2016/10/31 のログ
ご案内:「商店街」に深雪さんが現れました。
深雪 > 「あら……?」

どういうのでもいい。そう言った張本人が、七生を見つけて小さく声を漏らした。
深雪ら仮想にまったく興味が無いわけではなく、純粋に、どんなものがいいのか想像も付かなかったのである。

見れば、七生は……仮想の衣装を探しているようだった。
それも、どうやら女性用。

「………………。」

それを見て、七生が自分のための衣装を探しているのだと気付かないほど、深雪は鈍くはなかった。
話しかけるべきか、それとも黙って通りすぎるべきか、しばらく悩んで、その場に立ち尽くす。

東雲七生 > 「去年よりも大人しめの……」

……大人しめの方が少ない気がする。
ともあれハロウィンまでの日程は残り少なく、七生自身の仮装も決めなければならないのである。
共通のテーマを持ったものにするか、それとも互いに似合う物を選ぶべきか。
ガラス越しに映る自分の顔をじーっと見つめながら考える。

「うーん……うーん……」

あまりにも真剣に悩んでいるためか、道行く人が何事かと七生を見ては通り過ぎていく。
しかしそれらに気付く事もなく悩む七生。もちろん深雪が見ていることにも気づいていない。

深雪 > 七生は深雪が思っていたよりもずっと真剣に衣装を選んでいた。
去年の今頃、仮想をしてお祭りに出たのは確かに楽しかった。

「…………。」

でも、こんなに真剣になるものなのかと、どこか愛しげに、貴方の後ろ姿を見つめている。
周りの人々の反応を見るに、人間がみな、こんなに真剣になるわけでもなさそうだ。

「……悩んだって決まらないわ。七生はどんな衣装を着てほしいの?」

見かねたのか、突然、なんの前触れもなく話しかける深雪さん。
びっくりすること間違いなし。もしかしたら、それを狙っていたのかもしれない。

東雲七生 > 「んー………」

じー、とガラスに映る自分の顔と、その奥の衣装とを交互に見て考える。
去年は魔女だったから、今年は……
どんなものにしようか何となくイメージが浮かびそうで浮かばない。そんな最中、

「……ひぁっ!? ふ、へ!?」

突然声を掛けられて奇声を上げながら振り返る。
見れば、まさにどんな衣装を着せるか悩んでいた相手が居て、耳まで赤くなりながら七生は視線を彷徨わせた。

「みみみ、深雪!?いつから見てたの!?
 ……ど、どんなて言われても、何着ても似合うと思うから悩んでるんじゃんか!」

あたふたと早口で捲し立てながら、びしっとショーウィンドウの奥の衣装を指す。
人魚姫とかあるが、もうそれは殆ど裸に近い。

深雪 > 「ずっと。」
七生が期待通りの反応を返してくれれば、満足げにそう答える。
楽しそうに笑いながら、自然に貴方の横へと並んで、ショーウィンドウの中を眺めはじめた。

「ふふふ、嬉しいけど、それで決まらないのかしら?
それなら、七生が好きなのを選んでくれて構わないわよ。」

さらりとそう言ってから、指差された先を見る。

「ふーん……七生は、こういうのが好みなのかしら?」

人魚姫って書いてある。

東雲七生 > 「うぅ……だったらもっと早く声掛けてくれたらいいのに……。」

ぶつぶつ不満げに口を尖らせながらも、深雪が隣に来れば頬を緩めて。
それから改めてショーウインドウを見る。

「好きなのって言われても…… !
 ち、違うよ、これは違う!たまたまあっただけ!!」

流石にこんな破廉恥極まる格好で表に出せるわけがない、と。
再び顔を真っ赤にして首を振る。もうぶんぶんと振る。
嫌いじゃないけど、と首を振りながら小さく呟くのが聞こえるだろうか。

深雪 > 「真剣な顔をじっと眺めてるのも楽しいわ。」

隣の七生へと視線を向けて、くすくすと楽しげに笑う。
慌てて貴方が否定するのも思った通りで、可笑しさが込み上げてきた。
小さな呟きも、聞こえていたのかもしれない。

「そんなに必死にならなくたっていいわよ?
私なら寒くもないし、七生が選んでくれたなら、着てあげてもいいけれど……」

東雲七生 > 「むしろ深雪が見ててつまんない俺ってどんなのさ……?」

首を振るのやめて、ぷすー、と膨れて呟く。
そんなやりとりがすべてガラス越しの店内からも見えている事など気付く様子も無い百面相。
いつでもどこでも変わらない七生である。

