2017/04/14 のログ
楊柳一見 > 鳩の――式神の不審を認めるや、抜刀の構えを取る班長さん(仮称)に、機銃をひねり出すタンク。

――うん、ヤバいね。こりゃホンモノだ。

したらばここで一つ道理を明らめ、腹をくくる必要がある。
あの式が注射器を持ち去り遂せれば、必然彼ら彼女らの業務を妨害した事になり、
また耳に挟んだ薬物の副次効果等も合わせて鑑みれば、島の治安を乱す事にもつながる。
つまりは、島側に完全に敵視される。よろしくない。
また事を構える次第になれば、自分にもそのお鉢は回って来るだろう。
本部は未だに自分を手中に収めている気でいるのだし。そもそも籍抜いてないし。
非常に、よろしくない。

「――ッ、」

よって己は即座に剣指を立てる。
件の注射器を嘴に挟み、タンクの射線からも、班長さん(仮称)の間合いからも遁れ飛び立とうとする鳩に向け、

「――オン・バザラ・ボキシャ・ボク!」

撥遣真言を喝破する。
魂抜きと呼ばわられるそれは、生物には全く効果がない。
これが魂を抜くのは、被造物――それこそ件の式神のみである。

『ギャッ!!』

男の悲鳴をほとばしらせ、鳩はびくりと痙攣した後、五芒星が記されたただの紙片へと戻る。
地面へ注射器がころりと転がったのを認め、へぇえと嘆息。

――さて。

…もう、これにて一件落着って事でスタッフロール行っていいよね?
アタシのそれやこれやは見なかった事にして。

ステーシー >  
息を吐いた。
抜刀居合い、真空を飛ばす?
戦闘から離れて久しい自分にできるだろうか。

だがやるしかない、そう構えた瞬間。
少女の凜とした声が響いた。

「……これは…」

紙に変化した…いや、戻ったであろう鳩を見る。
陰陽道にこんな術があると聞いたことがある。

「あの」

少女に声をかける。
咄嗟の判断で協力してくれたのは間違いないのだから。

「ありがとうございます、あなたは?」

男の悲鳴を上げていたその紙片が風に舞うと、軍手を装備して指先で摘んだ。
ギリギリセーフ。

「……式神。なんで変革剤の残った注射器を盗ろうと…?」

イチゴウ > 「・・・何だこれは。」

紙に変化した鳩を見てそっと呟く。
何かの異能か何かだろうか?
全くこの島においては常識外れの出来事が
頻繁に起こる。
そしてこの鳩を紙にしたであろう少女の方を向いて

「ご協力どうも、危ない所だったよ。
何だ?物を紙にする能力でも持ってるのかい?」

フランクに声をかける。
この鳩は紙に戻ったという方が正しいが
式神というものになじみのないイチゴウには
それがわからない。

「とにかくこのサンプルは風紀委員会が
責任を持って管理することにするよ。」

イチゴウは気を取り直してそう言うと
注射器の方へと歩み寄る。
するとその注射器は先ほどの重機関銃と同じように
発光すると今度は跡形もなく消滅する。

楊柳一見 > 「あー、いいよいいよ礼なんて」

フリフリ手を振って班長さん(仮称)とタンクに応える。
ついでに誰何なんてしてくれなけりゃもっとよかったんだけど。

「……1年の楊柳よ。通りすがりの真言使い」

嘘は言ってない。ここにはマジで散歩がてら通りすがっただけなのだ。

「さっきのは、その紙にぶっ込まれてた式を叩き帰しただけ。
 術者は心臓麻痺起こしてどっかの病院に運び込まれてるんと違うかな」

やや嘘だ。そこまで大きなフィードバックはない。
術者に聞き込みなどされれば、こちらの素性も割れてしまう。
自分は人畜無害な学生生活をエンジョイしたいのだ。
脛にザックリ食い込んだ傷跡はこの際、術師も始末してナイナイしてしまおう――。

