2015/06/18 のログ
ご案内:「学生通り」に安土 治弥さんが現れました。
ご案内:「学生通り」に十口 風さんが現れました。
安土 治弥 > 学生通りに佇む妙に暑苦しいラーメン屋。
その名もラーメン三郎。
暖簾を潜るなり愛想の悪い店員へと鋭く視線を送った。

「ヤサイマシマシニンニクアブラカラメ」

十口 風 > 「ム」

その行きつけの店に、見知った顔を見つけて一瞬注文が遅れる。
それでも特に戸惑うこともなくいつもどおりの言葉を店員に放ち、件の人物の近くへ行く。

「ニンニクマシマシヤサイアブラマシカタメ」

安土 治弥 > 記憶は失えどコールの仕方は忘れない。
素晴らしい事だ。
昨日の自分を覚えてはいないがかつての世ではひとかどのサブリアンだったに違いない。
時間が時間だけに客は多くない。いつものように行列を気にして忙しなく喰う必要はなさそうだ。

「ん?」

ラーメンを待つ最中、隣の席の男に視線を送った。

「よぉ、深夜にラーメンか?
お互い明日の胃が思いやられるな」

十口 風 > 彼――十口風は汗だくで、首からタオルをかけていた。
スニーカーもジャージの裾も砂で汚れている。
椅子を引いて席に座ると、肩からもパラパラと砂が舞った。
すまないなと一言だけ謝り、カウンターに落ちた少量の砂をタオルで拭う。

「腹が減った時に好きなものを食うのが一番健康的だと思うがな」

安土 治弥 > 思索。迷わずこちらに近付いて来たのだからきっと知り合いだ。
メモの中に思い当たる人物はいたろうか。
思い出しながら会話を続行。
幸い話すネタには困らなさそうだった。

「何だか妙に砂っぽいな。どこかに深夜のジョギングにでも行ってたのか?」

靴や裾くらいならともかく肩まで砂まみれとは奇妙な様子だった。
よもや砂場遊びの帰りでもなかろう。

十口 風 > 「浜辺で日課の正義を少々……」

首や肩をコキコキと鳴らすと、手の平をじっと見、拳を握りこむ。
ぼんやりと厨房の湯気を追ったあと、じ、と碧い視線が安土の顔を辿った。

「君、名前はなんと言う」

安土 治弥 > 聞いた単語の意味を反芻。
正義の意味は分かるが日課にするようなものであったろうか。

「もうちょっと具体的に頼む。浜辺で何の正義を実行したって?」

碧の視線は強い。綺麗な顔立ちだが、女々しくはない。
一拍遅れて名を尋ねられたことに気付いた。
知り合いだと思ったのは読み違いか?

「安土治弥だ。アンタは?」

学年が分からないので曖昧に二人称をつける。
返答が来る前にドッサリと具を敷き詰めたラーメンが置かれた。

十口 風 > 「掃除だ!!!!」

言ってのける。彼にとって普遍的な善行は正義であり、彼の日課とするところだった。
反芻する彼の顔から離れた碧い視線は、同じくして置かれた仰々しいラーメンに注がれた。
割り箸を手に取り、集中してパキリと音を立てて小奇麗に割る。

「俺の名は十口風だ。安土、安土といったか!!!!!……そうか」

安土治弥。その名を聞いたような、聞いていないような。
記憶が曖昧なのはあの夜のせいだった。
今日のような深夜に、自分の身に降り掛かった恐怖のせいでなにもかもが吹き飛んでいる。

安土 治弥 > 「ああ、うん」

一分の迷いもない返答に微妙な返事を返した。
互いの自己紹介を終えた後、しばらく無言でラーメンタイムとなることだろう。
人に依っては視界に入れるだけでもうんざりしそうな脂っぽいラーメンを啜り。
水休憩の最中に声を掛ける。
ようやく当たりがついたのだ。

