2015/07/23 のログ
■獅南蒼二 > 会話はまるでかみ合っていない。
美しいが尋常のものとは思えない演奏を続ける者。
演者の楽器を回収しようとする者。
どちらに非があり,どちらに正義があるのか。
ギターとヴァイオリンの音色が混ざり合い,美しく響くカンタービレの音色が、この先を暗示しているようにも思えた。
「・・・・・・・・・・・・。」
白衣の男は再び煙草を取り出し、静かに火をつけた。
ご案内:「商店街」にアトラ9さんが現れました。
■アトラ9 > 闇よりも深い黒に染まった浴衣を纏ったガイノイドが一体。艶やかな黒髪をなびかせながら、歩く。
しかし、季節は夏。炎天下である。その足取りは重い。
「……ハア……ハア……暑イ……コンナ暑イノデハ、私ノ電子頭脳モオーバーヒートシカネマセンヨ……」
誰に言うでもなく、ぼやく。
彼女――アトラ9は先日、歓楽街において、劇団フェニーチェの構成員『伴奏者』の代役を名乗る少女、奇神萱を取り逃がしたことを悔やんでいた。
なんとかして彼女を探しださんと、連日血眼になって捜索を続けていたが、なかなか見つからない。
そうして今日、この商店街を巡回し、魔道具店の近辺にさしかかると。
「……アレハ……?」
聞こえてくる音色。見覚えのある、ヴァイオリンを持つ少女の姿。――間違いない。奇神萱、その人だ。
暑さで動きが鈍る体に鞭打ち、どうにか近づいてみると、奇神と対峙している白髪褐色の青年と、二人の様子を傍観する白衣の男の姿を見つける。
白髪褐色の青年のほうは、記憶する限りでは、自身と同じ公安委員だ。
「見ツケマシタヨ……ソコデ何ヲシテイルノデス?」
その場に居合わせた全員にどうにか聞こえるように、発声する。
■獅南蒼二 > 現れた女性・・・いや、ガイノイドに、獅南は視線を向けた。
白い煙を暢気に吐き出して、携帯灰皿へと、吸殻を入れ…
「・・・・・・見れば分かるだろう?」
・・・なんて、苦笑を浮かべた。
面白い見世物を邪魔するな、とでも言いたげである。
■奇神萱 > 図体は見上げるほどにデカイのに細かいことを気にするやつだ。
こちらには取り合う理由が全くないのにやる気は十分か。
血の気の多い人間は苦手だ。考えることを止めた人間はもっと苦手だ。
職務に忠実といえば聞こえはいいが、それは杓子定規の裏返しでもある。
聞いていていいのか、避難をすればいいのか迷いながら聴衆は固唾を呑んで見守っていた。
余韻を残して弓を放した。姿なき伴奏者の仕事が無限遠の彼方へと遠ざかっていく。
拍手はなかった。不快にまとわりつくような緊張感だけがあった。
俺かこの男のどちらかが危険人物というわけだ。
風紀か公安かよくわからない男を見上げて、生徒手帳を開いて見せた。
「奇神萱(くしがみかや)だ。用があるなら訪ねて来い」
「遺品だといったな。梧桐律には叔父がいた。この世にたった一人残された身寄りだ」
「同意は得ている。そっちの連絡先も教えてやる」
「これで満足か?」
白衣の教師は傍観者に徹するばかり。理解を示すそぶりすらない。
そして招かれざる客がもう一人。ン・カイの姉様と目があった。
「少し遅かったな。たった今パガニーニを演ったところだ」
■獅南蒼二 > 拍手は無い、白衣の男も拍手を贈ることはしなかった。