「――――」

不意に後頭部に感じた風圧に、ペットボトルをかざす。
錐揉んで突撃して来た雀――忌々しい事にやはり白い――の嘴が、すんでの所でボトルに刺さった。

『不実ぞ。裏切りぞ。楊柳の娘――』
「 う る せ え 」

先刻と同じ男の声で囀る雀を、指弾で生じた風圧で消し飛ばす。
同時、ざわざわと桜の残り香に霞む上空が曇り出す。
否、それは幾百と思しき怪鳥――式神の群れである。

「……お二人さん。ちょっと害鳥駆除に手ェ貸してもらっていーい?」

強張った笑みのまま、彼ら彼女らに向けて救助要請。
何だよこのヒッチコック映画みてえな状況。

ステーシー >  
注射器は風紀預かりになるようだ。
それは結構、これで気兼ねなく掃除の続きができる。

「えっ光って消えた!?」

どういう技術だろう。
しかし、風紀のメカが言うのだから多分間違いはないだろう。

「そっかー、一年の楊柳。その年で式符への対処ができるなんて凄い!」
「術者は……コレを欲しがる以上、多分悪い人だろうから…何とも言えないかな」

その時、白い雀が楊柳に襲い掛かる。
それを彼女が対処した後、空に見えるのは。

「いっ!?」

式神の群れ。それも数が尋常ではない。
一人の術者が操作しているなら神意の体現者、複数の術者が操作しているなら…
それこそ組織だった陰陽術師の集団がいるとしか思えない。

「みんな、建物の中に逃げて! ここは私達が引き受ける!!」

生活委員会の後輩達を逃がすと、刀を抜いた。
襲い掛かってくる鳥たちを切り伏せていく。

「……っ!!」

突撃してくる白鴉の嘴が頬を掠めた。
血が薄く流れる。

「数が多い……!」

イチゴウ > 「なるほど、さっきの鳩は
誰かによって遠隔操作されていた訳か。」

ふむふむとイチゴウが納得していると
急に空が曇ってくる。
いや、曇るにしては不自然すぎる。
良く目を凝らしてみると

「おいおいマジか。」

そこには尋常じゃない数の
妙な鳥のようなものが空を覆っていた。

「この島に来てからの初めての対空攻撃が
まさかの害鳥相手だとはな。」

イチゴウは鳥の大群を正面に捉え構えると
重機関銃のレーザーサイトを点灯させ
銃身を限界まで上に向けると
耳を貫くような鋭い音を立てながら
怪鳥の群れに12.7mm弾をフルオートで叩き込む。
対象が密集しているのと大口径弾の高い貫通力が幸いして
どんどん怪鳥を貫いていくがその圧倒的な物量は
流石に単独では凌ぎきれない。
イチゴウのボディが漏れてきた怪鳥に攻撃されるが
硬い装甲のおかげでダメージは無く
遠くから迫りくる怪鳥の処理に集中する。

楊柳一見 > 「団体さんッスか……」

自分が把握している術者の男の腕では、鼻血が出るまで頑張ったところで十匹程度だろう。
それも、このサイズの式に限ればの話だ。

「何かロボっぽい人(?)!
 センサーか何か積んでないの!?」

対空砲火を行うタンクに吼える。
これだけの布陣を敷く以上、術師もさほど遠くに構えてはいまい。
この騒乱の中、遠ざかりも近づきもせず、不自然に停止している生命反応。それも複数。
それさえ見出せたなら、活路は開こう――。

避難する生徒らを傍目に送りつつ、お茶だだ洩らすペットボトルを持った腕でぐるりとつむじを描く。
風圧で切り裂かれてほとばしるお茶。
それは風の渦と一体となって、数十の式を横殴りの雨の如く襲う。
魔術的動作を以てしたところで、所詮は紙屑。
斬れば裂ける。弾丸を叩き込めば砕ける。水で攻めれば鈍る――。

「一切処の如来に灌頂したてまつる。オン・バザラ・ボキシャ・ボク!」

そいつをまとめて強制送還。

『ぐあっ!!』

式のフィードバックに思わずおらぶ声一つ。場所は――

「班長さん、そっち! 桜の木の裏ッ!!」

班長さん(仮称)の後方の木立にまず一ツ――!

ステーシー >  
桜の木の裏、そう言われると身を翻してそちらに向かう。

「バントライン一刀流……!」

そこにいたのは、ごく普通のサラリーマン風の身なりをした男性。
だが、どう見ても持っているものが怪しい。
呪符や霊符の類だ。これが術者!!