「十口か。この間は災難だったみたいだな。
モテそうな面構えなのに女嫌いとはまた難儀な」

十口 風 > 極太でもちもちとした麺。しっくり火が通り、スープの染みた野菜。
こってりとしたスープ、肉のうまみしかないチャーシュー。
完全栄養食である三郎の滋養が体全体に行き渡っていく。

同じく麺を食べきり、残すはスープに沈めておいたチャーシューといくばくの野菜のみとなり、
コップの水をぐい、とあおっている最中のその言葉。

「……嫌いなわけでは、ない」

氷がカランと音をたてた。

安土 治弥 > 梅雨のじめじめした気候も手伝って恐ろしく野郎臭い空間になっているなと汗を拭き拭き、スープを絡めながら歯応えのある叉焼をかじっている。
お隣さんも三郎のみなぎる栄養価に御満悦のようだった。

コップの中の氷をガリガリと噛み砕いて口の中の脂を流そうとする。

「嫌いな訳じゃないのか?さながらトラウマみたいな有り様だったが」

メモの内容を思い出しながら適当に口にする。
もう氷もなくなったコップを未練がましく手で弄び。

十口 風 > 砂と汗と脂の染みたタオルで額の汗を拭う。
栄養価以上に噴き出る汗は、おそらく現状の話題のせいだろう。
じりじりとした嫌な汗を振り払うように立ち上がり、セルフの水を汲みに立ち上がった。

「………苦手なだけだ」

弄ばれてるコップの前に手を差し出した。

「汲んでこよう」

安土 治弥 > ラーメンを貪っていたら自然と汗が吹き出て、ラーメン屋内の湿度に貢献していた。
若干跳ねてフードを汚したりしたものだから寝る前に洗濯機を回す必要が出てしまった。
綺麗に落ちれば良いのだが。白い服でラーメン屋が自殺行為である現実に戦いた。

「つまり嫌いってことなんじゃないか?と、あぁ、頼むよ」

嫌いと苦手の区別がつかない。
でも、話題に出るだけで重みを与える程度には苦手のようだ。

「何ぞ嫌な思い出でも……おっと、思い出したくなければ言わなくて良いけどな」

十口 風 > 貪るに値する食事というのは、なんともいいものである。
――のだが、胃の腑になにとなく重苦しい物が漂う。
流すように水をあおった。口の周りに未だ残る脂をタオルで拭い、席につく。
些か剣呑な――例えて言うなら吐き気を我慢するような――顔つきでコップを渡した。

「……君は何故この学園に来たんだ」

安土 治弥 > この際、服は諦めて洗おう。と袖口で汗を拭くと完食したラーメンの丼を他所にコップを受け取り、今度は少しずつ口にする。
金髪の青年の様子は尋常ではなく。
言葉を止めていると、逆に尋ねられた。

そう言えば質問攻めだったな。

「俺か?それが良く分からん。
気が付いたらここの学生だったけど、ここに来る前のことは覚えてなくてな」

お手上げの様子を示すように両手を上げて見せた。

十口 風 > 意識的に、意識を逸らす。
そろそろ店員に帰れと言われる時間帯なのもあり、ちらりと店の外を見やる。
整った顔とは裏腹に武骨な指を無意味にくるくると回す。
そのようにして意識を胃の腑から逸らしたあと、再度水を飲んだ。

「覚えていない?記憶喪失か?」

安土 治弥 > いい加減店員も店を閉めたいだろう。
長居も迷惑な話か。
同じように外を一瞥した後に視線を戻す。
どことなく落ち着かなさそうにしているのは、食ったなら帰れと言わんばかりの店員の視線が原因ではあるまい。

「そんな感じだ。特別したいこともないから出ようとは思ってないけどな」

代金を払って、ごちそうさん、とだけ告げる。
ややも涼しい外気を受けつつ。

「……そう言う十口は、どうしてだ?」

十口 風 > 同じく、ジャージのポケットから取り出した財布――学生が持つにはそこそこ質のいいものだ――を取り出し、
会計を済ませて外にでる夜風をうけ、少しだけ落ち着いたそぶりをみせた。