だが、彼はその演奏が終われば静かに荷物を持ち上げ、聴衆にも、その中心の3人にも背を向けた。
元より用事など無い。
ヴァイオリンがどうなろうと,さほど興味があるわけでも無い。
ただ…彼女の演奏には,確かに聴く価値があった。
演奏は終わった……彼の姿はもう,どこにもない。
ご案内:「商店街」から獅南蒼二さんが去りました。
■アトラ9 > 目的の彼女――奇神萱から声をかけられると、そちらを向き。
「『遅かったな』……デハアリマセンヨ。私ハアレカラ、貴女ヲ島中探シ回ッテイタノデスカラ」
冗談めかして、ヒューマノイドらしいややぎこちない笑みを浮かべつつ。ともすれば誤解を招きかねない発言ではある。
煉獄に燃ゆる炎のごとき赤い色をしたアトラ9の目が、光った。
「奇神サン。セメテ事情ダケデモ話シテ頂カネバ、労力ニ釣リ合ワナイトイウモノデス。貴女ガ何故アノ夜、『伴奏者』ノ代役ヲ名乗ッテイタノカ……ソシテ、ソノ……何ダッタカ……」
データベースとの照合作業を行うため、しばし言葉が止まった後。
「……ソウソウ。1742年製、グァル、ネ……リウス?ソレデス、ソレ。ソレヲ何故貴女ガ持ッテイルノカ、デスヨ。ソレニ関シマシテモ、ネ。コチラニ交戦ノ意思ハアリマセン。ドウカ、オ話ダケデモ」
交渉する。と同時に、地面に鎖を伸ばし始めている白髪褐色の男に目線を向け。
「ソチラモ、ソノ程度ニシタラドウデス。マズハ穏便ニ、穏便ニデスネ……」
明らかに戦闘態勢に入っている彼を、どうにかなだめんとしてみる。
■ライガ > (ん?行ったかな……)
大勢の聴衆の手前、あまり派手なことをやるわけにもいかない。
白衣の教師が立ち去るのを視界の端でとらえると。
相手の名乗りを聞き、
「奇神萱、か。オッケー、覚えとくよ。
だけど、連絡先を教えて、そうホイホイと帰ると思うのかい?」
新たにやってきた、ふらふらとした足取りの同業をちらりと見る。
「ありゃ、用事かい?……って、なんかふらついてるけど大丈夫かよ。
いや穏便に、ってもな……探してきたのなら、フェニーチェの関係者ってことは分かってるだろ。
その話しぶりだと、前にも接触してうまくいかなかったようだけど……大丈夫なのか?」
■奇神萱 > 「覚えていてくれたのか? 俺も恋しかった。また会えて嬉しい限りだ」
ぱっと花の咲くような笑顔を向けて答える。忘却の秘儀も当てにならないもんだ。
どこか危うい感じのする美人。黒の和装がよく似合ってる。会えて嬉しいのは本当だ。
「それはこちらの台詞だ。職権を振りかざすのは構わない。せめて所属と名前くらいは教えろ」
「わざわざ手間隙かけて苦情を入れるつもりもないが、いくら何でも横暴が過ぎるぞ」
聴衆が散っていく。また台無しか。報われないな。汗をぬぐって片付けにかかった。
「ならお茶しよう。そばに行きつけの店がある。いい店だ。姉様もきっと気に入る」
「今の稼ぎでケーキセットが食えるぞ。あの店のブレンドはなかなかだ。モカマタリがベースになってて―――」
「お前は帰れ、白髪頭。俺は話が盛り上がりそうな相手についていく。大男より美人の方がいい。当たり前だ」
ケースを肩にかけてン・カイの姉様の手をとった。
■アトラ9 > 「エエ……大丈夫デスヨ。大丈夫。タダ少シ、水分ガ足リナイカナート……アハ、アハハー」
