2016/11/08 のログ
ご案内:「商店街【常世祭期間中】」に北条 御影さんが現れました。
北条 御影 > 祭りである。
通りはいつも以上に賑やかだ。
店には色鮮やかなのぼりが立ち並び、店員は各々声を張り上げて客を呼ぶ。
それらの風景を眺めることすら一つの娯楽として、楽し気に笑う買い物客。
そんな中、少女はこれ以上ないまでにアウェーであった。

「……何か、一人で来るんじゃなかったな」

イベントともなれば生徒たちは皆連れ立って出かけていくのが常である。
祭りともなれば、近しい友人や恋人と共に過ごすのが常識であろうもの。
そんな中、彼女は一人であった。

「はぁ…。そうだよ、祭りなんじゃん。ミスったなー。
 普段の買い物とは訳が違うっつーのよねー…」

片手にさげた買い物袋には簡単な日用品が詰まっており、
「それわざわざ祭りで買う?」と言われそうなラインナップであった。
つまり、彼女はこの祭りを甘く見ていたのだ。
セールしてんなら丁度いいやー程度の気持ちで出かけたことを心底後悔しているところである。

北条 御影 >  楽し気に行きかう人々に恨めしそうな視線を向けるも、何が起こるわけでなし。
彼らは変わらず笑っているし、自分は変わらずひとりぼっちである。

「くそぅ、青春しやがってさー。そうだよねー…高校生活って普通はそんな感じだよねー」

そうではない自分の生活を振り返って溜息がこぼれた。
こぼれた所でこれもまた、どうとなるわけでもないのだが。

「こりゃさっさと帰って……ってのも何か負けた気がして悔しいな。
 せめて何かこう…雰囲気だけでも…」

何を隠そう彼女には友人というものが存在しない。
彼女の持つ異能がそんな関係を許してくれないのだが、
それでも彼女にも気の合う友人と楽しく過ごした記憶ぐらいはある。
その記憶に縋るように、街角のベンチに腰を下ろしてぼんやりと人間観察に興じることにした。

この賑やかな祭りの中で、一人何をするでもなく座っている彼女の姿はともすれば浮いて見えることだろう。
物憂げな瞳で、彼女はぼんやりと視線を泳がせている―

ご案内:「商店街【常世祭期間中】」に三谷 彰さんが現れました。
三谷 彰 >  いつもの制服ではなく赤いジャケットの私服姿で買い物袋をぶら下げ祭りの会場を歩く。
 買い物の帰りついでだからと寄ってみたのだが中々1人身には辛いものがある。
 ふと物を見るとかなり安い価格で売られていた。セールをしているというのは本当らしいが少し苦い顔を浮かべる

「……こっちのが安かったか」

 違う場所で買った商品と同じものが20円近く安く売られていたのだ。仕方ないと思いながらも溜息を漏らす。
 偶然目についたのは1人の少女。少し浮いているようにも見えるがその視線などを見てひとつの可能性に行き着く。

「なんだ迷子か?」

 おそらくは友達とはぐれたとかそういった事なのだろうと思いそう声をかける。

北条 御影 >  「…ぅえ?」

自分でもちょっとどうかと思うぐらいには間抜けな声が出た。
流石に乙女としてこれはどうだろうと思ったが、出てしまったものは今更隠せない。
こほん、と咳払いして改めて視線を映せば―

「―げぇ」

と、今度は声をかけてくれた相手に向けるにはあんまりにもあんまりな声が出た。
でも仕方のないことだろう。だって彼は―

「あー…風紀委員の、誰でしたっけ」

そう、ヘルメットさんの宿敵風紀委員なのだから。
彼に直接追いかけまわされたわけでも何でもないが、風紀委員の制服を着て校内を歩いているところを何度か見たことはあった。
とはいえ、今の自分はヘルメットさんではない。ただの女生徒である。
だから、努めて平静に―

「え、と。いや別に迷子とかそういうんじゃなくてですね。
 ただその、祭りで皆楽しそうだなーって。一人者の僻みをぶつける先が無くて、悲嘆にくれてたとこですよ。貴方も、御一人?」