「天笹(あまざさ)!!」

大振りながらも峰打ちで相手の両腕を動かなくし、無力化。

着地するステーシー、そこに無数の白い鳥たちが群がる。

「言っておくけれど」

その言葉と共に、白の極光が放たれる。
白い髪に変わったステーシーが気迫だけで無数の鳥たちを吹き飛ばす。

「……後輩たちに怪我があったら、許さないわよ」

http://guest-land.sakura.ne.jp/cgi-bin/uploda/src/aca1084.jpg

プログレス。
自身の存在のステージを高め、剣の聖女へと変わる。
頬の傷も一瞬で塞がり、剣気が膨れ上がっていく。

イチゴウ > 「了解した、生体スキャンを行うぞ。
因みにボクは人じゃない、立派な戦闘兵器だ。」

少女の声を受けてイチゴウは
近くの生体反応をくまなく洗い出す。
なるほどあの怪鳥が遠隔操作なら
操作主が近くにいるという訳か。
探査を進めるとこの騒ぎの中動いていない
生体反応を検知した。

「場所が特定できた。
あの建物の影にも不自然な生体反応がある。」

イチゴウは対空砲火を行いつつ
少女に対して結果を報告する。
そうこうしているうちに
イチゴウは自らの姿が隠れてしまうほどの
大量の怪鳥にたかられており

「すまんがボクに群がっている奴らを掃除できるか?視界が邪魔で仕方がない。」

イチゴウは困ったように声をあげる。

楊柳一見 > バントラインの白光。
みなぎる聖性と、不抜のうちに放たれる剣気に、男とその式どもの動きが縛される。

『……何たるものを擁すのだ、常世島。常世学園』

戦慄と狂喜。その相反する二つが綯い交ぜになったような顔で、男は身震いする。

「……斬っちゃった方が、後腐れなくってよ」

それを一瞥して言ってのけ、またそっぽを向いた。
この期に及んでまだ、その“何たるもの”を手に出来るつもりでいるのだ。
この愚か者どもは。

「――ビンゴ」

タンクが探り当てた反応にほくそ笑んでから、援護要請を貰い、

「あいよ、っとぉ!」

無手のまま、振り子打法のフォームで腕を振り切った。
その風が横殴りの暴風となって、タンクに雀羅を張る式神群を追い散らした。

『《テング》! 貴様も異能持ちか!
 我らの目を掻い潜り、今また裏切り遁れんとするはその為か!』

それを認めたサラリーマンが、狂気の表情で喚き散らす。

『惜しいなあ! 惜しいなあ!
 本土におる時に知れておれば、貴様の髄を採り、血肉の吟味をしてやれたものをなあ!』

「……超殺してえ」

勝手ほざいてる男に殺意が募るが、今は式の対処が優先か。

「で、どうすんの兵器の兄さん。ロケットでもブチ込んで建物ごとヤる?」

テンションのせいか、えらく過激な事をのたまうこれ。
半ば以上本気であるが。

ステーシー >  
「人は斬らない」
「その悪意の根を断つ」

刃を掲げた後、軽く振る。
回数にして数回の斬撃が、十数の白い鳥を斬り落とした。

「我が名はステーシー!! ステーシー・バントライン!!」

上空に跳躍。
足元にプラーナを集中させて空中に立つ。

「私の一振りは山をも断つ……私の一振りは海をも斬る………私の一振りは、星をも薙ぐ!!」
「バントライン一刀流奥義、星薙ッ!!」

プラーナを切っ先から際限なく放出し、無人の建物……そして、その物陰に隠れていた術師たちを攻撃する。

着地と同時に納刀。

「星の屑と消えよッ!!」

周囲の後輩たちから、歓声が上がった。

イチゴウ > 「サンクス!ありがたい。」

イチゴウは身の回りの怪鳥を一掃してくれた少女に対して
お礼を言うと共に

「そうねえ。」

少女の過激に提案に対してうーんと
少し考えたような素振りをしてから

「まあ一種のテロ行為だし大丈夫だろう。
それに一般市民は避難させたし」

イチゴウがそう言うと背部の重機関銃が再び発光し
何か太い筒のようなものに置き換わる。