白髪褐色の青年から声をかけられ、無機質な電子音声の笑いでどうにか不調を誤魔化す。
その後、バイオリンケースを抱えた奇神に声をかけられ、腕をとられると。
「良イデスネー……可愛イ妹ト二人キリデティータイムトハ。ヘヘヘ……」
笑顔を作り、彼女の行きつけという店についていこうとする。
暑さのためかテンションが妙におかしいことに、奇神は気付くだろうか。
腕を引っ張られるように歩き出そうとして、後ろを振り向き。
「(後ハ私ガ……ナアニ、コノ私ニドーント任セテオケバ問題アリマセン。ゴ心配ナサラズ)」
と、白髪褐色の青年に唇の動きで伝えんとする。伝わるかはわからないが――
■ライガ > そう言えば名乗ってなかったな、と頭を掻く。
「名前か……ライガだ。
所属はいえないな、人目も多い。
が、察してくれると助かるんだけどね。
それにしても、仲よさそうだな……ってことは、僕はお邪魔ってわけだ。
ま、いいさ。また日を改めるとするよ」
長い鎖を、いともたやすく回収する。収納スペースは制服にもそんなにないはずだが、じゃらじゃらと音を立てて鎖が服の間に引きこまれていく。
心配そうな目を向けるが、振り返ったNχの口の動きから察し、気づかれないようにそっと伝えると、
残念そうにつとめてその場を離れる。
「(ああ、了解したよ。引き継ぎ、感謝する。
……いい報告を待ってる)」
ご案内:「商店街」から奇神萱さんが去りました。
ご案内:「商店街」からアトラ9さんが去りました。
ご案内:「商店街」からライガさんが去りました。
ご案内:「商店街」に四十万 静歌さんが現れました。
■四十万 静歌 > 適当にぶらぶらと商店街をめぐりながら、
何か面白いものはないかな、なんて、
考えている。
そんな最中、お腹がすいたのだろうか?
ハンバーガーショップの前に立ち止まり入ろうとした処で、
――何故か不意に、
足を止めて、
メニューの書かれた看板の前に座り込んだ。
指でメニューをなぞる。
――だが、ショップの中へと入る様子はない。
■四十万 静歌 > すっと、一つのメニュー……
シンプルなハンバーガーの処で指を止め、
指を離して両手をひろげ、
両手をあわせて包み込むように、
そっとメニューのハンバーガーを覆い隠す。
そして、すうっとそのまま、
何かを両手でもって隠すようにメニューから離すと、
そこにはハンバーガーの絵が消えており、
片手をのけるとそこにはハンバーガーが。
「いただきます。」
なんていってあむあむとハンバーガーを食べ始めた
ご案内:「商店街」にヨキさんが現れました。
■ヨキ > (買い物帰り。片手にスーパーの小ぶりなビニル袋。
ハンバーガーショップのメニューを前に、しゃがみ込む女子生徒を見ていた。
その自分から見れば取り立てて変わったところのない様相を、何気なしに)
「……………………、」
(少女の腕が、何事か動く。手ぶらだったはずの彼女の手にハンバーガーが現れて、それを食べるのを見た。
口元で小さく笑って、彼女のもとへ足を向ける)
「――今の、すごいな。手品か?」
(学生らしき相手へ挨拶をするでもなく、路上のパフォーマーに声を掛けるような気軽さで。
同時に、ショップの看板を改めて見下ろす。メニューの上、絵がひとつ消えたようなスペース。笑みを深める)
■四十万 静歌 > 「ふぁぅ、あぅ!
