウの協力で入院中の病院を脱走した玲刃君は、風紀委員会本部に失った特殊な剣が押収されていないか問い合わせに向かった。
しかし風紀委員は、落第街で起きた五十人との戦闘の件で玲刃君を取り調べる事になる。
そこに病院に連れ戻しに来た生活委員の介入、そしてその取り調べが不自然な事もあり、玲刃君は機転を利かして一旦その場から離脱を試みる。
離脱した先は空であり、そこには常世島の上空に浮かぶ世界、天界があった。
天界に辿りついた玲刃君は、そこで神であるミウと邂逅。
ミウは玲刃君のなくした剣の一本を回収しており、それを持ち主に返還した。その剣は、持ち主により『布都御玲』と銘を与えられる。
そしてミウは、風紀委員会本部で保管しているであろう玲刃君の剣の奪還に加担する事になる。
その後、常世島の地上に戻った玲刃君は下調べのため一度風紀委員本部近くの路地へと向かう。
その時に、彼が失った剣のひとつ、神話級の剣が風紀委員本部に保管されていた事を確固たるものとする。
彼が下調べで手に入れた情報を元に、天界にある神の居城にて玲刃君とミウによる事前の作戦会議が開かれる。
そして本日、風紀委員会本部潜入作戦が開始されるのであった。
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玲刃君から準備が完了した、と念話で聞く。
作戦決行だ。
ここは委員会街、風紀委員会本部。
一階にある広い休憩スペースのテーブルの上に、突然白色のローブを羽織ったミウが現れる。
テレポートしてきたのだ。
「少し、失礼するわね」
まず挨拶代わりにと、空間転移した先で休憩をしていた風紀委員四人グループの内三人に電気を放って気絶させる。
この電気はミウにより創造されたもので、並の異能者なら無傷で気絶させられる程の威力があった。
一人残した理由は、この事態を風紀委員本部にいる人達に周知させるためである。
作戦上、ミウの役割は陽動。
どれだけ人を引き付けられるかが鍵だ。
そのためには、派手にいくのが良い。
ただし、出来るだけ風紀委員の死傷者は出さないようにするのが第一だ。
無駄な犠牲は、この作戦上必要ない。
風紀委員会本部正面玄関前。
そこには、想像を絶する光景があった。
それは、全長二十メートルはあるだろう。
一言で言えば、それは暗黒染みたゴーレムである。
それがなんと、風紀委員会本部正面玄関前に突然降ってきたのだ。
そのカラクリは、ミウが上空でゴーレムを創造して正面玄関前に落とした、という事だ。
ゴーレムは手始めに、本部の二階の窓へとパンチする。
そのまま拳は窓や壁を突き破り、そしてひとつの部屋を粉々にした。
ゴーレムが攻撃を加えた部屋には人はいないので人的被害はないが、それでも建物が大きく揺れるため本部にいる人達は間違いなくこのでかぶつの存在に気づくだろう。
そして、風紀委員会本部の建物に攻撃したのだから、当然敵と認識するはずだ。
二階の廊下。
黒い霧が突然現れたかと思うと、そこから黒騎士が出現する。
この黒い霧や黒騎士も創造神ミウに創りだされたものだ。
全身黒の鎧を纏っており、赤のマントを羽織っている。
黒騎士が所持する縦から紫色のビームが発射される。
そのビームは複数の壁を突き破り、そして屋外に消えて行った。
人には当っていないが、風紀委員はこの黒騎士を脅威と見るしかないだろう。
一階のとある部屋。
そこにも、またもやミウにより創りだされたものがあった。
黒色のローブを羽織った人物、いわゆるネクロマンサーである。
ネクロマンサーは一つの部屋を占拠していた。
この部屋にいた人二名は、ネクロマンサーの魔術により一時的に魂を抜かれて気絶していた。
最も、数時間経てば魂は元の人間へと戻る。
ネクロマンサーはこの部屋で少々大掛かりな儀式を行い、五十体ものスケルトンを召喚する。
スケルトン軍団は廊下へと飛び出し、そして壁などを破壊し始める。
このスケルトン、一体一体はただの雑魚であるが、さすがに五十体も集まれば厄介極まりない。
屋内陽動組の黒騎士が質であるならば、このネクロマンサーは量であると言える。
それは、風紀委員会本部で同時多発的に行われる陽動。
風紀委員はこれらひとつひとつに対処せざるを得ない。
それぞれの箇所に、風紀委員が集まり始め、完全にこちらに目を奪われる事だろう。
やはり一番人が集まるのは、ゴーレムだろうか。
これだけの巨体だから、多くの戦力を投入するしかない。
だがゴーレム程ではないにしろ、黒騎士やネクロマンサーも決して疎かにできない程には強力。
そして創造主であるミウは、当然そのゴーレムよりも強い。
最も、相手が風紀委員会本部であるからには数多な人員はもちろんの事、名のある実力者や超一流の異能者も多くいる事だろう。
戦力を揃えたからと言って、決して優勢ではない。
むしろ、こちらは出来るだけ死傷者を出さないように心掛ける分は、不利になるだろうか。
良い感じに風紀委員がそれぞれの箇所に対処しに行った所で、風紀委員会本部から1km離れたビルの屋上で待機している相棒、玲刃君にテレパシーを送る。
『陽動は上手くいっているわ。
風紀委員達も続々とこちらに押し寄せてきているわね。
今なら、安全に潜入できるはずよ』
絶対に、首尾を任せている玲刃君の元に風紀委員を近づけさせない。
そのために、もっともっとこちらに目を引きつける必要がある。
そうすれば、玲刃君なら絶対に上手く作戦を遂行させてくれる。
そこには、絶対の信頼があった。
ご案内:「風紀委員会本部」に白崎玲刃さんが現れました。
■白崎玲刃 > 【ミウの陽動によって、騒ぎが起きてる風紀委員会本部
そこへとその騒ぎに隠されるようにして飛来する存在があった
陽動によって委員の多くが下の方の階層へと動員され、
ほとんど人の居ない風紀委員本部の中間辺りの階層、
そこへと飛来してきた物体が物体が突き当たる
その物体は長剣であった。
風紀委員会本部の外壁へと突き当たった長剣は壁に大きくひびを入れながら突き刺さり
しかし、それに留まる…
だが、】
やはり、長剣だけじゃ、破れないか…
でも、ひびが入っているなら…!
