2016/07/09 のログ
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
祐樹臨助 > 祐樹臨助は商店街に行ったことがない。
日用品はあらかたすぐ近くのコンビニで済ませてしまうからだ。
ものぐさというかは、単にもっと良いものや安いものを求める欲求が無いのだ。
そんな自分がなぜ初めてこの賑やかしい通りに足を踏み入れたかといえば、演習場へ行くのにいつも使ってた比較的近い道が通行止めになっていたからだ。
従って、ここを通る事になっても、どこを通る事になっても、変わらず"道"でしかない。

しかし道という点で同じであれど、同じ道ではない。
むしろ決まり切ったルーチンをこなすばかりの日々を送っていたせいか、初めて来た場所で若干迷ってる。

「えーっと……演習場どっちだ……」

ご案内:「商店街」に一樺 千夏さんが現れました。
一樺 千夏 > 道行く人たちより、頭一個分は大きい人影。
普段は日の当たらない地域をテリトリーにしているのだが。
今日は運悪く、贔屓にしていた店が夏風邪を引いたとかでお休み。
他にも店はあるのだが、品がなかったり高かったり質が悪かったり。
つまるところ―――

「今日はツイてないわ」

やや半眼になりながらも、悠々と歩いて。
目の前の誰かを蹴飛ばしそうになるかもしれない。

ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
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ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
祐樹臨助 > 商店街をぶーらぶらしてると。

ひときわ目をひくビックサイズな女が、相対的に小柄な人間を蹴っ飛ばしそうになってた。

「っ!」

全力でかけこみ、二人の間に背中を滑り込ませる。背に沈み込重い衝撃で
目の前に倒れ無いようにしっかりとアスファルトを踏みしめる。

「おいあんた、あぶねぇだろ」

振って女性に訴える。
近くで改めて見ると、とにかくデカイ。いい感じの日陰になるくらいだ。

ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
一樺 千夏 > 「あら、ごめんなさいね。
 ちょっとボーっと歩いてたわ」

なおこのデカ女の靴には鉄板が仕込んである。
つまり、そういう事だ。

「怪我してなきゃいいんだけど。
 大丈夫?骨とか折れてない?モツは無事そうだけど」

とりあえず蹴飛ばすか踏みつけるかしてしまった服を左手ではたいて汚れを落とそう。
普通の力でやるから痛みがあれば、わかるだろう。

祐樹臨助 > 重い、硬い、痛いと三拍子揃っていたが、そういうのには慣れていた。
多少は身体が丈夫にできてるつもりだ。

「あぁ、なんともねぇよ。それよか気をつけてくれ。」

背中を払われる。痛みが響いてくる様子もなく、骨にも特に心配は要らないようだ。
正直折れるかと思ったが。

改めて女を見る。
中々パンクというか無骨な出で立ちで、おおよそ平穏な日常生活から離れていそうな巨大な義手は如実に暴力の匂いを漂わせる。

(背中の感触……ありゃ鉄板だな。見た感じ荒事が得意なタイプか。)

とはいえ、道理を理解しないほど内面まで荒ぶってるわけでもないのだろう。
素直に謝るあたりなどからそう察した。
総評して何事かの揉め後を起こそうとしたわけでも、起こそうとする人でもないのだろう。
そうした警戒を、とりあえず取り下げる事にした。

一樺 千夏 > 「本当にごめんなさいねー?
 とりあえずおまじないくらいはやっとくから。
 後で腫れたり痛みが出てきたら、ちゃんと処置してねー?」

患部を触って何かを小声で呟く。
少しばかり、痛みが引くかもしれないしまったく効果はないかもしれない。

「お詫びになんか奢るわ。
 学生さんっぽいからご飯とかがいいのかしらねー。
 クスリやタバコはやんないでしょうし」

偽造の身分証こそあるものの、本質的には不法入国者である。
積極的に日の当たる場所で騒動を起こしたいわけではない。
探られると割と痛い腹だし。

祐樹臨助 > 痛みが引いていくのを感じる。
見た目に反して……。
いや、今や大凡の人間は超常的な力を繰る時代だ。
どんな風貌の人間が魔術を扱おうとも、何もおかしいことはない。
ごく普通に、背中の痛みを和らげてもらってしまった。
その上奢ると言っている。

