2016/05/28 のログ
ご案内:「商店街」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 > いつもの学校帰りとは違う姿、少しだけ着飾ったよそ行きを着込んで
商店街の大通り、時計柱のあるベンチに座って、ここに来るはずの人間を待つ

ちら、と時計を見る
まだ時間までにはもう少し、あるか

「…ふぅっ」

吐き出すようにため息をついて、
今日自分が為すべきこと、為さねばならぬことを確認する

ご案内:「商店街」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 > 着飾りは苦手だ。服装は地味。
薄緑色のワンピースにGパン。地味な格好――

「おね……姉さん。早かったね?」

一緒に出ようと思ったのに、もう出ていたのは予想外だった。
それに、ため息を吐いたのを見れば――

「なにか、考え事?」

横に、腕を組めるような場所にいちどって。
同じようにもう一人を待ち始めた

伊都波 凛霞 > 「はるかこそ、まだ女の子はちょっとくらい遅れてきたっていいのに」

くすっと笑って、妹迎える
呼び方が変わっていたことには、反応を見せずに

「そんなところ。
 はるかは、今日は特別な日だって感じてない?」

笑顔のままに、唐突にそんなことを問いかけた

伊都波 悠薇 >  
「遅れてきてもって……そんな不誠実なこと、できないよ」

礼は大事。約束は大事。
ちょっと困ったように告げて――

「そう、かな……? 私には、特別な感じはしない、かな」

あくまで、私には、だけど

ご案内:「商店街」に烏丸秀さんが現れました。
烏丸秀 > 「あれ、ごめんごめん、お待たせー」

本当は遅れていないのだが、二人を待たせてしまったようで軽く声をかける。
いつものように、和装。特に装いをあらたにはしていない。
そういう所で気合を入れる人間ではないのだ。

「うん、二人の私服姿も新鮮だなぁ」

嬉しそうに頷く。
かわいい子がかわいい格好をしているのは良いものだ。

伊都波 凛霞 > 「そっか」

妹にとっては特別な日では、ない
男の人と出かけることなんて、今まで妹にはそんなになかった出来事のはず
今までの妹なら───

「男の子は一番乗りしてないとね」

私服を褒める様子に、くすくすと笑って、3人目の到着を出迎えて

伊都波 悠薇 > こくりと、うなずいた。
男子と遊ぶのは、今日は二回目。
一回目は、付き合ってとお願いしてくれた男の子。
あのときはすごく緊張したのを覚えている。
でも今日は、そこまでじゃない。いや――
別の意味で、緊張してるけれど――

「――こ、こんにちは。烏丸さん」

ぺこりと深くお辞儀して

烏丸秀 > 「あはは、違いないね、ごめんごめん」

軽く笑って再び謝る。
さて、この二人は――
うん、だが、まず

「それじゃ、どのお店から見ようか?」

まずは、ショッピングを楽しむとしよう。
これからの事は、その後でも遅くはない

伊都波 凛霞 > 「それじゃ、まずは……」
言いかけて、口とつぐむ
違う、そうじゃない

元々、この話は妹と烏丸からはじまったもの、

つい、いつものくせで自分が先に立って歩こうとしていた
行き先も、じゃあ服屋さんにしよう、と積極的に決めて

「それじゃはるかに着いていこうっと」

だから、今日は妹の後ろを歩くのだ

伊都波 悠薇 >  
「え!! え、おね!? ねえさん!!?」

突然背後に回った姉に、目が白黒。
どうゆうことだろうと思い、後ろを見たり前を見たり。

『こいつぁ、先陣きれっていわれてるぜ、はるっち! いざ鎌倉の精神だ!!』

携帯ストラップにそんなことを言われ。
しかし、何も考えてない。ショッピングとか言われても流行には疎いのだ。

「え、ええと……あの! そう。烏丸さんが誘ってくださったので。どこか行くところとか考えてたりは……?」

助けを求めるかのように、ついーっと視線を動かし

烏丸秀 > (なるほど)

凛霞の考えは読めた。
なら、する事はひとつである。

「さ、行きたい場所をどうぞ、レディー。喜んでエスコートさせてもらうから」

にっこりと笑って決定権を丸投げする。
その方が絶対に面白いから。

(面白い、ってのは重要だよね。生きていくのに)

伊都波 凛霞 > 姉はただただ、笑顔をたたえて妹の後ろにつく

狼狽える様子をみれば、ついつい心のなかで思ってしまうのは
がんばれー、という言葉

そんな無責任な言葉が未だに浮かんでしまうのだから、辛い

それでもこれは、大事なこと
自分から一歩踏み出す妹の姿を見なければいけなかった

伊都波 悠薇 >  
『こ、こいつ!? まさか、すでに手を組んで……やりやがる……』

なんとなく、策謀に嵌ってる気がしつつも肩をがっくり落とす。
どうしようと思いながら、商店街といえば自分がわかるのは安物、タイムセールがあるスーパー。そのくらいである。
あとは――……でも、あそこに連れて行っていいものか……

「じゃあ……えっと、それじゃあ」

と、向かった先は。

『馬馬牧場 うまうまな日々』

そんな名前の、馬専用のファンシーショップ。

これ以上ない、悠薇の極上癒されスポットであった。

「こ、ここで……」

どうでしょう? と首を傾げた

烏丸秀 > 「うまうま牧場……」

烏丸がまず思ったのは。

(馬刺しとかあるかな?)

