2016/12/03 のログ
ご案内:「学生通り【常世祭期間中】」に水月エニィさんが現れました。
水月エニィ > 「はーぁ、ムキになって追いかけたり試験対策に追われてたらもう12月ね……
 ……それにしてもお祭り、ねぇ。」

 ようやく落ち着いたと言わんばかりに学生通りを歩きつつ、祭り向けに彩られた学生通りの様子を眺める。
 終わりかけではある模様だが、それでも賑やかなものを覚える。

「ま、せっかくだから少しでも遊びましょ。
 今はちょっとクールダウンよ。」

 出店仕様の店舗で肉団子の串を買う。
 食べながら歩き進めるか。

水月エニィ > 「うっ、寒……
 そろそろ冬服が必要ね。これも暖かいけれど……上着位は欲しいわ。」

 冬の風を受けて、寒そうに自分の身体を抱く。
 小さなくしゃみと共に軽く咽た。

「皆は元気にしているかしらね。
 ……って思うようになった辺り、私も本当に変わったわ。」

ご案内:「学生通り【常世祭期間中】」に谷蜂檻葉さんが現れました。
谷蜂檻葉 > 「―――おーい、水月さーん。」

一月に渡る祭りの喧騒は一日を花火のように過ぎるそれとは違う柔らかな明かりに彩られている。
徐々に端から順に畳まれだしてはいるが、まだまだ祭りの只中である。

そんな中で、寒さに震えながらコーヒー一つで粘るような祭りの楽しみ方をしているエニィに、不意に声がかかる。

顔を上げれば、道の端。
人気の途切れた路地から顔を出した、同じ学園の少女がエニィに声をかけていた。

「あぁ、やっぱり水月さんだ。こっちこっち。」

どういう意図かは不明だが、とりあえず呼ばれている。
彼女の居る路地は薄暗く見えないが……何があるのだろうか。

水月エニィ > 「あら、谷蜂さん。こんばんわ。」

 終わりへ向かって祭りが動いている。
 それまた祭りの醍醐味なのだろう。

 そのように動く人々の向こうに、自分の名前を呼ぶものがいる。
 そう思えば振り返り、落ち着いた笑みを浮かべて挨拶を返す。

「この前の本だけど……って、こっち?
 え、ええ。今行くわ。」

 頷き、手引きのままに路地へ向かう。
 谷蜂へ向かう足取りは軽いし早い。
 

谷蜂檻葉 > 「ええ、ええ。こんばんわ。
 ―――ちょうど誰か同行者《道連れ》が欲しかったところに。ナイスタイミングね!」

輝く笑顔の裏で不穏なルビ《副音声》が聞こえたような気もするが、ともあれ彼女の下に近づけば明かりがなさそうなその路地での光源に自然と目が移る。


木製の扉には『キャンドルショップ~大往生~』
隅の方に、学園祭キャンペーン中。 と、どちらもやたら達筆に看板がかけられていた。


「ちょっと風よけにここに潜り込んだら、コレよ。
 ―――気になるでしょ? 気になるわよね。 そうしたらやっぱり、入るしか無いじゃない?

 でも一人は嫌だなー出直そうかなー、なんて思ってた所に貴女が来たってわけ。

 ……どう?」

どう? じゃないが。 ともあれ、彼女は随分とこの店に執心しているらしい。
彼女の勧めに従って扉を開いていもいいし、開かなくても良い。

水月エニィ >  
「今だいぶ妙なニュアンスだった気がするのだけれど――っと、へ、ぇ?」

 路地まで辿り着けば自然と足は止まる。
 柔らかめの灯りに照らされる看板には、達筆で――

「――ねぇ谷蜂さん。キャンドルショップなのは分かったの。
 でも、私の間違いでなければ――達筆で大往生って書いてある気がするのだけど。」

 彼女へ答えた後、再び看板を見る。
 いわゆる二度見の後。軽く思案する。
 
「そうね。入ってみましょうか。
 キャンドルは好きなのよ、私。」

 あっさりと承諾する。
 扉へと手を掛けて、ゆっくり開く。

谷蜂檻葉 > 「良い所に気づいたわね―――そう、もう意味不明な上に不穏よね?
 だからこそ道連れが欲しくなったから貴女を誘ったって算段ね!」

ルビなど要らぬ!この檻葉、潔さならクラスメイト2,3番目よ!


