2015/06/18 のログ
三千歳 泪 > それはさながら間欠泉のように、何の前触れもなく解き放たれた。
眠りから目覚めた水圧は地上20メートル近くまで舞い上がり、にわか雨みたいな大粒のしずくとなって大地に注ぐ。
頭のてっぺんからつま先までずぶ濡れになって、着ているものが肌に貼りつく。
水を吸った髪がみるみるボリューム感をなくしてしまって、露わになった長い耳の先がぴんと跳ねた。

「すごいすごい!! お手柄だよ! みごとな噴水っぷりだね!!」
「君のおかげでデートスポットが大復活だ!! 管理人さんも喜んでくれるはず。ありがとう助手くん! 君のおかげだよ」

池の水かさが戻っていく。早く脱出しないと!

崎守 鐡 > 「……所で、馬鹿かな?」
……コートが濡れて、ピタリとくっついてしまう前に、それを脱ぎ去る。


……その彼の身体はどっからどう見ても全身機械だった。


「………早く逃げないと、面倒くさいことになるけど……」
「走って貰うのも、面倒くさいんだよね?」

機械的な視線を向けたまま、
自分の目の前の自信たっぷりな彼女を抱えようとする。
もう片方の腕には濡れて最早意味を成さない隠れ蓑(コート)を持って。

三千歳 泪 > ――馬鹿って言った。馬鹿って言った!!

「わ。機械だ。メカメカしい!! メタルなボディが超クール! カッコいいなー男の子だなー」
「すごいけど防水加工な人かな君は。ちなみに私は濡れても平気な人だよ!!」

いるところにはいるんだね。機械。オートマトン。サイボーグ。サイバネティクス。
リビングドールのシャーリー。大切なともだちの横顔を思い出す。あの子と同じなら怖くない。

「エスコートしてくれるの? いいぞ! ゆけっ助手くん!! あっちの岸までひとっとびだ!」

崎守 鐡 > 「だって、機械とか退避させろ、って言った時、耳のコレが見えてないのかと思ったんだけど」
―その発言は凄い辛辣だった。


彼女の抱えて大量の土砂降りのような噴水の雨の中を、走り切る。
……何故かしら、自分のコンプレックスである機械の身体を全力で行使していた。

加速装置フル稼働。


「……一応俺も男だし、昔は人間だったけどね。今は立派に身体だけ人間辞めてるけど」
走り抜けながら酷い自嘲地味た言葉を漏らす。

三千歳 泪 > 「んっとねー、だから言ったんだよ。水に濡れたら困るものってさ」
「けっこう濡れちゃったみたいだけど、君は平気? 大丈夫? 何ともない?」

あっという間に世界が変わる。
目も開けていられないほどの風を感じて、次に目を開ければもう別の場所。
クラクラするなんてものじゃない。ミッシングリンクを持てあまして、頭が混乱してるみたい。

「具合が悪いところはないかな。ガタがきてるとか、調子が悪かったりとかさ。壊れたとこがあったら私にまかせて!」
「私は三千歳泪(みちとせ・るい)。16歳。フリーランスの《直し屋》さんだよ」
「報酬次第でどんなものでも直してみせる。あの噴水みたいにさ。これが私のお仕事なんだ」

崎守 鐡 > 「……慣れたから。」
此処に来る前に散々掛けられて、壊れねぇ、ヒィ、とか言われたし。
今更水の中に沈められでもしない限りは、平気だよ。もう。

「……寮に帰るまで隠せないね、参ったね、これは」
その瞳は酷く機械的で。
………何かもっと、本来の「色」があるような気がするようにも見えるだろう。

「なんでも?」
「なんでもは、言っちゃいけないよ」
その機械的な瞳は無機質に、三千歳の方へ向けられる。
「モノは直せても、簡単に直せない『コト』はあるから。」



「直ぐに直せる魔法があるなら、とっくに縋ってるよ」
その言葉は「物を修理する」という、意味では無さそうに聞こえた。



「……あんたの仕事は、否定しないけど」

三千歳 泪 > 機械の体だから表情がうまく作れない? まさか。それはどうかな。
彼の言葉はシニカルで、皮肉屋を演じているみたいな感じがする。でも、それだけじゃない。