【そうして、長剣の次に、長剣に括り付けられたフックロープに引っ張られるようにして飛来してきたのは
玲刃である。
玲刃は、風紀委員会本部へと飛来する速度そのままで、空中で一つ体制を整えると
壁へと突き刺さった長剣へと向けて拳を打ち込んだ。
KRAAAASH!
玲刃が拳を長剣に当てたその衝撃によって
ひびの入っていた壁はいとも容易く砕け散る。
砕け散る壁と共に、飛来した勢いのままに玲刃は室内へと転がり込むのであった。】
■白崎玲刃 > ふむ…あれだけの勢いで殴ればそれなりに反動もあるか
まあ、骨折してないだけ許容範囲内か。
【そうして、風紀委員会本部内へと転がり込んだ玲刃は
長剣に当てた事により、傷だらけとなっている片手の拳を見つめながら呟く
幸い、その片方の腕、右腕に外傷はそこそこ見られるものの、内部は骨折はしておらず多少ひびが入ったのみであった。】
………っと、ここは…トイレか…?
それにしては、小便器が無いな…まさか…!?
【そうしながら、玲刃はゆっくりと立ち上がりながら辺りを見回して呟く
そう、ここは玲刃の推測の通り、女子トイレであった。
幸いな事に、ミウの陽動によって委員は下の方の階へと行っており中には誰も居なかった
もし、誰か居たのであれば変態の誹りは免れなかったであろう。】
……当初の突入の予定の場所からは逸れてしまったか…
まあ、良い。それよりも監視カメラは…?まあ、当然無いな。一先ず第一関門は突破か。
【更に辺りを詳しく見まわし、監視カメラの有無を確認し、無い事に安堵の息を吐く
まあ、トイレであるから当然であろう。
ともかく、監視カメラが無い事を確認した玲刃は収納の魔術を発動すると
灰色の仮面と、影に溶け込む様な紫色のローブを取り出して纏い、正体を隠す】
[しんにゅうに せいこうした これより さくせんを かいしする]
【そうして侵入に成功して事を念話の魔術でミウに伝えつつ移動を開始する
これより、風紀委員本部潜入作戦が本格的に始動する。】
ご案内:「風紀委員会本部」に園刃 華霧さんが現れました。
■白色のローブを羽織った少女 > 一階、休憩スペース。
『了解したわ。
健闘を祈るわね』
玲刃君は無事、本部内に侵入成功。
作戦の第一段階はひとまず成功と言えるだろう。
風紀委員を良い感じに集まってきている。
さて、ではそろそろ派手に陽動するために放火する事にしよう。
ミウは掌を集まってきた風紀委員達に向ける。
その掌から直径二メートル程の火球を創造し、そしてそれを放った。
速度はかなりゆっくり……回避はどれだけ鈍くても容易だ。
正面玄関前。
やはり一番風紀委員が集まるのはゴーレムの所だろう。
このゴーレムは見た目によらず魔術を行使する事ができる。
『ゴゴゴゴゴ』
などという声が今にも聞こえてくるような気がする。
ある程度人が集まってきたところで、ゴーレムは掌から魔法陣を展開。
その魔法陣から冷気が発生し、風紀委員達を無傷で凍らせようとする。
二階、廊下。
黒騎士の元にもやはり風紀委員が多くやってくる。
この黒騎士は、斬ったものを無傷で気絶させる剣術も心得ている。
もちろんその剣術を扱えば、本来の実力は発揮できない。
まずは、手前にいる風紀委員に突っ込む。
一階、廊下。
ネクロマンサーが呼び出した大量のスケルトンが沸いている。
雑魚であるが、一応人を傷つけずに骨で捕える能力は有している。
だがさすがに一体一体の実力は低く、いきなり風紀委員の異能者に一体粉々にされてしまった。
スケルトンの数はどんどん減っていくだろう。
■園刃 華霧 > なんだか本部内が騒がしい。
なんか出たらしいから、動員がかかっているようだ。
まあでも、武闘派連中がそこそこ出て行ってるしなあ。
「はー……なンか騒がしいケド、ま……いっカ……
トイレ、トイレ……っと」
ということで、面倒事は人に任せよう、と決めてトイレに向かう。
別に私的緊急事態でもないからいいんだけれど、サボりを誤魔化すにもトイレって良い隠れ場所だよね?ね?
がちゃ、とトイレの扉を開けて見る……ん?
■白崎玲刃 > [ああ みうも つかまるなよ]
【ミウからの返答に対し答えながら、玲刃は自身が進入した外壁の方へと歩いて行く。】
[というか ようどうの きぼ ものすごいな]
ふむ…ここは地上6階辺りか…
ならば、あちらから先に行くのが先決か
【変装を終えた玲刃は砕けた壁から外を見やり
窓の数を数えて自身が現在居る階層を推測する
それと、同時に聞こえてくるミウの陽動の音を聞き苦笑いで念話を送る
そうして、階層の確認を終えた玲刃はトイレから飛び出るようにしながら目的地に向かい足を進めようとして…
あっ…
【トイレの出入り口にて、華霧と鉢合わせして固まる
トイレの中の様子を見れば、外壁は粉砕されており、
目の前の怪しい人物は、いかにも侵入者とでもいうかの様な風体であった。】
(おいおい…作戦の開始早々これかよ…まさか、正面から鉢合わせするとはな…
どうする…?)
【そうして、玲刃は華霧を見て茫然としながら
どうするべきかと悩み、内心冷汗を流すのであった。】
■園刃 華霧 > 「……………」
女子トイレの中を見る。
どう見ても怪しい風体の……多分おそらくきっと男。
破壊された壁。
導き出される簡単な結論。
うん。
■園刃 華霧 > 「きゃああああ、いやあああああ、へんたぁぁぁあああああいっっっっ!!!」
■園刃 華霧 > ……ちょっとわざとらしく乙女チックに叫んでみる。
レイチェルちゃんとか貴子ちゃんに聞かれたら後で赤っ恥だろーなー。
いや、本気じゃないですよ?
先手を打ってけん制するのに、一番効果的っぽいのを選んでみただけですよ?
■白崎玲刃 > ……っ!?…変態!?
って、大きな声は不味い…!
