2015/06/20 のログ
桜井 雄二 > むう…そ、そうか。(橘と安室の言葉に無表情に唸る)
自然体。肩の力を抜く。気楽に。(メモを取ろうとしたその肩を安室冥路の手が叩く)
……すまない。(頬を掻いて)

ああ。またな橘臨助。(去っていく彼の背中を見送りながら)
脱力か……難しいな…(とぶつぶつ呟いた)

異邦人街は俺の担当ではないからあまり行かないな。
俺は校舎と転移荒野を行ったり来たりだ。
どうやったら気楽の境地に辿り着けるのだろう。
今後も安室冥路の教えを乞わねばなるまい。
(どこかズレた物言いが続く桜井だった)

安室 冥路 > 差し出した体制のままのキラの手を取り、橘に手を振らせる
やめいや、とばかりに二本の尻尾で叩かれた
「ん、じゃあな橘くん。」

「多分元々ボス猫か何かだったんだろうね、こいつ。それでいて妖怪にまでなってるから尚更影響力があったんじゃないかな」
「まぁお陰で楽ではあったんだけど、だったらもうさっさと立ち去らせてくれよとも思った」
「こいつめ」
ベンチに降ろしたキラの頭を軽く撫でる
「あぁ、俺はよく見まわってるよ。暮らしの安全課の主な仕事場はむしろ異邦人街だからね」
「生活委員自体が異邦人の対応が業務の内に入ってるし」
「むしろ放課後は大体あっちの方にいるかなぁ、俺は」

ぐい、とそのまま桜井の肩に手を回して
「ほら、そんなくらいで謝らなくていいって。友達ってそんな気負う必要の無いものだと思うからさ」
やはりズレている桜井の発現に、これはなかなか長丁場になりそうだなぁと苦笑する
「教えを乞うとかそういうのじゃなくて、普通に友達付き合いしてく中で学んでってくれるかな…」
「あんまり身構えられるとその、なんだ。困るし」

遠峯生有子 > 「異邦人街、ってどんなとこかな…。」
 呟く。
「ああ、うんと、案外キラも異邦人なんだったりして。
 異邦猫?」
 どうなの?と猫を覗き込み。
 

「んー。なんか別にもう
 気楽にじゃなくてもいいと思うー。」
 そんな二人を見ながら、すこしゆっくり、考えながら言葉をつむぐ。
 顎に指を置いて。

「でも桜井先輩はそういうとこどうにかしたいの?
 安室先輩は気楽っていうよりかは、仲良くしたいってことなんじゃないかなー?
 勝手にそう思うんですけど。」
 えへへと笑う。

桜井 雄二 > 友達………友達でいいのか、俺たちは。
(無表情だが、嬉しそうな色の含まれる声音で)
あ、ああ。ありがとう。これからよろしくな、安室冥路。
友達か……そうか…(戸惑いながらも嬉しそうだ)

仲良くしたいのであれば。俺も仲良くする。
人と人はわかりあえる、仲良くできる。
(遠峯の言葉に力強く答える)
俺は友達が少ないからな、安室冥路が友達になってくれると助かる。

さて、それじゃ俺は帰るよ。またな遠峯生有子、安室冥路、キラ。
(そのまま立ち去っていき)

ご案内:「常世公園」から桜井 雄二さんが去りました。
安室 冥路 > 「異邦人街って一口に言うけど、ピンキリだよ。区域によってガラっと雰囲気変わるからね」
「全体的に中世風、っていうか。ゲームの世界にでも入ったような気分になるとこが多いかな」
「キラがいたところは江戸時代の日本みたいな区域だったし、中世ヨーロッパみたいなところもあるし」
「ちょっとした観光気分も味わえるから遊び行ってみるといいよ、そこまで危険っていうような事は無いからさ」
キラは違う、とでも言いたげに首を振ってみせる
とはいえ人語をここまで介している時点でもはや普通の猫ではないのだが…

「…そもそも友達ってそんな、なろうと思ってなるもんじゃなくて何時の間にかなってるもんだと謂うけど」
「まぁ桜井くんみたいな性格だと、なろうって言った方が分かりやすい…のかな」
「まぁ、これから友達として宜しく、桜井くん。見かけたら声かけてよ、『気軽』にさ」
去りゆく前の桜井の肩をまたポン、と叩いて
「そんじゃーね、また、その内。今度は飯でも食おう」
軽く手を振って見送った

遠峯生有子 > 「友達で、いいんじゃないかなー。
 安室先輩もそういってるし。
 …あ、またね。バイバイ!」
 最後は元気に挨拶をしながら大きく手を振り。
「…なんか、たぶん自分で思ってるよりは友達いるんじゃないかなー先輩?」
 その手を下ろしながら呟いた。


「んんー。この島って学校だけでかなり広くて、
 寮の近くにもいろいろいくとこあるし、
 他は危険なとこがあるらしいとかも聞いてたから、
 まだそんなに遠出はしてないんです。
 観光気分で行っていいところなんですか?
 どこかお薦めとかあります?」

安室 冥路 > 「多分、本人がそうって気付いてないだけだろうね桜井くんの場合。不器用な奴だなって思うよ、ついさっき初めて話したっていうのにそう思える辺り大したもんだよ」
姿の見えなくなった桜井の生真面目な顔を思い返して笑い

「異邦人街自体は俺ら生活委員会も回ってるし、風紀や公安の目も届くからさ」
「まぁそれこそ海外旅行にでも行くくらいの気構えを持ってれば大丈夫だよ」
「文化の違いっていうのはあるから、郷に入っては郷に従え、ってやつをしっかり心がけておけばいいよ」
「オススメ…オススメ。遠峯ちゃんの好みが良くわからないからなー…」
「俺がよく見にいくのは…ここの辺り?」
スマートフォンにマップを表示させると、異邦人街の一部を拡大してみせる
「この辺りヨーロッパ風でさ、花畑の中に風車があるっていうポートレートみたいな光景見れるんだ」
「原付きで走ってくと気持ちいーんだ」