「そっかー。モノが壊れるにもいろいろあってさ」
「だれが。いつ。どこで。なんのために。どうやって。――私には関係のないことといえばそれまでだけど」
「わかっちゃうんだ。名探偵みたいにはいかないけど、でも、モノがささやいてくることがある」
「普通の人には聞こえないくらい小さな声で、聞いてほしいって叫んでる」

「君がそうだとは言わないけれど、なにかお返しができないかとおもってさ」
「人目を避けたいってこと? じゃあついてきてくれるかな。歩いて帰れる場所なら尚更!」
「文字通りのアンダーグラウンド。私たちの足の下には秘密の地下帝国があるのだ!!」

乗りかかった船だ。整備用通路をたどっていけば彼の家までたどり着けるはず。
明るい和柄の手ぬぐいを差し出してみる。モチーフは大輪のひまわり。意外と似合うんじゃないかな。

崎守 鐡 > 「………知らなくても、良いかな。」
「俺の事も、どうして、こんなこと言ったのかも。」
表情が作れないわけではない。ただ、今の彼は「そういう気分では無かった」というのが正しい。
昔の酷かったことに逆戻りしたような、そんな気分。
…それを説明する気概にもなれないけどね。彼女は明るすぎる。
今の俺の感情からしたら、汚泥の溜まった淵から日差しを眺めているようなもんだし。


手ぬぐいを受け取る。
絵柄のモノも、酷く俺には痛かった。
投げ捨てかけそうな、後ろ暗い嫌悪の感情を、押し込めて。
「………ありがとう」


いつもの自分に戻れなかった。

三千歳 泪 > 「私が知ってるのはひとつだけ。君が優秀な助手くんだったっていうことだけだよ」
「私なんかほら! 目玉は青くて髪はこんなで、おまけに耳はとがってる。君たち都会っ子の誰とも似てない」
「でも私は私。名乗ったとおりの私だよ。お節介を焼くのが好き。人を困らせるのはもっと好き」

どこのだれかも知らない君。ほっといてくれって顔に書いてある。まだ名前も聞いてないのに。
とてもやりづらそうにしていた。誰だって立ち入ってはいけない事情がある。それはわかる。わかるのだけど。

「だから、もっと困るといいよ。今日の報酬、半分君にとっとくから気になったら取りにきてくれる?」
「…っくしゅん! それまで君は私の助手くんだ。またね!!」

寒気がして、くしゃみが出はじめてる。風邪引いちゃったかな。今日はここまで。帰って熱いシャワーを浴びよう。

ご案内:「常世公園」から三千歳 泪さんが去りました。
崎守 鐡 > 「………後でな?」

勝手に助手にされた。
………酷く、今の俺には、毒だった気がする。


……今度普段通りに平静と受け取れるか、それは分からなかった。

ご案内:「常世公園」から崎守 鐡さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に来島さいこさんが現れました。
来島さいこ >  
 
【空想よりも愛を込めて】

「――夢じゃなかったんだ。」

 昨夜の出来事を思い出せば、そう呟く。
 思い出すだけで顔が真っ赤に、口元がにへらとだらしなく緩む。

「うふふ……」

来島さいこ >    
 実際に籍を入れるのはこれからだけど。
 それでも、婚約してくれる事実がただただ嬉しい。

「これからは来島さいこかなぁ。うふふ……
 ……本当に、夢でも、私の空想でも、じゃないよね。」

 手元には、小さな箱。
 そこから指輪を取り出して、そっと自分の薬指に嵌めた。

来島さいこ >  
 ……自分の中で、安定しなかった何かが変わり、整った。
 それが何かは今は分からなかったけど、私は確かにこの時、そう感じた。

 それが体質の変化だと言う事に気付くのは、もう少し後だったけれど。
 昨日の出来事が切っかけになって、たった今、引き金を引いた。そんな所なのだろうと気付くのも、もう少し後の話だった。