【身構えていた玲刃は、華霧の予想外な反応に一瞬戸惑うも
大きな声を出している事に気づき
咄嗟に口を塞ぎ、そのままの勢いで延髄を圧迫して気絶させようと素早く近づく
華霧が異能者だと気づいていなかった玲刃は、
無能力者相手にと考えていた方法そのままで行動してしまっていた。】
■園刃 華霧 > 「……ウカツ」
ボソッと呟く。
相手がどんな奴か分からないし、此処は手品の幾つかは解禁だ。
不用意に近づいてくるのであれば、足元から、頭上から。
何もないはずの空間から突如現れたコンクリート塊が不審者に向かって打ち出される。
直撃すれば、痛い、どころではない。
そして自分は少し間合いを取るように後ろに下がろうとする
……いつの間にか、その手には金属製のナックルがはめられる。
さて、相手はどう出るかな……心のうちでモードを切り替えつつ様子を見る。
■白色のローブを羽織った少女 > 一階、休憩スペース。
玲刃君にテレパシーで返す。
『分かったわ、捕まらないように気をつけるわね。
陽動は派手にするものよ。
それに、こちらが脅威と思わせれば嫌でも風紀委員は戦力を投入せざるを得ないわ』
玲刃君には見えないけれど、ローブの中でウインクしてみせる。
その後、玲刃君は女子トイレで風紀委員の少女と出くわすのであった。
ミウの放った火球は壁に当たると建物に燃えうつる。
それを見た風紀委員の軍団は一斉に、ミウへと拳銃を向け発砲するのだった。
正面玄関前。
一番戦力が集まっているであろう場所。
ゴーレムは次々に風紀委員を無傷で凍らせ、行動不能にさせていく。
だが風紀委員も決して甘くはない……。
炎の異能の使い手、雷の異能の使い手がそれぞれ炎や雷で攻撃をしかけてくる。
そしてサイコキネシスを使い手が、先程壊した二階の部屋の瓦礫を暗黒染みたゴーレムへと射出する。
黒騎士は次々に風紀委員を斬っていく。
もちろん、その剣術は他者を傷つけず、気絶させるだけである。
ある程度の攻撃は、漆黒の鎧によりものともしない。
だがその時、風紀委員の熟練した剣術使いが迫り、背後から黒騎士を斬りつけようとする。
一階廊下。
スケルトンは、集まってくる風紀委員の戦闘員を骨で次々と拘束し無力化していく。
風紀委員の異能者により、確実にスケルトンの数も減ってきている。
レーザーを放つ異能者と大鎌を自在に操る超一流の実力者によりスケルトンが八体も消し飛んでしまった……。
こちらはかなり、形勢が悪い……。
ご案内:「風紀委員会本部」に川添 孝一さんが現れました。
■白崎玲刃 > ……っ…!異能者か…
【頭上と足元に気配を感じた玲刃は、立ち止まり後ろに飛びのく
コンクリート塊が足を掠め多少の傷を負いながら、その衝撃で弾き飛ばされる
なんとか、壁の破砕後から落ちるのは避けられたものの
相手は異能者、予断は許さぬ状況であった。】
[みう まずいじょうきょうが おこった いのうしゃに みつかった]
【ミウに現状を念話で伝えつつ
華霧の様子を見据えて、どうするか策を練る。
その手にいつの間にかナックルが嵌められている様子を見ながら、これは不味い状況だと判断する。
現状、風紀委員を傷つけるわけにはいかず、
更に、正体がばれる事を避けるため、収納の魔術も呪符も投げナイフも
風紀委員の前で使用するわけにはいかなかった。】
何か…策は……
…!多少強引だが…これなら…
【とはいえ、現状を解決する手段は見つからず、どうするべきかと悩んでいた玲刃は
ふと、思いついた策を実行する、それは強引な手段であった。
華霧へは向かわず、身体強化の重ね掛けによるによる力を使い、腕が砕ける事も構わずに
床に拳を全力で打ちつけ砕き、下の階である5階へと落ちて逃げようとするのであった。】
ご案内:「風紀委員会本部」に流布堂 乱子さんが現れました。
■川添 孝一 > 風紀委員会に男が足を運んだのは偶然だった。
ただ、怪異対策室三課が武力を持つ集団である以上。
風紀と折り合いをつけるために話し合いを繰り返すのは当然の帰結。
それが。
それがこの惨状に出くわすとは。
気が遠くなる。
これだけの被害を取り返せるのだろうか。
いや、物損だけじゃない。
被害が起きたことでどれだけ犯罪対策が後手に回るだろう。
白色のローブを羽織った少女に近づく。
「お、お前……何してるんだ……?」
「放火ッ!! してんだぞ!! 人がいる場所に!!」
本当の悪を前に、ただ叫ぶことしかできない。
■流布堂 乱子 > 「最後に確認ですけれど、中にはウチの身内はいないんですよね?
……わかりました、それじゃこちらは休暇を継続しますから。先生も夏休みの体調管理に気をつけられますよう。」
端末をしまうと翼を打って、ここまで飛んできた水平飛行からホバリングへ。
玄関前に陣取るゴーレムの上空を取った。
襲撃が始まった連絡を受けてから小一時間。急ぎ足だったが準備はしてきている。
右手に外装した擲弾砲をゴーレムに向けた。
……本当にゴーレムなのだろうか、あの黒い何かは。
通信で聞いた時点では頭部をふっ飛ばせば終わりと思っていたが、
「……そう簡単に済むならここまで時間も掛かっていませんね。」
とりあえずはプランを変更せず、頭部へ向けて榴弾を放つ。
破片の飛び散る類でも無さそうに見えるが、さてどうか。
現状に対しては極めてどうでもいい話だが、
昨日身元バレしそうになったので風紀委員会側に混じっておこう、
という発想のもとにやって来た乱子であるが、
玲刃の目的が神話級の龍殺しの剣にあると知れば協力していたかもしれない。
生憎と神ならぬ龍の身には詮無き話であった。
■園刃 華霧 > 「ハッ、流石に避けたカ!」
ソレくらいは想定内。出来れば仮面くらい剥がせれば上々、と思っていたがまあそう甘くもないか。
いやー、しかしまさか女子トイレでバトルなんてねぇ……って、おいおい。
いきなり床をぶち抜くとか、おまえ、八極拳使いかなんかなのか?
「待てヨ、変態サン! とっ捕まえテ、余罪を吐かせてやル!
大方、女子寮に湧くって噂の覗きも御前か!?」
躊躇なく共に落下する道を選ぶ。
わかってる。わざわざあんな怪しい格好して侵入する変態は……いや、多分いるな。
さておき、こんなトコまでワザワザ入ってくるヤツは多分別件だろうけれど。
あえて、そういう煽りをする。
煽るだけ煽る。いいも悪いも、それは自分のスタイルだ。
■白色のローブを羽織った少女 > 休憩スペース。
玲刃君から異能者に見つかったという連絡が念話でくる。
『っ……!?
