2016/11/10 のログ
東雲七生 > 「気にしない気にしない、喜んで貰えたら俺も嬉しいしさ。
 何気にお気に入りの店だから、他にも好きになってくれる人が増えるのも嬉しいしね。」

それはそれとして、やっぱり何故か背徳感。
タコ焼きを食べさせてるだけ、食べさせてるだけ、と繰り返し自分に言い聞かせながらタコ焼きをそっと近づけようと……したのだが。

「あっ、そんな急ぐなって!別に逃げたりしな……」

身を乗り出した三野瀬の口の中にタコ焼きは消えた。

「ほーら言わんこっちゃない、大丈夫か?一回出す?」

見ないフリしてやるから、と心配そうに三野瀬の顔色を窺う。
出来たてだものそうとう熱いだろうな、と同情しつつ。

三野瀬 美色 >  
「!!! ~~~~!!」 
 
 ぶんぶんと、涙目で口を押えながら左右に首を振り、上を向いて、首筋や額から汗を浮かべながら、苦悶の表情を浮かべる。
 しかし、なんとか収まったのか、しばしの後にハフハフ言いながらも何とか咀嚼し、飲み込み、また、うっとりとした表情を浮かべる。

「はぁ……はぁ……んっ……はぁ……」
 
 汗浮かんだ額を拭いながら、とても、それはとても嬉しそうに目を細め。

「……ふ、ふふ、凄く、おいしかったですわ。東雲先輩。
 ちょっと熱くてびっくりしましたけれど、やっぱり美味に人は抗えませんわ。
 もう一つ、いただけます? 今度は、ゆっくり味わいますから……」

 にやぁっと笑った。

東雲七生 > 「えっと……が、がんばれ!」

口内の熱源と格闘する三野瀬の姿を見て、果たしてこれは見守って良いものなのだろうかと煩悶する。
いや、見守ってて良い物なのは間違いない。だって彼女はただタコ焼きを食べてるだけなのだから。
それでも、何故だろうか七生は彼女を直視することが良からぬ事の様に思えた。
結局最後まで見守ったけど。

「……う、うん。出来たては格別に美味いだろ?
 ちゃんと熱いから気を付けろよ、って何度も言ったじゃんかー……はは。
 
 分かったよ、ほら。」

正直不安が無いと言えば嘘になったが。
それでも物欲しげな眼差しと笑みには勝てず、爪楊枝を刺し、タコ焼きを一つ取り上げると三野瀬へと差し出した。

三野瀬 美色 >  
「つい、気持ちがはやってしまいましたの……美味しいものには目がありませんわ」

 早速一つ受け取り、今度は少しずつ齧って食べながら、うっとりとした表情で、改めてタコ焼きを楽しむ。
 
「はぁ……本当に東雲先輩の言う通りですわ……格別も格別。
 まるで天にも昇る気分ですの……香ばしい衣と、内側のほっこほこの餡が互いの香りと味を引き立て、その中に控えるぷりぷりのタコ。
 味のオーケストラですわ……これほど手間暇掛けた上に技術まで必要な料理だというのに500円だなんて……恐るべしタコ焼きですわ」
 
 幸せそうな顔で一つ、また一つと頬張っていき、あっという間に6個全て平らげ、また合掌。

「ごちそうさまでした……すっかり堪能しましたわ!
 あらためて、東雲先輩。お礼をいわせてくださいませ!」
 
 そして、にっこりと、本当に嬉しそうに笑った。
 

東雲七生 > 「食べるの、ホント好きなんだな……。」

呆気に取られたように頷いて、それから暫し無言で三野瀬を見つめる。
黙って食べているだけなら、そろっとそっぽを向いても良かったのだが、いちいち感想を口走るので律儀な性分の七生としてはついつい相槌を入れてしまうのだった。
そしてその都度恍惚の表情を見せられて、何と言えば良いのか、こちらまで幸福な気分になって来てしまう。

「えっと、うん。お粗末様。
 本当に美味そうに食ってたし、あんなにぽろぽろ感想が出て来るし、きっと作った人も冥利に尽きると思う。
 だから、ええと別にお礼なんて良いよ、むしろこっちこそありがとう。」

好きな物を褒められるのはこそばゆいけど、悪い気はしない。
少しだけはにかんだ笑顔で七生は小さく首を振った。

三野瀬 美色 >  
「美味しいものを食べるとそれだけで笑顔になれますわ。
 だから、わたくしは美味しいものを食べることがいつでも大好きですの。
 我が三野瀬家は食産で財を成した家。食には常に真正面から向かうべし、ですわ」

 ハンカチで口元を拭いながら、少しすました感じでそう言っていたが、すぐに笑顔になり。

「御馳走して貰ったのはわたくしなのですから、お礼はわたくしが言うべきなのですわ!
 でも、東雲先輩がそういうなら、それもありがたく受け取っておきますの。
 お互いに幸せになれたのなら、それは喜ばしい事ですわ!」 
 
