2015/08/06 のログ
畝傍 > 「そっか、ズボンだね。いまなら……みじかいほうが、いいかな」
ズボンが良いと聞くと、しばし歩いて子供服売り場へと向かい、石蒜の体に合いそうなものを探しはじめる。
やがて石蒜が後をついてくるのを確認すれば、一枚の青いショートパンツを手にとって彼女に見せ。
「これは、どう?」
聞いてみる。

石蒜 > また小さい歩幅で、すこし早足で畝傍の後をついていく。まるで鳥の雛が親鳥の後を追うようだ。

「長くても全然大丈夫だけど、夏だからそういう格好したほうがいいよね。」
35度を超える猛暑日でも、平気な顔で巫女装束着て歩きまわっているので、見ていて暑苦しいという苦情を何度かもらった。

見せられた短めの下衣を、腰に当てる。
「ほとんど足が丸見え……石蒜は大丈夫だけど、サヤが恥ずかしいからもうちょっと長いのにしてほしいって。」一年を通じて着物で過ごしてきたサヤにとって足を露出するのはおしりや胸を出すのに次いで羞恥心を生むようだ。

畝傍 > 「うーん。そっか」
先程のショートパンツでは短すぎたらしい。
棚に戻し、数歩動いて別の棚を探すと、膝から下まである長さのズボンが目に入る。
最初に目に入ったのは黒いズボンだが、今の時期に黒はどうかとも思い、赤いズボンを手に取って。
「じゃ、これはどうかな」
また、見せてみた。

石蒜 > 「んー、これどう?サヤ。」と体の中で感覚を共有しているであろうサヤに語りかける。ズボンを腰に当てると、露出するのは足首少し上ぐらい。
「うん……うん?……こっち?」と同じ色と長さで、ポケットが沢山ついたカーゴパンツを取る。
「サヤが沢山ものが入りそうだからこっちがいいって」と畝傍に見せる。
ファッションは複雑怪奇だ、流行りとなれば男でも女物の着物着たり、あるいは今まで男物とされていたのが全く変わったりする。
だからとりあえず「これ石蒜が履いても大丈夫かな?」確認をとった。

畝傍 > 石蒜から見せられたカーゴパンツをしばし見つめる。
履いても大丈夫だろうか、と問われれば。
「うん。いいとおもうよ」
と、微笑みつつ答える。少なくともこちらの世界においては、女性がズボンを履くことに関しては特に問題視されないはずだ。
まだこのカーゴパンツを購入すると決まったわけではないものの、
「上着は、どんなのがいいかな」
と、一応上着についても聞いておく。

石蒜 > 「そっか、じゃあとりあえずこれは暫定ってことで。」赤いズボンは戻して、カーゴパンツを抱える。
なんだかスイスイ決まっていって、自然と顔がほころんだ。


「上着はねぇ、あの丸い止め具がない奴。」ボタンのこと言っているらしい、付け外しのジェスチャーをする。
「だからええと……こういう奴かなぁ。」壁にかけられたTシャツを指差す。
「サヤも腕だったら出しても恥ずかしくないって。」着物でもたすきで袖をまくりあげて腕を露出させるときもある、足ほどの羞恥はないようだ。

畝傍 > 「ふんふん」
頷きながら、石蒜が話す上着の好みを一通り聞くと、またも数歩動いて今度は上着を探しはじめる。
腕は出しても恥ずかしくないとのことであったが、念のためノースリーブではないものを、と考え。
白を基調に、両袖の部分に赤いワンポイントの入った、赤いカーゴパンツに似合いそうな半袖のシャツを取り、
「これかな」
と、また見せてみる。

石蒜 > 「おー」と受け取ったシャツを持って鏡の前へ
「こんな感じかぁ」とカーゴパンツとシャツを重ねてみる。
「赤と白だから道着と似た色合いになってるねー。」
慣れ親しんだ色合いのせいか、馴染みがない服でも少し親しみやすく思える。
「サヤはどう? うん、そっか。」
畝傍に振り向いて「サヤも気に入ったって、これにしようか。色違いを何着か買えばいいかな?」いくら気に入っても、それしか持ってないのはあんまりおしゃれとは言えない、ぐらいはわかるので、ある程度コーディネート出来るようにはしておきたい。