「えっ……い、いや、だめ!だーめーでーすー!
 こんな格好の深雪を人前に出せるわけ無いし!!」

大変に大変な事になる、と再び首を振った。

深雪 > 「……そう言われると,案外難しいわね。」

隣で膨れている七生を見ているのも,もちろん面白い。
素直に感情を出せるのは,七生の長所だろう。少なくとも深雪は,そう思っていた。

「ふふふ,人前に出るために衣装を着るのに,衣装を着たら人前に出せないなんて変な話ねぇ。」

……けれど,七生はいったい,何を探しているのだろう。
七生と深雪,二人が一緒に歩いて祭りを見にいくための衣装なのか。
それとも,七生が“着せたい”と思ってくれる衣装なのか。

東雲七生 > 「………深雪さ、俺のこと面白がり過ぎじゃない?」

まったくもう、と溜息を吐きつつ笑みを浮かべる。
深雪がどう思っていようとも、少なくとも一緒に住んでいるのだから、つまらなく思われているよりは幾分かマシだ。

「ホントにね!……だからもうちょっと大人しい衣装を探してるんだけど……。」

これが中々無いのである。
お祭りの為の衣装だからなのかやたらと露出が高い。
深雪が着る分には構わないが、それで外に出るとなると色々とダメな部分が多過ぎるのだ。

深雪 > 「そうかしら? 七生みたいな人間って,ほかに居ないと思うわよ?」
世界を滅ぼすかもしれない自分と一緒に住んで,その封印を解こうとさえしている。
一緒に住み始めて,一年間経っても,七生は変わらなかった。
もしかすると、深雪のほうが変わっているかもしれない。

「大人しい衣装って,こういうの? なんだか違う気がするわね。」

海賊,シスター,色々な衣装がそろっている。
でも,露出の少ないものは再現性重視なのか,地味だった。

東雲七生 > 「そんな事無いって、いっぱい居るよ。
 俺なんて普通普通。」

苦笑を浮かべて、首を振る。
まるで自分に言い聞かせるように、普通、ともう一度言って。

「そうなんだよ、大人しめにすると地味になるからさ。
 地味でなく目立たないのが良いなって思ってんだけど中々無くて……」

うーん、と腕組みをして衣装を眺める。
深雪を外に連れ出したいが、人目を引くのは嫌だ。そんな我儘が通る様な衣装は見つからない。

深雪 > 「ふーん…。」

深雪はじっと七生の横顔を見つめる。
言葉を信用していないのもあるが,それよりも,七生がまるで自分にそれを言い聞かせているような,どこか不安げな表情が気になった。

「地味でなく目立たないの…って,難しいものを探してるわね。
 やっぱり,どっちかしか無いわよ…?」

両立するのは非常に難しそうだ。
深雪は七生へと視線を向けて, どうしたい? と,笑いながら聞いた。

東雲七生 > 「そ、そんな事よりも!
 折角居るんだから深雪も自分でちょっとでも良いなって思った奴探そうよ!ほら!」

さっきから俺に考えさせてばっかりじゃないか、と不平を零しながらショーウィンドウを指す。

「去年は俺が決めたし、今年は少しでも深雪が良いなって思ったのにしたいじゃんか。
 どれでも良いは無しだよ、先に言っとくけど!」

きゃんきゃん。
変声期前の独特な声で捲し立てる様は仔犬めいていた。
どうしたい?と聞かれれば、むーっとした顔で深雪の顔を見つめて。

「俺は……また二人で出かけられる様なのが良いんだけどさ。
 別に深雪自身はどれ着ても平気そうだし……。」

深雪 > 「………。」

上手くはぐらかされてしまった気がする。
ふと,思い出すのは,七生が居候になった理由。もう,1年以上前の話だ。
七生の過去についての話題は,深雪の過去についての話題と同様に,2人の間ではまったく話題に上らない。
まるで,その話を避けて通っているかのように。

「私は……そうね,七生が“きれい”って言ってくれる服が良いわ。」

まっすぐに七生の瞳を見つめ返して語る言葉に嘘は無かった。

どれを着ても平気なのだが,七生が喜んでくれないのは悲しい。
自分で選ぼうとしないのは,そんな気持ちが絡んでいるのかもしれない。

東雲七生 > 「………。」

沈黙が重い。
他人が何を考えているのか、七生には分からない時がある。
それは七生自身が言いたい事はすぐ口にするタイプだからであり、すぐに隠し事をするタイプでもあるからだ。
故に、嘘を──何か隠しているならばすぐに分かる。言いたくない事を言っているのもすぐに分かる。
ただ、何も言わない相手の心裡は──読めない。

