2015/09/23 のログ
ライガ > レイチェルからある種の寛容な発言をされると、再び後頭部を掻く。
今回は本物である。

「いやまあ、そう、だけど。
破壊神っていうと、伝承なんかだと大抵乱暴者が多いじゃん?
これほどフレンドリーなのも珍しいよなって。
少なくとも僕にはそう見えるね」

しかし本人から邪神だ、との指摘を受ければ、すこしの逡巡の後、
それって言っちゃっていいの?と心配そうな口調になる。

「邪神って……あんまりいいイメージないよ?
本人を前に言うのもなんだけどさ」

魔女風の少女に問い詰められれば、困ったようにたじろぐ。

「すごい剣幕だな、僕が何をしたっていうんだい。
だいたい君さ、あの女性をいとしく思うなら、送ってやるくらいしたらどうさ。
最近、特に物騒だし。七英霊だっけ?
治安のいい学生街とはいえ、この間も事件起きたばっかだし、少なくない被害も出てる。
……風紀の人が居る前でこんなこと言うのもなんだけど、もうちょっと危機感もったほうがいいよ」

なぜ責められなければならないのか、戸惑いの表情だ。
周りの2人に、間違ったことは言ってないよね、と話題を振った。

公園を出ようとした光は、周囲を取り囲む冷気を突っ切ろうとする。
元々それほど単純な命令は出していないので、電霊の性能も高くはない。
仕込んだ命令は、攻撃ではなく追尾、監視。
攻撃的な魔術とは、元々相性が良くないが、振り切られぬよう最低限の術式は持たせてある。
ゆえに光を最小限にとどめ、その余剰魔力を推進力に当てた。

蒼穹 > 馴れ初めでも語りなよ。えぇ?
失恋した気分でも味わったかい?さっき別れたと思ったら、
すぐ別の女に手を出そうなんざキミはどうしようもないヤツだなぁ。

(けらけら。冗談か本気か。ようわからんが別にどうでも良かった。
口で適当にからかうけれど、悪意はない。
ただただ旧知の知り合いを馬鹿にするかの様な、どうでも良い日常の会話である。)

ほう。つまりキミはあれだ。
百合で止まらずその先まで言ってしまうとんだ―――こほんと言う事か。

(からかいたくなるむっとした表情。演技で創られたものであるが故に尚更そんな気分が煽られるわけで。

…おや。もう一つ魔術が。無詠唱、となると結構な使い手か。
属性は氷。基本的に使用魔力も平均的、大振りな素振りは必要としないのが一般的だが、
それはまぁおいておいて。さっき飛んでいった魔術に追従した様子。)

………。

(飛ぶ怒号。それはもっともな事と同時に、彼女が魔力感知能力が高いことや、
そうとうな魔術の使い手であることを言葉にして示していた。口論の予感。面倒事は野次馬に限る。
それを横目に、またファンタグレープの缶を傾けた。)


うん?
まぁ、私って見た目これだけどさ。昔は大概暴れん坊だったんだ。
今もそう大して変わんないだろうけど。
邪神っていうのには二面性があるんだよね。邪神は神とは違うけど、悪神とは違うんだ。
スサノオとか、ロキとか。この世界のそう言う神と似てるって思うな。
…まぁ、何が言いたいかって言うと、のんびりこうして休んでますって事、かな。

(要するにトリックスター的な存在。良いに転ぶも悪いに転ぶも気分次第。
悪いイメージがあるとしても、実際その通りだし、隠す気も、それを悪びれる気もあまりない。
この島には、なんだっているんだから。)

まー、治安が悪いったら仕方ないねぇ。
私も働かないつもりが役に立たん風紀委員共の代わりに働かされたんだからまぁ気分が悪い。
おまけに電気猿なんてわけのわからない化け物の退治までさせられる始末だよ。
最近は物騒だね、ってこればっかり言ってる気がする。
…さぁ、どうだろうね。

(歪な憂世を呪い悔やむ幽霊風紀委員。
「危機感を持った方が良い」それは確かにそうだった。
だけれど、今の答えは良くなかったかもしれない。
ウィザードの質問は「何故あの子を狙った?」なのだから。
彼の答えはつまるところ「論点をすり替えてとぼけた」に等しい反応なるかもしれない。
それを抜きにしても今のところ口論にはあまり口を出さない、中立っぽい様子。
またファンタグレープの缶を傾けた。)

ご案内:「常世公園」にレイチェルさんが現れました。
レイチェル > 「まぁ、そこんとこはオレも丸くなったかもしれねーな……」
そう言って、蒼穹には確かに、と頷くレイチェル。

