2017/08/11 のログ
ご案内:「商店街」に伊都波 悠薇さんが現れました。
■伊都波 悠薇 > ――さて。今日は”七夕まつり”
暦の上では7月7日だが。祭りとして行われるのは一月遅れるのことのほうが多い。
商店街の賑わいとして、7月にも、8月にもやる場所もあるようだが。ここ常世島では――まぁ、短冊やら飾りやらはまだ飾られているようであった。
「―― 一年に、一度、想い人に合うことのできる日、ね」
どこか忌々しげに口にするそれは誰なのか。
悠薇自身にも分かってはいなかった。
いや、もはやこれは誰なのか。
悠薇と自称はするが、それは本当に? と首をかしげる。
空白と――これと称したほうが、まだましなのではなかろうか。
「くす、言葉遊びだね?」
彼女は異物を受け入れた。受け入れて混ざり合って、理解して。
理解しすぎて溶け合った。溶け合う道中に、恐れて――泣いて。
彼女は――
「織姫にでも、なれたら良かったのにね?」
ご案内:「商店街」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 > 七夕───
毎年この時期は妹と浴衣を装い、こうやって…
と思っていたのだけれど、今年は学業一本
夏休み中も講義を受けて、帰り道
ふと寄った商店街で短冊を見て、例年のことを思い出していた
「そっか…もうそんな時期だったんだ」
■伊都波 悠薇 > 静かに、ステップを踏みながら七夕の飾りを踏むように。
右に、中央に左に――リズムを取って。渡り歩く
「飾って、叶うのなら世の中こんなに辛くないでしょうに」
自分の生前も。彼女の生前も。
もっと優しく合ったのならと、くるくると回る。
優しく? いいや、違う。都合よく、あったのならと
「怖かったけれど、姉に助けを求めなかったのはどうしてかしら」
さて、改めて思考を戻す。
姉の前では絶対に口にしてあげない考察。
これにも分かっていない、弱さの一つ。
誰にも明かさなかった、理由は?
――まだ、それは姉の姿に気づいていなかった
■伊都波 凛霞 >
ついつい、呆けるように見てしまっていた自分に気付く
ぱっと携帯を見ると…まだ遅い時間ではなかった
ふと振り返ると見覚えのある姿を遠目に確認できた
声をかけようかと、ゆっくりと歩み寄って
■伊都波 悠薇 >
「姉が嫌いだった? いいえ。嫌いなわけ、無いわよね?」
自問自答、楽しそうに。貶すように。
笑みを浮かべながらステップを踏んでいく。
とんとんとん――ローハーの音が不思議と響く。
「ふふ、姉を頼りたくなかった理由でもあるのかしら。あの喧嘩が、そんなに響いた?」
自問自答、自問自答。
繰り返し、返答のない――問答。
「――英雄を頼りたくないと、初めて思ったとか」
■伊都波 凛霞 >
「はる───」
声をかけようとして、止まる
伸ばした手を引っ込め、下ろす
悠薇から聞こえる言葉が、その足に釘を打ったようにその場に止まってしまう
「───……」
少女は、何を口にしているのだろう?