「俺にした分はこれでチャラだろ?なんともねぇってのに直してもらった上に飯まで奢ってもらったんじゃ申し訳ねえよ」

自分はそこまでの事をしていない。
詫びをするとしたならば危険な目に遭いそうになった、とっくに行き去ったさっきの人くらいなものだろう。

一樺 千夏 > 「咄嗟に自分を犠牲にできる少年に感動した……ってのはダメかしらねー?」

改めて少年を見る。
背はそこそこ。触った感じ鍛えてはいるようだ。
顔は……なんだろう、纏っている退廃的な空気がすごい知り合いに似ている気がする。

「それも気に入らないってんなら、おねーさんに逆ナンされてご飯くらい一緒にどうかしらん?」

祐樹臨助 > どうやらなんとしても奢りたいようだった。
そこまで言われて意固地に断るというのも、かえって悪い。

「……じゃ、悪いけどご馳走になる。好きなところ連れてってくれよ。」

そういえば腹に何も入れないままふらついてたのを思い出す。そのせいで空腹もひとしおなのだった。ちょうどいいといえばちょうどいいかもしれない。

一樺 千夏 > 「連れまわしたいのは山々だけど、この辺は不案内なのよ。
 アンタはなんか店とか知ってるんじゃないの?
 ほら地元の学生だし」

煙草、いい? とついでに聞きながら取り出して咥える。
火はまだつけない。

「後は奢られる側からのリクエストとかしてもいいのよん?
 オーガニックな寿司奢ったのに、生魚苦手ですとか笑い話にしかならないしねー」

いいながらもゆっくりと歩を進める。
ついでに店も探しているようだが。

祐樹臨助 > 「それが俺もここ来るの初めてなんだよ。あんたの方が知ってるぜ。」

煙を頷いて許可した。
一緒に歩いて、一緒に視線を巡らす。
巡らすがしかし。

「……要望って言われると困るな」

好き嫌いも美味い不味いもある。
だが、それに従って望むものが無い。

「あぁでも、アレルギーとかはねぇよ。だから本当に、あんたの連れて行けるところでいい」

一樺 千夏 > 「欲のない子ねえー。
 まぁ、それなら目に付いた定食屋にでも入ろうかしらね。
 ほらあそことか」

こじんまりとした個人経営の定食屋。
幟がたっていて うなぎ と書いてある。

「まぁ、アンタみたいなタイプは欲がないっていうか。
 頭から諦めてるか、どうでもいいって割り切ってるかってのがパターンではあるんだけどねー。
 無駄なことは楽しいわよ? ギャンブルとかどう? すっごい熱くなれちゃうけど」

祐樹臨助 > 「そんなに合理的に生きるつもりはねぇけどなぁ。」

「ただ、楽しい事が俺に必要なのかワカンねぇ。」

必要無いものは害悪だ、などとは思わない。
積極的に排斥しようとも、思わない。
ただ望まない。
だから手元にやってこないのだろう——心の無駄(よゆう)が。
切羽詰まってるかと言われれば、そんなつもりも無いけれど。

「つーかギャンブラーかよあんた。まぁそういうところとか、あんた見た目通りガサツそう——」

だよな、と失礼なことを言いかけながら指し示された店へ振り返る。

なんか鰻とか書いてあった。

鰻って。

「——なぁ、俺やせ我慢とかしてないからな?本当に大丈夫だからそんなに気を使って高いもん奢らなくていいんだからな?あんた見た目によらず気が細いタイプなのか?」

一樺 千夏 > 「合理的に生きてる連中は、いかに無駄を省くかって無駄で遊んでんのよ。
 タイムアタックみたいなもんかしらねー」

ケラケラと小ばかにしたように笑って煙を吐き出す。

「必要なのよ、絶対にね。
 猫を被るのに体験は必須なのよねー。
 ライオンの大きさを数字で知ってるのと実際に見たことあるのとじゃ別ものだし。
 理解と体験はまったくの別も―――」

