2015/08/13 のログ
深雪 > 「あら、貴女がそんなことを言うだなんて…ふふふ。」
わざと驚いたような素振りを見せてから、楽しげに笑い…近くのベンチへと腰を下ろした。

「…それじゃ、残念だけどお昼はお預けね。」

ソラなら分かるかもしれないが、この少女は殆ど“食事”をしていない。
そもそもそれを必要としていないし、人間の文化に慣れるつもりも無いだろう。
もう、料理屋の行列には興味を失ったようで、視線は通りを歩く人々へと、向けられて…

「…ねぇ、ソラ。
 この間…私に言ったわよね…高貴な目を下げてごらん、って。」
視線は静かに、旧友の方へと、向けられる。

蒼穹 > …分かってたよね。
(なんというか、やっぱり踊らされている様な気が、今更ながらこみ上げた。
ただ、別に悪い気はしない。)

ん、ああ。そう。
…別に食べたきゃ何でもって思ったけど。
折角だし、何か奢るよ?
(多分、彼女の事だから、きっと要らないと答えるのだろうけれど。
しかし、友人と食事をするというのも中々に有意義なものである。
最近その事を知ったのだが、彼女と共有する事は、出来ないのだろうか…。)

うん。言ったね。…この間。
…やってみたって感じかな?
(首を傾げるでもなく、何となく返事はどちらか分かっていそうなそぶりで問を返して。)

深雪 > 「えぇ…ソラ、優しくなったもの。」
くすくすと楽しそうに笑う…変わったことを咎めるつもりは無い。
そしてその変化は、僅かではあるが自分にも伝播しつつある…

「…そうね、それじゃ、ちょっと歩きましょうか。」

…貴女にとって、その答えは意外だっただろうか。
食事をするために異動し、別の場所、コンビニや屋台を探すことなんて、以前の少女なら絶対にしなかったことだろう。
少女は貴女の横に立って…それから、
「この辺りでお昼だと…どっちに行けばいいのかしら。」
そんな風に、貴方に聞いてみた。

貴女と2人で歩きながら、少女は静かに、言葉をつづける。
「貴女がどうやってるのか分からないけれど、人間と同じに考えるなんて無理ね。
 …けど、人間にも不思議な子がいるのよ。
 壊したいけれど…壊れてほしくない、って思う子。」

蒼穹 > あはは、違いない。違いないけど…ああ、もう。私でも分かんないなー。
(さて、これを否定したところで何になるのだろう。
自分より、周りの方が自分の事をよく知っているなんて往々にしてあり得ることで。
確かに、優しくなった…きっとそうなんだろう。)

………うん、じゃあ、行こうか、な。
(少し、間が空いた。
意外だった。でも今更意外そうな顔をするわけにもいかず。「え?」と耳を疑う事を押し留めて、頷く。
それを蔑ろにするのは、憚られたから。聞いた手前、奢るしかなかろう。
…ああ、そもそも、彼女がここにいること自体意外だった。
彼女は一体どうしたのだろう。…もしかして、彼女も変わったのだろうか。)
あ、ええっと…そうだね。軽く食事するなら、そこのコンビニにでも行くと良いって思うな。
あと、ちょっとヘビーな奴食べたかったら遠いけど回転寿司ってとこもある。…どっちにしたい?
(すぐそこの角の方に目配せしてから、首傾げて。)

あはは、だろう、ね。…へぇ、そうなんだ。
何か、面白くて楽しい子、…壊したくない子、見つけたって感じかな?
割と楽しいでしょ、御友達と御話するってのも。
(静かな彼女とは対象に。わいわいと、感情を分かち合えたことに嬉し気な様子を隠せず。
一目見て上機嫌とも取れそうな口振りで頷きながら話を聞く。)

深雪 > 「ふふふ、昔のソラなら…あの子たちが可哀想な目に遭ってるわ。」
横目に、料理屋に並んでいる生徒たちを見る。
少しだけ…身体が疼いた。この間一度、狼の姿になったのが、いけなかったか。
それを抑え込んで…