遠峯生有子 > 「ええ、初めて話したんですか?」
 驚いたように見上げる。
「不器用だなっていうのは私も何となく思ったけど、
 なんか前から2人は知り合いなのかと思ってました。」

「あー、そういうとこなんですか。
 寮の回りはなんかいかお散歩したし、
 商店街はぐるっと見て回ったし、
 学生通りのお店もだいたい入ってみたし、
 神社もいったし、海も見たし、
 今週のおやすみは異邦人街にしようかな?」
 指折り数えたりしつつ、

「ええ、私の好みですか?
 うーんどうかなあ?
 あ、でも先輩のお薦めでいいですよ。
 詳しい人のそういうところってなんかよさそう。」
 ふむふむ、とマップを覗き込み。
「ああ、でも原付が無理ー。乗れない。」
 残念とか言いながら楽しそうに笑い。

安室 冥路 > 全然、と顔の前で手を振って見せる
「同じ委員会だし、顔くらいは知ってたけどね。あっちは有名人だし」
「まぁでもあっちが俺の事知ってたのにはちょっと驚いたよ。俺は有名なんてことは一切ないヒラ委員だし」
「なんか、こうなると桜井くん同じ委員会の人間全員顔と名前が一致しててもおかしくないかな、とか思っちゃうよね」
ああいうタイプはそういうところに真面目さを発揮しててもおかしくない…と腕を組んでうんうんと頷く

「うん、そうしてみるといいよ。危険な区域は大体そういう表示があるから近づかなければいい」
「そうじゃなければいくら危険が多いこの島っていっても早々危ない事には行き当たらないよ」
「…まぁハプニングが起こる事はありえないではないから、最低限の自衛手段くらいは持っとくべきかな?」

「原付きじゃなくても遠くないところまでは電車が通ってるし」
「確か貸し自転車もあったかな、それで回ってみるのもいいと思うよ」
「友達とか誘ってピクニック気分でもいいだろうしね」
「とかく、オススメ。他にもこことかこことか…」
マップのあちこちを指さして、ここはこう ここはどう…とある程度説明していき、暫く

「っと、ごめんもうちょっと紹介しときたいところだけどそろそろ俺も行かなくちゃだ」
「報告しないと仕事が終わらないんだった」
キラをどうするか、一瞬悩んだが抱えて
「そんじゃね、またどっかであったら気軽に声かけてよ。」
軽く手を振り、猫を伴い去っていった

ご案内:「常世公園」から安室 冥路さんが去りました。
遠峯生有子 >  ふんふん、と説明を聞きながら、
 自衛手段…最低限のそれが生有子にはない。
 防犯ブザーとかスプレー剤撒くとか
 そういうので何とかなるのかな。

「え、そうじゃなくて原付で走って気持ちいいっていうのがしてみたかったなって。」
 ほっぺたぷく。
「でも貸し自転車があるんですか。
 自転車で行こうかなー。」
 さすが土地勘があるというべきか、いくつもの説明に目を輝かせた。

「あ、なんかすいません。
 いろいろ説明してもらって、
 ありがとうございます。」
 ぺこりと礼をしてから手を振って冥路とキラを見送った。

遠峯生有子 > 「えへへ。週末楽しみだな。」
 両手の指を一本ずつ合わせ、顔の前でもじもじ動かす。

「お弁当にしようかな。
 何もって行こうかな。
 寮に確か調理室みたいなとこあったよね。
 それか、向こうで異邦の食べ物何か買おうかな。
 あ、それがいいかな。おいしいものあるかな。」

遠峯生有子 > 「…ママの邦みたいなとこもあるかなー。」

 母は生有子に、いつか自分の邦を見せたいといったことがあった。
 まだかなり小さい時のことで、
 何の機会に聞いたか忘れてしまったが。

「でもたぶん、あっても分からないよね。
 そんな超能力みたいなのはないし。」
 すとん、とベンチに座り込む。

遠峯生有子 >  携帯端末を取り出して自分でもマップを表示し、
 先ほど教えてもらった位置を確認する。
「ここと、ここと…。」
 地図にピンを立てて行きながら、周辺の施設を確認する。

「全部一日で行くのは無理かなー?
 最初はどこにしようかな。」

遠峯生有子 > ぽちぽちと情報を入れ終わると
「よしっ」といって立ち上がり、街のほうへと帰っていった。

ご案内:「常世公園」から遠峯生有子さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に朱堂 緑さんが現れました。
朱堂 緑 > 夕暮れ時の森林公園。
人気のない公園の片隅で、ベンチにぐったりと座っている男が1人。
森の草木のせせらぎに耳を傾け、瞑目し、佇んでいる。
狭い草木の回廊と化している小さな路。
向かい合わせのベンチには、誰もいない。

朱堂 緑 > ザンバラ髪のコートの男は、両手を右手をコートのポケットに突っこんだまま、左手はベンチの背に回して、瞑目していた。
呼吸は浅く、脚は投げ出され、傍目から見れば遅い午睡を楽しんでいるようにすら見える。

朱堂 緑 > 『なぁ、もういいんじゃないか』
 
目を閉じたまま、男は囁く。
口を閉じたまま、静かに囁く。
囁きは森に消え、緑に飲まれ、土に滲み込む。
それだけのはずだった。
 
『約束通り、右手はくれてやってるだろう。それの何が不満なんだ』
 

朱堂 緑 >  
                        【何故、そう思う?】
 
 