「遠慮しとくぜ。誰にでも声をかけるような奴に口説かれるのは好きじゃねーんでな」
しっしっ、とクロークから出した左手を動かしてそう口にするレイチェル。


「まぁ、な。確かに蒼穹は破壊神にしてはちょいと緩すぎるのかもしれねーけど」
ライがの言葉にはそう言って、少し目を閉じて微笑んだ後、蒼穹に目線をやり。
その後に、ま、おかしいことは言ってないんじゃねーの、と振って返す。


「しかしまぁ、英霊って確か……色々暴れまわってくれてるあいつらか」
『右目』を叩く。と同時に、レイチェルの視界にデジタルな情報群が視覚的に表示される。風紀委員のみに閲覧が許された報告書群。レイチェルはそれを改めて確認した。

「風紀委員としてオレからも言っとくが、注意するに越したことはない、ライガの言う通りだと思うぜ?」
そして、赤服の女にそう告げた。

『ウィザード』 > 「何を言う、破壊神とやら。
 冗談に決まっている。
 その金髪の女に興味がないわけではないが、私には別の女がいる。
 だが気を付けた方がいいかもしれないな。
 私は手癖が悪い」
またもや冗談めかした言い方。
馬鹿にされていようが気にしていない、といった態度だ。

「私に下心がないというだけで、そこは相手次第だな。
 相手がさらに私を求めるなら、一線を越える事もあるだろう」

レイチェルに遠慮されるが、平然とした態度は崩さない。
「そうか、それは残念だ。
 貴様は結構、可愛らしいのにな」


「ふん。そうやってしらをきる気か。
 よくもあの子を狙ってくれたな!
 今すぐ、その能力を止めろ!」
しらをきろうとする相手に、さらに怒りの表情を見せる。
もちろん演技だ。
重要なのは、自然なカップルを演じた上で、追撃を止めることだ。
もし追撃を止めた上で『ウィザード』が黙ったままだった場合、裏で何やら策略を巡らせている風になり、カップルとしては不自然になってしまう。
「危機感を持てか、確かに貴様の言う通りだ。
 たった今、貴様の言う通り世の中物騒な事を確信した。
 なぜなら、貴様のようなか弱い女性を狙う輩がいるのだからな!
 あの子一人で帰らせるのは、とても危険だ……。
 送っていく事にする」
そうして、『ウィザード』はベンチから立ち上がり、女を追いかけようとする。
いや、追いかけるのはあくまで、目の前のライガの追尾が止める事を確認してからだ。
まず目の前の敵から、女の安全を確保するところからである。
『ウィザード』は鋭い視線でライガを睨んだ。
論点をすり替えた相手の言葉を逆利用して、あわよくその場を立ち去ろうとし、さらに先程の女に再び接近しようとする。
あくまで自然にだ。

さらに冷気を強めて、氷を貫こうとする光を封じ込めようとする。
無詠唱で、それを行っている。
これが宝具『デーモンズ・ロッド』の効力だ。
さらに魔力を氷に注ぎ、光をさらに氷らせる。
『ウィザード』には、魔力がいくらでもある。

だが忘れてはならない……。
『ウィザード』があの女を口説いた目的を──。

ご案内:「常世公園」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「常世公園」にレイチェルさんが現れました。
ライガ > 「誰彼かまわずアタックするっていうのは誠実さが低いことではあるからね。
好意の外にある人間からの印象も良くないし」

レイチェルの意見におおむね同意しつつ。
でもまあ、数うちゃ当たるって発想は理解できなくもない。まねしようとは思わないが。

「所謂トリックスター、物事を引っ掻き回す愉快h……失礼、神々か。
ま、悪神よりはマシかな。別にこの島をどうこうする気はないんだろ?」

こんな場で訊くことじゃないのかもしれないが。

「電気猿??
……ごめん、後でいいから、その話もうちょっと詳しく聞かせて。
倒したんだよね?」

蒼穹が溢す愚痴に混じって、
しかし途中で、何やら不穏な単語を聞きつける。
ま、まさかなー。

元々、明確な意思をもって放たれた魔術に、ただの追跡術式がかなうわけがない。
あっさりと光は凍り付き、地面に潜むことなく固定される。
それを感じ取りながら、無詠唱かつ膨大な魔力の流れ、相当の実力者だろうな、と考える。

「ふう。……折角忠告したのに、ひどい言い草だなあ。
具体的に僕のどこがどう悪いのか、事細かに教えてもらえないかな。
狙うってんなら、攻撃の意志があるってことだけど、
ここから動かずに、どうやってさっきの子を狙うのかな?」

