2016/11/15 のログ
飛鷹与一 > しばらくして、応援の風紀委員の先輩2名がやってくる。
呼吸も整ってきたので、先輩達に経緯と事情を説明して不良生徒達を連行して貰う。
自分はまたこれから見廻りの再開だ。気が重い、というより予想してたがハードだ。

「あの人の言うとおり、内勤希望した方が良かったかもしれない…」

今更そんな後悔を口に出しても遅いのだけれど。乱れたマフラーを巻き直し、服装を軽く整える。
…さて、ではまた見廻り再開といこう。新米風紀委員の仕事はまだまだ続く。

ご案内:「商店街【常世祭期間中】」から飛鷹与一さんが去りました。
ご案内:「商店街【常世祭期間中】」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 今日も今日とてぶらぶら屋台巡り。
だいぶ屋台のバリエーションも増えて来たし、島を訪れる一般人の観光客も増えてきたように見え、活気に満ちた光景が何だか新鮮に感じる七生である。
去年はこんな風に落ち着いて見て回る余裕が無かったので、そういう意味では初めての常世祭になるかもしれない。

「んふふー、みんな楽しそうだなあ。
 部活も稼ぎ時だろうし、気合入ってるもんなー」

常世学園に存在する大小さまざまな部活動も、屋台を出しているところがある。
飲食店だったり、遊戯場だったり、小物を売っていたりと様々だ。
元々学生によって運営される商店があるのだから、別段お祭りシーズンに屋台や出店を出すのは何らおかしい事ではないのだろう。
七生が聞いた話では大変容以前から学園祭というものは学生たちが主体となって催し物や屋台の運営などが行われていたらしいし、
それが島一つの規模となっているこの常世島なら、無理も無い事かもしれない。

「ちゃんと学校に許可申請してやってるだろうし。」
   
勿論、非合法の屋台もあるにはあるのだろうが。

東雲七生 > 「……んー?」

楽しそうな人たちの姿を見てるだけで、何だか楽しくなってしまう性質の七生にとってこの期間、この活気はとても喜ばしい。
お金を掛けずとも、何もせずとも楽しめる、最高のひと時だ。
にこにこと制服姿で通りを散策していたら、ふと子供の泣き声が耳に届く。
なにごとか、と思って見に行けば屋台の前で子供と店主が言い争っていた。

屋台の種類は射的。様々な景品をコルク式空気銃で撃ち落として手に入れるという、シンプルなもの。
その様子を見て、七生は、自然と得心した。
ちょっと近づいて聞き耳を立ててみれば、思った通り、景品にコルクが当たってもびくともしなかった、というもの。

東雲七生 > 恐らく、この異能超常蔓延る常世島に於いて、そう簡単に景品を持って行かれない様に"調整"してあるのだろう事は想像がつく。
他の利用客もそれを理解したうえで、お祭りだからと店にお金を落としているのだろう。
たまに何だか解らないけれどとんでもない腕前の人が設定の穴を突いて根こそぎ景品を持って行くという話も聞いた事があるが。
金銭が絡む以上、ある程度阿漕になるのはまあ致し方ないのだろう。

「ふーむ。」

しかし子供にはそんなシビアな世界の事など解らないだろう。
終いにはガチ泣きを始める子供に、店主は手に負えないと言った様子で店に戻って行った。
泣きじゃくる子供、苛立つ店主、若干引き気味の通行人。

「……譲歩してあげれば良いのに。」

ぽつりと呟いてから、七生はそっと屋台へと、泣いている子供へと近付いた。

東雲七生 > 「──なあ、どれが欲しかったんだ?」

わんわん泣きじゃくる子供へとそっと声を掛ける。
自分も昔はこんな風に上手くいかない事があったら泣いていたのだろうか。そんなことが脳裏を掠める。

───

数分後、七生は空気銃片手に景品の並んだ棚と向き合っていた。
手元には3発のコルク栓。傍らには制服の上着の端をしっかり握った子供。
──お兄ちゃんが代わりに取ってやるよ。
そう言って格好つけてみたは良かったものの、正直なところ七生に射撃の経験は無い。

