2015/07/22 のログ
■谷蜂 檻葉 > 点数を宣言するその様子に、膝をついて持っていた鞄を漁る手を肩ごと落とす。
「―――どっちがどっちよ。
……はぁ~~……心配して損した……。 ん、ソレぐらいなら大丈夫かな。」
言いながら、デコピンを打つ。
「この馬鹿、やるならしっかり決めなさいよね。」
スマッシュを外したことか、その後のことか。 案外、どっちもかもしれないけれど。
呆れに混じって、嗤うのではない笑みを込めて爽やかな笑顔を見せる。
「アレで決められたならカッコ良かったのに、やっぱり慧は慧ね。」
■渡辺慧 > 「うげ」
デコピンを受けると呻く。
上体を起こした体勢を、逆へ回転させ、その場に足を広げて両手をつき座り込んだ。
「いーじゃんかー……誰も見てねーと思ったのに」
なんてぶーたれたような言い方だが、楽しそうな顔。
正直なところ。
自分一人でやっているのだから、どっち側でうまくやろうが関係なかった。
ただただ。
これが、おもしろそうだったから。
理由としてはそれだけで十分だろう。
「……とーいうーかー。檻葉なんでいるん?」
まるで今更の如く。
というか聞きようによっては、失礼な文章だが。
単に不思議そうな顔をしていることから、まぁただの、なんとなく。
■谷蜂 檻葉 > 「休憩よ、ジョギングの。
あれ?やってるって言わなかったっけ海行った時に。」
最近始めたのよ、と。
まだ取りきれてない体に残る熱を締めていたジャージのファスナーを少しゆるめて取りながら説明した。
安心したからか、気にしなかった暑さを感じるようになってしまって気持ち悪い。
「まぁ、だからすぐ帰るんだけど……。
それよりもさっきの一人テニスっていうか、あの速さ。 どういう事よ。」
と、少し身を乗り出すようにして問い詰める。
「―――”あの時”より、全ッ然早いじゃない。あれでも、全然本気じゃなかったってこと?」
それはもう1月は経った、『手合わせ』の事。
あの時自分も異能を使って全力を尽くしたが、届かなかった。
その速さよりも、テニスボールに追いつくその速さはもう一段階上ではないのか。
……檻葉はそれを聞きたかった。
■渡辺慧 > 「なるほど」
失礼ながら。
いや、失礼というかデリカシーを期待するだけあれかもしれないが。
なんとなく檻葉のお腹付近を見つめながら頷く。
微妙に触っていい? みたいな顔してるのは気のせいだろう。
殴られたいのだろうか。
「んえ?」
なんのことについてだろうか……と、思考するが。
あぁ、今の、ということだろう。
「全力……つーと、違うんだよねー」
「なんつーか、ギア、みたいな感じ」
倍率……は自分で変えられるのは確かだ。
だけれども。
「一回さ。速くしすぎて、ぶっ倒れたことあって」
そして、それは。能力を行使して継続する時間にも関係ある。
そう言った旨を説明しながら。
つまり、だ。
ある程度、速くすればするほど、継戦能力、といえばいいのだろうか。
それがなくなる。
限界自体はない。だけれども、その代償が、原因不明の昏倒となれば。
「だから、あの時は。あれが一番、速い選択だったんだよ」
――冷静に考えてみれば昏倒するかもしれないそれをこんなバカなのに使っているのだから、要するにばかなんだろうが。
もちろん。ある程度は弁えてやっているのだけれど。
■谷蜂 檻葉 > 「そう……よっ!」
パカン。
と、きれいな音がしそうな程―――実際はゴッっという鈍い音だったが―――素晴らしいスイングで慧の頭に拳骨が落ちる。視線が行った先に気づいてから1秒足らずの反応速度。 その顔は少し赤らんでいた。
疑問には、ゆるゆると。
彼なりの解釈……自己理解の解説に、首肯で相槌を取りながら静かに聞く。
『能力の使いすぎて倒れたことがある』という事実には、少し口を開いたが、そのまま何も言わずに閉じた。
今は、聞きたいことの結論が聞きたかった。
そして自分の抱いた疑念が、意味が無いものだと納得すると、僅かに見えた視線の険が取れた。
「……そう。