もぐ……ごくん。
あ、は、はははは、はい!手品です。」
食べている最中に声をかけられて、
思わずびくんとなりつつも、
食べていたハンバーガーを食べきって、
恥ずかしそうに、くしゃくしゃと紙を丸めて、
丸めた紙をもった左手で絵の消えた部分へと手を滑らせ、
右手をパチンと指を鳴らすと、
メニューが元通りになり左手が空っぽになってる。
単純に指がなってる間にメニューを隠したシールを剥がし、
紙くずと共にマントの中へと滑り込ませただけではあるが。
「なんというか、お恥ずかしい所をみられたようで。」
そして、あはは、と右頬をかいて笑う。
左頬にケチャップがついてるけど些細なことである
■ヨキ > (動体視力に優れているとて、手品を見慣れぬ目には単純なトリックも鮮やかに映った。
悪戯っぽく笑うと、ぎざぎざと重なった牙が覗く)
「いや、見事なわざだった。大いに結構。
店内で『ハンバーガーがひとつなくなった』と、てんてこ舞いになっていなければ、の話だが」
(自らの左頬の前で、人差し指――四本指の一本――をちょいちょいと動かし、相手の頬のケチャップを暗に示す)
「ほかに人を集めてみせれば、喝采もおひねりも受けられように。
それとも……未来の大魔術師の、人知れぬ鍛錬の途中であったかね?」
■四十万 静歌 > おお、とギザギザの牙が覗くと、
なんというか――
たじろぐというよりも……
なんでも噛み千切れそうなんて、見当外れの感想をもちつつ、
「その、えっと――」
褒められると恥ずかしいというか、
なんというか、
真っ赤になって
「ありがとうございます。
さすがにそうなったら大変ですけど、
残念ながらあのハンバーガーは私のお昼に用意したものでした。」
なんてはにかんで笑い、
暗に示すポーズに首をかしげ、
んん?と左頬を指でなでると、
違和感、
手についたケチャップ。
「はわぁ!?」
なんて素っ頓狂な声をだし
慌ててハンカチでぬぐう。
「うううう、重ね重ねお恥ずかしい所を……
いえ、こう、あがり症なものでして、
あまり衆目を集めると余裕がなくなりそうです、
未来の大魔術師になれたらいいんですけどね。
鍛錬というか癖みたいなものなんです。」
なんて真っ赤になって俯いて答えるだろう。
■ヨキ > (少女の肌が、蒸し暑さよりも顕著に赤らむ。
愉快げな様子で少女の説明に頷きながら、)
「なるほど。平和な方法で安心した。
このヨキも、歳若い少女を風紀委員へ突き出すのは、さすがに気が引ける」
(言葉とは裏腹に、いざそのような状況になれば間違いなく突き出すであろう、という顔をしている。
相手がケチャップを拭い、よけい赤くなって俯いてしまうと、長身から見た顔は完全に隠れて見えなくなった。
慣れた様子で、覗き込むでもなく)
「ほう……人前では披露出来ぬか、残念だな。
それもまた君の異能というやつで、ヨキは応援したいところだが。
……ではこれは、ヨキからの『おひねり』としよう」
(スーパーの袋を探る。
350mlサイズの小さな、よく冷えた緑茶のボトルを取り出して、相手に差し出す)
「ヨキだ。学園で美術科を教えている。君は――その服装、学園の生徒かね?」
■四十万 静歌 > 「さすがに泥棒とかはしたくないですし、
出来ないですよ。」
わたわたと顔をあげて上目遣いに瞳をみつつ、
慌てながら答えるが、
なんていうか、図星をつかれたなどではなく、
そんな大それた事できないですよ!
みたいな反応だ。
「まぁ――異能というよりは、
性格ですけどね。
特別変わった力なんてもっていませんし。
――いつかは人を集めてってのはやってみたくはなりますけど。
って、いいんですか?」
ありがとうございます。といって受け取って。
ボトルを両手でもったまま首をかしげて問い、
自己紹介をされると、
あわてて再び頭を下げて。
「美術科を教えている……
ふわぁ!
先生でしたか、よ、ヨキ先生、ですね。
美術はそのセンスがないもので、受けてなくてすみません。
あ、はい。私は二年の四十万 静歌(しじま しずか)と申します!
どうぞよろしくお願いします!」
と姿勢を正しながらはきはきと答える。
■ヨキ > (相手を見返す金色の瞳は、人間の眼窩の中に獣の瞳が収まっているような色艶をしている。
上下の瞼を持ち上げるような深い瞬きは、どことなく犬に似ていた)
「斯様に多彩で賑やかなこの島で、君のように明るい顔をして過ごせるならば、それさえ異能のひとつだと思うがね。
たとえば……他には?何か、手品のレパートリーはあるのかね?」
(小首を傾げて尋ねる。
相手の慌てたお辞儀に、大らかに目礼を返して)
「いいや、美術は元より受ける者も少ないでな。
学園の教師と生徒、それだけの縁があれば十分だ。
シジマ――四十万君。こちらこそ、どうぞよろしく。
――ふふ。
見知らぬ男から受け取った茶など、飲みたくはなかろう?