「……」

来島さいこ > 「……あ、学校に行かなきゃ。
 でも、空いた時間に役所にも行きたいから、
 午後は受け持つ講義もないから休みを取らせて貰っちゃお。うふふ。」

 座っていたベンチから立ち上がり、ゆっくりと、歩き始める。

「……最初は、助けられた恩の吊り橋効果で、惚れっぽいだけだったかもしれない。
 だけどそれでも、今は、この気持ちは、偽物じゃなくて、本物だよ。
 それを確かに、伝えて行きたいな……」

ご案内:「常世公園」から来島さいこさんが去りました。
ご案内:「常世公園」に石蒜さんが現れました。
石蒜 > 公園の一角、人通りも少なく、見通しも効かない寂れた場所。
そこで石蒜はベンチに座っていた。まるで彫像のように、ぴくりとも動かない。
その体には鳥が数羽とまり、羽を休めている。目はどこにも焦点があっておらず、ただ開かれているだけだった。

ご案内:「常世公園」にメアさんが現れました。
石蒜 > 思考するのは、過去。かつてサヤだった時の記憶を振り返り、その1つ1つを否定していく。自分の中にまだしがみついているサヤだった部分を、塗りつぶすために。
「…………。」それは自分の心を殺す行為、サヤだった部分が悲鳴を上げ、血を流すのを感じる。それに愉悦を覚え、かすかに口の端が上がった。

メア > ………?

(公園を通りかかり、以前助けてくれた少女を見かける。
鳥がとまりながらも動かないのを不思議に思い近づく、
人が近づけば鳥達はどこかへ飛んでいくだろうか)

石蒜 > 人間の接近に気づいた鳥達が、慌ただしく飛び立つ。
思考をやめ、気配の方を向く。露骨に顔をしかめる。
「何か……用ですか。」

メア > ……どう、したの…?
腕、とか…

(片腕な上に様子もおかしい。
それによりが飛び立つ前に微かに笑った気がした…)

だい、じょうぶ…?

石蒜 > 「腕、ああ……。自分で、斬りました。」事も無げに、言う。そう、風紀委員の詰め所を襲撃した際、拘束から逃れるために自ら切り落としたのだった。

「私よりも、心配すべきことがあるんじゃないですか、友達とやらは見つかったんです?」努めて無表情にして、聞く。

メア > 自分、で……

ん…うん、今は…ちゃんと、病院…に、居る…よ…

(そう答え、心配そうに無い腕を見る。
治療もしないなんて、と…)

石蒜 > 「何を心配してるんですか、私はあなたの敵です。喜んだらどうですか、とんだ間抜けだと。」吐き捨てるように言う。哀れまれているようで癪に障った。

「そうですか。」それは良かった、と言いそうになって口をつぐむ、何が良いんだ。どうでもいい、どうでもいいことだ。

メア > 敵…?
…何で、敵…なの……?

(首をかしげる、自分は助けてもらっただけで
敵対なんてした覚えもないしそんな気もない…)

石蒜 > 「あなたの友人を殺すと、宣言しました。成し遂げられてはいませんが……。」逆にこちらが何故、と思う。私は明確に敵対したつもりなのに……。まるで暖簾に腕押しだ。
メア > …それは、無理……

(ふと、思った通りの言葉を口に出す。)

その、腕じゃ…出来ない……
それに、本当に…殺したり…しない……

石蒜 > 否定された、私にはもうご主人様と剣しかないのに!
カッとなって、残った右手の中に抜身の刀を呼び出し、相手の首筋に突きつけようとする。
「取り消せ、これでも無理だと思うか。」その目には、否定されたことへの怒りと悔しさが燃えている。

メア > うん、無理……

(首元に当てられる刃を握る、赤い雫がポタポタと垂れる)

貴方が、誰でも…殺す…なら…
あの時、男の…人……死んでた…

(自分を助けてくれた時、男を殺さずに気絶させたのを思い出す。)

…何に、必死…なの……?