■伊都波 悠薇 > 「まぁ、それはそうか。だって頼れないもんね、もうね」
あの一瞬から彼女は特別でありながら、特別の枠から外れた。
絶対の勝利と、そう願っていたものから――
「勝ってほしくないとそう願った」
助けてと言えば、救ってくれる。
そう思っていたし、そう信じても居た。
けれど、その方程式はかの日より崩れ去った。
「崩れた方程式。英雄は英雄で有り続けようとする猛者止まり。人に殺されるそれはもう居ない。彼女もまた人間で」
だからもう寄りかかっていられないと、そう思って。見えを張って、自分でどうにかしようと努力したのだろうが
「まぁ、そうね」
くるんっと、回る。ターニング。
「一日に千人を殺すなら、ならば千五百を産み落とそう。そんな気概のある女性じゃないものね。そこだけは、あの人と違うところだわ」
誰かを重ねているのは、こちらも同じ。
姉は、これに妹を重ね。
これは、姉を――
「自分一人で勝たなくてはいけないと、そう思ったのでしょうけど。あの異物は――そんな安いもんじゃなかったのでしょうよ。何人分の、毒、なのかしらね?」
今も融ける、溶かす毒。
それは抜け落ちることはなく――彼女を刻一刻と削っていく。
「あのお姉ちゃんが、何を望むかはわからないけれど――さて。私はどう動くべきかしら」
■伊都波 凛霞 >
「───」
その雰囲気に、飲まれていた
けれど紡がれるその言葉が誰を指しているのかは、明白で
そう知ってしまったら、こうやって……
「はるか」
声をかけずにはいられず──
■伊都波 悠薇 >
「――あ、お姉ちゃんじゃんっ。こんにちはっ」
急に雰囲気が掻き消えて。どこか無邪気で陽気な”あれ”に戻る。
学校や、家で出会うものに。
いつからか、今年の何処かで姉さんとは呼ばなくなり。
お姉ちゃんと口にするようになった。理由を聞けば、違うから、らしいが。
「講習終わったの? 奇遇だね? 私はお祭りの様子見に来たんだけど――今から帰り道?」
■伊都波 凛霞 >
「───うん」
質問には笑顔で応えて…
「ちょっと商店街に寄ったら姿が見えたから。
……なんか、不思議なこと喋ってたね?」
■伊都波 悠薇 > 「そうなんだ。お姉ちゃんは今年で卒業、だもんね……進路はどうするんだっけ? 島をでるの?」
無邪気に笑いながら、制服のスカートをひらひらとさせて。
「――そう? なにかしゃべってた? 七夕だから織姫と彦星のこと考えてたからかな?」
■伊都波 凛霞 >
「島は出ないよ。家のこともあるしね」
答えて、座ろっか。とベンチをチラ見
まだ日は高い、少しくらいの寄り道は良いだろう
「織姫と彦星?
天の川伝説かぁ、ロマンチックだね」
とても、ロマンチックな妄想の雰囲気には見えなかったけれども──
「卒業したら色々とやらなきゃいけないことがあるけど…、
その一つは…はるか次第だよね」
■伊都波 悠薇 >
「へぇ……でないんだ。でも勉強頑張ってるじゃない
どこかに就職? それとも、通信?」
座ろうと提案されれば、率先して座った
あしつかれたーなんていいつつ。
「そうそう、それ。ロマンチックかな? どうだろ。そうかも?」
くすくすと笑う。恋愛話になると、どうにもこの”変な笑い”が出てくる。
「私? なにするの? なにか実験?」
■伊都波 凛霞 >
「んー…異能のさ、カウンセラーになろうかなって。
結構この力に思い悩む人もいるじゃない?
そういう人の力になれたらなーって…まだまだ勉強中だけどね」
言いつつ、苦笑する
「……───」
くすくすと笑う妹…の顔をした、妹
かつての妹にはない笑い方
それももう、少しずつだけれど……
はた、と気を取り直して、表情を変える
真面目な表情に───
「ん…君じゃないよ。私の妹の、はるか。
古流武術伊都波は一子相伝。
……どちらが継ぐか、ちゃんと決めないとね」
■伊都波 悠薇 > 「へぇ、異能のカウンセラー……」
それ以上は何も言わなかった。いう必要もなし。
彼女がそれに似合っているとか、似合ってないとか。
現実的にできるとか、出来ないとか。そういった話をするのはナンセンスだ。
そういう話がしたいなら、進路相談の先生のところにでも行けばいい。
「――あぁ、それ? だったら、お姉ちゃんがしたらいいんじゃない? 私は興味ないし」
あくまで”私”がそうだと言い切って
■伊都波 凛霞 >
「…なんか、あれだよね」
妹の返答に、思わず言葉を濁す
…けれど濁していても、伝わらないし
きっとこの妹はそれを知りつつとぼけてしまう
「──まるで、もう悠薇が戻ってくることがないみたいな、口ぶり」
僅かに目を細めて、妹の顔を見る