朱堂 緑 > 向かいのベンチから、声が聞こえる。
瞑目していてもわかる。それは体面にいる。
真っ黒な影。
真っ暗な何か。
それが覆い被さるような前傾姿勢で、己の膝に肘を乗せてこちらを覗き込んでいる。
それだけがわかる。
そんな気がする。
だが、きっと、そう、間違いなく。
目を開ければ、そこにはいない。
そんな何かが、語りかけてきている。

朱堂 緑 > 『最近、よくてめぇが囁きかけてくるからじゃねぇか』
 
苛立ち混じりに、男は声なき声で呟く。
それでも傍目から見れば眠っているように見えるだけだ。
 
『もういくつ「喰い」やがった』
 

朱堂 緑 >  
                        【それはお前が望んだことで、お前も知っていることだ】
 
 

朱堂 緑 >  
 
『どういう意味だ』
 
 

朱堂 緑 > 影が、嗤う。
ベンチに佇んだ影が、嗤う。
覆い被さり、口元を歪め、『滲むような』笑みを浮かべて、嗤う。嗤う。
目をつぶったままの男を覗き込んで、嗤う。
何も耳では聞こえない。
何も目では見えない。
それでも、分かる。
 
それは、そこに、『居る』

朱堂 緑 >  
                        【我思う故に我在りて、汝思う故に汝在り。それだけの事だ】
 
 

朱堂 緑 >  
                        【お前が言ったことじゃないか。「我が友人」、いいや】
 

朱堂 緑 > 影が覗き込んでくる。
闇が覗き込んでくる。
向かいのベンチの影。
その影の、相貌に浮かぶのは。

朱堂 緑 >  
                        【もう、『俺』だったかな?】
 

朱堂 緑 > 「……かはッ!! ごほっ! ごほっ!」
 
目を見開き、咳き込む。
酸素を求めるように喘ぐ。
クソが、大分、『近づいて』やがる。
 
「……何でもサボるのはよくねぇってことだな」
 
改めて、目前の、向かいのベンチをみれば……当然、誰もいない。
いるはずもない。

「チッ……」

己の左中指にはまった銀の指輪を忌々しげに睨みつけて、舌打ちする。
思った以上に『喰われて』いる。
短い期間に大技を使いすぎた弊害だ。
 
「やっぱり、喧嘩は出来る限りしないに限るな」
 
今更なことを嘯きながら、改めて額を拭う。
脂汗でびっしょりだ。

朱堂 緑 > 元々、魔術の才能がない事はわかっていた。
だからこそ慎重に学び、選び、対価も最初にデカく『前払い』したわけだが、それでもどうやら『奴さん』には足りないらしい。
まぁ、便利なものには何でもだいたい裏があるものだ。
これもようはそれだけのことなのだろう。

朱堂 緑 > 「だったら用法用量はもうちょっと詳しくいえってんだよ」
 
誰にともなく愚痴を零して立ち上がり、近場の自販機でコーヒーを買ってまた戻ってくる。
どかっと腰をまたおろし、片手でコーヒーの封を開けてちびちび飲む。

ご案内:「常世公園」にロウゲートさんが現れました。
ロウゲート > トン、とベンチの縁に飛び乗るように、猫が一匹
その体重が圧し掛かってもベンチはまるで傾ぐ様子もない、所詮は猫一匹の体重だ
猫はにゃあと猫らしい声帯で鳴いた後、ゆっくり降りて、公園で管巻く男の隣に座った

二つ並んだグレーアイが、そんな男の様子を覗き込む

朱堂 緑 > 「あ?」
突如現れた猫を見て、つい男は声を上げる。
見上げるように顔を覗き込んでくる二つの灰の瞳に、男の伽藍洞の瞳が映る。
「随分人なれした猫だな。飼い猫か? いや、公園の半野良か?」
そう首をかしげる。

ロウゲート > 猫はそんな男の声にも我関せずな調子で
ゆっくりと口を開き、そのまま。
鳴くでもなく、何か調子を整えるように間を置き、そして

「公園で昼日中からまったりか、いいご身分だな……
 正義の味方は余裕があって、楽なもんだ」
声が響いた
猫の喉からだ、その声には魔力が含まれており
猫の声帯では発音できない言葉を補助するような力が感じられる

そう発言した後前足を上げると、そのまま毛繕いを始めた
ペロペロと前足の毛並みを整える様に、舌を動かしている

朱堂 緑 > 「……てめぇ」
聞き覚えのあるその声に、身構える。
男の瞳孔が細まり、口角が吊り上る。
言葉を交わしたことは一度だけだが、忘れる筈もない。
「生きてやがったのか。酩酊の魔術師」
己が屠った、その男を。

ロウゲート > 「一体誰の事を言っているのかわからんし
 今の状態を『生きていた』と形容するのか正しいのか、それも俺にはわからん、お蔭様でな」
「前を向いて喋れよ、人間は通常猫に話しかけたりはしない
 お前のような大の男なら尚更な」
腰を下ろし、丸まった
黒猫の体は池のほとりに視線を移している、陽気に当てられ、毛並みもいい

「俺を殺したセンスの悪い魔法の調子はどうだ、ヒーロー
 アレは実に不細工なモノだったな、今落第街では最新サイバー義手による辻斬り強行が流行っている
 アレでまた悪い奴を倒し、名声を欲しいままにしたらどうだ
 そういう安小説みたいな展開は、お前等が大好きな飴玉なんだろう」