「俺は、俺の異能を消し去るために、この学園に来たんだ」

ご案内:「学生通り」に安土 治弥さんが現れました。
ご案内:「学生通り」に安土 治弥さんが現れました。
ご案内:「学生通り」に安土 治弥さんが現れました。
ご案内:「学生通り」に安土 治弥さんが現れました。
ご案内:「学生通り」に安土 治弥さんが現れました。
ご案内:「学生通り」に安土 治弥さんが現れました。
ご案内:「学生通り」に安土 治弥さんが現れました。
ご案内:「学生通り」に安土 治弥さんが現れました。
ご案内:「学生通り」に安土 治弥さんが現れました。
安土 治弥 > ラーメン屋を出れば、蒸し暑い室内とは打って変わって、涼しい外気を浴びることができた。
雨が降っていなかったのは幸いだ。

「……異能を?」

唐突な言葉に思えた。が、異能と呼ばれる千差万別の力が必ずしも幸福をもたらしてくれるものではないと、思い知っている。

「勿体ないな。肩に乗っける荷物にしちゃ、重過ぎたか?」

軽口を叩いて男子寮に向かう。方角はきっと一緒だろう。

十口 風 > 「勿体無いものか!!!……過ぎた力だとも、重い荷物だとも思わない。
ただただ……俺はこの異能が憎い!!!!」

ぐいーっと伸びをすると、その場でアキレス腱を伸ばすように足を折り曲げた。
タオルのはしをTシャツの襟に押しこむと、安土の背中にそう声をかけて駈け出した。
先ほどのエネルギーを消費するべく男子寮へと疾走る。

安土 治弥 > 走り去っていく十口の背中を追おうとは思わなかった。
走ったら吐きそうなくらいには満腹だったからだ。

「異能が憎い、ね」

言葉を反芻する。
自らの異能と折り合いのつかない生徒は珍しくはないのだろうが、憎いとまで言い切るのは余程のことだろう。
……先程の女が苦手なことと何か関係でも有るのかも知れない。

それは覚えていたら、今度尋ねることにしよう。
名を知ったのは収穫だった。
メモに何事か書きながら、のんびりと学生通りを歩いて行くのだった。

ご案内:「学生通り」から安土 治弥さんが去りました。
ご案内:「学生通り」から十口 風さんが去りました。
ご案内:「学生通り」にジークさんが現れました。
ジーク > 駆ける。
屋台の裏をすり抜け、階段の手すりを跳び、女学生に手を振って、
なお駆ける。

時折、振り返っては追跡者の姿を探す

ジーク > 曲がり角を飛び出して来た巨漢が、重心を下げてジークに跳ねる。
熟練のタックルだ。隙がない。
ジークはシンプルに横を選んだ、道に交差する川べりの柵を越え、船を蹴り、対岸に着いてはまた、走り始めた。

ジーク > 「今のはアメフト部、いや・・・
3D関節技同好会だな」

走るジークの足元、その影から襲う飛び道具をかがんで避け、
振り返り様に靴の底を見舞う。
シェイド忍術研究会は再び影へ倒れこんだ。

ジーク > チェス魔術クラブの首魁の後に回りこみ、背で吹き飛ばす。
陸上海賊部の挟撃を牽制し、ケルティックルーン弓道部の狙撃に備えて人通りの無い路地へ身を滑らせた

ジーク > 「折角の学生生活だ」
サイバー人形劇部の追撃をかわし
「青春の部活動に汗を流すのもいいかもしれないが」
ドラゴニックサバイバルゲーム部のトラップを踏破する
「これは何か違うだろ!?」
ボクシング部にカウンターを食らわせてはまた、建物の裏へと走った

ご案内:「学生通り」からジークさんが去りました。
ご案内:「学生通り」にカエラムさんが現れました。
カエラム > いくら大きな傘をさしても、風に吹かれた雨は足元を濡らす。
そんなことも気にせずに、黒い傘をくるりと回す。
今日は雨の日の学生通り。この日死神は、いつもより安らいでいた。