畝傍 > 「そっか。わかった。じゃあ」
同じデザインの色違い。ベースの白は同じで赤色だった部分が紫色と青色になっているもの、大きく色が変わって黄色と黒のもの、合わせて三枚ほど手に取り。
「こんなかんじで、いいかな」
まずは見せ、石蒜の反応を見てみる。よければこの三枚に決めるだろう。

石蒜 > 「ちょっと貸してー」と見せられたシャツを受け取って、また鏡の前でズボンと合わせてみる。
「ふんふん」鼻を鳴らす、あまり服飾に明るい方ではないが、それでもわかるほど変な組み合わせではなさそうだった。
「これでじゃあさっきの赤い"ずぼん"も買えばひと通りそろうね。」と先ほど戻したズボンを取りいって、戻ってくる。
「これでとりあえず普段着は大丈夫かな?また足りなくなったら買いに来ようね。」えへー、と緩んだ笑顔。 あまり一気に買うと場所を取るし、どれを着ればいいかわからなくなりそうだ。それにまた買い足しにくれば畝傍とデート出来る。だから今日はこのぐらいでいいだろう。

畝傍 > 「そだね。またひつようになったら、かいにこよ」
そう伝え、石蒜の緩んだ笑顔にはこちらもほんわかとした笑顔を返すと、
購入を決めた水着と普段着を持ってレジへと並ぶ。
やがて前の客が会計を済ませれば、畝傍もまた品物をレジに置き、
自身が持つ正規の学生証に導入されている電子マネー機能を用いて購入を済ませるだろう。

石蒜 > ほわほわと笑いながら一緒にレジに向かう。
そして懐からがま口を取り出して支払おうとして、畝傍が会計を済ませたことに気付かず、そのままレジの脇へと出てしまった。
「え、あれっ。お金……。」あまりにスムーズに通ってしまったので、支払いが完了しているとは思っていないようだ。
「う、畝傍、石蒜お金払ってない……。」泥棒扱いされないか、不安そうに畝傍のスーツを引っ張って、小声で伝える。

畝傍 > 何やら小声で伝える石蒜のほうを向き。
「だいじょうぶだよ。いまのは……ボクの学生証についてる、電子マネー機能ではらったの」
買った服を袋に詰めながら、不安そうにしている石蒜をなだめるように伝える。
レジの近くにある、電子マネーチャージ用の端末を指差し。
「あれに電子マネー機能がついてる学生証をおいて、お金を入れたらそのぶんのお金が学生証にたまって、ためておいたぶんだけ使えるんだ。正規の学生証なら、申請すれば電子マネー機能がついてるものにできるんだって。べんりだから、つかってる」
と、より詳細な説明も付け加えた。

石蒜 > 「"でんしまねえ"……ええと、先払いでお金を学生証に入れておけるってこと?」小さい学生証のどこにお金が入るのかは疑問だが、見た目は小さな袋だが、中に沢山ものを詰め込める魔法のアイテムなら知っているので、それに似たものだろうか?

「あ、ってことは今畝傍が払ったってこと?もー、私が払うつもりだったのにー!石蒜ちゃんとお金持ってるよ!」頬をふくらませて、ぽかぽかと背中を叩く。

畝傍 > 「そんなかんじかな」
学生証の電子マネー機能に対する認識は、そんなものでだいたい合っているだろう。
きちんとお金は持っていたという石蒜に、不機嫌そうに背中を叩かれれば、
「あはは……ごめん、ごめん」
と、片手を頭の後ろに当て、素直に謝り。
「それじゃ、またこんど買いにきたときは、シーシュアンがはらってくれる?」
そう、お願いしてみる。

石蒜 > 「そっかぁ、財布から小銭とか出さなくていいなら便利だなぁ。」この国の通貨は一円だの五円だの、小銭の種類が多くて大変だった。かといってお札ばかり使っていると財布が重くなって、余計小銭を探しづらくなる。
そういった手間が省けるなら、やってみようかな。

「うん、次は石蒜のおごりだよ。頼ってね。」にぃっと笑う。

そして店から出ようとしたところで、あるものを見つけて立ち止まる。
「あ、そうだ畝傍。石蒜とサヤって、犬っぽい?」
唐突に、そんなことを問いかける。
「焔誼さん……迦具楽さんがね、サヤが犬っぽいって言ってた。だから石蒜も犬っぽいのかな?畝傍は石蒜が犬になったら可愛がってくれる?」