それじゃあ、今の一人テニスは限界までどれ位だったのかしら。」
スッ、と。
拳骨を再び構える。
■渡辺慧 > 「ひぐぅ」
うめき声を上げ乍らも、微妙に手を伸ばしかけてるから本当に懲りない。
そういえば海水浴場でも、そもそもそのまま見たが……。
なんて思い返しながら、頭をさする。
……なぜ、そのようなことを聞いてきたのか。
よくわからないが、何を彼女は求めていたのだろうか。
今の説明で、何を納得したのだろうか。
分からないし、今自分は、何事にだって深入りはしない/なかった。
ならば、これ以上何を言うこともないのだろう。
だが、聞かれた質問に関しては。
「え?」
んー……と思い返しながら。
肉体的な、分かるほどのそれが来るわけではない。
ただ、何かが軋むような感覚が、使いすぎたときは来るのだ。
だけれど、まだ。
今回は――。
というか、その握られた拳はなんだろうか。
いや、びびってないですよ。
びびってないし、しっかり答えますし。
「は、半分」
何が半分か、あからさまにぼかした気がするが、相手が解釈してくれればいいのだ。自分は悪くない。えぇ。
■谷蜂 檻葉 > 「―――なら、よし!」
コレで聞きたいことは聞いた。と。
握った拳を開いて、少しついた砂を払って立ち上がり
ぐっと伸びをしてからコートの端に立てかけられているコートブラシ 通称「トンボ」に視線を向ける。
「もう終えるならコートをならすの手伝うけど、まだやってく?」
■渡辺慧 > ――やっぱり、何が聞きたいかは、分からなかった。
だけれども。
きっと……今のでよかったんだろう。
「ん、ありがとう」
「終わる、けど」
「…………そうだね。手伝ってもらっていい?」
正直、自分でやるから。と言おうとしたが。
……これも変化か。
パン、と足の汚れを叩いて払いながら。
トンボ、それに近寄って。
手に取り。
「そしたら、お礼に、帰り道エスコートでもさせてもらおうかな」
そうやって、笑った。
■谷蜂 檻葉 > ―― 一瞬でも抱いた、あの暗く濁った気持ちは、隠せただろうか。
あの時に本当に欲しかった今を、この関係が持てている今を続けていたい。
きっとその感情は誰しもは持ちえる、しかし私だけの『鎖』だ。
変えないために、まだ私は変わらなくてはいけない。
でも、そんな感情を抜きにしても―――
「あら。それはまた、夜道は頼りになりそうなトナカイさんね。」
自分の鼻をポンポンと示して、擦りむいたままの彼の鼻を揶揄してクスクスと笑う。
1面だけのコートを整備するのは、2人なら大分早く終えられるだろう。
そう時間も掛からずに、スポットライトに照らされたステージは無人になった。
ご案内:「常世公園」から谷蜂 檻葉さんが去りました。
■渡辺慧 > ――揶揄された、その鼻を、さすりながら。
「せめて人間に例えてほしかったけどね」
そう言って苦笑しながら――――
ご案内:「常世公園」から渡辺慧さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に四十万 静歌さんが現れました。
■四十万 静歌 > みーんみんみんみん……
セミの声がうるさいというか、
暑さをさらに加速させるので、
なきやまないかな、
なんて思いながらべんちに座って、
空を見上げて、
ペットボトルのスポーツドリンクのみながら、
汗だくになって空を見上げる――
■四十万 静歌 > 「――暑い――」
でも、こんな時こそ、絶好の運動日和と思って、
公園を走り回っていたわけだが、
なんていうか、
異様に疲れたのである。
こんなに暑い中黒マントつけて走ってるからだよ、
というのは言わずもがなである。
■四十万 静歌 > こくこくと、スポーツドリンクを飲んでいたが――
やがて中身がなくなるときが来る。
逆さに振っても一滴も零れ落ちてこない。
がっくりと、ベンチに深く沈みこんだ
■四十万 静歌 > 「涼しくなって欲しいです……」
それはもう切実に、
とため息まじりにそんな事を。
