2016/10/17 のログ
ご案内:「委員会街」に谷蜂檻葉さんが現れました。
■谷蜂檻葉 > 「……はぁ……寒。」
夕方過ぎ、谷蜂檻葉は委員会の用事で本部にまで顔を出していた。
その両手には幾つかの分厚い本を重ね、めっきり冷え込むようになった暗い夜道を歩いて行く。
息は白くならなくとも、厚着にならない制服に冷気が染み込んで肩が震える。
ご案内:「委員会街」に伊都波 悠薇さんが現れました。
■谷蜂檻葉 > 「夕方になる前に先行っておけば良かったな……そろそろマフラーを出してもいいかも。」
ブツブツと、寒さと仕事に文句を言いながら少しばかり早足で街灯の下を潜っていく。
■伊都波 悠薇 > 委員会街。
そこはあまり、悠薇にとってなじみのない場所だ。
だが、今日だけは勝手が違った。
少しばかり、異能に関する聴取。登録義務。
まじめな彼女は、その報告をしに来たというわけだ。
異能。天秤――
その効果を伝えた時、登録書を見たものは少し顔を引きつらせていた。
「……帰ろ」
そして――
「あ……」
また、会ってしまった
■谷蜂檻葉 > 「―――げっ。」
露骨に、表情が歪む。
随分と、”やりすぎた”程に感情(物理)をぶつけた相手だからというのが半分。
もう半分は、彼女の奇妙に過ぎる立ち位置にあった。
変というには、また変な。
(あぁ、もう。 なんでこう、タイミング悪いなぁ……。)
ともあれ、檻葉は『今まで通り』愛想笑い一つ浮かべて声をかける。
「こんばんは。 ……それで、調子はどうなの?」
■伊都波 悠薇 >
「――そんな嫌そうな顔をするのに。まだ笑って声をかけてくれるんですね」
寒そうな、少女を見て――手を差し出す。
手伝う、とでも言いたげだ
「――体調はいいです。でも、分からないことが増えました」
困ったようにつぶやきながら。
ふぅっと溜息。
どうしたらいいか、分からないといったしぐさだった
■谷蜂檻葉 > 「いいよ、持てる。」
っていうか、これ重くて悠薇じゃ持てないでしょ。
そう冗談めかして笑って差し出した手を言葉で止める。
(そういう『調子』じゃないんだけど。)
胸に留める嘆息一つ、解ってて言ってるんだろうなぁ。とも思ってまたどんより。
こっちがため息を付きたいぐらいだ。
「……あー、その、分からないことって?」
またぞろ、最近の悠薇の『いつもの』が始まるのだろう。そう思い言葉を濁しながら、それでも尋ねる。
■伊都波 悠薇 >
「……なんで嫌ってくれないんですか?」
分からなかった。
言葉にしないと分からないと彼女は言った。
でも自分もわからなかった。
嫌われるようにしているのに、学校で会えば
街で会えば。できる限り、嫌われるようなそぶりをしてきたのに。
必ず、彼女は笑う。付き合いがいい?
それだけでは、説明がつかない。
説明がつかないくらい、彼女は自分を切り捨てない。
――それは、なぜ?
「――みんな離れていきました。別れを告げていった人もいます。そっといなくなった人もいます。暴言を告げて、どこかへ行った人もいます。なのに、あなたは。あれだけ殴って、暴言を吐いて――私のことを嫌いになっているって伝わるくらい、激しい感情をぶつけてきたのに」
――どうして?
「どうして、嫌いになって。どこかへ行こうとしないんですか」
直球だった。
そして、その顔は。
どこか。、まけてもまけても、伸びなくても――
ただひたすら鍛錬していたころの悠薇が戻ってきたようで……
■谷蜂檻葉 > 「―――へぁ?」
ぽやっと、気の抜けた鳴き声が飛び出た。
「お、えっ、な、……~~~っ!」
目を見開き、手元から本を取り落としそうになるほどに動揺して目を見開く。
ハッキリと、彼女が今までの行動について―――『意味のない嫌がらせ』を続けてくる理由について言葉にすることはなかったからだ。檻葉は辛抱強く、彼女の真意を聞くタイミングを、それか彼女がその無意味さに気付くことを祈るような心地で待っていた。
だから。
■谷蜂檻葉 > 「こっ……の、 馬 鹿 ッ ッ !!!」
■谷蜂檻葉 > ィイィン。と、街灯の金属柱が共鳴でキンキンと小さく震えるほどに。
轟くほど大きな声で、怒鳴った。
今、今この子はなんと言った?『みんな離れていきました』?
もしかして、この馬鹿は、私だけでなく知人全てに自分と同じように”自分から嫌がらせを仕掛けて”いたのか?一人残らず?
■伊都波 悠薇 >
「――……っ……」
耳を抑えたくなるくらいの、それくらいの大声だった。
「――ば、ばかってなんですか?」
しゃがんで本を拾いながら、上を見て。
どこか器用な真似をしながら、馬鹿と、告げる少女を見上げる。
馬鹿?