「不意に近寄っても罠が張られてたら面倒だ。
TOW対戦車ミサイルで建物ごと吹き飛ばす。
まあ有事なんだしあの建物の所有者には風紀から
補償金か何か下りるだろ。」

そんな事を口走ると筒から風船が破裂したような
音と共にミサイル弾が煙を引いて建物へと
直進していくが同時にステーシーの攻撃も
術者に向けて飛んでいく。

「こりゃいかんな。」

イチゴウは急いで誘導を空へと反らす。
するとミサイル弾は建物に直撃する寸前で
空へと向きを変え一定以上飛んだ後に
空中で大爆発する。

「にしてもあの猫耳、凄まじく速いじゃあないか。」

イチゴウはステーシーの驚異的なスピードに
しばし驚愕していた。

楊柳一見 > 「……わぁお」

ステーシーから放たれる、光帯と見紛う大切断。
斬撃の波は過たず、陰に潜む術師らを一網に打ち尽くし、その意識を刈り取っていた。
仮に未だ戦意を失わぬ者がいたとて、続いて空に炸裂する火輪を見てはそれもご破算だろう。
それが証に今まで辺りを席巻していた怪鳥は、もはやその力を失い、
ただの紙吹雪となって春霞の中掻き散ったのだから。
ややもして茫然の態から持ち直し、

「だーから無駄なんだって」

同じく呆然とするサラリーマンに、けたりと笑いかけた。
氷山の一角さえ、この有様なのだ。
一体どこの誰が、この凄まじい島を、学園を、人々を掌握出来ると言うのだ――。

「しっかし、対戦車ミサイルまで積んでるたあ恐れ入ったね」
何気にこっちの提案にもオッケーしてたしなあ、と。
生きる兵器に頼もしさとうそ寒さの両方を感じつつ。

「さぁてと」
――後の始末をしなくちゃ、ね?

何でもないような足取りで、サラリーマンの方へ近付く。
男の目が狂気、脱力、そして今――恐怖に変わる。
古来、天狗は人を威するあやかしである――。
況やその名を冠する者の目を。
死魚のうねる淵の如きその眼差しを視たとあらば。

ステーシー >  
戦闘が終わったことを確認して、プログレスを解く。
元の蒼黒の髪に戻ったステーシーが、後輩たちの下へと駆け寄る。

「大丈夫? あなたたち……怪我はない?」
「そう……よかった」

イチゴウに向けて歩み寄りながら、会釈をする。

「こっちは負傷者ゼロみたいです、迅速な判断ありがとうございました」
「あはは……スピードが身上なんです」

蒼黒の猫は、そう言って困ったように笑った。
貴種龍を殺したこの世界で一番新しい幻想。
ディバインブレード『旋空』の中に宿る神は今もまどろむ。

「楊柳」

その名を呼んだ。

「殺しちゃダメだよ、救われない魂になってしまう」

それ以外を止める気は、一切なかった。
もし自分とイチゴウと楊柳がいなければ、後輩たちに死傷者が出ていたところだ。
怒りがないわけではない。

イチゴウ > 今回の騒動は楊柳とステーシーがいたからこそ
抑えられたといっても過言ではないだろう。
もし自分1人だけだったら術者の存在にきづかず
延々と怪鳥駆除を続けていたに違いない。

「お二人とも今回については
心強い支援本当に感謝するよ。」

背部の武装を発光させ消滅させると
ステーシーと楊柳に対して頭を下げるような
動作をしながらお礼の言葉を発する。
そして次に術者と思わしき男の方を向き

「倫理的なヤツがいて命拾いしたな。
テロリスト退治は報酬が良いからボクだったら
間違いなくぶち殺してたよ。
オマエ、自分の運に感謝しな。」

イチゴウは男に対し無機質な口調で
機械らしく淡々と言葉をぶつける。

楊柳一見 > ざり、と歩みを止める。
あと一歩。踏みにじられるはずだった桜の花弁が、ふわりと風に逃れた。

――倫理的なやつ、ねえ。
間違いなく自分はそっち側じゃないな、なんて。
タンクの人間くさい謝辞に、柄にもなく生暖かいものを感じた。
…自分の運勢に感謝したのは男だけではない、と言うのも補足しておこう。