…貴女に導かれるままに、通りを歩く。
奢ってくれる、というその言葉に惹かれたわけではないだろう。
こんな機会でもなければ、きっとこの少女は、人間の文化に入り込めない。
「…カイテンズシ?っていうのは、初めて聞いたわね。
 でも、今度も同じように行列になってたら…私が“お願い”しに行くわよ?」
冗談っぽくそう笑いつつ、自分にとって未知のものを選んだ。
……やはり、この少女は人間の文化に、少しずつ興味を抱いているようだ。


「御友達…そうね、楽しいんだと思うわ。
 そうそう、聞きたかったんだけれど…貴女はそういう子と、どう接してるの?
 ……ほら、私も貴女も“人間”じゃないでしょう?」
この間、正体の一部を明かした“御友達”は、それを受け入れてくれた。
けれど、全てがそうとは限らない。
「人間の振りなんか、しないわよね?」

一瞬だけ、正体を明かせば離れて行ってしまうのではないかと、不安を感じた。
人間として振る舞えば、関係を続けられるのではないかと、そう感じた。
結局、プライドがそれを赦しはしなかったのだが…この旧友は、どうなのだろう。

蒼穹 > …もう!ミユキの意地悪。そんな昔の話してたら拗ねちゃうぞー………。
(ふんっ、とわざとらしい頬の膨らませ方を見せた。その表情は半笑い。
気のせいだろうか、何となく彼女に違和感があった。気がした。
もう少し露骨に見せられたら概ね何があったか分かるだろうが…気のせいか。
ふわりとした笑みで彼女の向いた視線に従う。)

(それから少々、進む方向に向き直ればまた歩みを進める。
ゆっくりとした歩き方は、彼女にとっては遅いだろうか。それとも、慣れないだろう学生街を見て回るのには丁度いいだろうか。
昔からの知り合いだし、何となく意図している事は分かる気がする。
うぬぼれだと言われたらそれまでなのだけれど。)
うん。…あー…ごめん。やめよっか。…冗談だよね?
(この時間帯、回転寿司が混雑しているのは分かりきっている。
彼女が御願いしたらと思うと、例え笑顔でもやりかねないのが彼女だ。
もっとも、"今の"笑顔は取り分け冗談めかしている方の笑顔なのだろうけれど。
暫し合わないうちに、こういう事も確認しておかないと不安だった。)
んでね。回転寿司っていうのは、お寿司って言うのが並んでるんだ。
お魚って知ってるでしょ?あれをこう、長方形に―――。
(それから、彼女に寿司が何だとか、回転寿司とは何だとかを一通り語り始めるのだろう―――。)

楽しければ、何でもいいさ。
…あれ?そうだねー…普通に接してる。とりわけ普通の御友達として、ね。
(人間ではない。それはその通り。その通りだけれど。)
人間じゃない奴なんて、いっぱいいるじゃん?
獣人や機械、…それから、吸血鬼に鬼に。
そいつらと同じ扱いじゃないかな。
…普通に獣人とか耳生やして歩いてるじゃん?私も普通に邪気漏らして歩いてるし。
たまに気付く奴は気づくよ。
でも、まぁ…見ての感じ、人間の振りっちゃ人間の振りだけど。
(両手を曲げて上に上げて自分が人間体に近しい者であることを示しつつ。)

勿論、聞かれたら隠すことはしない。
けど、大多数の前で破壊神様だぞー!っておおっぴらにはしないかな。
…うーん、これでいいかい?
(彼女なりに、何か迷っている。そんな風に思った。違うのかもしれない。
だけれど、御友達が迷っているなら、事情も聞かず、出来る限り力や知恵は貸してあげたいものだった。
故に思いついたことをつらつらと述べる。
あんまり思考に耽り過ぎたのか、足元がお留守。おっとと。と言う言葉を挟んではまた前を向いて歩き始めた。)

深雪 > 「ホント、ビックリよね…あのソラがこんなに優しい子になるなんて。」
からかっているように、それを隠すこともなく、楽しげに笑う。
隣に友人がいるおかげか、それ以上衝動が駆け巡ることもなく、
僅かな違和感以上のものをソラが感じることはできないだろう。
この衝動が抑えられなくなったとき、少女はどんな行動に出るのか…

