2015/08/09 のログ
ご案内:「学生通り」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 「……疲れた。」

夕暮の学生通り。東雲七生はうんざりした顔で歩いていた。
今日は昼前にカフェで新たな友人と談笑し、心持気楽に補習を受けに行ったのだった。
普段は怠いだけの補習も何となくテンション高めをキープして乗り切り、よっしゃいい気分のまま帰るかーと学校を出て。

──そこまでは良かった。

飛ばされた風船を捕まえる、一件。
木の上から降りれなくなった子猫を救う、三件。
荷物を抱え立ち往生するお婆ちゃんを案内、二件。
ひったくりに後ろから飛び蹴りを入れる、一件。

ほんの一時間の間に七生の身に降りかかった出来事である。
近年まれにみる巻き込まれ具合だった。今日は一体何の日だ。

「っかしーな……帰って夏休みの予定とか計画とか立て直すつもりだったのに……」

既に日はだいぶ傾いている。

東雲七生 > 「つか、学校出てからけーたい見てねえな……。」

ふと思い出して端末を取り出す。
昼前に貰ったアドバイスをさっそく実行に移そう、とメール画面を開きアドレスを入力する。
そして題名を入力……しようとして、手が停まった。

「……Re、だけじゃ味気ねえかな。」

そんなことをぽつり、と呟く。

東雲七生 > 「……ふーむむむむ。」

眉根がぐっと寄った。
何も考えてない時は適当な題名を入れてぱぱーっと本分を書いて終わり!なのだが、
今回はアドバイスも受けてる手前どうしても変に意識してしまう。
ひとまず前回のメールでのやりとりを確認しよう、と受信フォルダを開き該当のメールを再確認。

「……ほんっと、味気ねえ。」

使い慣れてないにも程があるだろ、と言いたくなるような質素なメールがそこにあった。

東雲七生 > 「……先に他のメール返しとこ。」

後回し。
一分弱悩んだ末の結論だった。保留。
開いていたメールを閉じ、別のメールを開ける。
そこでふと、さっきから画面ばかり見て歩いている自分に気付いた。これは危ない。

「っと、また誰かにぶつかったら悪いよな……。」

こそこそと通りを横切って街路樹に寄り掛かった。
ここならまあ、誰かが突っ込んでも来ない限り危険は無い、はずだ。

ご案内:「学生通り」に深雪さんが現れました。
深雪 > 「あら……。」
貴方が携帯の画面を見つめていれば、そこに歩み寄る影が1つ。
特に足音を消しているわけでもないので普通にしていればすぐに気付くだろう。
けれど、もし貴方が画面に集中していれば、周りの風景に同化して、気付くのが遅れるかもしれない。
少女は、貴方から数歩のところで一度止まった。

「……………。」

その表情はどこか楽しげで、
貴方が気付くかどうか、試しているような気がする。

東雲七生 > 「……そういや弁当箱返さなきゃ。」

端末の文字入力を片手フリップ操作で着々と進めていく。
そんな中零れた呟きは、メールの中身に関係があるのかないのか。
端末の画面を見つめて、一度手を止め、内容を確認してから送信ボタンをタップする。
それほど文の量は多くないのか、あっという間だった。

「ふぅー、とりあえず一件おわり。あと返さなきゃいけないメールは……」

独り言を交えつつメールフォルダを確認し、ふと顔を上げる。

(──なんか視線を感じる……?)

訝しげに辺りを見回した真紅の双眸が、すぐに銀髪の少女を捉えた。
少し驚いた顔をしたのち、にっ、と笑顔になる。

深雪 > いつから見ていたのか、少女は少しだけ意地悪に笑っていた。
「…貴方、いつもソレとにらめっこしてるのね。」
最初に会った時の印象が強いのだろう、そんな風に呟いて、隣の木に寄りかかる。
自分もスマホを取り出して……少しだけ慣れたがまだまだぎこちない操作でメールを開き、

『気にしないで、つづけて。』

と、タイトルに文を入れただけのメールを送信した。

東雲七生 > 「うっ……」

一部始終見られていたらしい。
その事実に気付いて頬を赤らめる。俺、変な顔したりしてなかったかな、と。
慌てて弁解しようと口を開け、木から離れようとしたところでメールを受信した報せ。
自動で画面に表示されるタイトル。それを確認して、むー、と口を尖らせる。

(──ほんっと、意地悪な奴。)

ふん、と鼻を鳴らして端末を操作する。

『べつに、もう済んだし』

同様にタイトルだけ入れて、返信

深雪 > 同じ操作をしているはずなのに、かかる時間は倍以上。
しかもまだ操作ミスが多いので、やり直したり消したりなんだりと、煩雑で面倒くさい。
瞬時に返信が返ってくれば、画面を見て…

「………………。」

…返信のメールを打ち込む。
自分で始めてしまったのだから、面倒でも踏襲しなくては。

『水着買ったけど、写真撮るの忘れた。ごめんなさい。』

1人で選んだなら撮る時間もあっただろうけれど、あの時は流石に撮る時間もなかった。
帰ってから着替えるのも不思議な気がして、今の今まで送っていなかったのだ。

素直に謝る文を書くのに、少女はだいぶ長考していた。

東雲七生 > メールを送信してから隣の木を見遣る。
手こずりながら操作をしている少女を見て、
操作に慣れて貰うためにもこのまま続けた方が良いのか、打ち切るべきか少し悩んだ。

受信、確認。
その内容に思わず苦笑が漏れる。別に真に受けなくとも、と。
そして返信を打とうとして、この一文の為に時間をかけていた少女の顔を思い出す。

「止めようぜ、何だかもどかしいし。」

近くに居るのだから、と端末をしまって木から離れた。