だから、自己紹介はしておかねばと思ってな」
■四十万 静歌 > 思わず、わん。っていいたくなったのを飲み込む。
なんというか、犬のような印象を受けて――
可愛いなんて思ったのは気のせいではないと思う。
そして、告げられた言葉に、
「ヨキ先生は詩人なんですね。」
なんてクスリと笑って。
「それなら――先生の異能もまた素敵だと思いますよ。
その艶やかな金色の眼だけで、
どことなく私の心を穏やかにさせてくれるのですから――
なんて。
そうですね。大掛かりなものはムリですけど。」
簡単なものならいくつか出来ますよ、
とでもいうかのように、
一枚のカード。クローバーのエースを取り出して、
見せた後、クローバーのエースと重ねてあったカードを
トランプのデッキへと滑り込ませ、
クローバーのエースのカードは隠し持ったまま
シャッフルして差し出す。
「どうぞ、お好きなようにシャッフルを?」
なんていいながら、
見知らぬ男からなんて聞いて、
「ヨキ先生はなんていうか紳士的な方なんですね。」
なんてくすっと笑って。
「そうですね。普通なら飲みたくないかもしれませんけど……
なんというか、
ヨキ先生は自己紹介されなくても信頼したと思いますよ?」
なんてじっと、眼を見つめるように見上げるだろう。
■ヨキ > 「詩人か。ヨキはただ……耳に聞こえのいい言葉を選んで、人心を弄んでいるようなものだ。
君の飾らない率直な言葉と面立ちは、ヨキのようなひねた者の心によく刺さる」
(静歌の言葉に、目を細める)
「心を穏やかにさせたそのあとで――君の本音が零れ出すのを、待っておるのやも知れんぞ。
君の成績表に一撃を加える、悪魔の手先だったりしてな」
(冗談めかして口にしながら、示されたカードと相手の顔を交互に見る。
カードの束を受け取って、楽しげにその順序を乱す。
大きな手のひらに短い四指で、人と変わらぬ手つきでシャッフルする)
「……昔は、これが出来なくてな。人間の遊びは、何とも器用なものだと思った」
(シャッフルの合間に、そう何気なく口にした。
十分にカードを混ぜ終えて、束を相手へ返す。
真っ直ぐに自分を見上げる目を、こちらも柔らかく微笑んで見下ろす)
「危ういな。
ヨキが悪い男だったならばどうするね?」
■四十万 静歌 > 「そうなんですか?
でも、聞こえのいい言葉はとても人の心をひきつけますから、
私は憧れますよ?」
なんて、微笑んで――真っ赤になって。
「こう、心に刺さるなんていわれると、照れちゃいますね。」
と頬をかく。
「それにしても、本音がこぼれ出すのをなんていっても、
私の言葉は勝手にだだもれますので、大丈夫ですし、
成績表に一撃加えられてもその――
ぜ、ぜんぶ平均点なので面白みはでるかなぁ。
なんて期待する私が……」
あはは、と冗談めかした言葉に本気になったのか、
冗談だと流したのかわからないけれど、
そんな事を。
実際の所は本音である。
いずれにせよ、一つ確かな事は、
苦笑になってあらわれてるだろう。
「それにしても、人間の遊びはーという事は、
ヨキ先生も亜人なんですか?」
なんていいながら、
ありがとうございますと束を受け取り、
一番上のカードを捲ると、ハートの5。
「あれ?おかしいな……?」
失敗したかな?
