2015/09/18 のログ
ご案内:「学生通り」に四十万 静歌さんが現れました。
■四十万 静歌 > ――学生街の片隅。
あまり目立たない場所で、占いの準備。
基本は公園なのであるが――
そういえば道端でやったらどうなるんだろうと、
申請をすませて通行の邪魔にならないように店を出す。
――占い相談あります。1回100円~
テーブルを組み立て、水晶玉をセットして完成である。
「これでよし……」
後は待つだけという奴だ。
■四十万 静歌 > 「――」
ゆるゆると、
たまに100円の安さと物珍しさによってくる客に、
ゆるりと対応して、
素人占いで占っていく。
100円より多く支払う人もいるが、
基本的に占ったそれだけの価値があればという奴なので、
心づけである。
たまに占いが当たったと分かって、
占ってもらいつつ、
前の分を上乗せする人もいるが――
心の中で、え?あたったんですか?
なんて思ってることは絶対にいわないようにしている。
している。
■四十万 静歌 > 「……ふぅ。」
ちょっと休憩、
と
水晶玉にぱさっと布を被せて、
占いますと書かれた紙を裏返しにして、
両手でお汁粉の缶をもって、
ちびちびと飲み始める。
「――やっぱ公園よりは目立つんでしょうか。」
なんて益体もない事を呟きつつ。
■四十万 静歌 > 休憩をおえて、
再び店開きをして少しして――
「――そろそろ店じまいしようかな?」
なんていってがたごとと仕舞い始める。
のろのろと。
まぁ、あまり長くやっても、
そこまで人来そうにないし。
ご案内:「学生通り」に流布堂 乱子さんが現れました。
■流布堂 乱子 > のそのそと。
どちらかと言えば、精彩を欠くような。
ブーツの踵が立てる足音も、さほど綺麗に響くわけではない。
仕事上のちょっとした悩み、というか。
……ダブルワーク特有の問題というか。
そういったことを、まあ、"相談してもいいかな"と思っていた時に限って、
顔見知りが見当たらず。
だったらいつもどおり警邏でもいいわけにして、
何か適当に火をつけていればもう少し心が和むのだけれども。
新人にして直接に指導して下さる先輩なんかも持たない身としては、
先日の単独行動と反省文がいたく自由行動に響いているわけで。
要するに、ちょっとした謹慎に近い身の上として、
一つも講義を登録してない暇人として、
全くの無目的で散逸した集中力でもって。
「……占い?」
三歩ほど通りすぎたところで、ぐるりと体ごと振り返った。
よくよく見てみれば、それは。
どうして気づかなかったのかわからない程度には最近会ったばかりの。
「お仕事中、ですか」
百円占い師さんだった。
■四十万 静歌 > 「あ、はい。占いしてますよ。」
と、あわてて片付けていたものを元に戻して、
すちゃっと定位置についてにっこりと微笑む。
「千客万来といいますか、
そろそろ切り上げ時かな?って思ったらお客様が来るなんてついてました。」
なんてウィンクしつつ、
「――占い1回100円から。
それ以上の価値があるなら、お心付けを。
辻占いの魔女です。」
なーんて、冗談の一つでも飛ばすだろう。
■流布堂 乱子 > 「千客万来、と言うと……お疲れでしたら、次の機会にしてもいいのですけれど」
微かに歯切れが悪い言いようで、
くるくると炎のようにうねる髪の毛を指先で弄びながら、
しかしそれでも、
「……こうして暇そうに歩きまわるのもそう無いですし、いい機会ですから。」
ウインクの魔力に抗えずに。
少しだけ頬を朱に染めて、
見るまでもなく取り出せるはずのポーチを見つめて真緑のがま口を取り出して。
逆さにして振ってみればちょうど百円が手のひらに転がり出た。
「それでは、占っていただきましょう。
結果に満足が行きましたらこの白銅貨よりも素晴らしきものを。
そうでもなければ……魔女狩り、でしょうか」
左手に硬貨を握りこむと、背に隠して。
右手を机において、魔女の瞳に自らの目を近づけた。
半ば癖になった仕草、私が私であることを確認してから、
「……私の、恋愛運とか。占っていただけると。」
それこそがこの人生の命題であると言わんばかりの哲学者じみた真顔で、
何故か自分でも一切考えていなかった問いかけが出ていた。
■四十万 静歌 > 「いえ、疲れてませんよ。休憩もいれましたし、
ちょっとした誇張表現です。」
と、クスリと笑って、
「つい先日に引き続いて今日出会うのも奇縁なれば、
占うのも運命ですね。」
と一つ頷いて――