動きが止まった電霊は、数秒と経たぬうちに、自然と氷中にとけていく。
捕獲に耐え得るほど、耐久性能は無い。
それに、まあ、これが主目的じゃあないし。

蒼穹 > つまらんね。もう少々食って掛かってくるもんだと思ったけどね。
緩いのは御愛嬌。何ならこの緩やかさをもってすべてを破壊してやっても良いけど。
…ま、そういうのは今のところ余るくらいあって不必要みたいだけどね。
(適当な事や物騒な事を言いながらレイチェルに返事。)

破壊神、まあそれでもいいか。
…ほお、成程つまり脈無と言うわけではないんだね。
とんだ狼さんじゃあないか。

(ファンタグレープの缶を傾けた。…もうシュワっとした創られたブドウ味のソレは流れてこなかった。
ひょいとそこにあるクズカゴに放れば綺麗な放物線を描いてホールインワン。
ベンチから立ち上がる。)

…おうおう。

(冗談で言ったわけだが、冗談で帰ってくるのはまぁまぁ心地が良いのである。
英霊の疑いが強いが話の分かる奴だ。今のところは。
次はファンタオレンジでも飲もうか。)

おや、帰るのかい。
…そいつは残念だ。ついでにキミの分も奢ってあげようと思ったんだけどな。

(至極当然な理由を述べてベンチを立つ彼女を見送る。
不審に思う事もない、少々所作が怪しいが面白い人だと思っている。)


…愉快犯。間違いじゃあないさ。色々殺ってきたし、犯ってきたからね。
さぁ、どうかな。気分次第だよ、今は大人しいけど、もしかしたら島で一暴れするかもねー。

(悪びれもせず、さり気に危ない言葉を残すあたり、どうしようもない。)

…うん?
いや、私が倒したんじゃない。覚醒術?とかなんとかやって自爆してたよ。
…まぁいいけど。っていうか風紀委員に資料あるし、いつでもって思うけどな。

(…魔拳。唯一無二、アレと彼を結びつける手がかりが。
元は同じ空手?の流派の知り合いとかだったんだろうか。
どうせ暇をしているし、良い話のタネになりそうだ。

取り敢えず、自動販売機に硬貨を数枚突っ込んだ。)

『ウィザード』 > 『ウィザード』の膨大な魔力を使った氷魔術により、ライガからの光の追撃はまのがれたようだ。
それにより、『ウィザード』は安堵の息を漏らす。
演技です。

だがすぐに怒りの形相へと戻った。
「とぼけるな!
 何が目的だ!?
 なぜ、あの子を狙った!?
 質問しているのはこっちだ。
 答えろ!」
怒りをぶちまけて目的を聞く、ふりをする。
あくまで感情的になっている、ふりをする。
なので、何が起きたのか事細かく説明する事は、今のところない。
さすがにこのままライガを放って帰ってもカップルとしては不自然だ。
なにせ敵の目的が不明なまま、という事になる。
またいつ、あの子が狙われるか分からない。
だがそれら全て、あくまで建前上の話。

蒼穹の方に向き直る。
「こいつをどうにかするまで帰れない。
 奢ってくれるのか? それはありがたいな。
 今少々この男に怒っているから、クールダウンに丁度良い。
 まずはこの男に、あの子を狙った目的を吐かせる。
 貴様等二人からすれば何が起こったか分からないと思うから、説明してやる。
 この男が、あの子に、密かに光を放っての攻撃行動を見せた。
 隠れてやる分、たちの悪い攻撃だ。
 それを私が、魔術で防いだわけだ。
 ここで平和に話す裏で、そんな事が起きていた。
 か弱い一般市民に手を出すなど、外道め!」
ライガの言う『具体的に僕のどこがどう悪いのか、事細かに教えてもらえないかな』という内容は、二人に説明するという形で伝える。
そうする事でライガに感情的になりつつ、蒼穹とレイチェルに冷静に語る事で具体的にどこが悪いかを周知させられるからだ。

外道め、という件はおもいっきりブーメランではあるが、『ウィザード』は常世においてまだ一般市民をこちらから攻撃した事がないのは確かな話。
最も、昨日は正当防衛で、手を出したりはしている。

レイチェル > 「くどい奴は男女問わず嫌われるぜ?」
眉をしかめて、赤服の女にそう告げる。

「つまらなくて結構。一応風紀委員に属してるんだから、冗談でも
 そういうことは言うもんじゃねーよ」
溜息をついて、蒼穹に対して首を振るレイチェル。
神の力はつい最近実際に目にしたばかり、二度目は御免だ。