ガサツといわれれば、軽く頭を小突くだろう。

「アンタもデリカシーがないってよく言われるでしょ」

疑問でなく断定した。

「あー財布の中身なら気にしないで。
 昨日の勝負で勝ってるからパーッと使わないとね。
 それに……今日は朝からツイてないからゲン担ぎよ」

祐樹臨助 > 「……パーっと、なぁ。」

小突かれた頭をさすろうともせず(痛いのは痛い)確認するように呟く。

「宵越しの金は持たないとか、そんなんか?あんたならその理由だとしっくりくるな。ところでデリカシー無いってよくわかったな、なんでだ?」

デリカシーが無いを実演しながら問いかける

一樺 千夏 > 「似たようなもんね。
 お金は溜め込んでても死んだら終わりだしー?
 やりたいことも全部、死んだらそれでお仕舞い」

あるものは使う。保険も大事だけれど、使ってこそ意味も出る。なんていいながら。
ガタガタと横にスライドさせる扉を開いて、店主に2名と告げてテーブル席へ。
座れば旧い椅子が小さい悲鳴を上げる。

「うな重二つー」

メニューすら見ない。

「で、デリカシーないのはその問いで証明終了よん?
 正直って美徳じゃないんじゃないかって思うのよ、アタシ」

祐樹臨助 > 「早速デリカシーが無かったのか……。気にしてんだけどなこれでも」

いろんな意味で。

「死んだら無意味か。それもそうだな…やれるだけのことをやって死にたいよな。」

穏やかな昼下がり、平凡な食堂の一角で物騒な会話が繰り広げられる。
皮目の焦げる香ばしい匂いが漂い始めた。

一樺 千夏 > 「経験値よねー こればっかりは。
 無傷で習得なんて無理無理」

灰皿に煙草を押し付けて、お茶を飲む。

「アタシは、やれるだけのことやって死ぬなんてゴメンだわー。
 どんな状況でも生き延びたいわ。
 死ぬってリスクを天秤に乗っけることはあるけど」

運ばれてきたのは、タレと焦げが非常に香ばしいうな重。
口直し用の漬物は自家製だろうか、無骨な感じが食欲をそそる。
肝吸いもあるので店としては当たりなのかもしれない。

祐樹臨助 > 「賭けるのは金だけにしとけよ。」

おしぼりで手を拭いて、畳んでおく。

「まぁ、死んだら勿体ないってなら、わかるよ。怒られそうだ」

運ばれてきた鰻重に目をやる。
端的に言って美味そうだった。
彼女の言う通り欲が無いから、奢ってもらう立場でいきなりがっつくなどしなくて済んでいるのだろう。
有ったなら空きっ腹にこの匂いは耐えられないかもしれない。

ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
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ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
一樺 千夏 > 「命がかかるのって究極のスリルよ?
 一度味わったら病み付き間違いなし」

いただきます と言ってから左手だけで器用に食べていく。

「まー、アレよアレ。
 どうせ何やってても死ぬときは死ぬし。楽しんだもん勝ちよ人生。
 酒もギャンブルもセックスもねー。
 やりたい事あるなら、動いて試して色々やらなきゃ損よ損」

あーお酒のみたーい と零した次の口でビールを注文していたりする。

ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
ご案内:「商店街」に祐樹臨助さんが現れました。
祐樹臨助 > 「そうか?楽しいとは思わなかったけど」

彼女が食べるのを見てから、自分も手を合わせて鰻を口に運ぶ。
柔らかい身を舌の上で転がせば、蓄えた脂と、黒く甘辛いタレが混ざって、舌の上で滲んで広がった。

「あんたが何してる人なのかはしらねぇしこんなとこで聞くつもりもねえけど、あんまり誰かに命とかかけて欲しくねぇなぁ……。こんな美味いもん奢ってもらったんじゃあ尚更だ」

一樺 千夏 > 「まぁ、ハマったら人生ドロップアウトコース一直線だけどねー」

どっぷり浸かって抜け出す気すらないけれど。

「あーやっぱり人工じゃないご飯って美味しいわー。
 この島に来てこれは正解よね」

かきこんで食べていく。
その食べ方はもう男子高校生のそれ。

「だったら、誰かが命を賭ける前にその賭場を潰して回らないとねー?
 すっごい大変だし労力と効果が見合わないとは思うけど。
 誰かを護りたいなら、護る基準だけはしっかりね。
 そのルールを忘れたら……悲惨な事にしかならないわよ」

最後だけ、かなり真面目な顔つきになった。
誰かを思い出したのかもしれない。

祐樹臨助 > 「護る——基準?」

考えたことも無かった、と言わんばかりの顔をしてる。
実際、考えたことなどない。
だが、語る彼女の顔の真剣さは、そのまま、何も考えないままではいさせてくれなさそうだった。