畝傍 > 「うーん……どうだろ。まだわかんないや。どうして、カグラはサヤのこと、いぬっぽいっておもったのかな」
疑問を口にする。迦具楽の言葉によれば、どうやらサヤは犬っぽいらしい。
畝傍自身も、混沌の影響が抜け邪悪な性質が弱まった現在の石蒜には人懐こさを感じていたが、犬っぽいか、と明確に問われると判断しかねる。しかし。
「でも、シーシュアンはいぬになっても、ねこになっても。ほかのなにかでも……なにになっても、ボクのいちばんだよ」
それだけは、畝傍が石蒜に対して確かに言えることだ。
満面の笑みで、そう伝えた。

石蒜 > 「石蒜もわかんない、でも迦具楽さんから首輪渡されてた、家でずっと眺めてた奴。」ここ数日、サヤは家では食事と風呂、睡眠以外ずっとその首輪を眺めていたので、畝傍も知っているだろう。

「えへへ、そっか。石蒜は畝傍の一番、約束したもんね。ちょっとまってて!」と店の中に引き返して、何か買い物をする。

レジを通過して、急いで戻ってくると
「おまたせっ」その頭に、買ったばかりで値札のついた犬耳がピョコピョコと動いていた。
「えへー、わんわんっ!だよ。」犬のように手を丸めて、畝傍に頬をすりつける。

畝傍 > 「首輪……そういえば、サヤ、ずっとみてたよね。もしかして、サヤがいたせかいで首輪って、だいじなものなのかな」
サヤの故郷、ファーイースト・レルムにおいて、人から贈られる首輪は特別な意味を持っている。
しかし畝傍はまだそれについてサヤの口から直接聞いてはいないので、石蒜に尋ねてみることにした。
やがて、犬耳を付けた石蒜がこちらに頬ずりをすると。
「わあ、シーシュアン、ほんとにいぬになってる。かわいいね」
そう言って、石蒜の小さな体を優しく抱きかかえてみる。

石蒜 > 「えーとね、首輪を送られた女の人は、送った人のものになっちゃうんだって、結婚とかするつもりの恋人が贈るみたい。だからサヤは受けるか断るかずっと悩んでたんだって。」犬耳が嬉しそうにパタパタと動く。腰の後ろにもしっかり尻尾がついていて、それも嬉しそうに振られている。

「わんわん♪」抱きかかえられれば、尻尾が激しく振られる。
「えへー、幸せー。」大好きな人の腕の中で、一緒に笑っていられる。それが途方もなく幸せだった。

でも、言わないといけない。畝傍の前に、石蒜の一番だった人のことを。
「あのね畝傍、ちょっと聞いてくれる?多分畝傍に説明しないといけないんだ。出会った時に石蒜の一番だった、鳴鳴様のこと。あの夜。鳴鳴様が死んじゃったあの夜ね。石蒜はすごく悲しくて、一緒に死のうと思ったんだ。」尻尾も耳もしんなりと垂れる。今でも気持ちに整理がついたわけではない、でも畝傍には話しておかないといけないように思えた。

「でもあの後、鳴鳴様が本当に欠片も残さず消滅したのがわかって、その時にね。『幸せになれ』って言われたんだ。ずっと悩んでたけど、やっとわかった気がするんだ。鳴鳴様のことは、もう居ない人だから一番にしてちゃいけないんだと思う。絶対に忘れない思い出だけど、一番じゃ駄目なんだ。」ぎゅっと、抱き返す、畝傍がここに確かにいることを確かめるように。

「だから、畝傍。畝傍が今石蒜の一番だよ。約束するよ、ずっと畝傍が生きてる限り石蒜は一緒に居るし、畝傍は石蒜の一番だって。」尻尾がゆっくりと揺れる、愛情をねだるように。