もし無理そうなら、一旦退くのも手よ……?』
テレパシーで玲刃君に伝える。
だがここで一度引いてしまうと、剣を取り戻す事はかなり難しくなるだろう。
風紀委員が放った銃弾は全て、ミウに命中。
だがダメージは受けたものの、神の体は丈夫だった。
平然とした態度で、現れた孝一君を見据える。
ミウは“音声を創造”し、普段とは違う声、口調を発する。
『そうだな、燃えているな。
しかし、それがどうした?
建物が燃えているなら、非難するべきではないか?』
そう言って、サイコキネシスで気絶している三人を孝一君に手渡そうとする。
非難してもらうのも、風紀委員の戦力を削ぐという意味では重要だ。
正面玄関前。
炎の異能者、雷の異能者、念力の異能者……彼等もまた、かなりのやり手だった。
彼等の攻撃を三発、ゴーレムはもろに食らってしまう。
かなりのダメージを受けた上に、ゴーレムの一部分が大きく破損。
さらに他の大勢の風紀委員もロケットランチャーなど破壊力のある武器で応戦。
ゴーレムは煙にまみれ、どんどんダメージを負い、片膝をつく。
だが暗黒染みたゴーレムは目からレーザーを放ち、三階の部屋三つあたりを破壊する。
陽動は派手にいく。もちろん、その三つの部屋にも人はいない。
だがその時、上空をとられた人物より擲弾砲がゴーレムの頭に放たれた。
ゴーレムはそれによりよろけてしまう。なんという大きな痛手だ。
だがなんとか、ゴーレムは踏ん張った。
『中々ニ楽シメソウダナ。
ダガ、カナリノ傷ヲ負ッテシマッタ』
なんと、ゴーレムは喋った。
『マズハ、オ前カラダ』
上空にいる少女へと目を向け、そこから冷気のビームを放つ。
そのビームに物理的なダメージはない。
しかし、凍らせて動けなくさせる効果がある。
二階廊下。
黒騎士は、風紀委員剣士の斬撃を剣で受け止める。
そして二人はしばらく、鍔迫り合いになる。
一階廊下。
スケルトンは確実に数が減ってきている。
このままでは、ネクロマンサーも危ない。
■白崎玲刃 > [おいおい いろいろこわしてる おれがいえたことではないが
さすがに ほうかは まずいぞ]
【落ちた部屋の窓から見えた光景の一部、
建物に燃え移る火を見つつ、慌てて念話で送る、玲刃の念話は抑揚が薄い為、
長い文だと上手く伝わるかは不明であるが
それでも、流石に放火は人的被害を出しかねない。
だがそれは、玲刃の床砕きにも言えた事であろう、
玲刃は探知の魔術が使えるが故に下階の部屋に人がいない事を把握出来ていたが
下手をしていれば、人を潰していた可能性もある。】
やはり、追ってくるか…
【共に落下する華霧を見つつ、
しかし、落下したのは玲刃が先の為、華霧が何かしなければ、
玲刃は先に着地と同時に、受け身を行いそのまま
落ちた部屋の外へと走り出てゆこうとするだろう。】
……ああ、別に変態でも構わないさ…
まあ、覗きに関しては…やって無いとは一応言っておくが
【華霧の煽りは意に介した様子も無く
そのまま、走り逃げる事を玲刃は選択するのであった。】
[いや さすがに ここまでしておいて ひけば
もう とりもどすのは むりになる
だが みうが もしげんかいなら ひいてくれ いちおう さいごまで ためしてみようとは おもう]
【ミウの念話を聞き、念話を返す。
ここで引くと言うのも手ではあったかもしれないが、
ここまで大きく事を起こしてしまったなら、事を終えるまで引くべきでは無いかもしれないと
判断するのであった。】
■川添 孝一 > 銃弾を受けてなお、怯まぬ賊。
規格外の存在であることは明白だった。
だが、そんな存在が何故?
何故こんな蛮行を。
「お前……」
気絶している三人を抱える。
「お前……こいつの名前知ってるか…?」
「木戸アキラ。クソがつく真面目で俺が不良から更生した後も目ぇつけてきやがる」
「こいつは三田カナコ。面倒くさい性格で、それでも人のために毎日身を粉にして働いてた」
「こっちは赤坂ショウジ。こんな世界だからこそ、いや……こんな世界を守ろうとしてた…!!」
怒りに髪が逆立つ。異能の肉体侵食率が一気に跳ね上がる。
「お前にどんな事情があるかなんか知らねー!!」
「ここまでやるんだ、お前が風紀に親兄弟殺されたのかもな!!」
「だが………」
現れた救護班に優しく三人を預ける。
「だが……それでもテメェは許せねぇ!!!」
「人が死ぬかも知れない状況でナメた口を利いたテメェだけは!!」
懐から櫛を取り出し、髪を撫でる。
いつもの髪型。戦える。この絶対悪を必ず倒す。
「怪異対策室三課室長!! 生活委員会ヒラ!!」
「男、川添孝一!! 一世一代の男伊達!!」
「テメェをブッ倒す!!」
拳を引く。
「鬼角拳!!!」
拳を巨大化させ、白色のローブを羽織った少女に向けた。
全力全開の巨拳が唸りを挙げる。
ご案内:「風紀委員会本部」に平岡ユキヱさんが現れました。
■平岡ユキヱ > ぺたぺたとサンダル姿のまま、本部に現れる変な奴。
頭は金髪、シャツには『非番』のプリント、ショートパンツ。
そして、青白い閃光。
「ここの風紀を襲撃したやつは誰だぁ!!」
風紀委員の一部が駆け寄り、来たかユキヱ! と声をかける。ならば。
「武器と、敵はどこだ! これは実質の本土決戦である!
各々方、一人十殺の覚悟でもって断々固として敵を殲滅しろ!!」
変な奴が一人増えて、浮足立つ風紀に指示を飛ばし始める。
■園刃 華霧 > 「ワンテンポ遅い?追いかける側は間に合わナイ?そう思っタ?」
相手の動き。躊躇なく走り去ろうとする動きを見る。
おそらく相手の読みは、自分の言った通りだろう。
落下しながら笑う。ククク、と笑う。
ニタリ、と。およそ乙女らしからぬ、獣じみた笑顔が浮かぶ。
「残念だったナッ!」
受け身を取り、走り去ろうとする男を見据え……
まだ落下途中のまま"空中"を蹴る。
まるで、そこに壁が存在していたかのように。
反動を得て、女は"空を駆ける"。
「ついでにオマケなっ!