 そういって、セミロングの黒髪を揺らして、明るく笑みを零す。

「だから、わたくしも同じ気持ちになりたいんですの。
 後日、しっかりと、このお礼はさせて頂きますわね?」
 

東雲七生 > 「お、おう……なるほどなあ。
 美味しい物、かぁ。

 俺は、美味しい物を食べるより、誰かと一緒に食ってる方が好きかな。
 一人きりで食う飯は、何食ってもあんまり味気なかったから。」

入学した当初、一人暮らしをしてた時期。
思い出すだけでも胃が重くなるような孤独と共に摂った食事。今では遠い遠い過去の様な、ほんの1年と数か月前。
それを思い出しながらも、七生は子供っぽく笑みを浮かべる。

「だったら、ええと。断る理由も特にねーか。
 よっし、分かった。それじゃあ俺のメアド教えとくから、都合つきそうな時に連絡くれよ。」

胸ポケットからスマホの様な端末を取り出して。
小さく首を傾げて、連絡先の交換を持ち掛ける。

三野瀬 美色 >  
 一瞬、きょとんする。
 目を丸くして、子供っぽい笑みを浮かべた七生を見てから。 
 
「それですわ!!」 
 
 くわっと、美色が身を乗り出して、顔を七生に近づける。
 そして、目を輝かせ。

「そう、それですわ! 確かにその通りですわ、どんなに美味しいものでも、一人では哀しいし、寂しいですわ。
 でも、みんなで食べると、幸せですわ! そう、それですわ! 美味しいは一人じゃなくてみんなの為なんですの!
 東雲先輩はとても良い事をおっしゃいますわ!」 
 
 一気にそう捲し立てて、こちらも携帯端末を取りだす。
 ガラケーである。美色にはスマホの取り扱いは難しい。
 
「連絡先、喜んで交換しますわ! だから、先輩」
 
 にっこりと、美色は笑う。
 
「美味しいを分け合いたいときは是非ともお声掛けくださいな!
 わたくしも、その時は是非ともまたお声を掛けますから!」

東雲七生 > 「えっ、えっ」

突然身を乗り出されれば驚いた様に半歩下がる。
元々異性に耐性のある方ではないのを、先輩風を纏う事でどうにかこうにかやりくりしているのだ。
過度の接近は七生としては望ましくない。反射的に手で妨げ様として、あわや胸に手が当たりそうになって慌てて引っ込める。
挙動不審極まれりである。

「えっと、よく分かんないけど。俺が良いこと言ったのね、おっけーおっけー、分かった。
 ほんっと、いちいちオーバーだなあ三野瀬って。」

状況を理解すれば途絶えた先輩風をまた纏う。
それでなくとも妙な心地を抱かせる少女相手なので油断は禁物と心を強く持って。

「ああ、うん。
 常世祭の間、色んな所で色んな催し、出店があるからさ。面白い物とか見つけたら連絡するよ。
 よろしく、三野瀬。」

三野瀬 美色 >  
「思った事をそのままいっているだけですわ!
 ん、交換できましたわね。こちらこそ、改めてよろしくお願いしますわ、東雲先輩!」
 
 連絡先を交換し終えると、胸を僅かに揺らして、短めのスカートの裾を直しながら立ち上がる。 
 そして、ぐっと、伸びをしてから、少し乱れた髪を直して、得意気に笑った。
 
「ふふ! 実にいい気分ですわ!
 さて、今日はもうお腹も一杯になりましたし、わたくしは帰って洗濯物をしますわ!
 それじゃ、東雲先輩。ごめんあそばせ!」

 そういって、決して早いとは言えない速度の駆け足で人混みとは反対側に去って行き。
 丁度、もう少しで見えなくなるところで振り返って。

「今度はわたくしが何か御馳走しますわ!」
 
 そう、大声で笑って伝えてから、少女はパタパタと、夕暮の中へと駆けていった。

東雲七生 > 「いや、だとしたら何て言うか、すっげーパワフルに物を感じてるんだな。」

それはそれですげーよ、と少しばかり疲れた様に肩を竦める。でも、楽しそうだ、とも思う。
笑顔が少しだけ、最初よりも眩しく見えた気がして目を眇めた。

「ああ、じゃあな三野瀬!
 今日はサンキューな、話相手欲しかったところで丁度声掛けてくれたしさ!」

負けられない、と満面の笑みを浮かべて見送る。
救われた気がしたのは事実だし、感謝しているのも事実。
ただ、次会う時はもう少し心穏やかに過ごしたいとも思う。きっと無理だろう。

「楽しみにしてる!」

公衆のど真ん中で大声を張り上げる三野瀬へとこちらも声を張り上げて。
またしても個性的な後輩と知り合ったな、と当人が見えなくなってから苦笑を浮かべた。

ご案内:「学生通り【常世祭期間中】」から三野瀬 美色さんが去りました。
東雲七生 > 「……よし。」

改めて端末を動かし、新たに登録された連絡先を確認する。
お陰で常世祭の楽しみが一つ増えた事に、小さく笑みを浮かべつつ七生は端末を仕舞った。

そして荷物を持ち直すと、少し軽くなった足で通りを歩き始める。
大声でやりとりした所為か、まだ少し好奇の視線が向けられていたが、それが気にならない程度には。

少しだけ、彼女のパワーの一端を分けて貰ったのかもしれない。

ご案内:「学生通り【常世祭期間中】」から東雲七生さんが去りました。