畝傍 > 「だから、サヤはずっとあの首輪をみてたんだね」
石蒜の話に対して、素直に耳を傾ける。
サヤの故郷では、首輪にそのような意味があったらしい。
尻尾を激しく振り、幸せそうにする石蒜を見ている畝傍もまた、暖かい笑みを浮かべていたが、
やがて彼女の口から鳴鳴の名前と、あの夜に石蒜が鳴鳴と運命を共にしようとしていたことを聞けば、それまで明るかった畝傍の表情は若干暗くなり、俯く。
しかし、鳴鳴が消滅の間際、石蒜に対してかけた言葉を知ると。
「……そう、なんだ。……やっぱり」
表情が少しずつ戻りだし、その顔は再び石蒜の方に向く。瞳にはかすかに涙が浮かんでいた。
彼女――鳴鳴もまた、石蒜の幸福を望んでいたことに変わりはなかったのだ。故に。嗚呼、それ故に。現実は互いに命を奪い合う結果となってしまったのだが。
その言葉を聞いて、畝傍も決心がついた。過去の罪は消えない。しかしそれから決して逃げようとはせず。向き合いつつも、未来へ歩んでいくことはできる。
今は石蒜との幸せな時間を噛み締めながら生きようと、そう誓った。だから。
「うん……やくそく、だよ。ボクのやくそくも……ずっと、かわらないから。だから……そばにいてね」
もう一度石蒜を抱きしめんとし、耳元でそう囁く。

石蒜 > 「うん、約束だよ。ずっと一緒に居ようね。」パタパタと尻尾が揺れる。
「この尻尾、便利だなぁ。うれしい時すぐわかるね。」自分の揺れる尻尾を見て、笑う。そう、嬉しいのだ、今こうして居られることが。
入っていた箱に脳波を探知してなんやかんやと説明があったが、読めないので見なかった。

「さ、帰ろ。お風呂また一緒に入って、一緒に寝よ。ずっと一緒。」と手を握ろうとする。

畝傍 > 「うん、かえろっか」
買った服を詰めている袋を片手に持ち、もう片方の手で、
尻尾を揺らしながらこちらに手を差し出している石蒜の手を握ると、石蒜の歩幅に合わせてゆっくりと歩き出す。
そうして、二人は女子寮への帰路につくだろう。

ご案内:「商店街」から畝傍さんが去りました。
ご案内:「商店街」から石蒜さんが去りました。
ご案内:「商店街」に綾瀬音音さんが現れました。
綾瀬音音 > ―――――はぁ……
(常連と言っていい何時ものカフェに行く気にもなれず、知らないカフェに入るなり端っこの席に腰掛ける。
お冷を持ってっきた店員にアイスティを頼むとそのままテーブルに突っ伏した。

先ほど、風紀委員の事情聴取が終ったばかりである)

………はぁ
(溜息しか出てこない。
彼氏が風紀委員の本部を襲撃したと聞いた時は目眩がするほどに驚いた。
当然理由を知らないか聞かれたが知らないし、そもそも暫く会っていないのだ。メールが一通来ただけである。
メールには、今何をしているのかなんて、書いていなかった。

――書いていて、くれなかった)

綾瀬音音 > (だから溜息しか出てこず、溜息しか吐き出しようがない。
グルグルと色々な感情が渦巻いているが、上手く言葉にならずに心の深い部分にへと沈んでいく。

独り言めいた弱音すら上手く吐き出せずに、溜息ばかりが唇からだだ漏れる。
ぼんやりとテーブルの綺麗な木目とにらめっこしつつ、言葉にならない感情に思考を巡らせた)

綾瀬音音 > (ぼんやりと、ぼんやりと。
感情がいくら考えてもまとまらない。
手繰り寄せようにも手繰り寄せるだけの糸端が何処にも見つからないのだ。

だから、ネガティブな感情を延々と続けている。
もっと建設的に何か出来ないかと思うが、思うだけでそれ以上の何かが出てくるわけでもない)

――――はぁ。

(と、幾度めかの溜息を吐き出した所にアイスティが運ばれてくる。
何とかのろのろと半身を起こして、目の前に置かれたグラスを見る。
喉は全然渇いていなかったが、取り敢えずストローに口を付けた。
味なんか全然解りやしない。
ひとくちふたくちでやめてしまった)

ご案内:「商店街」にアーヴィングさんが現れました。
アーヴィング > よぉ、オトネじゃねーか
どしたシケたツラして
金足んねーのか?
(初めて来る店に足を運ぶなり見かけた
 見知った顔の見慣れない表情
 無論そんな軽い物でない事は様子を見れば判る
 