流石に言わないでおこう。
デリカシーとかそういうレベルじゃない。

「へぇ……色々あるんだねぇ」

正直、馬のグッズなんてそんなにあるもんじゃないと思ってた。
が、所狭しと並べられた、馬、馬……

興味深そうに店の外から眺め

伊都波 凛霞 > 「うまうま牧場……」

烏丸とほぼ同時に呟いてしまった
こんなニッチな店があっただなんえ、姉としてのリサーチ不足を少しだけ悔やむ

ひとまず、二人と一緒に店を眺めて

伊都波 悠薇 >  
「…………」

ひ、ひかれてる? み、みすちょい……

『負けるな! はるっち!! ここには我らが同胞すれちゃんとか、まっちゃんとかいっぱいいる。味方は多いぞ!!』

――そ、そうですね。小雲雀。ここで、ひいては足にけられてしまいますね!

ふんっと、奮起しつつ。ぶつぶつと。
でもあれ? でもこれってむしろけられる事案の一個のような……

「――か、かわいいのがいっぱいあるんですよ? パジャマとか、ストラップとか。あとは馬さん型くっきーとか、かわいくて食べれないくらいです」

気にしないことにした。
ちなみにクッキーは食べようとすると小雲雀が怒るので食べたことはない。
でもおいしいらしい

烏丸秀 > 「とりあえず、入ろっか」

烏丸は特に気にしない。
何か面白いアンティークでもないかなー、と興味津々である。
元々骨董好きなせいか、レアモノに目が無いのだ。

「へぇ……」

なるほど、確かに馬、馬、うまだらけである。
これは面白い。

「うまぐかっぷ……駄洒落?」

ポニーの描かれたマグカップを手に取りながら首をかしげ

伊都波 凛霞 > 店に入れば、ある意味では異様な空間

でも確かに、妹が好きそうだなと感じる
数々のグッズが出迎えてくれる

「はるか、本当に好きだね」

くすくすと笑う
見れば、妹の部屋で見かけたものもちらほらと並んでみえる

………一生懸命だな
妹を観ていて、何度も思ったこと
たったこれだけのことで、勇気を出して、思い切って
……全部自分のせいだとしたら、本当に───

伊都波 悠薇 >  
「あ、うまぐかっぷ。かわいいですよね。
でも小雲雀は、しっぽを切断されたみたいで見てて、お尻が痛いっていうんですよ?」

人気商品ですと、勧めてみたり。馬好きが増えるのはいいことだ。
そういえば骨董が趣味だと言っていた。
難しいのはわからないけど――

「烏丸さんは、これっていうグッツ集めとかはしてないんですか? 骨董というジャンルの中でも、こう。漆系とか、洋風とか? ……姉さんも気にならない?」

首をかしげて、振り返れば。
なんだか”妙な視線”だった、だから――

『おらぁん、あねきぃ!! 今日は、元気がないぞぉ? どしたー、あれなひかー?』

デリカシーのない小雲雀にお願いして、特攻してもらう。
さらば、小雲雀っ、きみの犠牲は忘れない……
なんて、胸中で唱え。
でもあまりにデリカシーがないので、携帯ストラップをでこピンしておいた

烏丸秀 > 「かわいい。うーん、かわいい……?」

烏丸にはどう見ても間抜けな馬面がプリントされたマグカップにしか見えない、が……一応籠に入れる。オススメだから。

「んー、グッズかぁ。ボクは茶器とか集めてるよ。特に香炉が多いかなぁ。『お前は道具の収集と手入ればっかりで肝心の茶の湯の腕がなってない』って、先生によく怒られるけど」