カエラム > 雨の日は晴れの日より、命の音がいっそう静かになる。
苦しみの音も、助けを呼ぶ音も、乾きの音も。

雨はアスファルトの地面に振りつけながら、残りの音さえも洗い流して。
いつもよりも静かになったこの世界に、死神は安堵のため息を漏らす。

『ずっと雨だったらいいのにね』

カエラム > 現世においてそういった音は、自分のいた時代と比べて少ない方ではある。
けれど誰も彼もが生きる事に苦しんでいて、体感としてはあまり差がないように感じている。

聞こえる全ての音を救えるとは思っていない。
生命の営みを、関係のない誰かが壊してしまうのはエゴに過ぎない。
だから、その関係のないところで救う。
怪我をした命や、苦しんでいる命。
周囲から聞こえる苦痛の音は消えないけれど、その中からひとつだけでも楽にできたのなら。
返ってくる『ありがとう』を聞くと、少しだけ気が紛れる。

車が水溜りを轢いていくと、ロングコートの裾に泥水が引っ掛かる。
帰ったら洗濯しなきゃなあ。

ご案内:「学生通り」に雪城 涼子さんが現れました。
雪城 涼子 > 「あーあ、危ないなーって思ったら……本当に雨降ってきちゃった……
 荷物がなければズルするんだけどなあ……」

買い物袋を抱えた銀髪の娘が慌てたように走っている。
傘は持っていない。どうやら傘なしでどうにかする算段のようだが、
既に大分濡れ始めていた。

カエラム > 慌てて走る銀髪の少女は、大分濡れている様子だ。
自分の持っている傘は、結構広い。それこそ人二人分ほど入りそうなぐらいにはそうだ。

「そこのお嬢さん」

迷わず声を掛ける、どう見ても怪しい感じの巨体。
屈みこんで少女に目線を合わせながら、傘を差し出してくる。

「もし良ければ、入っていくかい?」

雪城 涼子 > 「え……?」

声をかけられ、え、私?とちょっと思いながら振り返り……
そこには、なんだか大きな人がいた。
私は大きいほうじゃない、にしても比べると大人と子供レベルになるのは流石にビックリだ。そして

「……え?」

二度ビックリである。どうやら傘に入れてくれるらしい。
思わず、まじまじと相手を見つめる。普通怪しい、と思うべきなのだろうけれど……
今は好奇心のほうが勝っていた。

カエラム > ゴーグルの奥をよく見てみれば、骸骨のような眼窩がうっすらと見えるかもしれない。
フードとゴーグル、マフラーで隠してはいるが、その中身はドクロ頭なのである。