「……きれい?
 深雪なら、何を着ても綺麗だと思うよ。美人系だし。」

深雪からの返答に、きょとんとした顔で応える。
それじゃあ選択肢が変わらないじゃないか、と苦笑しつつ再び衣装へと目を向ける。
綺麗だと思うから、あんまり目立って欲しくないのに、と笑いながら呟いて。

深雪 > 七生がより一層,不安そうな表情を浮かべている気がする。
何か話さなくてはと思い,言葉を探す。
けれど,何か過去について思い出したことがあれば話してくれるだろう。

「……つまらない貴方,1つ見つけたわ。
 私に心配をかけないように,何があっても平気そうな顔をする貴方ね。」

じっと七生の瞳を見つめて……逆にその心理を読み取ろうとした。



「ふふふ,ありがと。
 それじゃ…そうね,去年は黒だったから,今年は綺麗な色の衣装が着たい…かしら?」

妖精…というにはやや長身過ぎるのは確かだが,探せばカラフルな衣装も見つかりそうだ。
セクシーさよりも可愛さを前面に押し出したような衣装ならば,七生も少しは安心できるのではないだろうか。

東雲七生 > 「うっ……別に、そんなつもり無いんだけど……。」

金色の瞳に見つめられて、バツが悪そうに目を逸らす。
最初に有った頃からずっと、こちらの考えを見透かしそうな瞳から逃げる様に頬を掻いて。


「カラフルな奴ね、おっけー。
 カラフルカラフル……あ、じゃあ、あれなんてどう?」

指し示したのはアニメーション映画に出てくるような妖精の衣装。
光の角度によって色の変わる翅が二対、四枚付いたものだった。
どう?と小首を傾げて深雪の反応を窺う。

深雪 > 七生が示した妖精の衣装は特に珍しいデザインのものではない。
スカートの丈もさほど短いわけではなく,美しい羽が目を引くくらいだろうか。

「……似合うかしら?」

少なくとも,普段のイメージとは全く違うだろう。
それはある意味で,仮装がより特別なものになるという利点でもあるのだが。




「それなら……目,逸らさないで。」
怒っているのではなない。口調は確かに強いし,視線は鋭い。
けれど深雪は,深雪なりに,七生を心配しているのだ。
七生にもそれが,伝わればいいのだが…。

東雲七生 > 「似合うよ。むしろ似合わない方を探すのが大変なくらい。」

へにゃり、と笑みを浮かべて即答する。
男装しても似合うだろうと、本心から思っているのだ。
ただ、随分等身の大きい妖精になるな、と思ったけれど。


「うっ……だって、深雪の目……たまに怖いし。
 それに何か……ドキドキする。」

金色の瞳に、吸い込まれそうになる時があるから、と。
それだけ告げると、早速衣装を買おうと店へと入って行こうとする。
勿論、深雪の手を引いて。

深雪 > 最初は,面白い玩具でしかなかった。
けれど今は,もしかしたら自分は,七生に頼られたいのかもしれない。
七生の不安を受け止めてあげたい。そんな風に思っているのかもしれない。

「あ…ごめんなさい……そんなつもりじゃ,ないのよ。」

怖い。その一言に,深雪は表情を曇らせた。
…怪物としての自分を指して言われた言葉ではないと分かっているが。


…すぐに手を引いて店へと連れ込まれたのは,幸か不幸か。
そのまま例の妖精衣装の目の前まで連れていかれて,間近でそれを見上げる。
まさか七生が男装まで考えているなど,想像できるはずもない。

東雲七生 > 咄嗟に曇った深雪の表情を七生は見逃さなかった。
何か自分が拙い事を言ってしまったのでは、とすぐに気付いて。

「ああいや、別に謝んなくても良いけどさ。」

俺の方こそごめんね、と謝りながら店内を進んで。
妖精の衣装の前に立てば、改めてその意匠を確認する。
なるほど露出は多くない。が、それでも女性物は女性物。体の線がどうしても浮き出る様にはなっているらしく。
最早避けられない事か、と諦め半分の境地に至る七生だった。

それならいっそ深雪が男装して、自分が──
そこまで考えて我に返る。それならまだ深雪を衆目から守るお仕事の方がマシだ。

「………これで、いい?」

深雪 > 曇った表情は,衣装の前に立った時にはもう消え去っている。
七生がそれを見逃さず,すぐに言葉をかけたのは正解だったのかもしれない。
深雪は何も語らないので,七生はまた不安を感じるかもしれないけれど。