苦笑しながら凛霞を見る。
やはり、少し調子が狂っているようだ、が。
あえて彼女には触れまい。

伊都波 凛霞 > 「ん?私は……うるさい、ストラップ。セクハラ禁止」

ぺちっとストラップに軽いデコピン

「可愛いのはきらいじゃないけど、あんまり収集するって感じじゃないかな、それに…」

あまり、自分の嗜好というものをじっくりと考えたことがなかった、それは…

「あんまり、これが好き、っていうのがなくって」

伊都波 悠薇 >  
「……かわいい、ですよね?」

不安になってくる。やっぱセンスはずれてるのだろうか。
連れてくる場所をもっと考えたほうが、なんて思いつつ。でも、買ってくれたことにはちょっと嬉しそうだった。

「お茶……。煎じたり、和菓子食べたりするやつ、の先生ですか?」

あれの経験はない。ただ、機会がなかっただけだけど。

『あうち、ちょ、裏切り、裏切りでござるよ!? 敵は身内っ――ってあねきちーーーー!!? しんぱいしただけなのだぶる、昇天! ここが商店街だけにっ』

チーンっと音が鳴る携帯ストラップ。
こひばりーーーーーっと心の中で涙を流す悠薇。

「そう、だっけ?」

姉はいろんなもののセンスがいい。
これがかわいいとか、これがきれい、かっこいい。
そういうのも選ぶのは得意だった。
でも、言われてみれば集めるのは見たことがない

「お蕎麦とか、好きじゃない。昆布だし。絶対に、かつおだと、家だと怒るし」

なんていって。すすっと背に回り。

「なら、い、今がチャンス! 骨董とか、教えてもらいなよ、姉さん!」

押して、烏丸との距離を縮める。
ぐいぐい、押して

烏丸秀 > 「うーん、愛嬌はあるかな」

うん、確かに愛嬌はある。
なんだろう、別にかわいいとも好きとも思わないが、毎日使っていると愛着がわきそうだ。
朝のお茶に使ってみよう。

「そうそう、茶室に篭ってね。
ボク、ああいう狭い空間嫌いだから、もっぱら野点ばっかりしててねー」

あ、野点っていうのは野外でするお茶でね、などと説明し。

「ん……骨董? 凛霞が骨董かぁ」

ちょっと顎に手を当てて考えてみる。
――あんまり似合わない、かな?

伊都波 凛霞 > 「しょ、食の好みとはまた違わない…」
食い気味の妹に少したじろいでいたら、更に食い入ってきて驚く
一体どうしたというのか

「え?私別に骨董とか興味は……」

なぜ妹がそんなことを勧めてくるのかわからない、といった顔で首を傾げて

伊都波 悠薇 >  
「はぅっ……」

失策。やっぱぼっちに、こういうのは難易度が高い。
実に、高いハードルである。

『だがしかぁし、負けるなはるっち。まだ戦いは始まったばかりだ!!』

昇天した小雲雀が戻ってきた。さすが、付喪神。
今日はくじけちゃいけない。確認はできてないが、もしそうなら。
千載一遇の、たぶん、チャンス。

「え、ま、まぁ、やってみたら興味とかわいたりとか新しい発見とかあったりとかするんじゃないかなーとか……だ、だめだった?」

手をパッと放して、ぱたぱた横に振る。
そして、大きな大きな馬人形をもって、わーかわいいなーと話をずらす。
二人の視線から逃げるように、人形を壁にしながら

烏丸秀 > 「うーん、骨董は――あんまりオススメする趣味じゃないなぁ」

金はかかるし、対して面白くない。
ぶっちゃけ、趣味なら他のものを強くオススメする所である。

「にしても、自分の嗜好が無い、っていうのは珍しいね」

誰だって、この年毎なら何か好きな物があるだろう。
甘い物だっていいし、おしゃれな服や綺麗な宝石だっていい。
『何かが好き』が無いというのは……

「その点は、はるかちゃんの方が分かりやすいね」

人形の後ろに視線を回しながら言う。


おそらく、それが凛霞の『歪み』なのだ。

伊都波 凛霞 > 「だめってことはないけど、どうして急にそんなこと言うのかなって…」

そこまで言って
そうか、もうはるかは本当に全てを知っているのかもしれない、と
だとしたら……いや、まだはじまったばかり
今ここで言うことでもない

視線を烏丸へと戻して

「そうかな、子供の頃から稽古とか色々、忙しかったから」

そう、忙しかった
妹の目標と鳴るために、完璧なお姉ちゃんになることしか興味がなかった
そんな歪みも、アイデンティティーの一つと思えば心地よかったのだ

「そうだね、はるかは昔から
 控えめだけど、ちゃんと好きとか嫌いの主張はしてきたもんね」

伊都波 悠薇 >  
「……骨董って、お年寄りじゃないと難しいイメージもあるし、やっぱおすすめじゃないんですね……」

ぼそりと隠れつつこぼして。

「ん? だって、無いなら、見つければいいかなって、思ったから。……う、馬を、好きになってくれても、いいよ?」

ひょこっと、一番にそれを言うのは恥ずかしかったとしてみる。
でも失言だと、小雲雀には心の中で怒られた。
それじゃ、さっきの動きがまったく無駄になる。
作戦1、大失敗である。