一方見つめられている死神の方と言えば、彼女の姿に既知感を覚えていた。
まるで雪城 氷架に似ているような……

「もしかして君は、雪城 氷架のお姉さんなのかい?
 ……ああ、どうぞ入って入って」

目の前の少女を雨に晒したまま話すのもどうかと思うので、
質問しながらも傘の中に入るよう促す。

雪城 涼子 > 「んー……」

なんだか個性的な顔の人ねえ……ドクロみたい。
いや実際ドクロなわけであるが、流石にそこまで思い当たらなかった。

「って、あれ?あなた、ひょーかちゃんの知り合い?そっかー。
 うん、それなら遠慮無く。」

促されたからか、それとも氷架、という名を出したからか。
あっさりと傘の内に入った。

「ごめんなさいね。降るって話は聞いていたけれど、すぐに戻ればいいかと思って油断しちゃったの」

カエラム > 「軽く助け合うぐらいにはね。
 わたしはカエラムという者だ。君は?」

少女が傘の内に入ったのを確認すると、ぬっと立ち上がる。
手に持つ傘を銀髪の少女の方に寄せて、真上から見れば完全に隠れてしまうようにする。

「いいのさ、わたしだって同じ理由でミスをしたことがあるのだからね。
 困った時はお互い様、これでひとつ貸しってことでどうだい?」

雪城 涼子 > 「あら、助けあうくらい?じゃあ結構仲いいのねえ……ふふ、今回はひょーかちゃんじゃなくて、私が助けられちゃったけれど」

くすり、と笑う。

「……っと、うん。私は雪城涼子よ。よろしくね、カエラムさん。」

頭一つ分……では利かない差をどうにか見上げて、アイサツをする。
アイサツは大事だ。

「ふふ、そうねー。貸し一つってことで、いいかしら。それにしても、カエラムさん、大きいのねえ……」

改めてまじまじと見上げる。

カエラム > 「よろしく、涼子」

見下ろす方も見下ろす方で、首をいっぱいに下げて軽く会釈をする。
いきなり下の名前で呼び捨てにするのは、カエラムにとっては当たり前のことらしい。
それがどういう風に取られるかは、相手によってまた違ってくるだろう。

「ははは、わたしはそういう風に造られたからね。
 人の社会で生きるには、少し大きすぎるようだけど」

頬にあたる部分をぞりぞりと掻きながら、苦笑いをする。

雪城 涼子 > 「結構、ひょーかちゃん、あっちこっちで知り合い居るわねえ……此処に馴染めるか心配だったけれど、杞憂だったみたいね。
 カエラムさんは、あの子とどうして知り合ったの?」

なんとなく、聞いてみる。
紳士的だけれど……んー、逆か。紳士的だからこそ結構自然に下の名前でくるのねえ、などとは思ったが
いきなり下の名前で呼ばれたこと自体はあまり気にしていないようだ。

「造られた……? ロボットか何かだったりするのかな?
 それにしては結構人間っぽいけれど……」

苦笑いするさまを面白そうに見つめながら、んー?と首を傾げた。

カエラム > 「あれは、わたしがここに来たばかりの頃の話だ。
 カフェテラスという場所に初めて来た時、メニューの文字がまったく読めなかったんだよ。
 その時注文を助けてくれたのが、氷架なんだ」

『その頃はまだ、ここの言葉がわからなかったからね』と付け加えて。

「涼子は氷架と同じ『雪城』なんだよね。
 やっぱり氷架のお姉さんなのかい?」

その落ち着いた物腰と外見年齢から、そう判断したようだ。
死神は生物の気配を細かく見分けられる。
彼女は"人間"で"生命体"であるので、特に違和感もなく人間として接している。

「大体で言えばそんな感じになるね。
 わたしは元々農作と収穫のために、神に作られた存在なんだ。
 昔は役割に従順だったけれど、色々と学んでいく内にいつの間にかこうなっていたのさ」

雪城 涼子 > 「言葉が……あー……外人さんっぽいものねえ……そっか。」

うんうん、となんだか微妙にずれた納得の仕方をしていた。

「じゃあカエラムさん、結構苦労したんじゃない? 今はもう普通に話せてるみたいだけれど、メニューもわからない状態じゃ大変そうよねえ。大丈夫だった?」

のんびりと、相手の苦労をいたわった。

「ああ……うん。お姉さん……あー、えーっと……
 んー……ちょっと違うけど、身内なのはそうね。」

本当は母親なのだが……そこは、ちょっとした乙女心が働いてしまった。
でも、ひょーかちゃんに確認されたら一発でバレちゃうよねえ……

「農作かあ……わざわざ農作のために作ったって、結構たいへんなことねえ……
 で、昔は、本当に農作だけしてたってことかしら。ちなみにどんなもの作ってたの?」

なんとなく好奇心が働いて聞いてみた。

カエラム > 「そりゃ最初はね。大体の意図は身振り手振りで伝えられたけど、
 それでも細かいニュアンスまでは表現できなかったから大変だったよ。
 けれどたくさんの人に協力して貰って、無事に言葉と文字を覚えることができたのさ」