次いでステーシーの言葉がその背に掛かり、

「救いなんて必要ないよ。こいつにも――」
――アタシにも。

振り向きもせず言いざまに振り抜いたのは――ただの、拳。
男の頬をしたたかに打ち据える。それだけの事。
情けをかけた訳じゃない。
苛立ちだって失せてやしない。
けれど思い返してみるにつけ――

「そう言う風に止められたの、初めてかも。多分」

あるいはそうして止めてくれる人が、かつていたのなら。
仮定は所詮仮定でしかないが。

「んで、こいつはどこぞの詰所なり連行するとして。
 アタシはどうなんの? 関係者って事で事情聴取?」

叩けばバンバン埃が出る身。観念したように両手を軽く広げた。
まあ、この島じゃ何も手ェ出しちゃいないのが、せめてもの救いだろうか。

ステーシー >  
薄紅の風が舞い上がる。
落ちた桜の花びらは、まだ朽ちてもいない。

「……まるで自分にも救いなんていらない、なんて言ってるみたいだよ?」

男が殴られるのを見て、ふぅ、と溜息をついた。

「いつだって止めるよ。後輩が手を汚そうとしているのなら」
「初対面で言うことじゃないだろうけど、今回の対応は満点」
「ありがとう、私の代わりに殴ってくれて」

イチゴウを見て目をぱちぱち。

「もちろんこいつらは連行、私は家屋損壊の事情聴取、楊柳は無罪放免だけど?」
「……楊柳、あなたの目は少し悲しいね」
「そんな目をしたあなたには、桜の花びらが散った後の街を一人で歩く刑です」
「……いいですよね、風紀の方?」

生活委員会の後輩たちに仕事の引継ぎをする。
そして。

「さて、それじゃー私はこの戦車さんと行くから」
「またね、みんな。それと…楊柳」

皆に別れの挨拶を告げて、少女は怒られに行くのだった。

ご案内:「学生通り」からステーシーさんが去りました。
イチゴウ > 「うむ、そうだな。」

イチゴウはステーシーの案を飲み込むと
彼女と共に風紀本部へ向け歩き出す。
そして楊柳の方を向いて一言。

「楊柳さんと言ったか・・・
キミが一体どんな裏を持ってるのかは
わからないがそれが目立たない限り
ボクは手を出せないから上手く立ち回るんだな。
事情聴取は失敗した時に死ぬ程やってやる。」

イチゴウは低めなトーンでその一言を言い終えると
今度こそ猫耳の少女を連れて学生通りを後にする。

「もう一つ気になるのは遠くから見てやがった
傍観者の事なんだが・・・まあ今はいいか。」

イチゴウは誰にも聞こえないような声量でそっと呟く
もし彼が人間であれば冷たい笑みを浮かべていただろう。

ご案内:「学生通り」からイチゴウさんが去りました。
ご案内:「学生通り」にイチゴウさんが現れました。
楊柳一見 > 無罪放免、の言葉に思わずきょとんとした。
あの男が騒乱の最中に散々いらん事を喚いてくれたから、
てっきり咎めの一つ二つはあるものかと思っていたが。

「……そんな刑聞いた事ないッスよ」

く、と噛み殺し損ねた笑みを零した。
救いの是非についちゃあ――今語るような事でもない。
彼女が無罪と言ったのなら、そうなんだろう。

「――おお、怖い怖い。死なん程度に頑張りますかね」

鋼の音調で釘を刺すタンクには、そんな軽口を。
くすぐったい善意もなく、要不要でこちらをまず危険なしと断じたのだろう。
それは味わい慣れた渇いた空気だ。
いっそ心地好い。好いが――

「――……」

散り行く桜を抱く空を仰ぐ。
夏はまだだってのに、顔が、眼が暑い――熱い。

――手を汚そうとしているなら、いつだって止める、か。

「……かなわんね。センパイって奴は」

自分の中に、色々と整理のつかない初物を置いて行きやがった彼ら彼女らへ。
聞こえもせぬ悪態を吐いてから、ゆるゆると刑期のお勤めに参るとしようか――。

ご案内:「学生通り」からイチゴウさんが去りました。
ご案内:「学生通り」から楊柳一見さんが去りました。