…少なくとも今は、この島も学生街も、この2人も平和そのものだ。
「あら、私が冗談を言っているように見えて?」
そんな風に言っているが、表情は楽しげに笑っている。
勿論冗談だし、ここでそんなことをするつもりは一切無い。
もし、これが“落第街”の裏路地などであれば…話は別なのだろうが。
「そうね……ソラと一緒なら、並んであげてもいいわ。」
未知の人間文化に興味がある、という素振りは一切見せない。
それが少女の高いプライドに起因していると、貴女はすぐに見抜くことができるだろう。
その証拠に、回転寿司の説明を聞く表情は、場違いなくらい真剣そのものだった。
「…人間って、本当に面倒なことをするのね。」
尤も、本質が狼である少女の感想は、そんなものだったが。

そして、先駆者である旧友の言葉に耳を傾ける。
確かにこの島には、自分以外にも“人間でないもの”が溢れている。
だからこそ“御友達”は巨大な狼の姿を見ても驚きはしなかったのだろう。
「普通に…、そう、普通の御友達か…。」
けれどそれは、あくまでも“狼”の姿に驚かなかっただけだ。
“狼”である自分は今も、内側にある“衝動”を抑え込んでいる。
そして旧友の『邪気漏らして歩いている。』という言葉に、少女ははっと足を止めた。
自分は“衝動”を抑え込んで、それを隠そうとしている。

「……駄目ね。」

小さく息を吐いて、少女はそうとだけ、つぶやいた。
そこに込められた感情は複雑だったが、少なくとも、不安の色は感じ取れるだろう。
それは、この少女にしては非常に珍しい感情だったかもしれない。
“御友達”など作ったこともない。だからこそ、不安なのだろう。

自分を偽り続ける自信は無いが、本性を晒せば“御友達”は離れていくだろう。
そうしたら自分はきっと、手元から零れる玩具を、壊してしまうに違いない。

少なくとも、少女はそう感じていた。

蒼穹 > …あはは、以来色々あったって事さ。大罪人の私もこうも丸くなるなんて、自分でもびっくりだよ。
ああ…それ以上にミユキも驚かせちゃったんだろうけどね。
(何かあるかなと勘繰ったが、気のせいだったようだ。
自分でも思う所があるのか、少し過去を思い起こせば苦笑い。ただ、別に反省も後悔もしていないみたいで。
同じく、冗談めかしたような口調で、それこそ思い出話を語るかのように―――本人たちにとってはきっと、思い出話でしかないだろうけれど―――楽しそうな語調に合わせる。)

いや、それは冗談だ!…絶対に。
(少し、自信はなかったが。まるで確信しているとでも言いたげな表情を取り繕って、それから大見得を切って断言してみた。
尚、殺るか殺られるかの場所で彼女がすさまじいのは、…まぁ、今更思い起こすまでもない。)
そりゃありがたいな。やっぱりさ、並んでると退屈しちゃうから。
ミユキみたいな御友達が一緒にならんでくれたら、それはそれは嬉しい事だよ。
(やっぱり、並んで"あげる"か。彼女らしい。そう思いつつ微笑まし気にうんうんと首を縦に振る。
それから、長らく回転寿司について説明を述べるのだろう。)
―――ってのが回転寿司で。
…ええ?…そうだね、でも回転じゃない寿司屋はやばいって聞くよ。
それこそ、私みたいな奴でも恐れ多くては入れないくらいに、何か凄いってね。
何でも「イタマエ」という強靭で厳つい男の店主が凄まじいオーラを放っててって話で。
あと、凄く高くて美味しいんだって。
(聞きかじった、生半可と言うべき情報を、何処か羨ましがるように語る。
最早色々人間染み過ぎてきて。過去の面影も色々となくなったのかもしれない。)

普通…難しいよね。普通って。
私はこっちに来た時、普通についてちょっと考えたんだけど。
普通って何だろうね。
(彼女が普通にしているなら、きっと衝動とやらは普通に解き放たれて。
破滅と破壊の限りを尽くすのが普通である、そんな存在になるのだろう。)

………。

(彼女の短い言葉に、返せる言葉はなかった。
声の大きさからすれば、何も返してほしくなどなかったのだろうけれど。
正直、己の顔は無表情だったけれど、とても驚いていた。
彼女が、弱音を吐いている事に。彼女が垣間見せる、弱気な感情に。
彼女は、昔はこうではなかったはずだ。弱音を吐く前に弱音を吐かせる原因を壊していた筈だ。
彼女も、或いはきっと変わったんだろう。
けれど、"変わった"…それ以上に察することは出来なくて。
彼女が何に不安を抱いているかなど…寧ろ、その感情の正体さえまるで分からなかった。
ワンテンポ遅れて足を止めて、踏み止まる。
それから斜め後ろに位置するだろう彼女に視線を向けて、沈黙。)