「ライガは別に攻撃しようとした訳じゃねーと思うぜ? 少なくともオレには、
 そういう風には見えなかったが。何かどうもさっきからお前怪しいぜ?
 ……悪いが学生証出してくれるか?」
率直に。
先からの言動を目にしているレイチェルであったが、やはりどうにも
違和感を覚える。ずい、と前に出て、左掌を去ろうとする
赤服の女に向けて差し出した。

蒼穹 > はいはい、んじゃまあ皆落ち着きゃいいんじゃないかな。
じゃあ風紀委員やめちゃおうかー。ま、簡単にそうはいかないから困ってるんだけど。
どこぞのヤクザよりタチが悪いね。お給料は良いけど。

(言いながらホワイトサワーなる炭酸飲料を魔女帽の彼女にパーフェクトコースで投擲する。
ミリ単位まで寸分の狂いのない、不自然な程自然な放物線を描いて、あらゆる外力に靡かず落下していく。
ちょっとした重力魔術と空間操作魔術の御披露目だ。…直接転移させれば良いとかは言ってはいけない。)

それ、上げるよ。お勧めの炭酸飲料。
いやぁ…知ってる知ってる。まぁ、どんな魔法を使ったまでは知らないけど。
ふぅん、そう。こっそりと、隠れてね。
まぁ、私が言えることはライガさんは確かに魔法を使ってたって所までかな。
んで、キミもそれに追従して魔法を使ってた。

(どうなのだろうか。あの魔法の属性は光と氷、だった筈。
最初こそアヤシイ何かを持っていたが。)

落ち着きな。

(そんなレイチェルの左掌目掛けてアップルティーを投擲したのだった。邪魔も良い所だろう。
ベンチから立ち上がって人外の速度にて割り込んでいこうとする。その速さは割愛しておく。)

…本当ならこんな事言いたかないんだけどねぇ。
キミ、さっき闇魔法か何か使ってたでしょ。あれの所為で皆の不信買ってるのよ。
学生証もだけど。あれの説明、したらどうかな。そしたら私はキミの味方をしようじゃん。
あ、でも嘘はだめだよ。

(最初期に見せていた、黒い何か。嫌な気配、怪しい物を匂わせるそれは、黒魔術か闇魔法の類だろう。
あくまでも推測だが。
口論を眺めるのも面白かったが、己も最初のあれは気になった。
そして、格好。書物にあったあれにそっくりなのだから多少は疑う。多少は。
困ったようで、愛想の良い様な表情でそんな事を言ってみる。)

ライガ > どうも、必要以上にまくし立てられている気がする。
自分も人の事はいえないが、みずから事を大きくさせるような発言はいかがなものだろうか。
しかし、何の権利があって、他人に無理やり吐かせようとするのか。
そう言うのは一般人のすることじゃあないんじゃないのかな、と苦笑する。

「ふうん、僕が一般市民を、魔術によって“攻撃”しようとしたと。
飛んだ言いがかりだけど、まあ。
そう思えるなら、そう思うといいさ。別に通報したってかまわない。
こっちは攻撃の意志は、どうせ信じないかもしれないが、一切ないしね」

やれやれと肩をすくめ、とんだとばっちりだとでもいうようにため息をついた。

「ま、どっちにしろ、事情聴取されるのは僕だけじゃあなさそうだけど」

『ウィザード』 > 「確かに、嫌われてはいけないな。
 安心しろ、貴様の事は諦めている」
平然と、レイチェルに告げる。

そして、レイチェルから学生証の提示を要求される。
「怪しいか。
 私からすれば、怪しいのはそちら男だ」
ライガに指差した。
金髪の女と白髪の男には確かな信頼関係があると思われるそのセリフ。
自然に騙しきるのは無理か。
この金髪の女もまた、厄介な奴だ。
「学生証はまだない。
 私はこれから入学する予定の生徒でな。
 学生証の発行がまだなのだ」
『ウィザード』は偽の学生証を提示するわけでもなく、暴かれ辛い嘘を吐いた。

蒼穹から炭酸飲料を受け取ると、「すまないな」と一言。
「分かった。
 ひとまず、落ちつく事にしよう。
 光るものが飛んでいったのだ、攻撃したと思ってしまうだろう?」