『さっきも言ったけどよ、こっちも商売だ。
 子供でも爺さんでも条件は変わらねえ、悪く思わないでくれよ。』

店主が釘を刺してくる。
見れば棚に並んだのは新世代ゲーム機やら人気アニメのキャラクターのぬいぐるみやら、数百円で手に入れるには破格の物ばかり。
なるほど、子供でも手に入れられるようになってしまえば大赤字だろう。渋くなるのも理解できる。

「わーってるって、大丈夫大丈夫、異能も魔術も使わない。
 つっても、俺は魔術はからっきしだけど。」

あはは、と笑いながらコルク栓を装填する。
思っていたよりも銃の構造自体は複雑では無く、何処にでもある空気銃だ。とはいえ触るのは初めてに等しい。
“上手くやれるか”は五分といったところだろう。

異能、魔術の使用は無し。カウンターから先に銃口を出すのも無し。
それが店主が七生に提示してきた条件だった。何処までも公平を喫す為に、魔力感知計まで設置されている。
その徹底ぶりが、景品が『本物』である事を雄弁に物語っていた。

東雲七生 > 『なぁ、ナナミ。本当に大丈夫?取れる?』

子供が心配そうにこちらを見ている。
七生はにっこりと笑みを浮かべて、「呼び捨てすんなって言ったろ?だいじょーぶ。」と答えた。
お前と10センチちょっとくらいしか身長変わらなくとも俺の方が10歳近く年上だぞ喧嘩売ってんのかああん?くらいは言い掛けたが、
まだ半泣きの子供にそこまで言うのは大人げない、と自制する。まだ自制できる。

「一発は外すかもしれないけど、……ええと、大丈夫。あのゲーム機だよな。
 絶対持って帰らせてやるから、そのかわり大事にしろよ?」

ちょいちょい、と標的の新世代ゲーム機を銃で示しながら。
こくんと子供が頷くのを見て、改めて棚と向き合う。店主の指示通りに銃口と景品の距離が保たれる様に構え、狙いを定めて引鉄を──


一射目。確りと狙ったはずのコルク栓は景品の僅か上に逸れた。

「なるほどな。……うんうん、なるほどなるほど。」

横からの視線が痛い。凄く刺さってくる。
仕方無いだろ初めてだもん、と喉まで出かかったのを何とか飲み込んで、無理やり笑みを作って。

「今のは練習練習、言ったろ一発目は外すかもって。」

半ば自分自身に言い聞かせる様なセリフに、横からの視線はさらに鋭くなった。
でも、大体の感覚は掴めた。伊達に普段からあらゆる武器を使う事を想定して鍛錬はしていない。
専ら白兵武器が主だけど。

東雲七生 > 二射目。

今度は見事に景品に命中。しかしほんの少し箱が傾いただけでほぼびくともしていない。
大きく跳ね飛ぶコルク栓を目で追ってから、無言で店主を見る。首を横に振る店主。
そうだ、当てるだけじゃダメなのだ。当てて倒すか、棚から落とさなければ。

『ナナミ……本当に大丈夫なの……?』

だから呼び捨てにすんなって、と反射的に言い掛けて慌てて笑みを返す。
箱が動いた、という事はがっちり固定されているわけではない、はずだ。

しかし残った弾は一発。
連続で当てたとして棚から落とせるまでに至るには何発あっても足りないし、その頃には定価で買える額を支払っているだろう。

(……普通にゲームショップで買った方が早いもんな、それだと。)