「……そうかな? そんなこと、無いと思うけど」

好きなものは、結構ある。でも逆、嫌いなものは浮かばなかった。

烏丸秀 > まったく、この姉妹は。

姉は姉で己を顧みる事なく。
妹は妹で世界の悪意を体験する事もなく。

歪んでいる。
この上なく、歪んでいる。
その歪みこそ、烏丸の愛するものであった。

「ん、そうだねぇ、姉妹で同じ趣味というのもいいかも……あ、これちょっといいなぁ」

草原を走る馬の絵画。
白いキャンバスにデッサンで描かれたそれには、ただ馬と草しか描いてはいない。
だが、その単純さが烏丸の好みであった。

伊都波 凛霞 > 「はるかがそう言うなら、そうしようかなぁ」
妹の好きなものなら、好きになれる気がする
そういった心から、自然と出た言葉だった

「はー…こういうのもあるんだ。
 烏丸くんって落ち着いてるよね、趣味も

伊都波 悠薇 >  
ずきん――……

頭が痛い。少しの、頭痛。
好きになる。姉が。
では、妹は――?

「…………うん。姉さんとお買い物、行くの楽しくなりそう」

ぐっと奥歯を噛んで、痛みにこらえてから。
そっと笑う。自然に笑えてる。うん、大丈夫。

「……――」

そっと、烏丸を見つめる。
どう、なんだろう。この人はと、改めて見る。
悪い人、いい人。よくわからないけど――
でも、姉が選んで。胸を張って幸せといえるなら――。うん。

「あ……嫌いなもの、一個だけ」

そっと、つぶやいた。

「――姉を、不幸にするものです」

だから。言った。けん制? ううん違う。
それに続くのは。

――だから、私は。今の自分が許せない

「ちょっとお花摘みに、行ってきます!」

烏丸秀 > それを見送った彼の表情は。

嗤っていた。
心底嬉しそうに。

(嫌い、か――)

素晴らしい。
嫌われた方が、いい人と思われるよりも良い。

なぜなら、彼女の心に引っかかる事が出来る。
彼女の意識をこちらに向けさせる事が出来る。
烏丸はふっと凛霞の方を向き。

「いい子だね、はるかちゃんは」

ふっと呟くように言う。

伊都波 凛霞 > 「──そのいい子に、嫌いって言われてるけど?」

そう言って、ふっと息をつく
今の自分が幸せだなんてまるで思っていない
むしろ、自分の存在意義の一つを壊し、寄りかからせられていることも理解している以上は
自分は不幸になっていると言っていい、そう認識していた

「どうするの、私が言うのもなんだけど…、あの子はきっと私を嫌いにはならないと思う。
 ……烏丸くんの狙い通りには、ならないと思うな」

確信めいた、そんな言葉を烏丸に向ける

烏丸秀 > 「じゃあ、ボクははるかちゃんに嫌われた、世界で最初の人間なわけだ」

嬉しいなぁ、と呟く。
彼女の初体験の相手なわけだ。妙な意味ではないけど。

「当然だろう。はるかちゃんは凛霞の事を嫌いになんてならないし、ボクが彼女の一番になる事もないだろう」

確信を持って言える。
彼女の精神は強固だ。恋やら愛やら程度ではびくともしない。

なら……

「でも、キミは違う」

そう、凛霞は違う。
今の凛霞は、脆い。
何かがあれば、バラバラに壊れてしまうほどに。

伊都波 凛霞 > 露骨に、その表情が歪む
明らかな嫌悪に、眉を顰める

しかしその変化は一瞬で、すぐにいつもの柔らかん表情に戻って

「その言い方だと、私ははるかのことを嫌いになれる…みたいに聞こえる」

烏丸秀 > 「嫌いにはなれないさ」

当然だ。
姉である凛霞は、妹の事を愛している。
それは、未来永劫変わらないだろう。
だが――

「でも――思い出さない事は、出来るだろう?」

くくっと含み笑いをしながら、凛霞の耳元で呟く。

重圧に潰された少女。
姉を演じる事に疲れきった少女。
もう完璧ではなくなってしまった少女。

凛霞は妹を愛しているだろう。
だが、同時に――

伊都波 凛霞 > 「………」

思い出さないことが出来る
それは、きっと明確には違う
見えないように、覆っていたのだ
あの時からずっと
世界で一番大事で、可愛い妹の、姉を求める姿を見ないように

見てしまえば、またあの安住の地に戻ってしまうから
もしかしたら、万が一、ひょっとしたら
恐怖が拭えないあの場所へ
張り裂けそうなそんなものを見ているくらいなら───