なんていいながら首をかしげて
トントンと指で2回カードの束を叩き、
全てのカードを見せると、
クローバーのエースがない。
「あれ?ああ。なんだ。
そこだったんですね。」
なんていいながらちらりと地面に視線を落とすと、
一枚のカード。
クローバーのエースが表を向いておちているだろうか。
会話や視線が自分へと集中している間に、
するりと落としただけである。
「とまぁ、こんな具合でいかがでしょう?」
なんてクローバーのエースを拾い上げようとしつつ、
「ヨキ先生が悪い男だったらそうですねぇ。
どうしましょうか。
ヨキ先生は目立ちそうですから、
こういう人知りませんかっていえば探せる気がします。」
ね?なんて人さし指を立て、それを傾け、
それにあわせるように小首をかしげウィンクする。
■ヨキ > 「刺さるのは本当だ。聞こえてくる音を、眩しく感じるときがある」
(言い切って、静歌の素直そうな様子にくつくつと笑う。
顔を伏せて小さく肩を震わせていたのが、やがて吹き出して)
「――ふはッ。ははは。
期待をされてしまうか。参ったな。
悪い教師の太刀打ち出来るところではない」
(ひとしきり笑って、息をつく。
カードの束の渡した後に空いた手で、ハウンド犬のように垂れ下がった耳を持ち上げてみせる)
「そうだ。異邦人としてこちらに渡ってきた。
島に来て十年と少し経ったが、以前のはるか永い時に比べても、毎日いまだに飽くことがない」
(そうして、静歌のわざが始まる。
たちまち彼女の手元と顔と、視線とに目を引かれ、犬さながらに引っかかる。
最後につられて地面に目をやって、しばしそのカードを見下ろしていた)
「……………………」
(瞬きをぱちくりと二三繰り返したのち、顔を相手へ引き戻し、これはこれはと手を叩く)
「――お見事。いや、見事な手捌きであったよ。
心を利用しているに過ぎないと――理屈では判っていても。
どうしても引っ掛かってしまうな。
君の方こそ、大した悪女だ」
(彼女の手元と、カードが落ちていた足元とを、感心した顔で見比べる。
相手が見せたウィンクに、半ば不敵に笑って)
「全くだ。
こんな悪党のような面構えと背丈では、とても隠れられそうにない。
ならば、今の手品のおひねりと……ヨキが君から、逃げも隠れもせぬとの証拠に」
(手首を飾った真鍮のバングルに右手を添える。
指の先から、音もなく金色の何かが芽吹く。
摘んだ人差し指と親指の先に、それは見る見るうちに伸びて――
名もない小花のかたちを取った。
硬く冷たい真鍮で出来たその花を、相手に差し出す)
「君にやろう。ヨキの『手品』だ」
■四十万 静歌 > 「ぐぬぬ、笑われてしまいました。」
なんてからかわれたと思って、ぷくっと膨れてみたり。
別に本気で怒ってるわけではないが、
そういう反応をしてしまう。
「まぁ、ヨキ先生は悪いっていうより、
良い先生ですよね。
だって、良き先生ですもの。」
なんてうまいこといったなんてウィンクしつつ、
「おお。獣人さん、犬か狼か、
そのあたりですか?