深雪 > 蟻の巣を踏み荒したことも、楽しい思い出に過ぎない。
2人は、自分たちが踏み潰した蟻のことなど覚えてもいないだろう。
そうでなければ、こんなに明るく笑っていることなど、できるはずがないのだから。
「昔も楽しそうだったけれど…今のソラも楽しそうで、良かったわ。」
その点においては、この旧友は昔から変わっていない気がする。

「あはは、ソラには敵わないわね。」
ソラが演技じみた大袈裟な素振りで断言すれば、少女は楽しそうに笑った。
参ったとばかりに両腕をあげる…こうして、この場の平和は維持されたのだった。
「あんまり退屈だと…ちょっと苛めてみたくなったりしちゃうものね。」
……いや、どうだろう、平和に過ごせるかどうかはソラにかかっているような気もする。
「なにそれ、回転じゃない寿司屋……?」
もはや意味不明であった。寿司を今知ったばかりの少女には。
けれど、旧友が目を輝かせて語るものだから、それはきっと、本当に素晴らしいものなのだろうと、想像する。
旧友が大きく変わってしまったとみるか、それだけ、寿司屋というものが魅力的なのか。
「……ソラが入れないような店じゃ、人間には勿体ないわね。」
きっと、王族か貴族が入るような店なのだろう、と、想像だけが大きくなっていく。

歩みを止めて…数秒。たった数秒だったが、その不安げな表情は貴女の印象に残っただろう。
結局、少女は内在する不安を払拭することはできなかった。
「人間は、自分たちを普通だと思っているわ。
 ……でも、私たちにとって…私にとって、人間なんて蟻みたいなもの。」
いや、それは過去の話だ。今の自分は人間を凌駕しているとはいえ、限りなく人間に近付いている。
けれどそれを、認めることはできない。そして“人間を凌駕している”という事実が、かつてと同じ衝動を呼び起こす。
【みんな壊してしまえばいい。】
そう囁いている自分も居る。けれどそれをしてしまえば、御友達とは二度と話せない。
自分でも驚いているのだが、それは忌避すべきことなのだ。

静かに歩きだして…貴女の横を通る瞬間に、小さく、つぶやくように問う。
「……昔みたいに、壊したく、ならない?」

蒼穹 > あっはは、…分かる?
(にんまり、とそれはそれは楽しそうな笑顔を浮かべる。
常に、楽しさばかりを求めて生きているような奴だったのは、自覚している。
楽しくなければ、楽しくしてやるのがルール。快楽主義で刹那主義。
壊すのが楽しいから壊して来た。今更物思いにふけって楽しくなくなる等馬鹿らしい。)
そういってくれたら、何より、だよっ。
(蹂躙を共にした友人であると同時に、良き理解者でもあるのだろう。
こういう子が横に居て、良くしてくれるから。自分と言うのは孤独感に苛まれることも少なくなった。)

いやぁ、そんなもんかなーっ。
…ちょっ、え、えぇーっ。やめときなよー、割とこの頃おっそろしい奴うろついてるよ。
(上げて落とされた感覚だった。こうした冗談めかした素振りと言うのも、彼女の方が一枚上手。
或いは、此方が少し振り回されているのかもしれない。昔はどうだったろうか、逆だった気もするし、持ちつ持たれつだった気もする。
ともあれ、恐ろしい奴うろついてる、なんて己が言っても説得力の欠片もなければ、彼女の前では何の意味も持たない言葉なのだろう。)
そうそう、何かね!こう…注文の順番にも手順ってのがあって―――。
(聞きかじった、生半可な情報を告げる。
その実情は、どちらかといえば…というか、まるっきり回転寿司にしか言ったことのない子供が、
高級なお寿司屋とやらに憧れて、つい大人の真似をしていたり、
その中をこっそり覗いた光景を憧れを馳せて、自慢気に語るそれに似通っている。)
あはは、人間が作ったらしいけどね。
いやぁ、入ってみたいもんだよ、一度はね。
でも、一回のお食事で何万ってお金が飛んじゃうから…流石に、食事にそれだけかける?って話だよね。
(概ね、貴族や王族の入る店と言う認識は間違いではないのかもしれない。
今のご時世貴族や王族なんていないけれど、お金持ちや偉いさんという人種は居る。
そう言ったお店に入れるのは何にしても極々少数だ。故に、憧れると共に、縁が遠い。)