俺を殺した時のようにな…と言葉の後に暗に付ける様に、皮肉めいた台詞をつらつらと喋る
要するにこんな公園で暇を余している男を
笑いに来たのだ

朱堂 緑 > 「死人に口はなくても猫なら大丈夫。その上、人様の評判まで気にしてくれるってか。大の男がいったら確かにマトモじゃねぇな」
言われたとおり、前を向いて、ベンチに改めて深く腰を下ろす。
「ま、ぼちぼちってところだ」
何の気なしに巨大な広葉樹に目を向けて、『今は』誰でもない何かと会話を続ける。
「生憎と俺は御得意様の為についでにお前を殺しただけでな。
元々、単発でケチな事続けてる異常犯罪者なんざ専門外なんだよ。
しかも、『正義の味方』は見ての通りもう廃業だ」
そういって、左手で自分の右腕を指差す。
以前見えた時には巻いていた、公安の腕章がない。
「『正義の味方』の元締めから、お前はいらないっつわれちまったんでな。
どっかの誰かさんの呪いのお陰かもな」

ご案内:「常世公園」にヴィクトリアさんが現れました。
ヴィクトリア > ……よーう、なーんだお前。ひとりごとはいつものだがだいぶ深刻っぽそーじゃねーか。

【最近はやや行動を控えめにしつつそろそろまともに復帰するかなーと考えつつほっつき歩いてた矢先
公園でぶつくさいう変な奴と、一匹を見かける。

むろん猫が話すなどといった概念では物を見ないので、どっか見知った奴に話しかけながら猫を拾い上げつつ
補佐代理だったもののヨコに腰をドカーンと落とす】

ひとりごとにしちゃずいぶんと饒舌じゃんかよ。
なんかあったのか?
【もちろん例の当事者だとは全く気づいていない】

ロウゲート > 「死人に口はないというのは誤った見識だな、奴等は人よりも饒舌だぞ、怨嗟に関しては…
 そう、俺も僅かな魔力を使い、毎晩お前の枕元に立って、お前のせいでと囁いてやっても良い」
丸まって寝転ぶ黒猫のような不確かな生物は
チラ、とその無職を一瞥し、鼻を鳴らした

「殺される事に意味は求めていない、俺はクズだからな、理由など限りなくある
 だが、そうか…あの看板は下ろしてしまったのか
 では今のお前は何だ?ただの学生か?課題やテストに追われて日々を消費する胡乱な存在なのか」

違うな、と鼻白んだ、小馬鹿にするような口調
そんな事があるものか、とでも言うような

「戦争で命のやりとりを知った人間が、平和になった所で日常に戻れる事はない
 贖罪、スリル、信条、金銭、色んなモノを求めて、無意識に次の戦場へ向かう
 お前の顔も、そんな破滅主義と全く同じ顔をしているよ」

ただの世間話めいて、そんな風に言葉を繋げた
あの時、あの場所で凄惨に笑えた人間が、立場が無くなったから今は一般人だ、等と

「輪廻みたいなものだな…」

言える訳がないな、預言のようにボソボソと呟く、独り言のような声量

朱堂 緑 > 「死人使いらしい言い様だな。
まぁだが、確かにそういわれれば……猫になってまで小言を言いに来るやつがいるんだ。
説得力のある話とはいえるな」

自嘲気味に苦笑を漏らして、木漏れ日の漏れる樹上の天を見上げる。
温かい日差しが、遮られて尚、黒猫に降り注いでいる。

「一度でも手を汚した奴が、日常に戻る資格はないってか。
ハッ! それには……心底同意できるな」
 
猫の語るそれは、まるで悪魔の語る真実のようだった。
殺意は連鎖する。怨恨は循環する。憎悪は回帰する。
それらに関わったものは、それらに駆られてまた血を求める。
それから逃れるためか、もしくは求めるためか。
自分がそうではないと、言いきれるほどの傲慢は、男にはなかった。

続けて、また応酬というわけではないが、『独り言』を言おうと口をひらいたところで、丁度少女が……ヴィクトリアが現れ、言葉は遮られた。
 
一度だけ猫を見てから、左肩だけを竦めて、ヴィクトリアに声をかける。
 
「……まぁ、仕事疲れがどっと来ただけだ。課題も溜まってるしな」
 
ヴィクトリアにそう声をかけつつ、また猫の方を見る。
ここで正体を明かしたところで、この猫野郎にはぐらかされたらそれで終わりだ。
そもそも体が猫なんだから逃げようと思えば簡単だろう。
妙な指摘をしてヴィクトリアにまたからかわれる材料を与えるのも癪なので、黙っておくことにする。
 
コイツ、テレパシーの類とかできるのだろうかと猫に思いを寄せてみるが……当然、答えは知れる筈もない。

ロウゲート > 「看板を下げた直接の理由はお前の正義か?女かもしれないな。クク、どちらにしろ、相対的に事情があったのはわかるさ
 今のお前ではつまらない
 だけどな、誘蛾灯のようにフラフラとまたお前が何かを守りに行ったその時
 俺はお前を……」

「にゃあ」
ヒョイ、と拾い上げられると、猫らしい鳴き声で抗議した

前足を腕に乗せると、猫の体が勝手にゴロゴロと喉を鳴らす
それは習性だった

猫の魂9つまで、残り7つの魂全てで、お前に嫌がらせに行ってやるからな
と、口に出そうと思うも、それは憚られる

とりあえず、半目で隣の男を睨んだ後、ただの猫に戻るのだった

ヴィクトリア > つーかさ、疲れてるのはともかく実際どーすんのよ?
いつまでもふらふらしてるっつーワケにもいかねーだろーよお前。

ま、ふらふらしたいってのはわかるんだけどさ、お前ふらふらしてたって様子見ながら結局首突っ込むじゃん?
そんな奴が一人でいるってのは考えにくいんだよな。

来て欲しいっちゃ来て欲しいけど、さすがにボクのところに絶対来いとはいえないよ。
その場合、ボクの子飼いじゃなく、別にもーいっこ仕切ってくれよってのがお前の美味しいしゃぶり方だ
それが嫌だからもう少し後方に収まりたいってやつにさすがにそこまでいえない、友達だからよけーにな。