なんていうか可愛らしい感じが、すみません。
口をすべらしました。」
なんて軽く口を片手で押さえ
「でも、こちらに来て楽しいようで何よりです、
楽しいのが一番ですもんね。」
なんて笑って、賛辞に、綺麗に礼をして、
ありがとうございますとカードの束をしまって、
貰ったお茶の蓋をあけて一口飲んで――
「悪女になるには私にはしたたかさが足りない気がしますけどね。
――逃げも隠れもしない証拠に?」
なんて笑っていいながら、きょとんとした顔で、
金属が花になる様子を見つめて、
わぁ……と眼をまんまるとあけて、
ほぅ……と感嘆のため息をついて。
「凄い、とってもすごいです、
ヨキ先生の手品は――
凄いですね。とても、綺麗で――
心を癒してくれます。」
なんて尊敬の眼でみあげながら見つめるだろう。
■ヨキ > 「良き先生などと生徒に褒めてもらえるのは、教師冥利に尽きるな。
おかげでヨキも、出会う者みな良い生徒に恵まれた」
(君も含めてな、と笑って)
「そう。ヨキはかつて、交じりっけ無しの犬だった。
可愛らしいと言われることさえ嬉しく思えてしまうのは……
犬のままなら素直に可愛く在れたろうものを、人間の欲が勝ってしまったな。
狡いものだ」
(楽しいのが一番、という言葉には、ゆったりと目を細めて)
「そうだな。
――人それぞれ楽しみの形は違うが、心が弾むのは誰しも同じだ。
少なくとも、君とヨキの楽しさが同じで、安心した」
(一礼に、再び拍手を返した。
自らの『手品』に目を輝かす様子を見下ろして、)
「ヨキは金属のほかには、ハンバーガーを出すことも、カードを操ることも出来んがね。
そうして喜んでくれることに、いちばんの甲斐がある」
(先に渡したボトルに添えるようにして、小花を手渡す。
いかなる花にも似ているようで似ていない。
春とも夏ともつかず、明るい季節に咲く花のかたちをしている)
「――君を長々と引き留めてしまったな。
そろそろ戻ることとしよう、すっかり楽しませてもらった。
ありがとう、四十万君。縁があらば、また会おう」
(手を挙げて、踵を返す。
静歌に向けてにこやかに笑い掛けると、そのまま雑踏の中へ紛れてゆく)
ご案内:「商店街」からヨキさんが去りました。
■四十万 静歌 > 「私も良い先生にめぐり合えて本当によかったです。
――本当に良い先生が多くて、
こうして出会えるのは幸運ですね。」
と笑い返し、
「そんな事いってると可愛いってなでてしまいますよ。」
なんて悪戯っぽく笑う。
「こちらこそ、長々とありがとうございました。
素敵な小花とお茶をありがとうございます。
――また、共に楽しさが分かち合える縁がある事を祈りながら――
それではまた、ヨキ先生。」
そういって手を振って見送り、
こちらもまた反対の方向へと歩きだし、雑踏へとまぎれるだろう
ご案内:「商店街」から四十万 静歌さんが去りました。
ご案内:「商店街」に自販機さんが現れました。
■自販機 > (ここまでの常世学園は……)
■自販機 > (何かかっこいい導入があると思わせてそんなものはなかった。
だってドラマじゃないんだぜ。これ)
「ブーン」
(ゴミ置き場が定位置? なんのこったよ。
自販機は商店街の片隅に居た。そう、ゴミ置き場である。
とある飲料のせいで草を生やさせたあの場所である。大草原不可避な飲料だって出してみせる。だって自販機なんだぜ。自販機ってなんだっけ)
■自販機 > (スッ……と自販機が動き始める。
まったくこりない悪びれない。
この番組は常世財団の提供でお送りします)
「ブーン」
(いつにもまして受信感度が良すぎるせいである。
実際の描写としては自販機がぼーっと直立しているだけなのだ。今日は短時間で消えそうな雰囲気ありそうだ)
■自販機 > (黒いボディアーマーを着込んだ人が通り過ぎた。
自警団を自称する人である。
正義の味方と思わせて実際にはただのコスプレ野郎である。
だがコスプレだって極めれば世界を支配することだってできるのだ。誰かが言っていた)
「戦況は悪化しておる……」
(いつの間にか隣に居たおじいさんが呟いた。
ぼけてんのか)
■自販機 > (おじいさんは突然スタスタと歩き去っていった。
本格的にぼけていたのか真実を言っていたのかはわからない。というか自販機に言われても困る。中に人でも居ないと応えられないのだ。
自販機はぶーんと音を立てていたが、やがていつの間にか消えていた)
ご案内:「商店街」から自販機さんが去りました。