 だからこそ軽く、へらっとした笑みを浮かべ
 ポケットに手を突っ込み猫背気味に覗き込む

 …傍から見ればタチの悪いナンパか何かに見えるかも知れない)

綾瀬音音 > ―――――
(掛けられた声に自然と落としていた視線を上げる。
先日見知った顔がそこにあって、安堵したような、情けないところを見せてしまって申し訳ないような、そんな複雑な表情を浮かべる。
彼の口調が軽くて、笑みも軽いものなのだから尚更だ。

覗き込まれれば言葉を出す前に、大してありもしない唾液を飲み込んだ)
あははは……、そう言う訳じゃ無いんだけどね。
ちょっとね、うん……
(自分でもなんと言っていいのかは解らない。
何とか口の端だけを上げて答えたが、それも直ぐに引っ込んで視線を落としてしまった。
流石に知人の前で溜息までは出てこないけれど)

アーヴィング > ふぅん……
ここ、空いてんよな?
(と、視線を落とした隙に勝手に対面のイスに座り込み)

あー、ここってアレあんの、テンプラってやつ…
あ、ねぇの?いや、いい、いいって
んじゃ、なんか…飲みもんと、肉けたもんで
(と店員を呼びつければさっさと注文を済ませてしまう
 しばらくするとアイスコーヒーとカツサンドが届く事だろう
 今はそれより)

下、向いてっとよ……結構、色々なもん見逃すぜ?
下ぁ向くのは…財布でも落とした時で十分だ
(テーブルの上の冷水の入ったコップを持ち上げ、傾け…
 コトン、とテーブルにぶつかる音と、カラリと氷の崩れる音が響き…しばし沈黙)

どしたよ?
(そして、しばしの間を空けてから、せかさないよう
 聞き流そうと思えば抵抗なく出来るような、柔らかい声音で)

綾瀬音音 > (開いているかの声にうん、と頷いて、どこかぼんやりとアーヴィングの動作を眺める。
テンプラの言葉に店員は苦笑しただろうが、少女の表情は動かない。
心ここにあらず、と言うか、心の置き場所が何処なのか解らない、とでも言うような表情である)

……でも、今は正直前を見て居られるような気分じゃないんだ。
(優しい言葉だと思ったが、それに返せたのはそんな言葉。
気遣ってくれているのはわかるが、それにどう返していいのかも解らないのだ。
涼し気な音は普段であれば笑みさえ浮かぶようなものであったのだろうが、今はただの音にしか聞こえない)

………………あのね、それがね。




――――よく、解らないんだ
(尋ねられて、考えて。
良く解らない、と。
それしか出てこなかった。
それでも、ゆっくりと、つっかえつつも時系列が滅茶苦茶になりながら話したのは、概ねこういう事だ。

先月末に、同棲中の彼氏が“多分正当な理由によって”襲撃されて怪我をしたこと。
その後彼が病院から脱走し、何らかの理由で風紀委員の本部に行ったこと。
そして昨日、彼氏が誰かと結託して風紀委員本部を襲撃したこと。
その間、自分にはメールが一通、来ただけだということ。
理由は全くわからないということ。

用語が解らないようなら説明も加えただろうが、覇気はない)

アーヴィング > そっか……
そいつぁ…厄介だな
(良く判らない、気分じゃないと言われれば苦笑を返す
 ただその目は年に似合わず、ずっと年下の後進を見守るような物で
 時折相槌を打ちながら、彼女の言葉を聞き
 頷き、時に首を捻り…)

なるほど…な、同棲ってこたぁ、よっぽど深い仲なんだな、そいつと
(故郷の価値観では結婚秒読みの関係という事になる
 こっちの感覚ではどうかは判らないが、そう受け止めた
 となると、隣り合って歩いていたはずが、気が付いたら遠い場所
 それは堪える…しかも不満をぶつけれる場所がその行方不明の男しか居ないと来たもんだ
 まだ年若い少女の処理能力を超えても、それは仕方ない)