格好つけた手前、射的で落とすことに意味がある。
半ば意地になりながら、七生は最後の一発を銃に込めつつ深呼吸をした。

異能は駄目、魔術も駄目。コルク栓一発でどうにか出来る程景品は軽くない。
でも固定されていない、当たれば動く。どうにかして景品のバランスさえ崩せれば……。

「よぉっし!」

銃を握る手に力が篭る。
普通なら気合の入り過ぎで身を乗り出しそうなところを、七生は一歩、後退した。

ご案内:「商店街【常世祭期間中】」に北条 御影さんが現れました。
北条 御影 >  祭りの出店で賑わう商店街。
その中で目についたのは果たして偶然であったであろうか。
人込みの中で目を引く、燃えるような赤い髪が原因だろうか。
それとも、たかだか射的に思い切りのめり込んでいる少年二人を微笑ましく思ったからだろうか。

ともあれ、気づけば少女は一歩引いた立ち位置でことの成り行きを見守っていた。

「…お、当たった。でもそれだけじゃダメだろうしねぇ…。がんばれーしょうねーん」

気まぐれでヤジを飛ばしてみる。
喧噪の中に紛れて届いたかどうかは分からないけれど。

残る一発の弾丸が奇跡を起こす後押しぐらいにはなっただろうか?などと思いながら―

東雲七生 > 一歩。景品から離れて、静かに距離を見定める。
凡そ3mといったところだろうか。弾の勢いを考えればそれ以上遠いと何かと危ないのだろう。
それなら一つ、手はある。

七生は呼吸を整えると、片膝を静かに上げた。
異能も駄目、魔術も駄目。それは店主が七生を異能か魔術の使い手と思って定めた事。
しかし、生憎というべきか、そのどちらも使わない事に七生はとても長けていた。

「……フンっ!!」

ぐっ、と足に力を籠めてそのまま思い切り地面を踏み鳴らす。
正確にはちょっとだけ角度を付けて蹴り付ける。
ぽかんとする店主と、かたわらの子供を他所に、七生の視線の先で狙うゲーム機の箱だけが大きく揺れた。

「……今っ!」

その瞬間を七生は見逃さない。
たとえどれだけ重さが有ろうとも、それは安定しているから効果を発揮するわけで。
均衡を崩してしまえば、むしろ重さは短所にもなり得る。

三射目。
ぐらりと傾いだ景品の箱にダメ押しをする形でコルク栓はゲーム機の箱を倒した。

北条 御影 >  唐突に地面を蹴りつける少年の動作に、店主と子供の動きとシンクロするように背後で首を傾げる御影であった。
まさかそんな―
と、思ったところでそれは現実となる。
ぐらり、と揺れた箱めがけて絶妙のタイミングで放たれた弾丸は、見事に箱を倒してみせたではないか。

「おぉー…すげー。やるなこの子。こんな小さい子でも特殊な能力持ってるってのは流石常世島って感じー」

呆然とする店主を余所に歓声を上げる子供。
得意げな顔の赤髪の少年をみて思わず両手を鳴らし

「すごいねキミ。今のどうやったわけ?」

声をかけてみる。
ただ見物するだけのつもりであったが、奇跡を起こしてみせた少年に興味が湧いたのだ。

東雲七生 > 「のーのー、今のは異能でも魔術でもないから。ね。
 ルールは破ってないよ。」

訝しむ店主に首を振る。嘘は一切吐いていないし。
ただちょっとばかり他の人より脚力が強いので利用しただけだ。不正は無い。

『やったぁ!ありがとう、ナナミ!!』
「うんうん、呼び捨てにすんなって言ったろお前。」

満面の笑みを浮かべる子供へと、こちらも満面の笑みを浮かべて返す。いい加減蹴り飛ばすぞお前。
しかし、それよりも聞き捨てならない単語が聞こえて、反射的にそちらへと振り返った。
──今、小さいっつった?

「うん?……えっと、ああ。ありがと。
 別に大した事じゃねえんだけどさ、蹴りの衝撃を、地面を通してピンポイントであそこまで流しただけ。」

ちょいちょい、と店主が回収して空になった棚を指す。