と、思っていた

「どうかな」

だから、烏丸の問いには笑顔でそう応えた

伊都波 悠薇 >  
「――もどりま……」

なんか距離が近い。
戻ってきたタイミングはばっちり。ばっちり?
いやこれは――

「おおおおおお、おじゃましまして、もうしわけござませ? えええ、ええええっと、そのもうちょっと花を摘んできましゅのでもう少しお歓談をお楽しみください!!!」

たらーっと鼻血が出る。
刺激的なものを見てしまったから?
――それとも

烏丸秀 > その笑顔は、かつての凛霞にあったものだった。
完璧な姉、妹の大好きな『お姉ちゃん』

(へぇ、まだ残ってたんだ)

なかなかしつこい。
なら――簡単な話だ。
凛霞の『お姉ちゃん』をコワシテシマエバ……

「ん――おっと」

鼻血を見てちょっと慌てる。
血を流すのを見るのは苦手だ。
自分でも、相手でも。

「ん、ちょっと休める所に行こうか」

伊都波 凛霞 > 「あ、おかえり───」

烏丸から離れて、帰って来た妹のほうを見れば…さっと血の気が引く

「はるかっ!?」

慌てて駆け寄る

以前、妹が倒れた時
あの時の光景を思い出した

見ないようにしていたはずだったものが、
その姉としての姿、明らかな狼狽っぷりを晒す

「大丈夫?頭痛くない…?」
心配そうに、その肩に触れて

伊都波 悠薇 >  
「あ、いや大丈夫、大丈夫……ちょ、ちょっと二人の顔が近くて、あれやそれや耳をなめとかストイック? なプレイとか想像して……………………」

痛い、沈黙。

『やっちまったなぁ……』

「うるさい小雲雀!!」

一喝。痛恨のミス。

「――ナニモキカナカッタコトニ」

烏丸秀 > 「…………」

一瞬の沈黙の後

ほんの少しだけ、噴き出すように笑い。

「はるかちゃんは、想像力がたくましいね」

とりあえず、どうするかと凛霞に問いかけ

伊都波 凛霞 > 「…ほんとにそれだけ?お姉ちゃんの目、見て言える?」

これまでならまったくはるかは…と苦笑していた
しかし今は、そんな小さな妹のサインを鋭敏に感じ取れている
頭痛はないのか、本当に大丈夫なのか

結局前日の夜の、妹の言葉で
完全にスイッチが戻ってしまっていた
【伊都並悠薇のお姉ちゃん】に

後ろで噴き出している烏丸の声など耳にも入らないように

伊都波 悠薇 >  
「……も、妄想癖は、あの――その、やめたほうがいいといわれてます……」

顔は真っ赤になりつつ――
姉の様子を見て、いつも通り笑う。いつも通り。
そう、妹は今までと全く変わらない。

今日だって。

「大丈夫。大丈夫。姉さん」

うんっとうなずいた。
目を見てしっかりと。出てくるタイミングまちがえたぁと、思いつつ。

「あ、えっと――のみもの。のみます?」

これからを考えれば、休憩は必要かなと思った

烏丸秀 > 「――――」

イラっと。
一瞬、烏丸の視線が険しくなる。
彼は無視されるのを、この世で一番嫌う。

まぁ、凛霞へのお仕置きは後でするとして――

「そうだねぇ。ちょっと移動しようか」

彼女の土台は、意外と硬い。
これは本腰を入れてかからないと――

伊都波 凛霞 > 「そっか、なら良かった。はるかは私に嘘つかないもんね」

ぽんと、肩を撫でて、離れる

「お店の前の通りにベンチあったよね、あそこで一休みしよ」

自販機もすぐ近くにあったはずである

伊都波 悠薇 >  
「はい、すみません」

すごく、まずいことをしてしまったなと思う。
うん、やっぱ自分が一番度し難い。

「……? 嘘ついたら、ハリセンボン飲まされるし。姉さんに嘘ついても気づかれちゃうじゃない?」

あぁでもいや、小さな嘘はついたことある、結構いっぱい。
変な妄想はしてないとか、うん。

「ごめんなさい」

改めて二人に謝罪しつつ

烏丸秀 > 「本当、仲が良いねぇ」

感心と、羨望と、少しだけの嫉妬をこめて。
呟きながら、店の外へと向かう。

しかし……

(はるかちゃんもやっぱり……)

見つけた、歪み。
だが、この姉妹、どうやって攻略したものか。

(簡単なようで手強い)