(石蒜の目を見つめる。
眼には殺意より怒りや別の感情が多い様に見える…
人を殺す。そんな目じゃない…と)

石蒜 > 血が、流れる。このまま引けば、指が落ちる。落とせる。軽く引けば、『落ちてしまう』嫌悪感が溢れだし、手が震える。だめだ、刀が震えれば傷口が広がる。
「はな、放して……斬れて、しまう……。」

「黙れ……!黙れ、黙れ!私は……私は……。」何なのだろう、私は何になってしまったんだろう。ご主人様に魂を歪められて、人をやめて、何になってしまったんだろう。わからない……わからない……。

メア > ………

(そっと手を離す)

斬れる、心配なんて……しない…でしょ…?

(殺そうと思っている相手の怪我の心配なんて…普通はしない)

…何が、貴方を……そう、させるの…?
やりたく、ないん…でしょ……?

石蒜 > 「う、うぅ……違う…私は……。」手に力が入らず、刀を取り落とす。あれほど、人を斬ることを望んでいたのに。斬りたくない、斬ってはいけないと心のなかで誰かが叫ぶ。サヤだ、サヤだった私に決まってる。いつまでも私を苦しめるつもりだ……!

「わ、私は……享楽のために生きている!誰も、私を助けてなどくれないんだ!私も、誰も助けない!ただ自分のためだけに生きているんだ!やりたいことだけをやっている!」頭を抱え、言い聞かせるように、叫ぶ。誰でもない、自分自身に向けて、叱咤するように。

メア > 諦めると、ね……助けて、くれない…なんて、言わない……

(頭を抱え叫ぶ少女を見つめる。
この姿は他にも見た事がある、自分を守るための思い込み
そう自分を思いこませて現実を都合が良い様に受け入れる手段…
よく知っている、その手段を見て)

助け、られるか…なんて、分からない……だから…

(血のついてない方の手を差し出す)

お話し、しよ……
私に、できる…ことは……する…

石蒜 > 「やめろ!!私を、私を誑かすな……!!」優しい言葉、理解する態度、それがまるで苦痛だとでも言うように、叫ぶ。

手を差し出されれば、武器を向けられたかのように、飛び退く。
「断る……!!」目には猜疑心と恐れ。そして本当に、本当に僅かな期待。「私は……私には、友人など、必要ない!!」力の限り叫ぶ、それは本心か、それともそう自分を偽っているのか。
取り落とした刀を無造作に掴むと、茂みの中へ逃げていった。

メア > っ……

(飛びのき裂けぬ少女の目を見る
拒絶に染まりきっていない瞳を見て小さく息を零し)

…まだ、間に合う……

(茂みに消える少女の背に小さく呟いた)

ご案内:「常世公園」から石蒜さんが去りました。
ご案内:「常世公園」からメアさんが去りました。
ご案内:「常世公園」にシィレさんが現れました。
シィレ > 「……。」

人気のなくなった夜の公園、その一角にある池から、小さな人影が姿を見せた。
上半身を人型、下半身を魚の其と同じ姿をした、全長15cmほどの小さな人魚。

周囲をキョロキョロと見回すと、池の縁にある簡素な石畳に身を預ける。

ご案内:「常世公園」にスピナさんが現れました。
ご案内:「常世公園」にルフス・ドラコさんが現れました。
スピナ > 「んー……んー……」

公園を、一人の小さな少女が通りかかる。
少女は唸りながら、てくてくと公園の中を歩いている。

「せいと、きょうし……せんせい……じゅぎょう?」

学校で学んだことの復習だろうか、ぶつぶつ言いながら歩いている。

ご案内:「常世公園」にアリストロメリアさんが現れました。
アリストロメリア > (夜の公園は、静かな深い闇の中と
木々があり……特に今日の様な過ごしやすい夜は瞑想のしやすい場所であり
夜の散策を楽しみながら、足を運べば――……)
あら……?
(小さな人魚と、人影が見える)
(『今日の夜は人が多いんですのね』――と思いながら)