ちょっとずつベンチの日陰になっている部分へと移動するだろう
■四十万 静歌 > 帰ったらシャワー浴びようかなぁって思うけど、
何かそれすら億劫になるような……
みーんみんみんみん……
それはそれとして。
「うう、セミの声が風鈴の音だったらよかったのに――」
なんて益体のない事を考えて呟く。
うだる。
実にうだる。
暑くてやる気がでなくて、
思わずベンチの上でぐでっとしてる。
何か横になりたくもなってきた
■四十万 静歌 > ああ、横になりたいなと思いつつも、
なんていうか、
それこそ悲報、学生が公園で死すなんて事になりかねない。
重いからだを何とか誤魔化し、
立ち上がり、
女子寮へと帰っていくのだった
ご案内:「常世公園」から四十万 静歌さんが去りました。
ご案内:「常世公園」にヘルベチカさんが現れました。
■ヘルベチカ > がり ごり ばり じゃり ぎり しゃりしゃり。
蝉の声から一瞬だけ、切り離された。
薄青色の棒アイス。齧り、中に入ったかき氷を噛めば、
口内から頭蓋へ、咀嚼音が大きく響いて、聴覚を塞ぐ。
木陰のベンチ。噴水がきらきらと光を跳ね返すのを、
暑さに負けて気だるげに、眉間に少し皺を寄せながら眺めて。
嚥下すれば、戻ってくる蝉の声。
すぅ、と息を深く吸って。一度留めてから。
「夏だァ―――――――………」
夏だ。
■ヘルベチカ > 「来いよ秋ィ――――…………」
気が早い。
せめて三ヶ月は準備のお時間をいただきたい。
できれば四ヶ月あると安定した品質の製品をお届けできる。
そんな発言をしながら、緩く吹く風、温んだそれに身を預ける。
遠くから聞こえる車のホーン。
蝉の声に混ざって、まるで
「車ゼミ、って、居そうでなんかやだな」
緩く背後を振り返った。
比較的大きな樹。己の上に影を落としている。
その中腹に、ミニカーのような車が張り付き、鳴いている所を想像して。
「お子様大喜びだけど、飛ぶとぜったいグロい……」
げんなりしつつ、アイスを齧る。
ご案内:「常世公園」に秋尾 鬨堂さんが現れました。
■秋尾 鬨堂 > 「呼んだ?」
徒歩である。
買い物袋には、山盛りのカップアイス。
山盛りの、カップアイス。
夏そのものといったポロシャツ姿ハーフパンツ。サングラスも眩しい。
あまりにも行楽ルック。
だが…徒歩だ!
■ヘルベチカ > じぃじぃと唸って煩い蝉の声。
鼓膜を強く震わせるだけの力が、あの小さな体にあるというのは、
中々に尊敬できないではないような気がしないでもないかもしれない。
が。
「駅前で女子ひっかけるためにライブするのと、やってること同じじゃん……」
適当な発言でばっさり。
そして、かけられた声に、樹木を眺めていた視線を正面に戻して。
■ヘルベチカ > 「それずるくねぇ!?」
■ヘルベチカ > 誰の発言だったのかといえば猫耳の少年の発言であるが、
色々な思いが込められていることは否定しきれない。
ここではずるい発言は『アイスたくさんあってずるい』の意とする。
※諸説あるため今後教科書記述が変更される可能性があります。
「うわーめっちゃカップアイス買ってるあっ歯磨き粉ある」
秋尾の手元、下げられた袋を見て、教員の財力に戦きながら、
自分の手元のアイスをがりがりと齧って。
「なんです?アイス持ってHAWAIにでも旅立たれるんです?」
■秋尾 鬨堂 > 「?」
カップアイス…そう、コーヒーの黒さも眩しいそれを無造作に開けて。
小分けの袋にこれまた山盛りの木スプーンを使い、しゃくりと一口味わってから。
「?呼んでなかったかい?」
同じ顔をする。
この炎天下の中、あまりにもまだるっこしい動き。
完全に、アイスという富を持てるだけ持つ者の余裕―!
「チカ君が僕を必要としているなんて珍しいナ、と思ったんだけど…」
しゃくしゃくーっと。
「残念ながら、クルマが熱さでやられたんだヨ。グアムとはいかずとも、海を見たかったのサ」
■ヘルベチカ > 「うわあああ中央のミルクを最初に食べずに置いておいてるぅぅぅぅ!!!