ただ、このまま単独ってのは無しだと思うぜー、ドコにいくにしてもな。

【まーしょーがねーと思いつつも、うちに来るとなるとどうしても暗部の仕切りをもう一個任すことになる
だいたいは落第学生周りのいわゆるあまり嬉しくない仕事だ
もともとボクの仕事は2級ID周りが多いんだからどーしたってそーなる。
正直いい仕事かって言われるとそうでもないんで、もう少し日の当たる側のがいいんじゃないかって気もしなくはない

やっと名前呼べるようになったってのにコレかよーと思いつつ、猫を膝に乗っけたままゴロゴロと可愛がりつつ
わしゃわしゃと背中を撫でる。
存外に上手い】

朱堂 緑 > 邪悪な意図の籠った一瞥を猫から受けて、一度だけこちらも目を細める。
これは、思った以上に、長い付き合いになりそうだ。
心中でのみそう呟いて、一度だけ、左手で隠した口元を不敵に歪めた。
 
それきり、今度はヴィクトリアに目を向けて、一度大きく溜息を吐いてから会話を始める。
 
「だーかーらー、それは課題がもうちょっとすんでから決めるつってんだろ。
次何をやるにしたって課題が片付かなきゃ直後に留年か、最悪退学コースまでありえるんだからよ。
心配してくれるのは嬉しいけどな」
 
そういって、以前よりも大分素直になった友人の頭をガシガシ撫でる。
その友人が今撫でているのが嘗ての敵と思うと、大分珍妙な有様といえる。
 
「まぁゆっくり決めるさ。
そのうちどうせそれも出来なくなるだろうしな」
 
先ほどのどこかの誰かとの会話を思い出して、皮肉気に嗤う。

ヴィクトリア > ……お前さ、そう言う面でもボクをなめてないか?
言っとくが、ボクの成績はほぼ最高だぞ? 国語を除いてな。
ボクの委員会がどこだか忘れてんじゃねーだろーナ?

【生徒会、しかも局長ともなれば、そもそも成績が悪かったらその地位を維持できないのだ
もっとも彼女のその成績は元々の素性によるところが大きいのだが、ともあれ、勉強で困ったことはない
だいたいこの学年はそもそも飛び級扱いでの学年である
ただし、人間らしさをもたせるためにあえて性格からくる国語の苦手科目が設定されているのだが
それでも、最高でないというだけで軒並み優秀である

チュッパチャップスを転がしつつ、撫でられれば素直に身を寄せて肩を預ける
いろんな事の発端となった当事者の猫の首を揉んでやりつつ、自身も「んぅー」と不満そうに唸りつつも嬉しそうに
体重を預けていた】

ロウゲート > 背中を撫でられると、不本意な半目になりながらも
されるがままだった
自分の意思が則っているが、この体の宿主である黒猫が
たまにこうして表層に出てくるのだ

「にゃん………」
こいつはあの小娘か……

毛並みを整えられると、不本意そうな鳴き声が響く
目元は不機嫌そうだが、猫の表情なんて皆こんなものだ
落ち着かない

朱堂 緑 > すっかり猫になっているかつての敵の有様を見て……流石の演技だと思っておくことにする。
 
「お前じゃなくて俺だよ俺。俺の成績はほぼ最低クラスなんだよ」
 
公安の仕事のお陰で一年の課題すら残っている始末だ。
期限の近づいている課題だけでも尋常じゃない量がある。

ヴィクトリア > だからそこでなんでボクを頼らねーんだって話だよバカ。
どうせお前のことだから真っ正直に終わらそうとしてるんだろばっかだなー。
お前さー完璧主義でもないくせに効率度外視で課題やってんじゃねーの?

だいたいそこまでヤバイならまず捨てるもの決めろよな。
全部やって間に合うかどうか分かんねーならめんどくさそうなものは一部切るしかねーんじゃね?
それに、別に丸写しできる部分だってあるだろ。
そういうの律儀に全部自力でやろーとしてんじゃねーの、どーせ。

【こういう手の抜き方と要領の良さはもともと上手いのだ。面倒くさがりなのでどんどんめんどくさくなくしていく
もともと素性的にも効率重視の方法は得意であり、そういった面では非常に優秀で、システム管理などは
彼女が組み上げたものが多く存在している。

そして猫の気持ちガン無視のまま、気持ちよさそうなところを探り当てては掻いてやる】

朱堂 緑 > 「守破離の精神を大事にしてるんでね。俺みたいな凡人は鍛錬をサボるとロクなことがねぇんだよ」
 
先ほどの、猫が来る前の……『奴』との一件を思い出して、苦笑を浮かべる。

「もちろん、落としていい奴はきっちり落としてるぜ。
落としちゃダメな奴しかもう残ってねぇ。
そして、そのダメな奴だけで、俺はいまアップアップしてるってことだ。
笑っていいぜ」
 
そう、おどけるようにいって肩を竦める。
 
「まぁ、マジでダメだったら俺の筆跡真似してこれ写せくらいの事は頼むから安心しろよ。
まだそういう危ない橋渡る段階じゃねぇってだけだ」

ロウゲート > 「にゃう」
いい加減にしろ小娘

俯瞰でよく自分の状況を鑑みると、悲しくなってきたのか
肉球でバシバシとその手を叩く、離せ。

男には猫として過ごす自分を遠くから見て
時々悲しくなったりする面倒な性分があるのだ
元は人間で、大の男なのだから

「にゃー…」
猫の声帯でそう鳴いて、ヒョイ、と膝から降りると

トコトコと歩いていく、振り返り、朱堂の方を見た
『精々そうやって、今は平和にしている事だな………』
等とでも言う様な視線を送る、猫だけに表情筋は乏しく、伝わらないのかもしれないが