「……ま、覚えとくぜ。ただ、あんたも病み付きとか言ってないでそういう賭場に足突っ込まないでくれ。じゃないと、今度は俺が奢れないだろ。」

ちっと蹴られたくらいで鰻とか割に合わねえだろ、と言いながら、何気にすでにからになっていた器に蓋をする。

「ごちそうさまでした。そんなわけだからよ、名前くらい覚えて帰らせてくれ」

一樺 千夏 > 「そう、護る基準。
 誰が味方で誰が敵か。
 間違えると■■ッタレな■■■■に背中から刺されるわよ」

目つきは鋭く、そういう場所で生きてきた事が理解できるかもしれない。

「そういう賭場に首と足と手を突っ込んでガタガタ言わせるのが仕事だから無理かなー。
 死ぬような下手は打つつもりないけど」

支払いの為に、席を立って。

「チカよ。 一樺 千夏」

祐樹臨助 > 「一樺千夏な。」

お冷をぐいっと煽って立ち上がる。

「じゃ、その基準とやらも考えておくから、お互い粗末な事にならねえようにな。」

決して、陽の差した明るい場所でのみ生きてきたわけではないことは、出で立ちや言葉の端々から十分に察せられた。
人がいつ死ぬかなんて誰にも解らない。
それでも死は、近づけば近づくほどに、顎(あぎと)を開き、牙を突き立てる

関わったなら尚更死んで欲しくないのが誰かというものだ。

「俺は祐樹臨助。賭場じゃなくて、今度もまた飯屋で鉢合わせることを祈るぜ」

一樺 千夏 > 「そうね、うっかり仕事中に出会わない事を祈ってるわ」

支払いを終えて煙草を咥える。

「それじゃあね、臨助。
 縁があったら“遊びましょ”?」

店を出れば、逆方向に歩いていくでしょう

ご案内:「商店街」から一樺 千夏さんが去りました。
祐樹臨助 > 「あぁ、その時はトランプの一つでも覚えておくさ。」

手の甲をひらひらと振り、店を出た。

ご案内:「商店街」から祐樹臨助さんが去りました。
ご案内:「商店街」に加賀見 望さんが現れました。
加賀見 望 > 『まいどありー!!』
「ありがとう、ございました」

小柄なその影は威勢のいい店主の声に頭を下げると、
買い物袋をよいしょという風に持ち上げ、八百屋をゆっくりと後にした。

常世島には人種や民族、果ては世界の垣根すら越えた多くの存在がひしめきあい、
時に協力し、時にぶつかり合いながら日々を過ごしている。
しかし、そんな彼らも衣食住を――例外を除いて――整えねば生活は成り立たず、そしてその多様さ故に様々な需要が発生する。

そんな需要を満たす為に、常世島には多種多様な商店が存在し、
それらの商店群が集まるが常世島の商店街であった。

学生や教師の生活を支える重要な施設群であると同時に、
様々な人が行き交う異種族異存在の交差点。

そんな場所で、その少年は買い物袋を抱えつつ、
手にもったメモをじっと眺めていた。

「……じゃがいも。にんじん。たまねぎ……ピーマン……」

袋の中身とメモの内容を見比べ、指折り数えて確認する。
首を傾げ、うんうんと頷く度にその長い髪がさらりと流れ、
光を反射して僅かに色を揺らめかせた。

加賀見 望 > 「……えーと、えーと」

大通りを行き交う混沌の坩堝といった人の流れの中を木の葉の様に流されつつ、
何とかその流れを乗り切り、道の脇に用意された植え込みに……
その下に用意されたベンチに近づき、よいしょと腰を下ろす。

荷物をベンチの上において、ふぅっと吐息。


「……全部、買えたかな」


改めて買い物袋の中身を確認。買い物メモを確認。
――指定されたものは全部ある。

お財布の中身を確認。貰ったお金で買えているかを確認。
――先に言われた通り、ちゃんと余りがある。
理由はよく分からないけど、レシートも貰ってきている。


「…………んっ」

ベンチの上で、嬉しげに微笑んでぐっとこぶしを握る。

あの日、初に出会い、初の家に居候をする様になってから数日が経過したが……

『何もしないまま居候を続けるのは教育に良くない』

という家主の判断により、望は家事手伝いを――出来る範囲で――する様になっていた。

ある時は洗濯(洗濯物を畳む、仕舞う)
ある時は掃除(箒がけ、窓拭きを手の届く範囲で)