造形は同じ、自分にそっくりな…それでも印象がまるで変わってしまった妹の顔
「ごめんね、今のはるかに行っても意味のないことだった」
■伊都波 悠薇 > 「――逆に聞くけど」
前にも、似たような話をした気がするが……
「戻ってくると思うの? 戻ってきてほしくない私の前で、それを言う?」
戻ってくるというのは――
「また、私に死ねって言ってる?」
くすくすと、笑いつつ。あぁ、可笑しいと。お腹を抱えた。
「そうだね、意味が無いね。でも聞かずには居られなかったんでしょ? まだ続きがあるんじゃない。お姉ちゃん。いいよ、怒らないで聞いてあげる。なにかあるならどうぞ?」
■伊都波 凛霞 >
心に刺さる
胸が締め付けられるように痛む
自分の言っていることは非常に利己的なことば
でも…それはきっとこの妹も、同じこと──
「…ずっと、ほんとは最初から君に言わなきゃいけないことだった…。
悠薇を、返して。あの子の人生をとらないであげて。
……残酷なこと言ってるのかな…私」
■伊都波 悠薇 >
「――返してと言われてもなぁ」
くすくすと笑う。その様子を大変おかしそうに。
「残酷なことは言ってるでしょうね。だって、戻ってくる保証のないものを戻してと口にするわけだし。私は神様じゃないんだよ?」
そう、神じゃない。
物語としてそう、造られた概念かも知れないが。そこまでのものは、ない。
「と、私が散々口にしても、納得しないだろうから。いいよ、まだ聞いててあげる。なにか根拠があって言ってるんでしょ? その根拠、聞かせてよ」
言葉で説明しても、きっと姉にはなにかの仮説があるのではと
ぐーっと体を伸ばしながら、そう訪ねた
■伊都波 凛霞 >
「…残念。根拠なんて何もないよ。
……ただの私の願望で、哀願」
小さくため息をついて
「本当にお姉ちゃんとして助けてあげなきゃいけない時に無力なんだもんなぁ…。
あの子の前では無敵のお姉ちゃんでいたいけど、もうずっとあの子がいない。
だからついつい、こうやって弱音も出ちゃうし、根拠のない哀願も溢れちゃう。
……幻滅した?
結局私もただの人間だよね、あーあ」
妹と同じようにぐーっと身体を伸ばして
■伊都波 悠薇 >
「なんだ。根拠なんてないのか」
つまんないと、言ったように笑った。
「幻滅しようがないでしょ? だって振り向かせるのは私の役目だし。振り向いてくれて、ちゃんと向き合ってくれてからならそういうことも出来ないこともないけど――してほしい?」
クスクスと、笑いながら。
「そう、人間、ただの人間。奇跡なんて起こせない、普通なんだよ。普通。実感した?」
■伊都波 凛霞 >
「根拠なんかがあったらもっと早くに詰め寄ってるって」
クスクスと笑う妹を、膝に頬杖をつくようにしてむっすりと抗議の視線
「…奇跡、奇跡か…。
奇跡が起きて、君とはるかがそれぞれ別れちゃって別の存在に…
なんて、奇跡っていうぐらいなんだからそれぐらい妄想したっていいよね」
なんのかんのと言っても、今の妹もかけあえのない存在になってしまった
残酷な言葉を向ければ胸も痛むし、それでも妹を、はるかが帰ってくること
それを諦めることはできない
「奇跡かー……」
そんなことが出来る、異能があったらいいのにな
■伊都波 悠薇 >
「――異能なんてものがあるから、そういうのに縋るのかもね?」
やれやれと肩を竦めて。
「そういうの島の外じゃ考えられないくらい。私の知ってる世界じゃわかんないくらい――奇跡って、安いもんじゃないんだよねぇ」
くぁぁっと、あくびを一つして。
「ま、頑張ってよお姉ちゃん。卒業まであと半年。跡継ぎと一緒に、カウンセラー。かっこいいじゃん?」
あえて、はるかのことに関しては触れず。未来のことだけを応援して。
「私、もうちょっと飾り見ていくけど。お姉ちゃんはどうする?」
■伊都波 凛霞 >
「…かーえる」
欠伸から、なんだか小馬鹿にされたような気がして
姉にしては珍しくちょっとすねたような表情を見せて立ち上がる
「遅くならないようにね。
父様達が心配するよ」
鞄を担ぎ直すとそう言い残して、その背を向ける
■伊都波 悠薇 >
「お姉ちゃんこそ、気をつけて?」
また余裕のある微笑を浮かべて。手を振って見送る。
「心配? 誰を? ふふ。ふふふ――」
笑って、笑って――
「もっといろんな凛霞を、みたいな。どんどんどんどん、好きになる」
なんて――背を向けて――……
ご案内:「商店街」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「商店街」から伊都波 悠薇さんが去りました。