2017/07/24 のログ
ご案内:「商店街」に獅南蒼二さんが現れました。
■獅南蒼二 > 研究室と演習室と教室と図書館,たまに職員室とロビー。
それ以外の場所には殆ど足を踏み入れない白衣の男が,今日はめずらしく商店街を歩いていた。
「……………。」
しかし,この男はやはり,普段通りの場所から出るべきではないかもしれない。
なぜなら,煙草を吹かしながらあるく白衣姿は,どうみても普通ではないからだ。
彼を知る者ならともかくとして,知らぬ者から見ればえらく奇妙で怪しい男にしか見えない。
■獅南蒼二 > 目当てのものは一つだった。それは,愛飲している煙草のストックが切れたこと。
こればかりは校内や学生街で手に入れるわけにはいかない。
本土であれば通販などでどうにかするという手もあるのだろうが,研究室に寝泊まりしている獅南ではそれも難しかった。
「………………。」
買い物を終えた獅南が手ぶらなのは,商品をすでに“転送”したからだ。
手で持って帰ってもよかったが,校内に大量の煙草を持ち運ぶのはあまり体裁が良くない。
警備員にでも呼び止められたら面倒だ。
■獅南蒼二 > 「…………ん…?」
研究室へ戻ろうとした獅南は,ある寂れた店の前で足を止めた。
商店街の外れの,決して栄えているとは言えないエリア。
その一角にあるその店は,なるほどこの島では確かに寂れていて当然だろう。
それは,時代遅れのバイク専門店。
公共交通機関が十分に整備されたこの島では,無用の長物を扱う店。
■獅南蒼二 > ポケットから取り出した煙草に火をつけて,静かに白い煙を吐く。
魔術学以外には全くと言っていいほど興味を示さない男が,その店の前でしばらく立ち尽くした。
魔術学にしか興味を示さないこの男が,一瞬とはいえ,寄り道をしようかどうか迷った。
やがて獅南は「…馬鹿馬鹿しい。」と小さく呟いて,煙草を携帯灰皿へと入れる。
■獅南蒼二 > 白衣の男が,その寂れた店に後ろ髪を引かれていたのは間違いない。
しかし,彼は結局,その店に入ろうとはしなかった。
ただでさえ,新理論による魔力生成術式完成の糸口はつかめていないのだ。
検証しておきたい術式構成や,現象がまだまだ山のように残っている。
それを全て片づけたら,もう一度来てみようか?
……いや,どうせ時間の無駄だろう。
ご案内:「商店街」から獅南蒼二さんが去りました。
ご案内:「商店街」に宵町 彼岸さんが現れました。
ご案内:「商店街」に獅南蒼二さんが現れました。
■宵町 彼岸 >
この町の商店街を眠らない場所と例えたのは誰だっただろうか。
昼夜を問わず多くの存在が行きかうこの場所はまさに眠らない場所。
学生や主婦、暇を持て余したサラリーマンのような姿が喫茶店にあるかと思えば
弐足歩行でスカーフを巻いたおおきな猫が帽子と長靴の値段交渉を店長に投げかけ
その横を荷台に乗った巨大な金魚鉢の中で半人半魚の姿がガラスにぴったりと腕と顔を押し付け
楽し気に周囲を観察しながら通り過ぎていく。
誰もが平等に経済活動や遊覧を楽しむこの場所はある意味この島の表の顔の象徴ともいえるかもしれない。
その一角に、何やら異様な組み合わせの二人組がいた。
まず目につくのは2m近い痩身の女性。
さながら喪服の様なゴシック調のドレスを身に纏い、日を遮るヴェールの下には
白地に黒で蜘蛛の巣のデザインの施された仮面を身に付けている。
形よく整えられたそのつま先はよく見ると宙に数cm浮いており、
滑るように店の間をゆっくりと進んでいく。
その腕の中には対象的な姿が一つまるで幼子のように抱きしめられていた。
身に付けているのは白衣とオーバーサイズのパーカーのみで、
辛うじて髪留めがされている以外はほとんど何も外見に気を使っていないようにすら見える。
さながら家でダラダラしていた姿のまま連れ出されたかのような姿は
少し教育的にはよろしくない絵面かもしれない。
ぐったりと腕に身を預ける姿は半分眠っているよう。
「……んー。次はどこにいこぉかなぁ」
その唇から小さく言葉が漏れると同時に長身がぴたりと立ち止まる。
言葉を口にした本人は周囲から向けられる好奇や胡乱な雰囲気には一切構う事なく、うっすらと瞳を開いた。
「本屋さんはもう行ったし、お花屋さんも良いなぁ……
あ、この辺りに面白い乗り物のお店とかあったよねぇ?
何処だっけ?……忘れちゃった。まぁいいかぁ」
少し熱にうなされたような、けれど甘えたような口調で
自らを抱え上げる姿に問いかけると、ふと視線を周囲に向ける。
何処か…そう、どこかで見たことがあるような誰かがいたような気がしたから。
「……覚えておけないのに気のせいだよね」
そうかぶりを振るとまた長身がゆっくりと滑り出す。
気ままに向かうその先は、彼女が先ほど口にした二輪の自動走行をする機械のお店。
■獅南蒼二 > この白衣の男が異様だとしても,それはあくまでも人間基準での話である。
この世界における“異様”の基準はある意味で天井を知らない。
貴女たち2人に好奇の目を向ける者はいても,それは一瞬のことで,皆何事も無かったかのように通り過ぎていくだろう。
「………ん。」
そんな2人の姿に,白衣の男も目を引かれた。
だが彼が注目したのは周囲の人々とは,少しだけ違う部分であり…
「酷い有様だな,病人か?」
…そして,貴女たちに声をかけることに,何の躊躇いも無かった。
そして,奇しくもそこは,貴女が目指していたバイクを扱う店の前。
■宵町 彼岸 >
まるで湖面を滑るかのような動きは
唐突に投げかけられた声に反応してぴたりと止まる。
数秒そのまま静止していたものの
少し遅れてゆっくりと振り向き
「……えと、病気ぃ?多分?
すぐ直るんだけどぉ……なんだか治したくなーぃ?」
淡々とした口調でこちらに質問を投げかけた人物へと向き直った。
半分答えのような、半分独り言のような口調はどこか浮遊した感覚を与えるかもしれない。
そのままうっすらと開いた瞳で貴方を見つめると……
戸惑っているような何処か訝しげな表情へと変わる。
「えと、知り合い、さんだっけ?
何だか見たことあるよな、気がする、んだけ、ど……
ボクのこと知ってる人ぉ?」
普段から人の顔を認識できない以上、知り合いでもそうでなくても判らない筈なのだけれど
何処か、何かを擽るような感覚が胸をざわつかせた。
知っているような、知らないような、そんな感覚。
もしかしたら最近会って忘れてしまった人かもしれない。
少しだけ申し訳なさげな調子で告げた後、少しだけ首を傾げながら
何処か親近感を覚える服を纏った目前の人物を見つめ続けた。