プイ、と顔を背けると、また草むらへと走っていく

ヴィクトリア > あははは、なんだかかわいーなコイツ。
【完全に本人に意思をガン無視である。妙に上手くて気持ちいいのがまた癪に障る
ネコミミフードだけに猫の扱いも上手いのか? まさか?
じゃれあいつつ上手い具合に腕の中で転がす。

他人に自由を悪気なく奪われる悲哀。

なんか恨みでもあるのかみたいな状態だが、気づいてないだけで実際にあるのでまあ、因果応報なのかもしれない。
この程度で応報なのかどうかはさておき。

何とか膝から降りればまたナーと見送る。】

ヴィクトリア > おう、情報屋の偽造ナメんな。
【プロの仕事を持ち込むつもりらしかった】

朱堂 緑 > 物言いたげな猫の視線をみて、おおよそのニュアンスを理解して、薄笑いを浮かべておく。
あの様子なら、また会うこともあるだろう。
その時、奴はまだ敵であるのか、それとも……いや、よそう。
『どこの誰』ともしれない猫の事はそれきり頭の外に追いやり、またヴィクトリアに向き直る。

ご案内:「常世公園」からロウゲートさんが去りました。
朱堂 緑 > 「今はプロに頼まれたところで金は払えねぇからな。
そういう意味でも当分たよらねーよ。安心していつも通りにしてろ」
 
そう多少ぶっきらぼうにいって、すっかり冷めてしまった缶コーヒーを飲み干す。
公園、というか緑が多い場所は性質的に『馴染む』。
お陰で、こうやってダベっているだけでもマナの調節はうまいこといっている気がする。
新居には観葉植物でも置くか。

ヴィクトリア > ま、いーけどさ。
お前も案外自分で結構抱え込むタチだろーよ
気ィ張ってりゃ何とかしちまう能力の高さが余計そーさせんだろーとは思うけどさ。

でも、ま、こーなったのはボクの件もあるんだろーからな
そーゆー意味では悪かったと思ってんだよちくしょーめ。
【ちょっと思い出したくない件を思い出しつつ、さらに身を寄せる】

朱堂 緑 > 「そんなこたぁないさ。俺はお前が思ってるのの数倍は無能だから安心しとけ」
屑籠に空き缶を投げ入れて、またベンチに座りなおして、樹葉の隙間から見える空を仰ぐ。
「それも気にしないでいい。
俺の好きでやったことだし、最初から処分は覚悟だった。
まぁ、いつかが今になったってだけだ。大した問題じゃねぇよ」
そう、渇いた笑いを漏らした。

ヴィクトリア > ……じゃ、ボクのそばに居てくれるのか?
【きゅ、としがみついた】

朱堂 緑 > させるが侭にしてはいる。
だが、それでも、男は屹然と、目を見て。
静かな声色で、耳元でヴィクトリアにだけいった。

朱堂 緑 >  
 
「甘え過ぎるな。俺はお前を必要以上に甘やかすつもりはない。友人としてな」
 
 

朱堂 緑 > 実際、それは事実だった。
別に友人としてはいい。
だが、彼女は『求め過ぎ』る。
それこそ、際限なく。
それは、彼女の為にも周囲の為にもならない。

ヴィクトリア > ……なんだよ、結局ボクはガキ扱いで、それ以上にはしてもらえないってやつかよ。
言ったろ、距離がやなんだよ。
お前さ、わかってるくせに一定距離をずっと保ち続けるんだ……
ボクがほっとかれてるんじゃないかと思うぐらいに律儀にな。

みどりって名前呼ぶのにどんだけ苦労させてんだよ。
2人きりの時にしか呼べないじゃないか。
ボクの名前だってそうだ。ほとんどそういう時だけだろ。

汚れたからアレきりかもしれないって……そーいうふうにさえ思っちゃうんだよ、あーいうことのあとにはな。
そもそも他人に面倒見てもらえるだけの価値なんかなかったんじゃないかとか
結局、雌としてだけの性別なんじゃないかとか、どーでもいいこと考えるんだよ……

それをいつもと同じように扱われんのは……正直キツイんだ……
なんかこう、どうしても見捨てられんじゃないかとか、敢えて避けてるんじゃないかってな
そーなるんだよ。

はっきり言やぁ、根拠の無いネガティブだ。
でも、そういうのに捕まるんだよ。すごく。怖いんだ。

……あれから少したってこういうこと話せるようになったよ?
だからって、さ。

……それはねえよ。

ボクは多分何度かそういう理由で求めてたと思うし、多分言った気がする。
んで、お前の上司ですらなくなった今、それなのか?