覗きじゃナイなら、何犯だイ?!」
聞こえた言葉に答えながら……空を駆けて駆けて……
高度を落として地面に戻りながら……
先ほどと同じ、コンクリート塊の投擲を不審者へと行う。
狙いは足下と、相手の踏むであろう先への牽制。
これで足を止められれば、少しは"遊べる"かもね?
■流布堂 乱子 > 「……その容姿で、目からビームが主要攻撃手段って予想に反しますけれど、
期待には添えていないというか、
まあご期待に答えてもらってたら私が楽だっただけですけど」
腰のポーチから給弾しようと思っていた掌より大きな榴弾をビームに向けて投げつければ、
凍ったうえでビームはさらに乱子へと直進する。
連絡は聞いているし、先程から見ているとはいえ氷はまずい。
よほど普通のレーザーでも撃ってくれていたほうが外皮で弾ける。
炎を使えるなら使っているが、
現状尾と翼を出さないと不便なので、
「龍に変化する能力者の風紀委員」を作り上げて押し付けようとしている時にそんなものは出したくない。
たとえ少女の体が凍りついても龍腕を顕現させられるだろうが同様の理由から却下。
羽撃けばこの一瞬はかわせるだろうが、
撃ちっぱなしのビーム相手に追いかけられればいずれは捕まる。
運動性で勝負できるような飛行性能ではない。
「……まあ、頭部が弱点と言っていただいたようなものですから」
先ほど自分で否定した羽ばたきを打つ。
方向はゴーレムへ向けて。
ビームを掻い潜るようにして、
あるいは当たったところで速度を殺しきれないことを期待して、
螺旋状に頭部へと突っ込むルートを取る。
ぶち当たれば、右足に仕込んだプラズマブレードで首を刈り取る。
たとえそれが叶おうと叶うまいと、氷漬けになって落下すれば命の危機があろうと、
ルートはブレることもなく―
「私でおしまいの間違いでしょう、この木偶の坊」
■白色のローブを羽織った少女 > 休憩スペース。
玲刃君にテレパシーを送る。
『さすがに放火はやりすぎたかしら……
人的被害を出さないようには尽力するわ』
人的被害は出さないようにするつもりだったが、風紀委員に危険が及びそうなら火を消滅させよう。
とは言え、形勢はだんだん不利になっていく一方だ。
再び自分の声ではなく、音声を創造する。
『ほう……そうだったのか。
それはすまない事をしたな』
ミウはすまない事をしたと思っているが、創られた音声からはそれを感じさせないだろう。
『そうだ、こちらにも事情がある。
この場は退いておけ……。
お前は風紀委員でもないのだろう?』
淡々とした声で述べる。
『この私をぶっ倒すと?』
孝一君の拳が巨大化する。
そして、拳は白色のローブを羽織った少女、ミウへと見事直撃。
神は傲慢、傲慢故に油断してしまう……。
回避行動をとらなかったが故に、その甚大なダメージを負ってしまった。
そのままテーブルに乗っていたミウは地面へと叩きつけられてしまう。
結構なダメージを負ってしまったが、すぐに立ち上がった。
『中々の攻撃だな……。
では、今度はこちらからいかせてもらおう』
とは言っても、肉体ダメージを負わせるわけにはいかない。
ミウはなんと、闇属性の魔術を創造する。
『──ダークネス・エナジードレイン!』
十数もの漆黒の魔法陣が白色のローブを纏う少女の周囲に展開される。
その魔法陣ひとつひとつから、千を超えるであろう緑色の触手が出現した。
触手はローブの少女を囲む風紀委員、そして孝一君に捲きつこうとする。
肉体的ダメージはない。
だが巻きつかれた者の魔力を吸いとり、やがて気絶してしまうのだ。
正面玄関前。
『アマリ無益な血ヲ流ス事モアルマイカラナ』
氷結のビームに対して、少女は榴弾を投げつける。
その榴弾は氷ってしまった。
『何ヲ勘違イシテイル?
頭部ガ弱点トハ限ラヌゾ?』
なんと、親切に教える。
しいて言うなら、目立った弱点はないが、その分全体的にダメージがいくと言える。
少女はビームを回避していき、プラズマブレードをゴーレムの首に直撃。
ゴーレムはさらに両膝をついたが、すぐに立ち上がる。
『強イナ……。
ダガ、コレデハドウダ?』
ゴーレムは掌を乱子へと向ける。そして魔法陣が展開される。
なんと、上空からいくつもの巨大な氷柱が落下してきた。
広範囲であるが故に、回避を困難とさせる。
地上の風紀委員が次々に氷っていく事だろう。
もちろん、肉体的なダメージはない。
二階廊下。
黒騎士と風紀委員の剣士が激しい戦闘を繰り広げている。
一階廊下。
スケルトン軍団が進行中。
■白崎玲刃 > ……なっ…
ただでは逃げれるとは思ってはいなかったが、まさか走るとはな…
【これだから異能者相手だと策もままならないな、と仮面の下に苦笑いを浮かべ呟きながら
空中を掛ける華霧の様子を見て目を見開くものの
異能者として認識した相手との戦闘である、
この程度の予想外は予想通りである。
だが】
………っ!やはり、そう来たか…
【解ってはいても、落下直後は簡単には動けず
交わそうとはしたものの、大きく当たり、片足が折れる。】
今のところは、建造物等損壊罪と器物損害罪と建造物侵入罪の3コンボだろうな
あとは、公務執行妨害か?