そして闇魔法と言われると、『はて? 何のことか』と本気で首を傾げる。
しかしそれはわずか一秒で理解する。
おそらく、あの時出していた『あれ』の事だろう。

「仕方がないな」
そう言って、『ウィザード』は黒い球体を取り出す。
「これは魔導具でな、相手を少しだけ性的な誘惑する効力があるものだ。
 あくまで、こちらに好意を持ってくれている者にしか効果がないものでな、使いどころは難しい。
 簡単に言えば、少しだけずるして性行為を求めるよう促そうとしていたのだ。
 本当は言いたくはなかったが、ここまで怪しまれたのなら仕方がない。
 だが、私があの子を大切なのは変わりない。
 ちなみに禁止されている類のものではない。
 あくまで合法だ」
実際に先程取り出したのもこれである。
本来の目的とは他に、あの時近づいてくる気配からフェイクを用意していたのだ。
本当の目的である魔導薬は、あの場では一切見せていない。
つまり、この事について嘘は一切ついていない。
だがそれが狡猾な『ウィザード』の策でもあった。

「そちらの男よ、言いがかりなら悪かった。
 そこの金髪もそう言っているわけだし、そこは信じる事にしてみよう。
 だが、あの子に何かを飛ばしたのは確かだろう。
 もうあの子に手を出さないなら、私も通報する必要はないというわけだ」

ライガ > 口説いてる余裕があるなら、入学の手続きしてからのほうがよかったんじゃないか。
学生証も教員の身分証明書も持っていない人間が学生街を堂々と闊歩してるのは、好ましい状況じゃあない。
本人にも、周りにも。
それは、学生証の恩恵を身をもって実感したからこそ言える。

「……なあ、学生証って、発行されるのにそんな時間かかったっけ?
僕の時は割と早かった気がするけど……」

レイチェルや蒼穹に、素朴な疑問を投げかける。
というか、仮にも身分証明書持ってない人間が、こんな時間まで学生街に居るのと、現在のライガの立ち位置。
身元の保証という点で、どっちが怪しいんだろうか。

「怪しいなら通報してもいい、そう言ったんだけどね。
まあ、とりあえず、説明だけはしておこうかな。
そちらさんが言う、光るものっていうのは、これで間違いないかな。
こいつ自身に、攻撃能力は一切ない。……学生街とはいえ物騒だから、様子見に行かせようとした、それだけだよ」

口の中で小さく念じ、右手をかざせば、指先にぼんやり光るものが見える。
それは猫のような姿をとり、手から地面へと飛び降りた。

「でも、意思確認せずに使ったのは反省してるさ、ストーカーだとか言われても困るしね」

これで一応は、答えになったかな?と問いかける。

蒼穹 > ふぅん。

(アヤシイのは、これで見た目だけになった。
闇魔法と思わしき黒い球体、それが人目に触れられたくない理由ももっともだった。
端的に結果だけ言うなら、懇切丁寧に作り上げられたうそ偽りに"騙された"。
いや、騙されたわけではない、実際はと言えば、本当の事しか言っていないのだ。
問題はその先にウィザードが何をしようとしていたかだが、残念ながら己はその言葉を引き出す手がかりも気もなかった。
要は、何をしたかと言えば"邪魔した"だけ。
分かっているのか居ないのか、終始何も考えていない。
といっても、それはあるいみ当然で。己はただ公園に暇潰しに来ただけなのだから。)

成程、それは仕方がない。
んまぁ、あれだね。…そんなもん見られたくないよね、あはは…。
…兎も角。もう夜半だ、丁度そこに荒事が得意な人いるし、送って貰えばいいんじゃないかな。

(さりげなく、それでいてこれまた断り辛そうな進言。因みに自分で送る気ないみたい。
まぁ、彼女は彼女で怪しんでいるみたいだし、顛末まで見てこればいいのではないだろうか、という意図も込めて。)

んで、結局ライガさんは何飛ばしたわけよ。
確かに魔力は飛んでいってたけど。…ああ、成程。

(とまぁ、この辺りで大体の事情は分かった。
お互い手に翳して魔法を見せたのだからそういう事だろう。)

…そういやそうだね。
学生証ね、確かに、あれは常世島で人権を確保するために最優先で発行されるはず。
そうでなければ、今頃こんな所はうろついていない様な…?

(今更だった。何も考えていないことが露わに。ウィザードの前で露骨に首を傾げてみるが、果たして?)