益体も無い事を考えつつ。

伊都波 凛霞 > 「謝ることないけど、はるか前に一度倒れてるんだから。余計な心配かもしれないけど」

街路樹の日陰になる場所に妹を座らせて、その隣にかける

「何か飲む?ちょっと買ってくるね」

二人から希望を聞いて、少し離れた自販機へと早足に向かっていく
───歩き始める前に、烏丸秀を一瞥して

伊都波 悠薇 >  
「はふぅ……」

心配ももっともだ。すごく、頭が上がらない。
一度も、上がったことはないのだけど。
あ、じゃあお馬さんの牛乳でと、姉に告げて。

「すみません、烏丸さん。楽しい時間邪魔しちゃって……」

なんだか剣呑な表情のような気がしたのでさらに謝罪を重ねた

烏丸秀 > 「はは、構わないよ、はるかちゃん」

むしろ、楽しい時間などではなく。
駆け引きの時間だったわけだが――

「……さて、はるかちゃんは、ボクに聞きたい事があるんじゃないかな?」

あの高峰司という少女。
彼女が知っていたのなら――はるかも、知っている可能性は十分にある。
なら、聞きたい事も言いたい事も、色々あるだろう。

伊都波 悠薇 >  
「いいえ、何も」

聞きたい事、と聞かれれば。即答だった。
何もない。彼に聞きたいことは”すでに聞いた”

「――だって、器が一番重要ですもんね。中身はいい、結果が」

そう、彼は言っていた。
ならば、いい。それは間違ってない。
烏丸という人物において、正しい生き方なのだ。
彼が、生きた中で培ったものを否定するものを悠薇はもってない。
むしろ、すごいとおもう。そういう、価値を見出すことが。
彼には、世界が宝箱に見えているのだろう。

「だから、何も。烏丸さんは、素敵な人ですから」

自分にできない生き方。尊敬する。
誰がどう、評価しても。悠薇には”否定する理由がない”

「――烏丸さんはありますか? 私に、聞きたい事」

コミュ障はこういうときにつらい。話すと、疲れるから

烏丸秀 > ちょっとびっくりして、きょとんと彼女の方を見る。
まさか――何も知らない?
それとも、何も思わず、受け入れる?

まさか。理解不能である。
彼女の言を聞けば、おそらくある程度は知っているのだろう。
だが、彼女は何も言わない。
まるで運命を受け入れる巫女のように。

「――はるかちゃんは、どうして自分のエゴを通さないんだい?」

それは、烏丸と正反対の生き方。
全てのエゴを、己の望みを押し殺す生き方。
何故、そんな事が出来るのだろう?

伊都波 悠薇 >  
「……自分のエゴ?」

なんだろうそれは、と思う。
欲求、といえばもう欲はかなっているのだ。
むしろ、烏丸が何を言っているのか理解できなかった。

「……えっと、わりと、通してると思いますけど?」

烏丸秀 > 「……あぁ、そうか」

理解した。
そうか、そういう事か。

烏丸は手で顔を覆った。
なんという事だ。あぁ。


伊都波悠薇には独占欲が無い。
いや、無いというよりも、『独占という概念を知らない』


常にお姉ちゃんと一緒に居たからなのか。
その存在を半身の如く思い、自分と切り離せないものと思い込んできたからか。
彼女には『独占する』という思考ができないのだ。

「……なんてこったい」

では、どうすればいいというのだ。
独占を知らない少女の心を独占するには。

そう、大変珍しい事ではあるが。


烏丸秀は、途方に暮れた。

伊都波 凛霞 > 「おまたせ」

足早に3人分の飲み物を手に戻ってくると
何やら雰囲気がおかしい

買いに行く前は烏丸が何か妹に変なことをしないかと警戒の意味を込めて一瞥していったのだが、
戻ってきてみれば、妹はいつも通り、むしろ烏丸の様子がおかしい

「なにかあった…?」

伊都波 悠薇 >  
なんか納得されている。
でも自分はわからないので説明をがんばって口にしてみる。

「姉さんって、すごいじゃないですか」

それは、誰もが見た事実だ。でも――

「でもどんだけ、すごくても。負けないことはないと思うんです」

負けという概念はどこにでもある。
常にそれに触れて、常に体験してきたことだから知ってる。
常に常に。いつだって、自分は”伊都波悠薇”に勝ったことがない。
自分という存在に、勝ったことが。