【そうして、犯罪について問われれれば、
今の状況において受けるだろう犯罪について苦笑いと共に言う
無論、言ったのは、現状においてのみの罪ではあるが。
そうして、苦笑いを仮面の下に浮かべつつ、
どうすれば、華霧に傷を負わせずに、
そして、正体をばれずにこの場を逃げらるか思考する。
治癒の符を使えば、足を治せるだろうが、混成補助魔術は玲刃オリジナルのものであるため
そこを取っ掛かりにばれる可能性もあり、容易には使用できなかった】
[ああ さすがにな
そして げんじょうは だいじょうぶか]
【が、そうして、悩んでいる所にミウからの念話が聞こえ
火の使用を止めた様子にも安堵しながら、ミウの身を心配しする言葉を送る
そうしながら、華霧と対峙する玲刃は、
焼け石に水であると思いながらも、隙を作る為に、
未熟な気配遮断を使い、片足と手で這う様にゆっくりと動きながら、瓦礫の影に隠れようとする。
隠れてしまえば、ローブの配色と気配遮断の相乗で、
影に紛れ、普段の気配遮断よりは見つかり難くなるだろう。】
■川添 孝一 > 創られた声に激昂する。
「すまないで済むかッ!! 風紀委員会はな、人を守ってんだよ!!」
「俺みてーな不良崩れが足を踏み込んでいいのかすら今でもわかんねーくらいに!!」
「正義を守ってきた場所なんだよ!! それを、お前!!」
拳をグルグルと振る。
「一歩たりとも退かねー……風紀委員には、ダチがいる」
「ダチを傷つけるヤツとは、誰とでも戦うんだよ!! この俺はなぁ!!」
すぐに次の一手、魔導書『世界は蜜でみたされる』を取り出す。
攻撃だ、攻撃の一手で黙らせるしかない。
魔導書『世界は蜜でみたされる』の最終ページを開き、最終詠唱を始める。
「333番目の記憶!!」
「周りに水平線しか見えない黄昏時の海原で、小舟にひとり乗せられた狂女が…っ」
詠唱は中断する。緑色の触手が巻きついていく。
魔力が吸い上げられ、最終詠唱を完遂することはできない。
「そうか、魔術師かテメェ!!」
右腕と左足を軟化させ、鞭のように振るって触手を切り裂く。
自分の周りだけだ、自分以外を守る余裕はない。それだけの相手だ。
「なら異能で黙らせる……!! 異形の神の名の元に!!」
「追放されし異形の果実(エグザイル・レッドフレア)!!」
異能を名乗る、それこそが攻撃。
極限まで高められた『声』が武器。
悪魔の咆哮(デモニック・ハウル)。
彼が一度受けた技を模倣して生み出されたそれは、指向性を持って白色のローブの少女に音の塊を叩きつける。
■平岡ユキヱ > 幾つもの異能や魔術、不思議が飛び交う中をずんずんと平岡ユキヱが進む。
勝手にその幾何かのエネルギーを吸収しつつ、自身の変換炉は着々とその発電量を上げていて。
「私の武器は!? 開発中のアレでもいい!」
見つからぬ! と叫ぶ風紀。
「わかった!」
ユキヱは武装する事を放棄した。代わりに拳を握り。
正面玄関、見知らぬ者同士が対峙している。
方や氷柱を降らせ、方やそれに抵抗するか。
「有志の生徒か!? 助けはいるか?」
そう、ただ短く言葉を述べて。 >流布堂
■流布堂 乱子 > 首を刈ってゴーレムの後方に着地。
片足と尻尾でバランスを取った後に、尻尾を横向きのベクトルで叩いてスピンターンすると、消えかけのプラズマブレードが玄関に焦げた線を描いた。
振り返ってみれば、首を落とす勢いで振りぬいたにも関わらずゴーレムはすぐに立ち上がっている。
見上げる視線の先、黒い闇が分かたれることもなく繋がっているのが見えた。
「なんとまあ、お約束に従うつもりのない…
こういう時は蜂の一刺しのように的確な部位への鋭い攻撃で倒れたほうが見栄えがいいんですよ?」
(私は倒れたりしませんけど)
冗談のようにつぶやくが、アレでダメなら少々打つ手に欠ける。
榴弾砲は装填に手間がかかった。短砲身短射程で大口径まではいいが、榴弾が大きすぎるのだ。
とまれ、無益なと言うからにはあのゴーレムには目的が有る。
先程から動きを止めることに固執しているし、その上でも無駄な動作が多すぎる。
人の居ない場所を探してから足を運ぶ、目線を巡らせてからビームを撃つ。
今この場に至っては"掴める位置の相手にわざわざ魔法を上空から降らせる"。
(まあわざわざ斬りつけてくるような相手を掴むこともないですけれど)
「風紀委員ですよ、服を見ればわかるでしょう」
無残に改造され、翼を生やせるようにされたその制服の背中を向けて、
流布堂乱子はそう答えた。
焦って動くこともない。たとえ広範囲に落ちてこようが軌道を変えないなら、よく見た上で羽撃けば事足りる。
「助けなら不要です、こっちは足止めと陽動ですから。中を回ったほうがいいかと思いますよ」
凍りつく風紀委員達を視界に入れながら、表情ひとつ変えずに、声音さえ動かさずにそう言った。
他が動けない中で自分一人が活躍する分には、当初の目的に適っている。
この襲撃の阻止とかそういったことは人に任せたいところである。
■白色のローブを羽織った少女 > 休憩スペース。
火がだんだん消滅していく。
火災により人的被害を出す事もない。
玲刃君は大丈夫なの……?
作戦は既に、予想外な方向へと進んで、劣勢になっていく。
そう心配していると、玲刃君から念話がとどく。
『分かったわ。
それとごめんなさい、わたしの方もそれ程ながくもたないかもしれないわね』
テレパシーで返した。
孝一君が激怒する。
創られた音声で返した。
『なら守ってみるか? この場所を。
お前の信念は素晴らしいものだ。
だが、別にお前の友達を殺そうなどと思っていないから安心していいぞ』
孝一君は魔導書を取り出してみせる。
詠唱している途中、ダークネス・エナジードレインにより発生する触手に巻きつかれたのだ。
しかし、その触手は切り裂かれてしまった。
そして次の瞬間、孝一君から放たれるのは音の異能。
ガードは難しい……。
『ぐっ……』
音の塊に叩きつけられ、空中に投げだされるが、そこで姿を消す。
テレポートをしたのではなく、神体能力で単に高速で移動しているのだ。
さすがに、音の塊によるダメージが大きなものだ……。
ゴーレムや黒騎士、ネクロマンサーを事前に創造していた事もあり、少々疲れてきただろうか。
ミウは動きながら四本の邪剣を創造し、それを孝一君に射出する。
この邪剣は殺傷能力こそないが、刺さった者を痺れさせる効果がある。
二階廊下。
黒騎士は、風紀委員の剣士を無傷の剣撃で斬り付け、気絶させた。
その後、集まる風紀委員をも一通り斬りつけて気絶させる。
風紀委員達に傷はない。気絶してもらっているだけだ。
そして黒騎士は窓から外へと飛び出す。
正面玄関前、ユキヱちゃんの前に落下する。
■園刃 華霧 > コンクリート塊が命中したのを確認する。
うーん、当たんないかもな―って思って牽制兼ねてたけれど見事に当たったなー。すまんこって。
そうなると、あれが幻術でもなければ、それなりにダメージは行ったはず。
ちょっと可能性だけ注意しつつ……よるかね。
「着弾、かっくにーン。ヨーソロー?」
明らかに発言が間違っていたが、特に気にしない。
ザッ……と音を立てて、地面に足をつける。
小出しにしているとはいえ、異能を連続で使い続けると消耗が激しい。
いつの間にか取り出したシュークリームを齧る。
うム、旨い。
「さて犯罪の三連コンボのオニーサン……いや、一コンボ追加して四連カ?