「私は良いけど……七生は?」

七生は筋肉質だが,メイク次第では可愛らしい少女に変貌するだろう。
深雪は華奢な身体をしているが身長は十分だ。
問題は,男女を入れ替えるような仮装をすれば,深雪が恰好の玩具である女装七生をどう扱うか想像もつかないということだ。

東雲七生 > 「別に俺は……うん、大丈夫。」

スカート丈問題なし。オフショルダーだから少し胸元が危ないけどそこもまあ、問題なし。
一際人目を集める程大きい訳でもないのだから、とぶつぶつと確認しつつ、OKサインを出す。
これなら大丈夫だ、少なくとも去年よりは。

「じゃあ、これ買ってこっか。
 俺のはどうしよっかな。深雪が妖精だと俺もそれに合わせたのにした方が良いかな……?」

まあ、最悪家にある狼男リベンジでも良いだろう。
帰る途中で素材を買い集めて少しはパワーアップさせれば良いのだから。尻尾とかもっとふかふかもこもこにしたい。
なので性別逆転案は早々に頭から閉め出した七生だった。

深雪 > これまた真剣に風紀のチェックをする七生を,深雪は笑いながら見つめていた。
どうやらOKだったらしいので,それを買い物かごに入れる。

「ありがと……そうね,七生は…。」

性転換案の存在を僅かでも口にしていたら今頃運命は決まっていただろう。
深雪一人ではそこまで思いつかないのが,救いというものだ。
ごそごそと衣装を漁って…

「あ,これなんかも恰好良いんじゃないかしら?」

出てきたのは,ヴァンパイアの衣装だ。
妖精と合っているかと言われれば微妙だが,深雪が選んだのは“可愛い”衣装ではなく“恰好良い”衣装だった。

それは深雪の好みなのか,それとも七生のことを考えての選択なのか。

東雲七生 > あと10cm大きかったらNOサインが出てたらしい。
何処がとは言わない。ぜったに言わない。言えない。

「ん、どうしたしまして。」

にっこり笑ってから衣装を漁る深雪を見て首を傾げる。
別に俺のは良いのに、なんて笑いながら見ていたが。

「ヴァンパイア……かあ。
 えっと、なんか、俺が着るとして狙い過ぎじゃないかな……」

赤い髪……は置いといて、紅い瞳に血を操る能力。
そんな自分が吸血鬼だなんて、と首を傾げる。
しかし、口ではそう言いつつも選んで貰えた事が嬉しいのか口元ににやにやと笑みが浮かぶ。

深雪 > その言ってはいけない何かは,
お互いの幸せと平和のためにも,是非七生さんには墓場までもっていっていただきたい。

七生ほどではないにせよ,深雪も真剣に選んでいるようで,
「でも,赤いマントは駄目ね…髪の毛の色と被るわ。
 ……こっちの,これの方が良いんじゃないかしら?」
そう言いつつボロボロの黒マントを探し出してきた。

「ふふふ,そうかも知れないわね。でもきっと,似合うと思うわ。」

はい,とヴァンパイア衣装を七生に差し出した。

東雲七生 > 差し出された衣装を嬉しそうに受け取って眺める姿は、ハロウィン前よりもクリスマスの子供に近い。
しょうがないなー、などと呟きつつも満面に笑みを湛えて深雪を見上げる。

「よしっ、じゃあ早速帰って合わせてみよっか!」

会計行くよ、と衣装を脇に抱えて深雪の手を引こうとするだろう。
それは店に入る時よりも強く、七生の気分の向上を感じさせるものだった。

深雪 > 頼られたかったわけでも,不安を受け止めたいのでもない。
ただ,この笑顔が見たかった,それだけなのかもしれない。

「あら,随分張り切ってるわね。」

手を引かれるままに,七生の後に続く深雪。
単純だと言えばそれまでかもしれないけれど,七生のそんなところが,どうしようもなく愛おしかった。

東雲七生 > 「にひひ……
 だって深雪が選んでくれたの、嬉しくってさ!」

玩具ではなく、ちゃんと認められている気がして頬が緩む。
自分が鍛錬を続けた意味、その理由がちゃんと結実している事がどうしようもなく嬉しい。
東雲七生として存在する意味が、満たされていくような感覚がとても心地良い。

「えへへ、ありがとね、深雪っ!」

日輪の様に一遍の翳りの無い笑顔を浮かべたまま、会計を終えると深雪の手を引いて店を後にしたのだろう。
二人の姿は店員にも、他の客にも仲の良い姉弟の様にしか映らないのは幸か不幸か──

ご案内:「商店街」から深雪さんが去りました。
ご案内:「商店街」から東雲七生さんが去りました。