ボクにとってお前は一番大事なときに頼れる、一番大事なときに何もしてくれない存在なんだ。
その辛さぐらいは……覚えといてくれよ。

【珍しく、激昂もせず、淡々と。
切なそうに言った。

……しがみついたまま。それ以上しがみつけずに】

朱堂 緑 > 「やっぱお前バカだな」

呆れるようにいって、溜息を吐いて、

「上司と部下じゃなくなってもこうやっているって時点で距離はむしろ縮まってると思ってくれなきゃ甲斐もねぇ」

珍しく、笑みも漏らさず、ただガシガシと頭を撫でる。
以前は、絶対にしなかったことを。
気安く。ただ、当たり前のように。

「ヴィクトリア。これがいつも通りに見えんのか。
俺が『代理』だった頃と同じに見えんのか。
気安く世間話して、真昼間の公園でのんびりしてられるような関係が……前と一緒だっててめぇはいうのか?」

がしがしと、頭を撫で続ける。
前を見て。あえて、目は合わせない。 
 
「いつまでも、御姫様してんじゃねぇよ。
お前はヴィクトリアだけど……俺と違って、まだ局長でもあるだろ。
ちったぁ、前見ろよ。折角笑えるようになってきたんだから」
 
そう、少し、熱っぽくいったところで、頭を振る。 
 
「……今のは忘れてもいいぞ。我ながら、一番大事なときに何もしてくれない奴の台詞じゃなかったな」
 
自嘲気味に、少し卑屈そうに口を歪めて、そういった。

ヴィクトリア > ……お前はボクのなんなんだって言った時に上司ですとしか答えてこなかった奴のセリフかよばか
あの時が最高に辛かったのは分かってるんじゃないか

ボクは何度か言ったよな
「普段なら」その話も納得するって

な……結局、ボクは、お前にとって何なんだ?
一番して欲しい時に一番してほしいことをしてくれたことがないのは、甘やかしすぎないってことなのか?
みどりにそこまで言われたら、ボクは単にめんどくさい奴って思われてそーでさ。

仕方ないからこうしてもらえてるんじゃないかとすら思うんだ。
お前、まだボクがいつもと同じみたいに思ってるんじゃないのか?

【……何か訴えたそうな。
いつもと同じそうでいつもと同じじゃなさそうな
激昂しないでいて、その実もっと切迫しているような

何かおかしな気がするかもしれない】

朱堂 緑 > そう、呟いてくるヴィクトリアの目を見て。
男も口元を引き締める。
彼女が不安な事はわかる。
それを、安易に慰めれば納まることもわかる。
だが、それは解決にならない。
更なる泥沼に彼女を引きずり落とすだけだ。
 
だからこそ、これはもう、仕方がない事なんだろう。
 
「何がいいたい。ヴィクトリア」
 
二人きりだからこそ、そう聞いた。
静かに。
ただ、静かに。
 

ヴィクトリア > ……お前が嫌なら、ボクは遠ざかるし、こういう求めかたも甘え方もしねーよ。
嫌じゃないって言うなら……ボクはどう求めればいい?
言えばわかるっていうくせに言っても分かってもらえないんだから、直接聞くしかないだろーよ。

……ボクがお前に抱かれたいとかコレ以上の関係を望むって言ったら、笑うか?

正直、ボクはそこまで切羽詰まっておかしくなってんだよ。
だいたい、こんな状態のボクにそこまで言わせんな
いっつもエスコートする側のくせしてさ。近すぎてわかんないのかよ
ボクはお前に言って欲しかったんだよ。

【いつもそうだ。
この距離から踏み込んでこない。
踏み込んでこない以上分かっててやってるはずだと思ってるのにわからないとか更に突き放されたり
向こうで勝手にこっちの状態を規定されて一番つらい時期にまで放置されたら、ふつうじゃいられなくなる

だから、こんな状態になってるのに。

何度言ったところで「普段通り」の解釈をされる
それはたしかに普段からそれを連呼しているボクにも責任がないとは言わない

ただ、このままの状態で扱われたら、たぶん、ボクは……麻美子の時のようなことになる

だから今言うべきことは言っておきたい】

朱堂 緑 > 男は、押し黙る。
静かに、時間を置く。
ヴィクトリアのそれは、大変な勇気だったろうと思う。
それを言うために、彼女はきっと色々苦悩したのだろうと思う。
男も、それをはぐらかしてきたとは言わない。
全く気付いていなかったとまでは言わない。
だが、遠ざけていた。
確実に遠ざけて、逃げていた。
その結果、追い詰められた。 
あの、調査部本部に呼び出された時と、同じように。
 
男は、目を見ずに、答えた。
 
「笑って済ませたいといったら、どうする」

見れなかった。
彼女の目を、見れなかった。

「俺はお前の『友人』だ……それ以上でも、それ以下でもない」
 
その目を、見れなかった。

「これ以上は、近寄れない。ここが、ヴィクトリアと俺の……『一番近い距離』だ」
 
 
最後まで、見れなかった。 
 

ヴィクトリア > 【しばらくの沈黙。
……そして涙。
それを、緑の服で拭う。

わめいたり騒いだりはしなかった。】

…………………………ま、そんなこったろうと思ったよ。
ボクが一番つらい時期に遠ざけやがったからな。

……だから、つらいつらいって言ったら、いつもこうだって扱いされたしな。

言ったろ、ボクは捨てられたのかと思ったみたいなこと
なんでそうするんだって
ボクはお前のナンなんだってずっとずっと何回も聞いた

ただな、ボクでも許せないことが2つある

ひとつは、ボクが何度も確認してるのに、まるで信用して良い態度をとり続けたこと
ひとつは、ボクの目を見てないことだ

はっきり言うと、コレについては時期的なことも考えりゃ……お前さ

陵辱された女の子に「コイツだいたいこんなんだし大丈夫」
困ったことがあったら俺を信用しろ

って言い続けるようなもんだって覚えとけ
ボクは何度も普通じゃないって言ったはずだし、その点については複数回確認したはずだ
だからボクの目を見れないんだろーがよ。

ついでに言うとその件で麻美子まで泣かせたろ?