ワオ、ファンタスティック! アー、そりゃまあいいとしテ。
隠れんぼすル歳でもナイだロー? つれないコトすんなヨー」
これ見よがしにコンクリート塊をもってポンポンっと手の内で転がす。
さて、と……おやおヤ、ホントに隠れる気かね。
気配が薄いし……いや、なんか隠れようとしてるっぽい影は見えたからあの辺、かな?
正直、ちょっとだけ自信はない。
「あのサー。今なら少しは眼ェつぶっテやるから大人しく出てこナイー?
ケガもしてるだロ? 無理すンなっテ。
もし出てこナイとさー、アタシも無茶せざるヲえないヨー?
そうするト、もっとイッたーい目に会うかもしれんゾー」
そうやって、のんびりとした声で……しかし、油断なく声をかける。
当たりをつけた位置に……は移動せず、隠れ場所になりそうなところを一望できる位置に陣取る。
■白色のローブを羽織った少女 > 正面玄関前。
『ソウ簡単ニハ、ヤラレルワケニハイカナイナ。
トハ言エ、サスガニ死ぬヌカト思ッタゾ!』
暗黒染みたゴーレムは乱子に向けて構え直す。
強い……。
下手をすれば、首を刎ねられていたかもしれない……。
氷柱の雨も、次々と避けられていく。
魔術では、彼女に対抗できないのだろうか……。
相手側に援軍が現れるも、すぐにこちらの味方である黒騎士が駆け付けてくれる。
『助ケハ不用カ。
我モ舐メラレタモノダナ。
デハ、悪イガオ前ノ実力を認メテ攻撃サセテモラ。
精々、死ナナイヨウニナ』
空にいる乱子に拳を向けて、ロケットパンチを放つ。
今回の作戦で初めての物理攻撃である。
一階廊下。
スケルトンが集団で、一流の異能者までも捕えていた。
■平岡ユキヱ > 「…これは失礼。同志については、『顔』で覚えていたもので」
遠まわしにお前のような風紀は知らぬ、と釘を刺す。が、
状況と動きからして味方と判断するほかない。 >流布堂
こうべを垂れ。次の階へ進もうとした、その時…。
「むッ…! …!!」
刀を抜こうとした動きで、自分が改めて未熟である事を知る。まだ丸腰の覚悟が出来ていなかったことに対する自身への舌打ちだ。
数歩跳ねるように引くと、着地してきた陰に対峙する
「好都合だな…敵の方からきてくれたか」
ニヤリと笑ってファイティングポーズ。
冗談でもパフォーマンスでもなく、ただバカ真面目に本気で素手で黒い騎士を仕留める気でいた。
「…その行為、改めて宣戦布告と判断する! 我ら風紀に迎撃の用意あり!」 >黒騎士
■川添 孝一 > 「ハ? お前…わかってねぇな……?」
「死んだんだよ……風紀委員会っていう、正義の象徴が賊に殴り負けたんだぜ?」
「お前は間違いなく人を殺した。風紀と言う正義を殺したんだッ!!」
「明日には風紀を辞める奴も一杯出るだろうなぁ……そいつらがどんな目をしているのか…」
「それを考えただけでテメェにゃ虫唾が走るぜ!!」
悪魔の咆哮は確かに相手に効いた。
だが。
「速ぇ!?」
相手の高速移動に目が追いつかない。
動体視力を異能で限界まで高めても、だ。
これでは戦いにならない。
「…!!」
射出される四本の邪剣、それを引きつけながら二本、三本と骨の剣で弾き飛ばしていく。
「ぐぁ!?」
最後の一本が、腹部に突き刺さる。
死を覚悟したが、どうやら麻痺を起こさせるだけの効果のもののようだ。
即座に邪剣を引き抜き、獰猛に吼えようとし、膝を突いた。
「ぐっ………」
このまま負けるのか? 風紀委員会の仲間に顔向けもできない。
仲間が傷つけられた。心を、プライドを、守ってきた大切なものをたくさん傷つけられた。
なら、死んでも退けねぇ!!!
「なぁ……お前…家族はいるか?」
「俺はいるよ……妹だ…大切に想っているが、嫌われてる」
「そんな妹を守ってくれるのは、結局のところ風紀委員会なんだろうな、って思うよ……」
「風紀委員会は、日々の生活の中にあって人々を守り抜いてきた」
「なら……その風紀委員会を守るために戦うやつがいたっていい!!」
拳を振り上げる。死んでも構うか。
男伊達を口に出した以上、命懸けで戦うのは当然のことだ。
「――――――――っ!!!」
声帯を変質させ、冒涜的なその神の名前を呼んだ。
彼は一度、その名を呼んで異能を進化させた。
二度目の進化は、彼の命を確実に蝕むだろう。
それでも。
「お前が踏み躙ったものを!! 守り抜く力を!!」
「冒涜されし異形の花々(エグザイル・ブルーフレア)!!」
心臓が跳ねた。
ただの脈拍ではない、朽ちる命のともし火を燃料に力を使っているのだ。
だが。
それでも。
死んでもこの蛮行を許すわけにはいかない。
体の筋肉を操作することで麻痺する体を強引に動かした。
微細なコントロールと莫大な出力を感じる。
川添孝一、死亡5分前。
踏み躙られた正義のため、理不尽な暴力に『それでも』と言いつづけるために。
命を燃やす。
■白崎玲刃 > [おれは いちおう ぶじだが
やはり そろそろ しおどきか
しょうしょう さわぎを おおきく しすぎてしまった みたいだな]
【ミウからの、劣勢であるという念話を聞き
ここまで騒ぎが大きくなれば剣の奪還の確率は皆無に等しいと玲刃も判断し
撤退するべきかと思考する。】
[みう てれぽーとは つかえるか
むりなら たすけに むかう]
【そうして、ミウに逃げる際においての手助けが必要かと問うのであった。】
どうにか身を隠せたが…ばれるのも時間の問題か…
【瓦礫の影に身を隠しながら玲刃は呟く
どうにか、華霧から多少、身を隠す事に成功したものの
直ぐにばれるだろう、だが、その少しの時間で十分であった
こちらを詳しく見られて無いなら身元がばれそうな魔術も使用できる
つまり、玲刃はその一瞬において収納の魔術を発動し、現状において必要だと思われる物品を取り出し、ローブの裏へと隠す】
ははは…しょうがないだろう?