レイチェル > 「っと、何だよ。別に落ち着いてない訳じゃねーぜ」
アップルティーを投げられれば、それをキャッチして蒼穹の方を見やる。


「合法だろうが何だろうが、本当に大事に思ってるんだったら、そんなもん
 使わねーと思うけどな?」
距離的に他の二人よりも離れていた為に、黒い球体までは確認できていなかった
レイチェルだったが、ここに来てようやくその物体を確認する。
そう冷たく言い放ちながら、レイチェルは女の顔をじっと見つめる。


「いや、そんなに時間はかからない筈だが……少し、確認取るか」
《右目》を叩く。
まさにその瞬間に、風紀委員からの通信が入ったことをレイチェルは脳内で確認した。
情報を閲覧する意志を持てば、すぐにその情報が表示される。

寄月 秋輝という人物からの通報を受けて、
風紀委員会から連絡が来たのだ。

「英霊……『ウィザード』の報告……?」

英霊『ウィザード』に関する情報。
その戦闘データと、危険性の報告。
報告にある姿形は、目の前の女と完全に一致する。

「たった今風紀から連絡が届いたぜ……。
 嫌な気配は気のせいじゃなかったらしいな、報告にあった英霊はてめーか」
目の前の女に冷たく、そう告げた。
クロークの内に滑らせた手が、異次元に存在している拳銃を掴む。

『ウィザード』 > 「さてな、発行されるのにどれ程時間をかけるかは知らない。
 私は、正式に入学されるのを待っている身なのでな」
そしてライガから説明を受けると、『ウィザード』は頷いた。
「事情は分かった。
 てっきり、あの子を攻撃する気なのかと思ったぞ。
 だが貴様の言う通り、ストーカーと間違われてもおかしくはない行為でもある。
 だが、攻撃だと勘違いしたのは私の落ち度だ。
 外道とまで言ってしまったな。
 その点はすまなかった」
『ウィザード』は素直に謝罪する。
この場は穏便に済ませようとしているのだ。
荒事はやはり避けたい。
そして、それが『ウィザード』の計画でもある。

「全くだ……。
 なぜ、こんな物を見せねばならなくなるのだ」
少し不機嫌になる、ふりをする。
「生憎、男に送られる程柔ではないのでな。
 あの子でも送っていこうと思っていたが、既に自宅に帰っている頃だろう」


「媚薬を使う人もいるだろう?
 それと似たようなものだ」
そうレイチェルに率直に答える。

「確かに私は英霊だが。
 私を他の英霊と一緒にしてもらっても困るな」
そう溜息を吐いた。
ここで嘘をついても仕方がないので、英霊である事は正直に伝える。
『ウィザード』の姿は、世に出回っているからだ。
「私は他の英霊みたいに、“無暗やたら”に人を殺したりはしない」
つまり、今は建前上一般人を装い、裏で策を練っているのだ。

『ウィザード』は現時点で、本当に何もしていない。
昨日、正当防衛したぐらいだ。

だがそこがたちが悪い。
なぜなら、裏で人々を虐殺する策を練っているのだから……。

ライガ > 「蒼穹の言う通り、わりと持ってないとこの島で生活する以上、ある意味死活問題だから、最優先で手に入ると思うな。
ま、よっぽど素行に問題なけりゃの話だけど……」

入学手続きは後回しとしても、最低限それくらいはするだろう。
何せこの島には、公的には「生徒」と「教師」しか存在しないのだから。
学園都市のモデルとする以上、身元不明なものを放置しておくわけにもいかない。

「媚薬だって、正確にはグレーゾーンだと思うけどなあ……」

不穏な単語を聞きつけ、誰にともなくつぶやく。
媚薬、または惚れ薬。
遠くない過去の歴史、魔術師が云われなき迫害を受けていた建前の一つが、媚薬の製造、流通である。
それを指す言葉だって、例えたところで印象が良くなるわけでもなかろうに。

「英霊……?
いやでも、風紀の情報だから信用に値するか。
穏便に事が運ぶなら、それに越したことはないけれど」

うん、風紀で何とかなるなら、気を張らなくても大丈夫かな。
そう思い、様子を見ることにする。しかしもし不審な動きをすれば、即座にレイチェルに手を貸す用意はあった。

蒼穹 > …何だ。誰かと思えばやっぱり英霊か。
薄々っていうか見た目がそんな気はしてたけどな。
んじゃ給料は多めでよろしくー。
って言いたいけどそうはいかなさそうだね。

(何とまぁ都合の良い事で。都合が良すぎて反吐が出そうだ。まぁそれはどうでも良いが。
一応確認だ何だやったしお金は入るだろう。
観戦と洒落込もうかとまたそこいらのベンチに腰を落ち着けた。)

んま、そういう事だよねー、結局は。
英霊だからって何しても居ないんだよね。
単に怪しいから捕まえる、怪しいから殺す、そりゃあもう酷い事だって私は思うけどなー。
幾ら殺気を内包していようと、いくら悪意の塊だろうと、それを殺しちゃダメなんだよね。
現行法ってのは馬鹿らしいし、風紀委員っていう組織の建前もあほらしい。