そりゃあ…ま、混乱しちまうわな
どうしてって言葉が足りなくなるくらいに
仕方ねぇよ、オトネがどうしたら良いかわかんねーってなるのは、そりゃ仕方ねぇ
だからよ、テメェが悪ぃ事したみたいな顔、すんなよ
お前は悪くぁねぇよ
(顔を合わせた時、安堵の表情を打ち消した曇り顔
 まるで自分が助かってはいけないと、そう言っているように見えて
 ゆっくりと…言葉の一つ一つが届くようにと)

綾瀬音音 > …………あ、え。
……うん
(言われて初めて。
自分が厄介な状況に置かれていると気が付いた。
今までそんなことすら考えが及ばなかったのだ。
彼の温かい視線に、自然強ばっていた体の力が、少しばかり抜けた)

―――――うん。
凄くね、大切な人なんだ
(無意識に見たのは左手に嵌められた指輪。
結婚はしたいとは思ってもまだまだ先のことだと思っていたが、お互いが一緒に居たいと言う気持ちで側にいたのは事実だ。
事実彼の想像通り少女にとってはいきなりのことで、何がなんだかわからない。
事実を並べた今でも、良く、解らないのだ)

凄くね、混乱してるんだと思う。
……うん、私は悪くないのかもしれないけど。
何かはしてあげられたはずなんだ。
何があって何でそんなことしたのか解らないけど――、何で、ちょっとくらい、相談してくれなかったの、かなぁ……。
(青年の言葉に頷いて、何とか笑みを浮かべたけれど。
言いたいことも解るけれど、出てきたのはぼんやりとした――だけど、それが一番の本心。
何もしてあげられなかった。
相談すら、してくれるだけの価値が自分には無かった。
多分、それが一番の、思考がまとまらない原因なのだ)

アーヴィング > それで大切じゃねぇ、なんて言われても説得力ねぇよ
声聞くだけで判らぁ
(その指輪を見る表情を、声を聞けばそれは判る
 だから、そんな空気でもないのに思わず笑ってしまって)

ま、男なんざ馬鹿だからな
テメェの中で勝手に理屈作って
勝手に女の心配したつもりんなって
なーんも判ってねぇなんざザラだ
それで守った気になってんだろうよ
ま、される側にしちゃ放っておかれんのと変わんねーけどな
(そいつの事は知らないが、流石に考えなしにぶっこんだというのはありえないだろう
 まあ、分析する側としては万が一くらいはそういう可能性もあるだろうと頭の隅に置いておくが、口にするものでもない)

あー……今からちっと、オトネの男の悪口言うぜ?
(店員が持ってきたアイスコーヒーをそのまま受け取り
 ストローを咥えて一口啜り…苦……と小声で呻いてテーブルに置く)

助けってのはよ…厄介なもんで、助けてくれって言われねーとなかなか気付ねーんだよ
人の腕ってのはこいつがなかなか短いもんでな?
手、伸ばしてくれねーと掴めねーんだよ
だから、オトネが終わってからそんな事で悩むのはお門違いだ

全部そいつが悪ぃ
守った気になって肝心なところ守れてねぇ馬鹿野郎がぜーんぶ悪ぃの
人の歩みなんざそれぞれだ、だってのに隣に居るお前を置いて勝手に走りだしたそいつが
ちっと調べれば関係者だってわかっちまうお前が巻き添え食うかもとか考えてねぇそいつが、ぜーんぶ悪ぃの
(言葉を飲み込めるだけ短くなく、しかし言葉を挟めるほど長くはない間をあけ、呼吸を一つ挟み、続ける)

だから、足りねぇのは単なる思慮だ
気持ちだの想いだのそっちじゃねーだろうよ
(だから、悪いのは何もかもそれだけで
 すれ違っただけで)

帰ってきたら、簡単に許すんじゃねーぞ?
法だの罪だの咎だの…そういうの横に置いてよ
お前とそいつの間にある問題ってのは…そんだけじゃねーの?
(それは楽観
 最悪の可能性と、最良の可能性、二つをあわせて、比べて、片方を投げ捨てたもの
 ただ…この場に居ないその男が悪い、だからオトネの都合の良い話を抜き出して……その通りに出来るかどうかはそいつ次第
 答え合わせはテメェで勝手にしろ

 こんないい女に愛想尽かされるならそれまでだ)