………。
(黙って、彼女の不安気な口調を聞こう。
「人間なんて蟻みたいなもの」と。不安そうに告げるのは、何故だろうか。
そこに、不安など感じる要素が一ミリでもあっただろうか。
異常から普通を見れば普通の方が異常に見える。それはそうだ。
彼女の―――全盛期を考えれば今でこそ殆ど全てと言って良いほど封じられているが―――その大きな力は、人間に異常と見られるだろう。
しかし、だから如何したと言うのかと、蟻に異常と言われて何の問題があるのかと、
彼女は何ら気にも留めずそう言い放つはずだ。…何故?)
…ひょっとして―――。
(そう言いかけた矢先。彼女は歩き出した。己の言葉は、何事もなかったかのように押し留める。)

え…なん、で…?
(聞いた途端、何かが撫でられるように、何かを思い出すように。恐る恐ると横目を遣った。
彼女が前へと歩き出しても、それに追従することもない。今度は此方が、彼女の斜め後ろに位置する形になるだろう。
きっと、同意を求めているのだろう。)

それは…そう、だけど。
(否定できなかった。どんなに優しくなったって、結局己はそういう奴だ。
一つ、何かのリミッターが外れたら。何かのきっかけを与えられたら。
きっと、何かを壊したくなるに、違いない。
ただ、今は壊すのが楽しくないと、そう思っているから壊していないだけで。
そもそも、壊す為だけに生まれた様な存在だから、破壊衝動は須く、ある。
本当は、心中に埋めてはいるけれど、幾等でも壊したいと思っているはずだ。
壊す楽しさを思い出したら…きっと。)

深雪 > 快楽主義で刹那主義、そんな旧友がこうして、人間と共存している。
自分が感じているのと同じように、きっと、人間と過ごす時間というのは、楽しいものなのだ。
友人であるソラが“変わった”という事実が無ければきっと、自身の変化を、そのプライドが邪魔していただろう。

「えぇ、そうね…恐ろしい奴…私の目の前に居るわ。」
じっと貴女を見ながらそうとだけ言って…くすくす、と笑う。
貴女の想像通り、その言葉は“冗談”としてしか受け取られなかった。
自分たちを凌駕する存在に出会ったことがない。この少女は、幸運なのかも知れない。
「ホント…人間ってよく分からないわ。
 意味も無いようなことにばかり、拘るし…。」
貴女の語る人間の文化や、自分が関わってきた人間たち、
これまでは興味を持つどころか、気にしたこともなかったその“文化”を、少しずつ、理解している。
……それはきっと、なにより貴女の影響なのだろう。それだけ、この少女にとって、貴女の存在は大きいのだ。

…だからこそ、貴女の意見、貴女の思いが聞きたかった。
けれど自分の問いは、貴女を困惑させ、困らせるのみ。
「…ごめんなさい、変な事を聞いてしまったわ。」
だが、その表情は…その沈黙は、確かに、明確な回答であった。
そして、自分が今感じている不安と、同じものを相手も抱えているのだと、この少女は理解した。

あまりに楽しそうに、能天気に話すものだから…すべてが変わってしまったのかとさえ、思っていた。
けれど、そうではない。
愛おしいこの友人は、今を“楽しく”するために、それを封印しているだけなのだ。
自分で、自分の手足にこのリボンを巻いているのだ。

「気にしてもしょうがないわね…あんまり考えると、楽しくなくなっちゃうし。
 行きましょ、ソラ。」

立ち止まってしまった貴女に、手を差し伸べる。
ソラには、悩んでいる表情は似合わないと思った…だから、少女は明るく笑って、手を差し伸べた。
……今は少なくとも“ただの人間”として、2人で過ごしたい。
それがきっと、一番、楽しいのだから。

ご案内:「学生通り」から蒼穹さんが去りました。
ご案内:「学生通り」から深雪さんが去りました。