公安捨てられて、ボクのところじゃなくあいつのところに行った時点でこの可能性はボクだってわかってんだよ。ばか。
長年付き合ったボクと同じくらいとか当たり前のように言いやがって。

この2点はボクに、そして、ごまかした件で麻美子には埋め合わせしろよ?
………………………………友達だからな。

【それ以上は何も言わなかったし、変に騒いだりもしなかった】

朱堂 緑 > 「……いったろ、俺はお前が思ってるより無能だし、口下手だともな」
 
そう、頭を下げた。
実際、それは、正しい主張で、正しい物言いだとは思う。
男は、それはそれでヴィクトリアの為とは思っていたところはある。
それは本音だ。
一人の友人として、己を律してほしいと願ったからこその部分は間違いではない。
だが、それすらも……逃げの言い訳だったのではないかといわれれば、否定はできない。

麻美子を泣かせたことも、彼女の読み通り事実である以上、女には恐らく一生勝てないのだろう。
 
もしかしたら、そういうところまで見抜かれて、公安委員会はクビになったのかもしれない。

「悪かったな、ヴィクトリア」

その謝辞の言葉には、あらゆる意味が詰まっていた。
それすら逃げと言われれば、それはもう避けられまい。

ヴィクトリア > ……悪かったな、じゃねーよ。
むしろ家族以下だったことがボクには驚きだよばかやろう。
せめて最悪でも妹だと思ってたよ……それが友達どまりだもんな。
そりゃ食い違うに決まってるじゃんか……

だいたい、無能でも口下手でもいいんだよ
嘘ついて、こういった話すんのに目も見らんないよーになるよりかそのほーがマシだろ。
ボクはそういうのが、つらい。

友達って言いながら親友レベルの話が出てこないとことかな。
そういうのさ、だいぶ堪えるんだぜ……?
ま、今はそっちも弱ってるだろーからこの程度で勘弁してやる

……麻美子んところでマミって癒やされてきやがれこのくそやろう。

【マジで分かってなかったコイツ。その辺が許せねえ。
ボクが長年気を許すってのがどういうことかまるで分かってない
こっちは信頼してたってのに向こうは付き合いだってんだからな……
何がボクと同じくらいだ……あの言葉、麻美子じゃなくてボクを持ち上げたんじゃねーかこの野郎
まさか友達止まりだとは思ってなかったよ……

でもそれでも……友達だからな。
ゆるさないと友達ですらなくなっちゃうからな……】

【それでも、どうしても涙が止まらなかった】

朱堂 緑 > 泣かれると、もうそちらを見ずにはいられない。
しんどいに決まってる。辛いに決まってる。
だが、これ以上目を背けるのは、もっと辛かった。
それから逃げたのだとすれば、それはそれで滑稽な話だ。
 
「それも、悪かったよ……弱み見せなかったのは、ごめんな」
 
つい、手を伸ばす。
欺瞞かもしれない。
それでも、手を伸ばして、ぐしぐし頭を撫でる。
 
「……お前を妹にしたいところはあるよ。
それくらいの距離でいたいって、考えたことはある。
お前もそのほうが、落ち着くだろうしな。
だけどな……お前も俺も、それだと多分、それに甘える。
それに甘えて、出てこれなくなる。
ずるずる落っこちて泥沼に沈んでそのままだ。
そういうのは……『友人』としても、『兄貴になりたかった誰か』としても、看過できなくってな」

まぁ、ようするに、かっこつけたかったわけだ。
所詮、男の子ってことだな。
そんな、自嘲が胸中に浮かぶ。
 
「男は身勝手なもんでな。
好ましい相手には一人でいれるようになってほしいなんて、勝手に思っちまうんだよ。
俺みたいないつ殺されても文句いえないような仕事してると、特にな。
いい訳にもならねぇけどな」

そんな風に、以前なら絶対に口にしなかったような事を、口にした。
それすらも、信頼させるための逃げだろうか。
もう、それは……自分では、わからなかった。

ヴィクトリア > ……お前ん所の家族はそんなずぶずぶな関係しかないのかよ。
さすがにショックすぎてまともに対応できねーって言ってんだよ分かれよ。

これ以上他人行儀だってんなら、マジで友人も危うくなるから覚えとけ…………ばか。

【その手は払われた
つまり、触れたくても触れない、慰めたくても慰められない

お前はその距離感のまま振り回したんだと気付けってやつだ】

…………っ
独り立ちってのは、一人じゃ出来ねーんだよ、誰かから離れるんだからまず一緒になる方が先だろうが
それを突き放しといた挙句嘘までつきやがったうえに綺麗事にするためにさらに嘘までつくのかよ。

麻美子んとこにでもドコにでもいっちまえ。
今日はもう……ムリ。

【立ち上がると、静かに泣きながら公園を後にする。
たぶん、返事と、友人と、言い訳で3回は傷をえぐったのは、わかった。】

朱堂 緑 > 去っていく背中を見送りながら。溜息を吐く。
自嘲でもあり、諦観でもあり、苦悶でもあった。
振り払われた手を眺めて、ベンチにまた沈み込む。
 
「最後のは本音だぜ。御姫様」
 
もし、それで伝わらないのなら、それはつまり……そういう事なんだろう。
彼女は、一人じゃ出来ない。
一人では、いられない。
 
「俺がなんで誰かさんに『入れ込んだ』のかなんて、結局それだってのによ」
 
たった一つの本音すら、綺麗事に聞こえるのだとしたら。
やはり、『この距離』が『適正』なのだろう。


「難しいもんだな。日常ってのは」

静謐な納得を胸に立ち上がり、その場を辞す。
ヴィクトリアとは、反対の方向に、ゆっくりと。

傾き始めた夕日が、互いの背を照らしていた。

ご案内:「常世公園」から朱堂 緑さんが去りました。
ご案内:「常世公園」からヴィクトリアさんが去りました。