シィレ > 「……。」

ふと、背後にある、公園の噴水に視線を移す。
つい先日まで何かの故障で動かなくなっていた噴水だが、今は、決して派手とは言えないながらその本来の責務を全うしていた。

お蔭で、今池にはある程度の“流れ”が生まれている。
それは、池に清涼さを取り戻させたことを意味し、素直に有難かった。

「……;」

…とはいえ、“あの方法”にはびっくりしたが。

ルフス・ドラコ > 「……ここ、で合ってましたよね、確か。」

掃除用具を背に、夜の公園に現れた少女の目的は実に明白である。
たまたま知り合った生活委員会から、後々様々な地域での清掃活動を依頼したいので今夜は試しに公園でも、という仕事を振られたのだ。

「初心者向けのエリアっぽい紹介でしたが、割と広いことに気付かされますね…」

シィレ > 「!」

ゆっくりと身体を落ち着けていたその時、公園内に姿を見せる数人の人影が視界に映り、
慌てて、ちゃぽん、と。池の中に退散するのだった…。

「……;」

ここ、夜の方が人通りがあるような気がするのは気のせいだろうか…。
と、考えたり。

スピナ > 「んー……んー…………ん?」

気づいた。
池の縁にある石畳にかけている、小さな……人間?魚?
と、派手な格好の……女の人?
と、また別の女の人。

キョトンとしてたら、小さな人間みたいな影が池へ飛び込んだ。

「……ほへ?」

気になるので、池を覗く。

アリストロメリア > (人の姿が多いせいか――……ちゃぽんと水の中に
その小さな影が、逃げてゆく音が聞こえる

逃げる――……という事は驚かせてしまったのだろう
『人も多いし、怖がらせてしまったのかしら?』と思いつつ
人も多いし今日は瞑想も無理だろう

踵を返せば、静かに帰って行った)

ご案内:「常世公園」からアリストロメリアさんが去りました。
ルフス・ドラコ > 「とりあえず、ゴミを片付けるくらいしか出来ないんですけども」
取り出したるは伝統の竹箒。これを顎で体に挟んで保持しつつ
装着するのは革の手袋。前世界からの流用物なのでゴツい。

「……遊具の清掃とかもした方がいいんでしょうか?」
かといってこう暗くては見落としもありがちで困る。
ひとまずは利用者に話を聞こうと夜の公園の中、池に向かって歩いて行く。

ルフス・ドラコ > 「……ええと、そちらのお嬢さん?少しよろしいですか?」

少し離れたところから、池の淵にいる少女に声をかける。
不意に脳裏に一足一刀の間合いという言葉が浮かぶ。
(これは、私もしかすると怖がっているのでしょうか)

ちょっと竹箒を体に引き寄せてしまうのも仕方ないことである

スピナ > 「…………。」

池に手を突っ込む。
……ちょっと不思議がってる様子だ。

そして

「ん!」

飛び込んだ。池に。
静かな夜の公園に、着水音が響き渡る。

ルフス・ドラコ > (……あ、これはヤバイ)