「まぁ、一銭の価値もなければそういってもらっても構いませんよ。
所詮は占い、されど占いですし、
という訳で、恋愛運ですね。」
がんばりますよと、水晶球に手を翳し――
近づけた目を上目遣いにじっと覗き込むだろう。
真っ直ぐに、目を逸らさず。
「それで、占いの為に答えても答えなくてもいい質問がいくつかあるのですが、
その前に……恋愛運――
という事は誰か決めた人がいてなのか、
それとも――これからの出会いについてですか?」
■流布堂 乱子 > 「もしかして、この路上でまた居眠りを…?」
休憩と言われれば、思い浮かぶのはあの寝顔。
……いやいやまさか、という言葉が出てくるかと自分でも思っていたのだけれども、
あいにくとお呼びがかからなかった。
この辻占いの魔女はきっと――寝る。
例えばこうして瞳を近づけた状態からでも、自然と寝息を立て始める想像は容易だった。
ぼんやりと想像の世界に向かっていた瞳が再び焦点を結ぶ。
「技術でもって合縁奇縁に運命を語るのが筮竹の業。
その正確さのためならお答えしますけれども」
かすかに目を伏せて、唸る。
「……決めた人が居るわけでもないのに、
私はなんでこんなことを聞いてるんだろうと不思議に思われるかもしれませんけれど。
そのような方は居られません。
過去に居た人はまぁ……亡くなったか、
私の一番尊敬する友人に懸想した上で亡くなったかですね」
出会いがなかったわけではなかったのだと思う。
常に一番近くに居た友人が、たちが悪かったというか。
第一印象で言えばこの辻占いの魔女に、よく似ていた。
■四十万 静歌 > 「いえいえ、流石にお仕事中は寝ません……よ?」
ちょっと余所見をするように空へ泳いだような目線を一瞬おくるが、直ぐに真っ直ぐ見直して、
「お汁粉のんでただけです。」
と、真顔で答えた。
うん。嘘じゃない。
「まぁ、なんというか――
そうですねぇ。」
ふむ、と一つ頷いて。
「ならば出会い、ですか。
それなら――
一つだけ。
その中でも一番近くにいた人で印象深かったことを一つだけお答え願えれば、と。」
何を考えたのか、じっと目を覗き込み、
緩やかに手を組み合わせるとそういうだろう。
――答えづらかったら答えなくてもいいんですよ、
とでもいうかのように首を少し傾げて。
■流布堂 乱子 > 「仮に人間でしたら、どんな作業でも糖分は重要ですからね……
おしるこはセーフなのではないかと」
こくりと決意を込めて頷き返す少女。
温かくて甘いモノはルフスにとっても良い選択である。
「……今回は、セーフだったのではないかと。」
寒い時期に見かけたら何はなくとも声をかけよう。そんなふうに思っていた。
「……そうですか?」
曖昧な返事に乱子が返すのも答えではない。
そして当然ながら答えもない。
少なくとも自分の中に答えはないのだから、大枠で言えばこれは問いかけ。
答えのない問に答えるために、答えを続けていく。
「一番近くに居たのは――」
十七年暮らした母親よりも、長らく一緒に居た。
地を駆け、天を往き、川を渡って海を越えた。ずっと共に。
あるいは、この質問が一番近くに居た"想い人"の意味でも、答えは変わらないのかもしれない。
「あの人は、貴女によく似ていました。
……第一印象の話ですけれどね。」
一つだけ。
語れば語りきれぬほどの思い出の中から、
――もうその死に様しか語りえない思い出の中から。
■四十万 静歌 > 「――ええ、本当に危うい所でした。
けど、お汁粉だけです、ダイジョウブデス。」
今回は、といわれて片言になった。
うん、次回は寝てる可能性もある。
「――まぁ、とりあえず、話は分かりました。
早速占ってみましょうか。」
と、ふわりと再び水晶玉に手を翳し、
目を閉じて意識を集中し――
目を開き、しっかりと乱子をみて告げるだろう。
「――
出会いはあるでしょう。
過去を断ち切るか踏ん切りがつかない限り、
それはただ出会うに過ぎない。
過去に囚われ、過去の残滓を求めるならば、
過去と、
過去の残滓を見出した者の齟齬が貴女を喰らい尽くす。
その結果はあまりよろしくない結果が出るでしょう。
ラッキーアイテムは、お汁粉。」
という訳で飲みさしですが飲みます?と汁粉を差し出して、
「過去を捨てる必要はありません、
過去を忘れる必要もありません。
――
ただ、過去についての決着を自分の中で見出せるかは、
これから次第でしょうね。
……一つの結末は、貴女も見ていると思いますよ。」
ここから先は私の独り言になりますけど、どうしますか?