この状況で俺が出来るのは隠れんぼくらいなんだからな?
【華霧の言葉に苦笑いで返答しながらも
玲刃は、こっそりと
セット C 小声で治癒の呪符2枚を発動させ、
片足を激痛は走るものの動かすには問題無い程度に治癒させる。
これで残りの治癒の符は4枚、もう、容易に怪我は出来ない】
多少は眼をつぶってくれるとは言っても
流石にこれだけ騒ぎを起こしてしまっていては情状酌量ってのは難しいだろう?
それに、痛い目に遭うのは慣れてるしな。
【仮面の下に不敵な笑みを浮かべて語りながらも
流石にこれだけの騒ぎを起こして情状酌量の余地ってのは難しいだろうなと、
ミウが戦っているであろう方向を見ながら苦笑いする。
そうしながら、玲刃はこっそりと取り出していいた
煙玉花火にチャッカマンで火を着け、簡易的な煙幕にする
無論、その煙玉花火を買う際においても、このローブを着ていた為、
そこから身元を判別するのは難しいだろう。
そうして、煙幕の中で体勢を整えながら、
ミウの返答を待つ。
ミウがテレポート出来るなら、外壁を壊して外へと逃げるだろう
テレポートが不可であれば、正面玄関のある方へとミウを助てけてそのまま逃げる策を実行に移しに向かうだろう。】
■流布堂 乱子 > 「いえいえ、ここ最近はこちらに『顔』も出せず。
…こうしてお役に立てれば少しは認めてもらえるかな、とも思いますけれど」
風紀委員のフリというのも半分は対外的なアピールだ。
本業を務めるにあたっても利用できるかもしれない、という思いつきの。
とはいえ最低限は言い繕いながら、これ以上ボロが出ぬよう彼女を他所に回せたことも少々安堵していたら、
窓から飛び出した黒騎士にジト目が向けられた。>ユキヱ
「ああ、やっぱり陽動と時間稼ぎは御否定なさらないんですね。」
こちらに取っては好都合。時間が来れば向こうから退いてくれるだろうし、
それを追えばこちらも安全に退場できる。
(……霧散されたらどうしましょう)
現れ方を考えると少々不安もあったけれど、まあ今はともかく…
「死なないようにって言ったって無理があるでしょう、これ」
目の前に迫る巨大な鉄拳への対処が必要だった。
先ほどのビームの時と彼我の位置関係は同じ。
むしろビームより小回りがきかない分潜り込みやすいと言えたが、
(近づいてももう一方の手が出るわけですね)
二匹目のドジョウとは行かない。
「迎撃の用意、か。悪くない考えですね」
異能を縛り、魔術を縛り、手も足も足りないから準備はしてきた。
しっかりと持つと擲弾砲に榴弾を放り込み、
もう一度ゴーレムの顔めがけて目眩ましついでに撃ち放ってから、落下しかねない勢いで高度を下げてロケットパンチの下を掻い潜った。
■園刃 華霧 > 「アタシは、遊ぶのハ好きだけどネ。でも面倒なのハ嫌いでサ。
隠れんぼの鬼って面倒ジャン?
それにほれ、素直に出頭したホーが身のタメって刑事ドラマでもよく言ってるダロ?
なんつったっけ……アレ。デカタンでもサー。
少しくらい、ジョウジョウシャクリョーしてくれるヨきっと多分おそらク。」
苦笑する相手に……まあ、そーだけどさー、と答える。
基本的にいい加減な性格であった。
さて、そうこうするうちに煙が上がる。
あーあー、予想通りの位置だったか。
にしても、ちょっと派手なことするなあ。
「アー……やっパ、逃げルって手段取ル?取っちゃウ?
じゃア、悪いケド……ちょこっとだけ容赦しナイ。
隠し芸第二弾ナ。」
途端……華霧の周りに数mほどに、コンクリート塊や石、ゴムボール、材木などが無数に現れる。
容赦する理由もなさそうなので久しぶりに遠慮会釈なしの……いや、まだ少し遠慮してるが。
とにかく、ちょっとだけ全力を出してみようかな。
ストレス解消ってやつだ。
「ファイエルッ!……だっけ?」
掛け声とともに煙の発生位置から其の周辺へと、雨あられの如く物体が降り注ぐ。
狙いも何もあったものではなく、適当に当たれば十分、という物量押しつぶし作戦だった。
「……当たったら死ぬホド痛いだローけど、ダイジョウブ。多分、死なないカラ。
死んだらゴメンしてナ?」
けけけ、と笑う。実際は流石に結構痛いで済む程度に加減はしているつもりでは有る。
あるが、まあ打ち所が悪いことだってあるかもしれない。
いや、多分ダイジョウブ、たぶんね。
■白色のローブを羽織った少女 > 休憩スペース。
孝一君の言葉は、かなり重いものであった。
音声を創造するのはそのままで発する。
『風紀という正義を殺した……か。
確かにそうなるかもしれないな。
お前は……優しい奴だな……』
最後の声は、どこか優しげだった。
出会った時の孝一君は、もっと悪かったイメージがある。
だが信念を貫きとおし、そして悪に立ち向かうだけの正義感がある。
その事に、深く感心していた。
邪剣四本を放つも、三本は弾かれてしまう。
だが最後の一本は見事命中した。
『家族……か』
孝一君の妹は知っている。
妹の話を聞く限り、孝一君が妹の事を大切に思っているとも感じた。
『そんなものはいない。
体を張って風紀委員を守るか。
それもいいだろう、正義と言える』
悪に立ち向かう孝一君がかっこいいと思えた。
しかし、今はミウに立ちふさがる者でもある。
『ま、待て……お前の信念は立派だと思うが、無茶はするな』
孝一君の行動を止めようとするが、敵側のミウの言葉はとどかないだろう。
その時、玲刃君から念話がきたのでテレパシーで返す。
『まだ余力を残しているから、テレポートは使えるわ。
だから、手助けはいらないわね』
念のために、ローブの中で魔力補充符を三枚使って神力を補充しておく。
『分かった。
お前の命が蝕まれてもいけないからな……。
この場は退いてやる』
そう孝一君に創った声で言い放つ。
そして、テレポートでこの場から姿を消すと同時に、触手も跡形もなく消えた。