死神がやけに誇らしげなのは、覚えた自分への賛辞ではなく教えてくれた人達への敬意によるものだ。

「違うのかい? うーん、それじゃあ何だろう……」

言葉を濁したのは気になるところだが、誰にだって知られたくないことのひとつやふたつはある。
今ここで追及するのはよしておくことにした。

「世界に命を作ってたんだ。世界に魂を植えて、そこから色んな命が生まれる。
 そこからたまに収穫したり、間引いたりもした。
 最終的には世界に実った新しい魂を、神に捧げていたのさ。いくら命たちが嫌がったとしてもね」

死神は自嘲気味に語る。
どうやらあまり楽しいものではなかったらしい。

「今はもうしてないよ。"クビ"になったからね」

文字通り首を刎ねられたことは内緒にしておくことにする。

雪城 涼子 > 「身振り手振りかあ……言葉もわからないところだと、そうなるよねえ……
 それが今や……だもんね。うん。みんなとすごい勉強したんだねえ。
 あはは、ひょーかちゃんも普段の勉強もカエラムさんに教えたくらいに頑張ってやってくれたらいいんだけれど」

最後はやや肩をすくめながら付け足した。余計なお世話であったが。

「ご想像にお任せ。まあ、ひょーかちゃんに聞いたらすぐだとは思うわ。
 でも、こう。プライドというか……ちょっとした細かい気持ちの問題なの」

乙女心について語って聞かせるのも何なので、微妙に曖昧な説明に終始する。
複雑な心境なのである。

「命、かあ……命……それに、魂……」

何となく思うところがあるのか、そこだけ反復して考えこむ。
といっても、数瞬後には立てなおしているのだが……

「なんだか農作、というか創造みたいね。まあ農作が創造で悪いわけではないんだけれど……」

んんー?と考えこむ。

「クビ?あらら、大変ね……もう仕事したくないー、とか言っちゃったの?
 それに、今は大丈夫なの?」

カエラム > 「あれ、氷架は言葉が上手かったように思えたけど……
 あれであんまり勉強していないのかい?」

彼女の話す現世の言葉はとても聞き取りやすかったし、てっきり普段から勉強しているような人なのかと思っていた。

「何やら複雑なんだね……わかったよ、そうする」

心の機微に敏感な死神も、複雑な乙女心を完全に解き明かすことは出来ないのだ。

「わたしたちは命のあり方まで決めたりしなかったからね。
 栄養のある土に種を植えて、水をやった。そして刈り取って、それだけさ」

「あはは……まあそんなとこかな。収穫対象と仲良くなり過ぎてしまってね。
 今は恩人の下で居候しながら、ちょっと学園の治安を取り戻している最中。ちゃんとした仕事を探すのは、それからになる」

雪城 涼子 > 「うーん……そこは、ほら。昔から慣れ親しんだものだからね。
 例えば……カエラムさんだったら農作の作業は、やろうと思えば当たり前に出来るでしょう?
 じゃあそれが上手いからって、ここの言葉は使えるわけじゃなかった、のと同じ、かな。」

んー、と考えながら説明する。ちょっと例えが間違っている気がしないでもないが、
何しろ相手のことは相手からの話でしか把握できていないのだから、こんな雑な説明にならざるを得ない。

「あはは、聞いたらちょっと驚くかもしれないよ。ついでに複雑さも分かるかも」

やや苦笑する。まあ遠くないうちに知るだろうし、今は秘密でもいいだろう。
どうせ大したことはない……けれど。普段なら普通に答えるのだけれど、この間、おばさんを自称してちょっとさみしい気分になったことが原因かもしれない。

「うーん、放任主義。いいのか悪いのかっていうと微妙なところかな。
 でも、勝手に有り様を決められたらそれはそれで嫌な感じだし……難しいところだねえ」

命の問題は深いよねえ……と、なんだかしみじみとため息をつく。

「んー、なるほど……仲良くなる?農作……ッて聞いたけれど……植物と通じあったりしたの?」

なんだかピントのボケた質問。だが、気になるのか割と真面目に聞いた。

「ん……そっか。今が平穏なら、それが一番だね。まあ仕事は……恩人さんに恩返し出来るように少しずつ頑張ればいいんじゃないかな」