しかもアイスに感動の様子が一切見られないぞこの教師!!!水に飢えない日本人か!!!!!!」
がりがりがりがり、と手元のアイスを齧って苦情の表現。
すればするほど己の余命が短縮していることに、少年が気づく様子はない。
「いや、別に秋尾センセーの事は呼んでないんすけど……」
なんのことや、と眉間に皺をよせて、一瞬考えてから。
「秋早く来ないかな、ってんで、来いよ秋、って言ったんですけど、
この勢いで教員呼んどったら俺指導室行きですよね?無罪です」
呼んでません、呼んでません、と顔の前でパタパタと、
アイスを揺らして振って。
棒ごと手から離れて、飛んだ。
「あっ」
あっ。
「あっ」
べしゃり、と音を立てて地面に着地するアイス。
「うわあああああああああああああああああああ」
猫の耳が、ぴぃん、と立って、少年はアイスの前に四肢をついた。
「あ……ああ……」
地面に落ちたアイスを拾い上げて。
近くの水道まで歩いていって、洗い流して、帰って来て齧った。
「いや、特に先生必要というわけではないんですけどね。
なんです?海行くんです?先生車のらなくても泳げるんです?」
■秋尾 鬨堂 > ひゅーん。ぺと。
擬音で表すならばこれだけのこと。
たったそれだけのことが、少年に悲劇をもたらした。
だが見よ。
そのいじましくも美しいもったいない精神がとらせた行動を、
2つ目の切りレモン入り氷菓のレモンをどう処理するかの思索に費やしてスルーした男の姿を。
「大丈夫。僕、結構喋りやすい大人であろうとはしてるんだヨ」
アイスの袋を揺らしながら。この絶対的優位にあるからこその言葉。
「誰も愛称で呼んでくれない、って指導室で嘆いていた教員もいたしネ…」
そして…レモンを絞って、隅にどけた後。
フルーツがぎっしりと詰まった真っ白いカップを、今消費しつくさんとしているカップの下に装填。
これは…1つのアイスを完食すれば、即座に次に取り掛かれるロケットアイスの構え!
「昔は湾岸のドルフィンとも呼ばれたものサ」
どう見ても今の姿は氷塊を満喫する真夏のペンギンだが。
「チカ君こそ、この夏に海行かなくてどうする気?クルマで繰り出してナンパとかするのは若者の特権だヨ」
■ヘルベチカ > ビバリーヒルズの大富豪はアフリカの孤児の事を悼むが、
目の前の乞食のことは気にも留めない。
貧富の格差による認識の歪さが、この常世学園でも存在していた。
小石の形に窪んだままのアイスを齧りながら少年は、
「ははぁ、そういう意味では、確かにさっきの発言を聞いてたのが秋雄先生だったのは、
ラッキーでしたよ。もし他の先生だったら多分、
くそ長い説教を聞かされた上で、この暑い中に
だらだらと意味のないゴミ拾いとか勤労奉仕させられてました。
せばすちゃん」
からからと笑いながら、ロケットペンシルの如く次々に新しいアイスが装填される秋雄の手元を眺めて。
「湾岸のドルフィンってそれ陸に打ち上げられて自重で死んでません?生臭くないです?」
齧り続けるうち、アイスの先端から飛び出してきた木の棒を、
がじがじと齧りながら。
「海、行こうかと思ったんですけど、なんか場違い感半端ないっていうか……
覗いたら明るい青春めっちゃキラキラしてて殺鼠剤掛けられたっていうか……
いや、俺が車乗ってたら風紀案件では?FREEな環境から逃れられないのでは?」
■秋尾 鬨堂 > 「おっと、そう思うでしょ?だけどネ、やっぱりそれも表裏一体。」
真っ白いくまの描かれたカップが空になる。
既にロケットが固形燃料を燃やし尽くした如く重なる空きカップは3つ。
「いい人…まあ話のわかる大人のフリをして、子供を食い物にする輩かもしれない」
それを、ゴミ箱まで歩いて行き捨てる。その一歩一歩に、揺れるアイス袋。
物量はまだまだたくさん。絶望的な光景。
「しっかり見極める目なんて、この夏に浮かれた頭じゃろくに働かないしネ」
果たして言葉は、届いているのか?
そして言葉は、心から発されているのか?
「ひがむくらいでちょうどいい…とは言わないけど。あれえチカ君まだ免許取れないの?」
今、極彩色の緑色にチョコチップが混ざったカップが―開く!
■ヘルベチカ > じわじわと、かりかりと。
残量の少なくなったアイスを惜しむように、僅かずつ。
一口の量を少なくしても、アイスは減るだけ。増えやしない。
時間を掛けすぎれば溶け出すだろう。
既に、アイスシェルに包まれた中のかき氷部分の結合が緩い。
終わりは間近まで迫っていた。
「いや、別に、先生のこと信用してるかどうかとかじゃなく、
説教喰らわなくてよかったな、ってだけの話なんで……」
頭の上、少年の猫耳がぴくぴくと震える。
「ていうかそもそも、あの改造車を乗り回す教師信用するって、おかしくないです……?」
圧倒的なアイス物量差。戦線は徐々に崩壊を始めている。
教員の大腸が音を立てて崩壊しない限り、勝ち目は無いだろう。
「その『自然に驚いただけだヨ アイヤー』みたいな視線を
グラサン越しに投げるのやめてもらえます!?」
歯磨き粉を目前に、17ですよ、と溜息とともに肩を落として。
「ていうか、免許とっても、この島じゃ車いらないですよ、これ。鉄道網半端無いし」
■秋尾 鬨堂 > 「えー?傷つくなあ、でもまあ今まさにお説教しちゃったしなあ」
こりゃだめだ、と額をぺちん。
カップによって充分に冷やされた指先が心地よい。
「チューンドカーだヨ。改造車、だと印象が良くないからネ」
「もちろん要るか要らないかで言えばいらないサ」
「でも、このアイスと一緒。」
「アイスがなくても、木陰にはいって水を飲んでいれば死なずには済む。費用対効果でいえば、アイスをこんなに買い込む必要なんて無いネ」
自覚があった!そして、カップばかりと思われたその袋から姿を表したのは―
「だけどこんな夏の日に。アイスを食べないなんて、面白くもないじゃないか」
1本60円の憎いやつ!氷菓の王様!がりっとした棒アイス!