三谷 彰 > 「げぇってなんだよげぇって」

 立場上そういった反応を受ける事はたまにあったがここまで素直に出してくる相手はそうはおらず思わず笑ってしまう。
 少しだけ笑ってからふぅと一息つける。

「2年の三谷彰だ。んなかしこまらなくていいぞ今日フリーの日だしよ」

 どこかぎこちない彼女にそう伝えて荷物を持つ手を持ち変える。

「ああ、俺も1人だ。買い物帰りについでに寄ったんだよ。来るもんじゃねぇなこういう場所1人でよ」

 同じ1人身同士で出会ったという状況に少しの苦笑を浮かべながら返事を返す。
 周囲から見てみたらおそらく自分がナンパでもしているように見えるのだろうかなどと少しだけ考え周囲を見回したが、完全に全員自分の世界なのかそういった目で見てくる相手はいなかった。

北条 御影 >  「いやぁ、私みたいな極々普通の生徒には、風紀委員ってだけでなーんか恐れ多くてですね」

当然だが、相手も特に自分をどうこうしようというわけでもないらしい。
内心ほっとしつつ、苦笑いして腰を浮かした。
少しだけ、横に動けばベンチにはちょうどもう一人分の空きが出来て。

「全くですよ。安くなってるーって話を聞いたから来てみたらこれですもんね。
 安く品を得た代わりに、心がガリガリささくれだってく気分です。
 これがお代の代わりだってんなら、とんだ悪徳セールもあったもんだーって感じですよね」

ぽんぽん、と空いたスペースを掌で軽くたたいて彰へと示し

「だから、独り身同士…傷の舐め合いとかどうです?
 お代はジュース一本で良いですよ。他の店に比べれば大分良心的だと思うんですけどー?」

くすくす、と零れる笑みは少し悪戯っぽく。
ともすれば馴れ馴れしいとも思われそうな距離の詰め方だ。
彼女は、数少ない出会いの記憶を少しでも鮮明にしておきたくて。
極力、こういった態度をとるようにしている。
それを覚えておいてくれる人間も、何処にもいないわけだが。

三谷 彰 > 「あぁ……気持ちはわかる。あれだよな。何にもしてないのにパトカーのサイレンがなるとなんか警戒しちまう感じ」

 昔、今より子供の時に感じていた感覚を思い出す。
 子供の時パトカーのサイレンがなると何故か硬くなった物だ。おそらくはそんな様な物なのだろう。
 
「違いない、しかも何だかんだ店によって値段も違うから本当に安く買おうとしたらあっちこっち回らないとだしな。さっき20円損したんだぞそれで」

 思い出して少し苦い顔を浮かべる。自業自得といえばその通りなのだがやはりどうにも納得できないものもあるというものだ。

「んだ、そりゃ、まぁ良いぜ別に俺も暇だし。その話乗ってやる」

 この寒い時期に冷えたジュースを渡すなど色々と優しく無い物があるだろう。
 少し離れた場所にある自販機で暖かいココアと暖かいお茶を買うと元に戻る。

「お茶とココアどっちが……の前に名前教えてくれ。話すにしても何て呼べば良いかわからねぇ」

 ふと自然な流れで買ってきたのだがそういえば名前など知るわけも無い。
 相手の一気に来る距離の詰め方でどこかで会った錯覚にでも陥っていたのかもしれない。

北条 御影 >  「私は北条御影。風紀で、しかも先輩って人の意外なフランクさに驚いてる一年生ですよ」

そう名乗る仕草も、まるで友達に接するかのような気安さで。
にしし、と笑うその笑顔はそれこそ、初対面とは思えない距離の近さだ。

「あ、それじゃココアでお願いします。女の子には甘い物…基本中の基本、ですよね」

ん、と手を伸ばしてココアを受け取れば掌に広がる暖かさにほぅ、と息が漏れる。
暖かさを楽しむのも程々に、ぷし、とプルタブを開ければ立ち上る柔らかな香りに目を細め

「んー…いい匂い。しかしめっきり寒くなってきましたね。
 一人者の心が荒むのも止む無しといった感じで。
 んで、先輩は何で一人なんです?オフの日ならそれこそ誰かと遊びに行けばいいじゃないですか」