「極論を言ってしまえば、人は死にます。死に負けます。でも勝つ方法だって、あると思うんです」

それは悠薇の考え方。だから、一意見ですと前振りを告げて。

「笑って死ぬか、悲しんで死ぬか。後者は完全敗北です、でも前者は、勝ってると思いません?」

勝ってると、自分は思うのだ。
それは勝利だといえる。

「――姉さんには、最後に勝ってほしいんです」

それが願い。

「その助けに自分がなれたら、うれしい」

笑った。風が髪をなでた。
その表情はきっと、誰よりも美しく――

「だから、信じてるんです。姉さんは、負けないって」

告げて。戻ってきた姉を迎えれば。

「ううん、なにも。烏丸さんは面白い人だねって」

飲み物ちょうだい? と甘えるように手を伸ばした

烏丸秀 > あぁ、なんてこった。
何時もこうだ。

烏丸の愛する者は。
いつも彼の指の間をすり抜けようとする。

「いや、別に……」

すっかりしょんぼりしながら凛霞に答える。
かなり哀愁漂う姿かもしれない。

伊都波 凛霞 > 「?」

本当にわからない

───二人に注文の飲み物を手渡し、自分も座る
そして思い出したように

忘れてたわけではない
本当はタイミングを計っていた
けれど、色々と考えながら自販機へ向かっている間に、少しずつ覚悟は決まったのだ

「そういえば、悠薇。
 お姉ちゃん、言わなきゃいけないことあったんだった」

静かに、切り出した

伊都波 悠薇 >  
「……? どうかしたの?」

二人の様子に首を傾げた。
ゆっくりと風が撫でる。

また前髪がさらりと流されて。
悠薇の逃げ場をなくすように。

「烏丸さんも、なんだかしゅんってしてるし……」

もしかして、もしかするかもしれない。
どきっと胸がはねた気がした

伊都波 凛霞 > 「悠薇も色々知っちゃったみたいだし、今更なんだけど」

ふうっと大きく深呼吸

「私も悠薇にいつまでも、ってわけにもいけないしね」

手元で、ひんやりとしたジュースの缶をもてあそぶ
まるで落ち着かないように

「烏丸くんと、ちょっとだけ親しくしてたんだけど、
 今日でお別れにしようと思って」

小さな表現、最大限の、厭味も込めて

「私が倒れそうな時に支えてくれてありがとう烏丸くん。"もう大丈夫"」

ちらりと、隣の妹の顔を見て、烏丸へと視線を戻した凛霞の顔は以前よりも晴れやかに、笑顔だった

烏丸秀 > 天を仰ぐ。
あぁ、なるほど。
何があったかは知らないが。

「――なるほど、それは良かった」

あぁ、そうか。
確かに烏丸はあの鋼に皹をいれた。
そして確かに甘い毒を注ぎ込んだ。
だが。

「流石は『お姉ちゃん』、しっかりしてるよ」

こちらも多少の厭味を込めて言う。

姉妹そろって、なんて奴らだ。

(ま、でも――)

伊都波 悠薇 >  
「……え、あ、ええ……?」

あれ? もう二人は付き合ってた?
ってことは自分の空回り? あれ? あれれ?

「え……? ええええええええ!!?」

しかも別れた! あれ? あれれ??

「いやまって、”お姉ちゃん”? 気になる人って、違うの!? いやそうだったのに別れちゃうの!? なんで???」

さっぱり、わからない。
どうしてこうなったのか、まったくもってわからなかった。
混乱は最大級に。呼び名が元に戻るくらいには。

「って烏丸さんもよかったになっちゃうんですかっ」

あれー? 自分の知ってる恋愛と全く違う。
――…………あれ、自分が子供なだけ?

伊都波 凛霞 > 「うん」

烏丸の言葉には、その言葉だけを返すのだった

「色々気を揉ませてごめんね、はるか」

ぺふ、とその頭に手をおいて
前日の夜に、全部が元に戻った
妹は自分に嘘をつかない
自分にとって、姉が不要となったら、その時はちゃんと言ってくれる
だったらその時まで、お姉ちゃんをやってていいじゃないか
だから自分はお姉ちゃんのままでいい
望もうと望むまいと、先に生まれてきたのだから

今までと少し違うのは…たまに妹を先に歩かせてみたり、してみようかなと思うところかな

「良いって言ってるんだから、いいんじゃない?」

そういって、笑った

烏丸秀 > あぁ、まったく。
これで姉妹は、少しだけ成長して、大団円――

(――なんてなると思ったら大間違いだ!)

人の純情を弄んでくれやがって。
この報いを受けさせてやる。

「うん? 付き合って無いよ。ボクはお姉ちゃんの相談に乗ってあげただけ」

嘘は言っていない。
嘘は。

「だって、ねぇ。
お姉ちゃんにも言ったけどさ」

そこで、にっこり笑ってはるかの前に立つ。

「ボクが好きなのは、はるかちゃんだもの」

伊都波 悠薇 >  
「……え、えええええええええ!!?」

また大爆弾発言。好きって言われた。
二回目。これにはまだ全くなれない。

いや、理解が追い付かない。
なにがどうなって――

ぽん、頭に手を置かれた。
なんだか、すごく。落ち着いた。

「ううん、私じゃないよ。きっと、一番気にもんだのは。
 一番頑張ってくれたのは、高峰っていう姉さんの、大事な人だよ」

それだけは間違いない。
自分は見ているだけだったのに、彼女は動いた。
そして代償も。なら――

「姉さん、今度高峰さんを”取り戻して”あげてね?」

妹は、許さない。姉が、その敗北を享受するのを。
友人が奪われたものを、取り戻す姉だと信じ続ける。
それ以上のものをあげると――

「……ありがとうございます。烏丸さん」

告白には、笑顔だった。

「――わからないから、教えてください」

……私の、どこが好きですか?