と人さし指を口元にあててじっと見つめるだろうか。
■流布堂 乱子 > 「私の方は暑さ寒さの関係ない身の上ですので。
雪でも降らないかぎりは、そうそう細やかな気遣いは出来ませんから。
……先に済ませておきますね」
スッ、と両手を差し出して拝んだ。
縁起でもない。
全く、縁起でもなかった。
「……ええ、まあ。
なんとなく、わかりました。」
拝んだ手を下ろした時に、先程まで左手に有ったはずの白銅貨が、
右手の裾から手のひらに落ちる。
「ありがたく、頂きます」
右手の指先で摘んだそれを、左手でおしるこを受け取りながら差し出して。
背筋を立てて、両手でお汁粉を胸元に抱えながら。
季節なんて関係ないといった言葉通りに、
冬のさなかにやっと手に入れたぬくもりに触れるようにして、ゆっくりとお汁粉に口をつけた。
「話しながら、自分でもどうしてこんなことを聞いたのか段々と理解できた気がします」
背筋を立てた分だけ、見つめる眼差しから、先程までよりも少しだけ距離を置く。
学生通りの空を見上げながら、遠吠えをするようにして空に白い息を吐いた。
「……お汁粉、飲んでますから。
もうちょっと、ここに立ってます」
こくり、と頷く。
■四十万 静歌 > 拝んだ際にかな、なんて静かに考えながら、
「見事な手品のお返しをされてしまいましたね。」
なんてクスリと笑って――
「形に出来ない想いがそこにはあって、
それがなんなのかは漠然と分かっていたけど、
認めたくなくて――」
言葉を紡ぐ。ゆっくりと、ゆっくりと。
「だけど、どうしても確認せずにはいられなくて、
そこに答えがある気がして――
まぁ、なんといいますか。
きっと、その人の事が好きだったのでしょうね。
とっても。変えがたいほどに。
その人がもし生きていたらどういうかは分かりませんが……」
うん、と一つ頷いて。
「その人が私と同じか近い考えをもっているのだとしたら、
今の乱子さんを見るのは苦しくて悲しいでしょうね。
きっと。
――笑って前を向いて歩いて欲しい。
自分は幸せに、今も生きている。
――自分を誇れるようあってほしい。
なんて。
まぁ、それがどれほど困難で苦難なのかは、
本人にしか分かりませんが――」
じっと顔を近づけて目を覗き込もうとしつつ、
「――自分を許してもいいんじゃないでしょうか?」
なんて、ね。と
静かに首をかしげ――
「余計なおせっかいかもしれませんし、
勘違いかもしれませんけどね。
なんとなく、私としてはいいたくなったのですよ。」
と、ほぅ、とため息を吐くだろう
■流布堂 乱子 > 「……」
こくこく、と。
飲んでいたお汁粉を飲み干すと、ゆっくりとポーチの中にしまった。
空を見る分には遠すぎて、余計なものが映りそうだったから、
足元の何かを蹴飛ばせればと思ったのに、小石も落ちていやしない。
「……」
つっかえつっかえになっても、話すことができたらよかったのに。
どんな話をしようとしても、それは――
その思い出は、とっくに情報消失してしまって。
まるで年表のような、色のないただの記憶でしかなくて。
この人のように、私がほんの少しだけ言った言葉を、
言いたかったことを、
思っていたことを、
こんなふうに口に出せたら良かったのに。
「……好き、だったんでしょうね」
こんなぼろぼろの吐息には、どんな味わいの記憶も残っていない。
飲みかけのお汁粉の温度さえ、ホントは熱く感じるべきなのか、そうでないのかわからなくて。