もしかすると生活委員会の人に出会ったところからこの…怪談話は。
始まっていたのではなかろうか。

「ちょっと、え、あの…?」

ああ、今夜はこんなにも公園が静かで…――
首筋を撫ぜる風は、梅雨の時期にしてはひどく冷たく、背筋を震わせた

ルフス・ドラコ > 意を決して池に近づく、一歩一歩が重い。

「溺れたりして、ませんよね」

悪質なイメージが脳裏を幾通りもよぎる。
近づいて、目をそらしたくなりながらも、水中に目を向けた。

スピナ > 一方、池に潜ったスピナ。

先ほど飛び込んだ小さな少女を泳いで探している。
スピナは海の精霊、水中での活動はお手の物だ。

地上で何が起こってるかはわからない。
何か声はするのは聞こえる。

シィレ > 「!?」

水中にも響き渡る派手な着水音。
池の中に突入してきたのは、先程の人影の一つ。

それまで静かな夜を楽しんでいた水中が、一気に阿鼻叫喚のパニックと化す。

「…ぷはっ!?」

自身もすぐさま現場から逃げ出し、一体何事かと、少し離れた場所から姿を出した……。

スピナ > 「……んー?」

いない。
底の方まで潜り、キョロキョロと辺りを見回してみたが、先ほどの小さな少女はいなかった。
一旦、水面まで上がることにする

ルフス・ドラコ > じ、っと目を凝らすと、水の中を泳ぐ影が見える。

「え、あーえっと…そういうことなんですね」

遅ればせながら理解が追いつく。
何故この島で、公園では遊具で遊ぶものと決めてかかったのか。
いっそ優雅なまでの泳ぎに、先ほどまでの自分の怯えようが恥ずかしくなった。

「!?……え、小さい?さかn…人、ですか?」
死角からのダメ押しに、もう一度派手に驚く。
パニックがパニックを呼ぶ。

シィレ > 「……!」

まぁ予想通りというか約束された未来というか。
慌てて姿を見せた先には、もう一人の人影。

「ぁ……ぅ…っ」

相手は驚いている様子だが、それ以上にパニックになりそうになる。
もう一度水中へ逃げようかと思うが、しかし水中には先ほどの人間?がいる。

あ、これ詰んだ?

スピナ > 水面にいる少女を目視できた。
そしてわかった。身体がどうなっているかが。

人間の上半身、魚の下半身。
そのような姿の生き物は、海でも見たことがなかった。
だから、興味が湧く。

「ねぇねぇ、そこの、おさかな?にんげん?」

不思議な力を働かせたのか、水中にいる少女の声を聞き取ることができる。
そのまま浮上。水面から顔を出す。

「にんげん、と、おさかな、ふたつのからだ……ふしぎ。」

あくまで純粋な、知らないことを知ろうとする……そんな目だった。

ルフス・ドラコ > こういうとき。緊張が極限を迎えた状況で、どう動くかというのは大いに経験に依存する。

もうこれ以上どうしようもない、噛んでやるぞ!と構えた犬に対してはとりあえず引き下がるのに限る、とかつてルフスは考えた。その経験を採用したのである。

スルスルスルと奇怪な歩法で、後ろを振り向くこと無く三歩ほど下がる。

「これが……夜の公園……!」
そして十分に距離をとってから、一拍置いて。
大きく飛び退ると、公園の木々に紛れるようにして池から離れていった。

ご案内:「常世公園」からルフス・ドラコさんが去りました。
スピナ > 「え?あ……いっちゃった。」

そういえばさっき見かけた二人の女性、その両方がすでにいなくなっている。
池の中の少女の正体を追うのに夢中になりすぎたようだ。ちょっとしょんぼり。

シィレ > 「ひぅっ……」

水面で目があったのは、ツンツン頭の小さな女の子。……自分と比べるとやはり随分と大きいが。
一瞬身構えるが、どうやら手を出される様子はない。
それに……、普通の“人間”とは少しだけ違う雰囲気を感じた。

「ぁ、えと……わた、し?」

どうやら、目の前の少女は自分に興味があるのだろうか。
この状況では逃げ回ることも叶わないだろう。

「……わたし、は。……ぇと」
「“人魚”……。にんげん、は、みんな、そう……いって、る」

少し怯えながらも、たどたどしい口調で答える。

そういえば、池の外にいた人影はいつの間にかいなくなっていた。
帰ってしまったのだろうか。