そうして、そんな大見得を他所に扉を開くエニィ。
その背後から声が聞こえた。

「……貴女の誘ったの、思った以上に正解だったわね。」

10フィート棒までやってくれるとは思ってなかったわ。
そんな声が聞こえた。


***

扉を開いた先は、幻想的な空間だった。
壁一面のアロマ・キャンドル。 その合間合間には人形が掲げる燭台、美麗に掘り出された建造物のミニ・スケールの各部に付けられた蝋燭。 物によっては一つの造形品が蝋となっている。

名前に違わぬ、キャンドル尽くしだった。

おそらく、普通の仏具であろう蝋燭も大量にあったが、それらもカラフルなものや香りのついたものがあるようで目移りがする。 店台には、耄碌していそうな爺が一人可愛らしい来客にふがふがと歯のない笑みを見せて笑っている。

台の下には「どれもご自由にお手に取っていただいて構いません  店主」

やはりやたら達筆に、そう書かれていた。

水月エニィ > 「慣れっこだもの。」

冗談めかしながらニヤリと笑い、店の中を見る。
……だらしなく口を開け、感嘆の吐息。

これほどまでに幻想的に彩られた灯し火を見てしまえば、鋭い笑みだって丸くなる。綺麗なものを見れば見とれてしまうものだ。

 気が付けばふらふらと店内に入り込んでいる。辺りを見回しながら歩いている故にやや危なっかしい。

「ろうそくはいろんな所で使われるのよね。
 ええ……本当、綺麗な火。」

 仏具としての"ろうそく"を手に取って、ぼうっと投げる。
 思う所があるのだろう、1つのそれをじっと見つめ始めた。

谷蜂檻葉 > 「へぇ、『点いている』のに減らないんだ。
 いや、減りづらくしてるのね。
 自然な火のまま、こうしてディプレイして……すっごいなぁ……うんうん、入って正解だったわ。」

どの口が言うのか、自身の選択を自賛しながらエニィの後ろから見て回る檻葉。
確かに、本来であればイベント会場でもなければ消した状態で置いておくのが普通だろうに、火の大半は灯されている。 あまり魔の気配はないが、相応の『技術』が凝らされているのだろう。

店主が何者かは分からないが、相当の職人であることは解る。

「水月さん、「火」って好きなの?」

ぽつりと呟くエニィに、いい香りねー。と蜜の香りがする可愛らしいキャンドルを手に取りながら、
檻葉はどこか不思議そうに尋ねた。

水月エニィ >  
「ううん。私が好きなのは火じゃなくてろうそくの火よ。
 ……ほら、暖かいし柔らかいじゃない。それに、危なっかしくもないわ。

 それに、何と言うか……うん、暖かいし柔らかいから好きなの。」

 言葉を濁す。
 隠している……と言うよりは、気遣っているようなものだ。

 実のところ、水月エニィがろうそく――キャンドルを好むのは自身の宗教観に依る所に依存する。
 それゆえに躊躇い、あいまいな形で返したのだろう。

「……減りづらい蝋燭ならディスプレイもしやすいよね。
 ろうそくも長生きできるようになったのね。」

 話題を切り替えようと思ったのだろう。
 先ほどの呟きを話題として拾って答える。

谷蜂檻葉 > 「暖かい。 そうね、良いわよね。」

わかるわ。 と、うんうん納得したように頷いて彼女はそこまで気に留めなかったらしい。

「蝋燭ってどんどん減るものね。
 使い捨て、ってほどじゃあないけど。あまり長く使うよりは付け替えて―――
 ……うわ、やっすい。 良いの?お爺ちゃん。これ値段間違ってない?」

話題の中で手に取ったキャンドルを色んな角度から見ていた檻葉が値札に気づいて
おじいちゃーん? と店主に問う。

その手元のキャンドルを見れば、魔術だけでなく見た目も相当凝った作りであるにも関わらず、
簡素な市販品とそう変わらない値段がついている。

学生の小遣いレベルであろうと、あまり心配せずいくつか買えるような値段だ。

その疑問にも主人はふがふがと笑うだけで、会話は成立しない。
とりあえず、気になるのであればいっそ買ってしまえばいいだろう。


「うーん、まぁ、お爺ちゃんが喜んでそうだし幾つか買わせてもらっちゃおうかな。
 ………うわっ!? ねぇみてエニィちゃん。 これ、お城。 お城がキャンドルになってる!

 デっカ……えぇ…すっごいなぁ、ほんと……っていうかコレもこんな値段なんだ……。
 安いわけじゃないけど、全然高くないわね……。」

水月エニィ > 「そうね。
 減りづらい蝋燭なんて、私からしたら夢のようよ。」

 冗談めかしながら、好ましいものを見るように目を細める。
 ……滅多に見せない表情だ。そのまま老人と谷蜂のやりとりを見れば意識は値札へ。
 確かに安い。誰でも買い求める事の出来る値段だ。

「本当に安いわよね。これ、いいのかしら。
 ……って、どうしたの、谷蜂さん。」

 はしゃぐ声に引っ張られて彼女の元へ。
 インテリアだと思っていたものがろうそくだった。
 えっ、と声を漏らし、再び"ろうそくのおしろ"をみる。

「色々とびっくりね。
 ……灯すのが勿体なくなっちゃうぐらい。そうね、記念日に灯したい感じよ。」

谷蜂檻葉 > 「―――とりあえず、私はコレとコレね。」

二人して、しげしげとキャンドルキャッスル(仮名)を眺めていたが、ふと我に返ったように檻葉は先程まで手に取っていたキャンドルを吹き消して手に取り、もう一つ。別のアロマキャンドルを手に取った。

「エニィちゃんは買うの決めてる?
 