もう今となっては、こんなふうに語ることさえ出来ないことを認めたくなかったのかな、と。
それでも、少しだけ微笑んでから、ふるふると首を振ってみせた。
「似てるのは第一印象だけですよ、だけ。
長らく一緒に居ましたもの。
貴女みたいに器用じゃありませんでしたし」
私みたいに、不器用だった。
左手の裾から、手のひらへと、もう一つの白銅貨が滑り落ちる。
先ほどからずっと左手を後ろに回している間に長々と仕込んだもの。まさか目の前でなんてそんな自信はない。
……つまり元から、二つ有った。別々のものだった。
「……でも、今のは……」
最後の一言は、確かに、確りと、確信を持って言える。
あの人もきっと――
同じようにして、釣られるようにして、ほぅ、と息を吐く。
「確かに、ラッキーアイテムでした。
さっきの百円はお汁粉の分。
それからこれが、占いの分。」
左手の白銅貨が、机の上へ置かれる。先ほどの百円に並ぶように、二つ。
「それから、お心づけに……」
ポーチを見るまでもなく、その無数のフタの内の一つをぱちんと開けて、中身を取り出した。
古ぼけたカードだろうか。
面と角にとても薄い保護が掛けられていて、気兼ねなくシャッフルしても問題なさそうだ。
「就労祝いをお渡ししていなかったものですから。
多少由緒がありそうというか、見栄えのあるものをお持ちになるのがよろしいかな、と。
……実際に仕事に使うものを渡すのは良くないと聞きますけれど、水晶とカードは別ですから。
飾りに使うなり、メモ帳にするなり、投げつけて荒事屋を開業するなりしていただければと。思います。」
■四十万 静歌 > 「千人いれば千通り、
どんなに似通っていても、
人は違いますからね。」
とクスリと笑う。
第一印象だけなのは当たり前ですよ、なんて笑って頷いて。
「――きっと、こうして気づき伝わるのも縁で運命でしょうか。」
なんて呟くだろう。そして――
「……」
カードをじっとみて。
「こんなに素敵なものをいただいてしまっていいんですか?
というか荒事屋にこだわりますね!?」
なんて笑っていう。
「荒事屋に向いてそうに見えます?」
と首をかしげながら。
■流布堂 乱子 > 「それでも、それをパターンに落とし込んでしまうのが……
いえ、占い師さんには要らない説法でしょうね。」
自分に言い聞かせるような言葉ばかり出てきそうで。
ただ、頷くだけで留めた。
「荒事屋に……そうですね、
何処ででも寝られるその胆力がはっきりと向いていると思うのですけれど。」
少しだけ呆れたように息を吐いて。
昨日問いかけから導いた答え、その不壊の精神についてただ触れるだけに努めた。
「ですので、そちらの意味でも就労祝いです。
カードに込められた万象の類型化の意志が、幾つかの典型的な災いを防げるかと。
……防いで種類が欠けたら、元々のカードとしては使い物にならなくなりますけれど」
要するに、ちょっとした防護札。
それなりの製作者であるだけ有って、差し迫った危険の取捨選択がキッチリできる賢いカードたちである。
「雪が降ってても五時間はイケます。その間に起きて下さいね」
「それでは。
占って頂きありがとうございました。
……いずれまた、と風紀委員が申し上げても不吉ですけれど。」
乱子は深々と礼をした。
顔を起こせば、いつものように。
ブーツを鳴らして立ち去るだろう。