そして、今回の御題が「商店街でのおつかい」であった。

加賀見 望 > 勿論、ただ手伝いをしておしまいというわけではない。

家に居候させてもらうのとは別に、手伝いをきちんとこなすと
「頑張りました」というスタンプが貰え――
その数に応じて、お小遣いを貰えるようになっているのだ。

今まで貰ったスタンプの数は両の手足の指、
その全てを使っても数え切れない程であり――
それを使わずに貯めてきたこともあり、お小遣いも相応の額になっていた。

そんなわけで、商店街の来たのをいい機会として
『折角だし、何か欲しいものがあったら買うといいよ』
と言われている――わけなのだが。

「…………何を、買おう?」

という問題が浮上したのであった。

加賀見 望 > 「……うーん……うーん」

自分用の財布を
――望の財布は、扱いやすい様にがま口財布である。
 見た目が可愛いのとカパカパ開くのが面白くてお気に入りだ――
開き、その中身を確認する。

ずっしりとした重みと積み重なった中身が、
相応の額があることをアピールしている。

だが……それを使って何を買うかが思い浮かばない。

商店街をうろうろとさ迷う中で、興味を惹かれるものが無いわけではなかったが――
しかし、これが欲しい!! という様な物は、結局見つけられずにいたのである。

食品のおつかいという関係上、生活に即した物を扱う店ばかり巡っていたということもあるが――
それに加えて、折悪しく商店街の人通りが多く、他にどんな店があるのか確認できずにいたのである。

「んー…………」

以前貰ったアイスをまた一緒に食べたいから、アイスを買おうかな……と思い、
しかし帰るまでにアイスが溶けてしまうことに思い当たり、
しゅーんと肩を落とす。

それ以外に何がいいかな……と考えて、しかし思い至らない。
ある意味では、記憶や知識が先行し、
体験が薄いことによる弊害であるかもしれなかった。

加賀見 望 > 「…………?」

そんな風に悩んでいると――ふと、望の視界にある店が飛び込んできた。

それは、常世島以外においても非常にありふれた……
生徒や教師が着る衣服を扱う店だった。

生徒が着る学生服や、ちょっとおしゃれをしたい時の私服に、
教師の正装や講義で使う作業服等々。
それだけを見れば、常世島以外の服屋と変わらないが――
だが、ここ常世島においてはそれだけでは服屋の働きは十全に勤まるとは言い切れない。


異種族や異界から来る住人の中には、体質や体構造上普通の服が着れない者も多い。
そんな彼らに合わせた衣類をある時はオーダーメイドし、
またある時にはそんな彼らのお洒落や装飾の相談に乗る。

さらに、異能を使う演習や訓練では衣服の破損が起きる場合も当然あり、その際の衣服の下取りや新しい品の発注。

所変われば仕事も変わる。
そういう意味では、この服屋もまた常世島ならではといえるかもしれなかった。

加賀見 望 > そして……そんな服屋の店先。
ショーウィンドーに飾られたある商品達が、望の視線を強く引き寄せていた。


『ふぁんしー』

『風林火山』

『自問自答』

『あしたからがんばる』


あるものは奇妙に崩れた、絵文字めいたゴシックで。
またあるものは目に焼きつくような派手な色合いで。
Tシャツの上でその存在を強く強く……間違った方向にアピールしている。

服屋の店主か店員か、あるいは両方か……何故これらの店先で大きくプッシュしようとしたのかは分からない。
ひょっとしたら悪ふざけをしたのかもしれない。
ひょっとしたら、冗談で置いたのかもしれない。
ひょっとしたら、何か大いなる意志にでも導かれたのかもしれない。

「…………!!」

店先を占領していた理由はともかく……
そのTシャツ群は、望の疑問に確かな答えを示していた。

加賀見 望 > 『ありがとうございましたー』

数刻後、買い物袋を手に服屋を後にする少年の姿が見られた。

彼が何を買い、誰にそれを渡したのか。

それはまた、別の話となるだろう。

ご案内:「商店街」から加賀見 望さんが去りました。