 ……お城、買う? 買うならちょっとぐらい出してもいいわよ。」

水月エニィ > 「ええ。
 私はこれとこれとこれと、これね。」

 西洋風のものを2つ、東洋風――仏具に近いものを1つ、
 女の子らしい香りの鮮やかで香りのあるものを1つ。

 そこまで言って、ろうそくのお城をみる。

「ううん、それは悪いわよ。
 シェアしづらいものでしょうし……

 ………そうね。でも、やっぱり欲しいわ。
 思い切って買っちゃいたいのだけど、私が買ってもいいかしら?」

 遠慮がちに、私が買っても良いかと切り出した。
 悪いと思っている節があるのか、ばつが悪そうな顔つきだ。

谷蜂檻葉 > あ、それ私も買おうかな。と少し悩んだようだったが、檻葉も決めたものを買うようだ。

そして、エニィの申し出に楽しげに笑みを浮かべた。
何、派手な見た目も買われなければいささか淋しい。
それが知人のもとに渡るとすれば心も一つ温まるというもの。

「あはは!その意気、檻葉ちゃんが買ってあげましょう!
 ……あっ、いやその『買う』わけじゃなくてね?ちょっと本買いすぎて少しセーブしないと……。

 ―――お爺ちゃーん、お会計なんだけどこれちょうだーい!」

互いに全て買うものが決まれば、店主の爺に改めて声をかける。
老人は声を聞けばひょいと椅子を降りて酷く曲がった腰でよたよたと此方に歩み寄ってきた。

ふがふがと、聞き取りづらい声ではあったが差し出されたものは電卓。
……商売はきっちり行われているようだ。

ソレに檻葉は少しだけ多めに金を支払い、
『お釣りはこの子の会計分で。』と伝えると翁は愉快そうに声なく笑った。

エニィにも、既に算出された電卓が差し出される。

水月エニィ > 「ふふっ、面白い冗句を言うのね。
 ……ありがと、恩に着るわ。」

 嬉しそうに笑い、買われた心意気に応える。
 以前出会った時――講義での模擬試合の頃からすると、大分柔らかい表情を浮かべるようになっている。
 何かあったとも読めるし、この常世学園に溶け込みつつあるのだろうとも思えるような自然な表情だ。

「大事に、でももったいぶらずに使うわよ。ええ。
 ……あら? この値段……」

これでいいのかと店主に問えば、
これでいいのだと言わんばかりの笑顔が返ってきた。


「不思議ね。」

 小さくつぶやきつつ、提示された金額通りに会計を済ませる。
 "ろうそくのおしろ"は丁寧に梱包され、大きな紙袋の中に包まれて渡された。
 これなら落として壊れる事もなさそうだ。嬉しそうに紙袋を抱えた。

「……改めて、今日は誘ってくれてありがとう。
 旅は道連れ世は情けって訳じゃないけれど、楽しいお祭りの思い出が出来たわ。」

谷蜂檻葉 > 二人して店を出ながら、互いに改めて雑踏へ足を踏み出す。


「いえいえ、こちらこそ。折角の祭りにお互い独り身なわけですし?
 痛み分け……じゃなかった、支え合いよ。支え合い。

 ―――それじゃあ、私はこっちに。」

水月エニィ > 「全くね。」

 口元を曲げ、冗句めかして笑ってみせる。
 何かがよぎったものの、それは払い――

「それじゃあ、私はあっちだから此処でお別れかしら。
 名残惜しい気もするけれど、また会えるもの。」

 小さな紙袋を大きな紙袋にまとめつつ、頷く。

「――今はこれを持ち帰りたいから、安全で近い道を通る事にするの。
 おやすみなさい。谷蜂さん。」

 抱えたままの姿勢で軽く手を振って見送った後、
 ゆっくりとした足取りでその場を後にする。

 ……暖かいものを抱えたような、ほくほく顔だったそうな。

ご案内:「学生通り【常世祭期間中】」から水月エニィさんが去りました。
ご案内:「学生通り【常世祭期間中】」から谷蜂檻葉さんが去りました。