烏丸秀 > あぁ、この姉妹はズルイ。
1対1なら付け入る隙もあるだろうに。
常に1対2だなんて。

(比翼の鳥か、連理の枝か。
お似合いすぎて妬けるね)

それでも烏丸は諦めない。
そうだ、愛は言葉にしなければ決して分からない。
自分は幾度もそうしてきたではないか。

「――瞳」

烏丸は呟く。
あの日。初めて出会った病室を思い出しながら。

「キミの瞳がね、綺麗過ぎたんだ。
一目惚れだった――ホントだよ?」

嘘ではない。
決して、嘘ではない。
その瞳に見つめられた時、思ったのだ。


この瞳を、手に入れたい。
なんとしても。

伊都波 凛霞 > 「司ちゃんが?」
これにはさすがのお姉ちゃんも驚く
でも、なんだか納得、そして嬉しかった
…幸せに顔を綻ばせるのはまだ早いのだろうけど

……妹と、烏丸のやりとりをただ眺める
妹の魅力に気付いてくれた、それは嬉しい
でもこの男は、この烏丸秀という男は…きっと、壊そうとする

けれど

「でも、烏丸くんは悠薇には釣り合わないかな、残念だけど」

伊都波 悠薇 > 一目ぼれ。男の子にも言われた。
しかも理由がしっかりしてる。彼から見たら、そういう器、だったのだろう。
うん、だから――

「えっと、まだ烏丸さんのことわからないから――……」

……お友達から、どうですか?

前も使った、言葉。
もしかしたら、運命のひと、かもしれない。
だから、まずは――……

「恋とか、まだ。その――わかんないですし。好きって、気持ちも、あんまり」

真摯に、礼をもって答える。
正直に、正直に。
それが悪女のような、言葉。
でも悠薇には、勇気ある言葉――

「だから――って、お姉ちゃん?」

まさか姉が、そんなこというとは全く思わなかった。
あれ? ってすごく不思議そうにして。

烏丸秀 > お友達。
お友達かぁ。
なんかこう、切なくなる言葉だ。
でもワンチャンあるかなーってちょっと意地汚く思っていると。

「――どういう意味さ、凛霞?」

じとーと姉を見つめ

伊都波 凛霞 > 「わかってるんでしょ、烏丸くん」

くすっと笑って、立ち上がる
空き缶を捨てにいく素振り、ちょうど烏丸の目の前を通り過ぎる瞬間
彼にだけ、聞こえる声で

「ダイヤは原石にも大きな価値があるってこと」

手に入れる者は限られ
大きなものならばそれは当然───

カン、とゴミ箱に空き缶を放り込む

「じゃ、一休みもしたことだし、ショッピングの続きにしよっか。
 ふふ、男の子がいると助かるよね」

ささやかで平和な復讐なのかもしれない
暗に烏丸に言っているのだ

荷物持ちお願いね、と

伊都波 悠薇 > 「……え、あ、え???」

剣呑な空気。しかも自分が中心だ。
あれ? どうしてこんなことに。
今日の自分は空回りばっかりだ。
とにかく……

「……ま、まぁまぁまぁ!! ほら、ショッピングっ、ショッピングしましょっ。お姉ちゃんのおすすめのお店とか、烏丸さんの、好きな料理屋さん? とかいろいろ、まだ時間ありますし、ね?」

二人の背をぐいぐいおして――

「さ、さすがお姉ちゃん!! こういうときは頼りになるね!!」

呼び方もいつの間にか元に戻って。
なにはともあれ、妹の連絡帳に記念すべき3人目の”友人”の名前が刻まれるのだった

ご案内:「商店街」から伊都波 悠薇さんが去りました。
烏丸秀 > あぁ、なるほど。
この娘は飾っておくだけの骨董品じゃない。
ダイヤの原石であり、磨けば飛び切りに輝く娘だ。

(そして、ダイヤの価値は大きさにある。
壊させはしないし、そもそもダイヤモンドは砕けない……!)

烏丸は大きな溜息をつき、悟った。

「ボクの負けだよ」

そして降参のポーズをして、彼女たちの意に従う事にする。


いつの日か、またこの姉妹と対決する時が来たとしても。
今の彼は、「荷物持ちのオトモダチ」でしかなかった。

ご案内:「商店街」から烏丸秀さんが去りました。
ご案内:「商店街」から伊都波 凛霞さんが去りました。