(悪意がある、殺意がある。意だけで殺されるなら、自分だってそうなっていただろう。
そう、ウィザードはただ怪しいだけに過ぎない。殺したいと殺したは違う。
頭っから情報だ怪しいだ何だと決めてかかる同僚にはほとほと呆れる次第。
風紀委員としてソイツを始末するには理由がない。故、正義を騙って殺す事は出来ない。)

ま、理由《そんなの》はでっち上げればいいんだけどね。
…それに、仮に殺したとしてそれに異論を唱える奴は居ないだろうし。

(英霊が英霊同士、仲が良くないのは知っている。非常にどうでも良さそうに溢すわけで。
そして、改めて思う。こいつがウィザード。他から恐れられる英霊の知将。
そういう意味でもこいつは"他の英霊とは違う"のだろう。
…面白いじゃあないか。ここまで嘘を吐きとおして冷静で居られるやつ等そういまい。
ハンターというヘタレのあの振る舞いが嘘の様だ。)

まぁ、英霊でも入学できるって事かな。破壊神でも入学できる時代だし。
彼女の…入学申請は入ってる?怪しいなら監視つけときゃ良いんだし。

(ちょいと確認。彼女が現状見える限りで唯一犯している可能性がある罪は、不法居島くらいか?
それはさておき、ここで彼女を討伐したとして何ら得は無いのである。
正論だ正義だ言うつもりは毛頭ない。強いて言うなら―――。)

ウィザード、だっけ?

(右手の人差し指を向ける。
夥しい魔力が渦を巻き、軈て線形に収束する。その線は、己の人差し指から、ウィザードの顔面を貫く様に流れる。
目に見えない、聞くことは出来ず、香りもない。そして、現時点では一切害も得もない。
これは"予告線"。その線形は、これから放つ魔術が飛ぶコースを示している。
ただ、魔力を感じることが出来れば、明らかにおかしい流れを作っていることが分かるだろう。
そして、そのおかしな魔力は、これから放つ魔術が背負う属性を示している。
最も、それは意図的にやっている事。ただのパフォーマンスに過ぎない。本来はする必要もない。
わざとやっているのだ。)

―――。

(そして、何ら躊躇いもなく、破壊の魔術をぶっ放した。
それが、どんな硬度であっても、逆にどんなに滑らかであっても。ありとあらゆるものを劈く黒の一閃が脳天へ迫る。―――否、"迫る"と言うのは不適切だ。
一閃。零でありながら、無限の速度を持つ、光速よりも早い一閃。
別次元から転移してきたかのように、"顕現する"。飛んでいく、伸びていく、そんな過程は一切ない。
一瞬という時間にも満たぬ、距離/∞の速度にて。
そして、また一瞬という時間もかけず、別次元へと転移するように"消滅する"。
普通であれば、それを黒い閃光として見ることさえ不可能な一撃。
1/60フレームカメラでも捉える事は出来ない、サブリミナル以下の一瞬の出来事。
これはただの威嚇射撃。そして、この英霊の化け物なら、きっと避けてくれようと思ったから、
―――遊んでみたい。ほんのそれだけの、悪戯心。)

ま、そういうわけで。
幾ら悪意を持ってようが良いんだけど、さっさと仮で良いから学生証もらえばいいんじゃないかな。

(ウィザードが避けられたと言う事など確認するまでもないと言う風に話を続けるのだった。)

レイチェル > 「送るは送るでも、何処に送るかは……こいつ次第なんじゃねーかな。
 何か勘違いしてるみてーだが、こいつがここで何もしねーって言うなら
オレもこの場じゃ何もしねーよ」

出来ねーってのが正しいがな、という言葉は頭の内に留めて。
仕方なく、そう口にする。
蒼穹の言葉にそう返しながら、拳銃を握る手はそのままに。
この場で何もしていないのであれば、逮捕も出来ない。
そんなことは、分かっている。
分かっているが、英霊という可能性がある以上は余計、放ってはおけない。
英霊の危険性に関しては、既に報告があがっており、レイチェルもある程度は
知っている。
ここで何かしようがしまいが、同じ英霊である以上は、話を聞く必要があるというのがレイチェルの考えであった。
後ろに備える武器は、万が一の備えだ。



「おい、何やって……」
人差し指を向ける蒼穹。そして、そこに流れる異様な魔力。
思わず蒼穹の方へ向き直り、完全に『ウィザード』から
その視線を外してしまう。

『ウィザード』 > 「分かった。
 昨日もそうだったが、学生証がないと不便なようだな。
 なら、早く発行してもらうよう、学園に掛け合っておこう」
今のところ素行は問題ない……はずなんだが、他の英霊が暴れているという事実があるのも確か。