なにが馬鹿というのだろうか。
なにが――罰を受けることの何が馬鹿というのだろう。
だから、反論する。
罰は、大事だ。そしてそれは必要な、礼儀だ。
「どうして、馬鹿なんですか。手のひらを返したように、仲直りしましょうって、言えるわけないでしょ? だってひどいことを言いました。そのつもりはなかったとしても――」
そうだ。しっかり覚えている。
自分は正しいと思って告げた。
あのとき、間違ったとは思っていない。後悔も。
だから、その結果をうけいれるのは当然だし、報いがあるのも当然だ。
「――私は、私なりに……考えてっ」
反論。それは今までの付き合いの中で初めての――
受け入れるとは違う、行為だった。
持論を展開するのとも、また、違う――
■谷蜂檻葉 > 「……けほっ! 」
喉が痛い。勢い良く叫びすぎた。
でも、まだ腸煮えくり返るぐらいにグラグラと燃え盛る気持ちが腹を焼く。
今なら火の一つでも吹けそうなぐらいだ。
「このっ……!! ほんっと、救いようがないぐらい!!
馬鹿!! 大馬鹿!! 馬鹿悠薇 !! ……この……っ!!!」
本を滑り落とした左手は、フルフルと血の気が引くほどに握りしめられている。
荒れ狂う感情を形にした言葉の先さえも見つからない。
「馬鹿!! 言えば、良いじゃないっ!!
そんなっ!! 馬鹿みたいな事するぐらいなら……っ!! 言えば良かったじゃない!!
許されないかもしれなくても!一言! 『仲直りしたいんです』って言えばっ……!!!馬鹿ぁっ!!!」
許されなくても、認められなくても。
そんな、『伊都波 悠薇が思い描く不幸』に飛び込む事なんて、なかったのだから。
■伊都波 悠薇 >
訳が分からない。
なんで怒っているのかが理解できない。
なんかまるで――自分のことのように。
「――いう資格があるとでも?」
そんな都合のいいことは考えられない。
なにせ、自分の英雄でさえ、できない芸当だ。
”物語のようにすべてがハッピーエンド”など――
「それで――それで誰が許しますか!! 私がなんていったか覚えてないんですかっ!!?」
叫んだ。まるで夢見がちの少女だ。
イライラする、腹が立つ。
どうしてこうも、姉も、誰もかも。
分かってくれないのか――
ようやく、ようやく――たどり着いた答えなのに。
どうして全部、否定されるのか。
……ねぇ、先輩。確かにそうかもしれませんね。でもね、先輩。――その大事な人を心の底から、信じられなくなって。その言葉が全部自分への慰めの言葉だって――そう思ってる――逃げられた側の気持ちが、わかりますか
そう、言った。
そう、踏みにじるように。
彼女がより、罪悪感に駆られるように。
「逃げたといった。臆病者とののしった。逃げられた側のことを考えてるかなどと、知ったような口をきいた!!
あなたの、記憶を踏みにじって心臓を言葉で引き裂いて、とても悲しそうな顔をさせた!!!!」
それなのに――
「言って許してもらって! 一緒にいて、辛くないわけがない!! 一緒に笑う資格なんてもらえるはずがない!!!! どうしてわかってくれないんですかっ、また、今日も!! あの日みたいに、なんで――っ」
思えば。
この先輩という人物は自分を一切理解してくれない。
違和感のある笑みをして。寄り添ってくれているようで――
なにか不思議そうな顔をして――
「どうしてなんですか。なんでですか――……もう、同じ日常なんて……」
歩けるはずもないってわかってるのに
「なんで、そんなことをいうんですかぁ……」
■谷蜂檻葉 > 「許されるかッッ!!!こんの馬鹿ッッッ!!!!!!!!!」
黄金の右ではなく、神威の左。
一閃抜かれた左の平手が顔面を張りつける。
鞭を振り抜いたような高い音がまた音のない街路に響く。
「許されないなら!! それで終わりのつもり!?
『許されないって解ってるから許される為のポーズもしない』!?
ッッざけんじゃないわよこの馬鹿!! せめてッ!!一言謝りなさい!!!!
『悪いことしたら謝る』!! 『謝ったら、仲直りする』!!!あんた今何歳!!!?
玩具取られた5才児みたいな事言って!!!!ほんっっっと馬鹿にするのもいい加減にしないよ!!!」
この子は、いつまでも下を向いて。
後ろを向いて。
周りを見ていないで。
ただ、自分《過去》ばかりを見ている。
「間違った事したって言うなら、それを認めて、前向きなさいよ!!
一緒に笑えなくても、また新しい誰かと笑いなさいよっ!
『二度とあんな事はしない』って心に誓って、今までと違う日常で……っ!!」
罰を。というのであれば。
その消えない過去を忘れずに思い返し続けることが本当の罰だと。
―――未だにその罰を直視できない罪人は知っていた。
「それが、『間違った人』に必要な事なんじゃないの……?」