と、そこまで言ってふ、と隣の少年の顔を見やり

「あれ、もしかして私…地雷踏んじゃいました?
 仕事が友達で人付き合いが希薄ーとか、そういう…?」

三谷 彰 > 「かなり緩い風紀委員だって一部で有名らしいしな。たぶん風紀委員で同じ風紀委員からお説教食らってるのは俺以外にあんまりいないんじゃないか」

 彼自身からしてみれば風紀委員だからと言う理由で堅くなってほしくないから。という理由でやってるはずなのだがそれがどこか裏目に出たのかそうなってしまったらしい。
 まぁ別に問題を起こしているわけではないので怒られているだけですんで居るわけだが。
 相手がココアを希望するならそのまま受け渡し自分は誘われたとおりに腰を下ろすとお茶の蓋を開く。
 一口飲めば冷えた体を少しだけ暖かくなりふぅと一息つく。
 
「勝手に友達居ない認定すんな!」

 そうしていると相手の発言に思わずツッコミを入れる。

「あれだ、色々と勘違いでな……今日バイトあると思って開けといたら無くてよ。風紀委員の仕事も見回りくらいでそんな大人数いらねぇし。気がつきゃ暇人の出来上がりってわけだ」

 偶然が偶然を呼んで一人になった。という事らしい。

「てか、そういう御影こそなんで1人なんだ。お前こそどう見ても友達多いタイプだろ」

 話していて思ったことだ。どう見てもこんな祭りに1人で来るようなタイプには見えない。
 たしかに多少馴れ馴れしいところもあるかもしれないが別に不愉快なレベルじゃないしむしろ話しやすいとさえ思えるレベルだ。

北条 御影 >  「ふふ、割と親近感湧きますね、それ。そんな人ばっかりなら風紀にも怖がらずに済んだのになぁ」

楽し気にそんなことを言うが、そんな人間ばかりになってしまえば、風紀はその機能を保てない。
ただ、それでも思う。自分を追いかけるのが彼であれば少しは逃げるのも楽しくなるのかなぁ、なんて。

「なーんだ、それじゃ先輩は普段なら全然独り身じゃないってことじゃないですか。
 ぶーぶー、独り身同盟解消ですよこれは。短い付き合いでしたね…」

こくり、とココアを飲み下して膨れ面。
冗談めいた不満を漏らして、一人でくすくすと笑うも、続く三谷の言葉にふ、と笑顔が消えて。

「あは、そう見えます?だったら嬉しいなぁ!
 ただ、悲しいかな私はこうしてひとりぼっちなわけでして…。
 友達、出来ないんですよ私。そういう運命なんです」

先ほどまでの笑顔はどこへやら。
一人でいた時と同じ憂いを瞳に帯びて、視線を落とす。
言葉の端々に諦観をにじませて溜息を一つ零して―

「って言えば、同情してくれます?
 悲劇のヒロイン!って感じしますよねこれ!」

また直ぐに、人懐っこい笑みを浮かべた

三谷 彰 > 「独り身同盟!? 何時の間に入ってた俺!?」

 いつの間にか入れられていた物に思わずツッコミを入れる。
 その後に続けようとしたものの相手の反応を見てそれを取りやめた。

「ったく、マジかと思ったじゃんかよ!」

 気がつかないフリをしてさっきみたいな表情に戻り返事を返した。
 だが、さっきまでの表情。
 あのどこか達観したようで諦めたようなその表情はどこか本当の様な気もしてしまう。

「……よし!」

 荷物を持つと立ち上がり御影に振り返る。そしてニッと笑いかける。

「折角の祭りだ、ここでダベるのもいいが周って見ないか?」

 同情、といってしまえばそうなのだろうか。だが折角の祭りなのだから楽しみたいと思ったのもそうだし。何かの縁で知り合った相手と周るのもそれはそれで悪くないと思える自分も居た。

「……ってなんかナンパみたいになったな」

 言ってからそんなことを考えた。というかやってることはなんら変わりないだろうが気にしないことにする。