「自由にアイスを食するように、自分だけのクルマで、遠回りなドライブを楽しむ…」
「あと女の子にもモテるしネ」
■ヘルベチカ > 「1分以内にすむ話なら、小言程度なんでいいですよ。
炎天下で30分とかやられると、
『先生それつらくない?自分も辛くない?あっこの教師アイスノン首に巻いてやがるクソだ』
ってなりますけど……」
げんなりとした表情。経験談なのかもしれない。
しかし、今は少年が居るのは日陰、ベンチの上。
カップ麺も作れない程度の時間、温い風に吹かれながらお小言を食らうくらいの余裕はあった。
「まぁ、確かに水と塩だけでなんとかなるといえば」
言葉が止まった。
この野郎、俺の救世主をデザート代わりに~~~~!
漫画であれば画風が変わっている。
けれど口に出さない。何故なら秋尾教諭の授業をとっているから。
猫乃神ヘルベチカは権力の猫である。
「…………モテるんです?」
相手の左右を確認するように視線を振った。
■秋尾 鬨堂 > 「……カッコ良ければネ」
それは、クルマの魅力のことか。それとも、男としての魅力か。
少なくともその左右を見れば、クルマが無ければダメということはわかる。
だが、断言した。
アイスバーをがりがりと細くしながらも。
モテる。
この夏をフイにしない道が、今示された。
「じゃあ…お説教はこれでおしまいだヨ」
山盛りのアイス袋はまだ在庫充分。
クルマが修理工場に入っている間、どういうわけか代車を使うつもりもないらしい。
ならば、それは真夏の炎天下を歩くための必要経費なのだろう。
「またね。チカ君。」
今尽きようとしている、猫耳生徒の命の灯火を後ろに、歩き去っていく。
完全に冷やかしだった。あまりにも大人げない。
…だが、その後姿が最後に思い出したかのように。
「やれるところまでやってみるといい…期待してるヨ グッドラック」
捨てといて、と投げつけられたアイスの棒には。
焼き印で刻まれた、アタリの字が輝いていた。
■ヘルベチカ > 「かっこ良ければモテるってそれ真理では……?車両関係なく恒久的普遍の原理原則では……?」
ただしイケメンがなんとやら、と似通った発言に、
口をへの字にしながらアイスを咥える少年。
しかし、今、目の前に確かに示された道。
この夏、忘れられないワンサマーへと誘う、
教員からの悪徳の囁き。
しかしどう見ても、160日走っても楽園には届きそうにないので、
少年は引き返した。諦めの速度FREE。
「あぁ、はい、先生もお腹壊さないように気をつけて……」
左の手をパタパタと振りながら、教員の背中をベンチの上から見送って。
そしてついに命運付きて、少年の手元から、氷菓は失われた。
あぁ、と残念そうに喉から声を上げてから、
不意に、少年の眼が大きく開いて。
お、と口を開きかけたところで、額に飛んできた一本の棒。
かぁん、と眉間の中央にあたった。
「あいたぁー」
思わずのけぞって。棒は、ぽてん、と少年の膝の上に落ちた。
いてて、と額を撫でてから、文句を言おうと相手を見た時。
既にそこには、秋尾の姿はなかった。
真夏の陽炎、アスファルトの上の魔物の如く、
教師は少年の目前から、溶けるように消えた。
「おのれ……お?」
膝の上から拾い上げた棒。それを見て、もう一方の手に持った、
己の食べていたアイスの棒と見比べる。
夏の口休め、二本追加、だった。
その後、とりあえずアイスの棒は、近くの水道で洗っておいたという。
ご案内:「常世公園」から秋尾 鬨堂さんが去りました。
ご案内:「常世公園」からヘルベチカさんが去りました。