「私もその男に同意する。
 穏便に事を運ばせたいものだな」
もちろん、言葉通り穏便に済ませたいのは『ウィザード』も変わらない。
つまり、三人が攻撃の意思を見せたり怪しげな術式を発動したりしなければ、『ウィザード』の方から不審な動きをする事はない。

そこがやはり、他の暴れている英霊とは違うところだろうか。
『ウィザード』は、自ら動かないのだ。
計画通り進行し、例え殺したくて殺したくてたまらなくても、我慢する。
実際、今も目の前の三人を殺害したいと本気で思っている。
ついでに言えば、冒頭のあの女の腸を抉りだしたいとさえ思っている。
しかし『ウィザード』は、そんな一時の感情では動かない。
決して、そんなものを表に出す事はない。
計画に沿って、その上で虐殺する。
それが『ウィザード』のやり方だ。

破壊神は、よく理解しているようだ。
風紀委員には建前がある。
『罪を犯していない』なら、どんな罪状で殺せばいい?
確かに、これから『ウィザード』は大罪を犯す事になるだろう。
だがそれは、まだ先の話。
策が実行されてからの話だ。

そして破壊神はさらに奥まで理解している。
そう、理由なんてものは、でっち上げてしまえばいい。
うまくでっちあげる事ができたのなら、大したものだ。
よく分かっているな、この邪神。

「今この場に、入学申請はないな」
そう蒼穹に答える。

「ああ。私は『ウィザード』だ」
そんな時、破壊神から人差し指を向けられる。
ふん。明らかに魔術でも放とうとかいう仕草だ。
さらに魔力も感じる事ができる。明らかに流れがおかしい。
何かやってくるのは、明白だ。
当然、こちらもその対応をしなければならない。
だが、さらに不自然な部分もある。
『まるで、これから魔術ぶっぱなしますよ』と言わんばかりの、予告行動。
いや、実際に予告してから放ってると考えるのが自然。
つまり、これから行うのはただの威嚇射撃だ。

「またな」
『ウィザード』は別れの言葉を告げた。
そして次の瞬間、破壊の魔術が放たれる。
黒い閃光として見るのも、もはや不可能。
一瞬の攻撃。
そうは言っても、かなり優秀な魔術師なら、先の予告線から何らかの対応が出来たかもしれない。
その対応に実りがあるかどうかは、もちろん別の話である。

だが事『ウィザード』は、そんなかなり優秀な魔術師クラスを超えていた。
その実力は『ハンター』や『プリースト』といった英霊と比べ物にならない。
『ウィザード』の体は破壊の属性により砕ける……ように見える。
だが砕けたのは、“『ウィザード』を模したただの氷の人形”だったのだ。
これは本来、ながい詠唱や膨大な魔力が必要な防御や回避系の大魔術。
それを無詠唱で、しかも息をするように使ってみせたのだ。
魔術に通じる者ならば分かるかもしれない……その“異常性”に。
そして、『ウィザード』の姿はどこにもなくなった。

ライガ > 「っ、早まるのはよさないか……!
拘束して他英霊の所在を探るとか、使い道はあるだろって、もう遅かったか。

まあいいや、せめて遺体の確認だけでもしとこう。
……いや、こいつは。氷のダミー…!?」

ライガにとっては初めて見る蒼穹の魔術、いや、これは術といって正しいのだろうか。
よくある魔術の発動でなく、突如としてその場に顕現し、対象を粉砕、一瞬に満たない刹那のうちに消滅する、破壊の閃光。
彼は、自分の動体視力の限界を超えた、黒い閃光そのものを視覚できたわけではない。だが、眼鏡の奥に光る、やや曇ったような黄金色の眼が、ほんの僅かに認識できる、魔術の痕跡を捉えていた。
破壊され、地面に散らばる『ウィザード』の残骸。顔をしかめて思わず駆け寄り、その実態を目の当たりにする。

「さっきまで、喋ってたのは確かに氷じゃなかった。
とすると、あの一瞬で、これだけの術式を構築、即発動したことになるな。ついでに瞬間転移のおまけつき。
……これ、思ったより強敵だな。僕はほかの英霊に遭ったことはないから、英霊の中でどれくらいの強さかはわからない。
けど、魔術師としての勘が告げてる」

ご案内:「常世公園」から『ウィザード』さんが去りました。
蒼穹 > …ふっ。

(大魔術、変幻。己も大概おかしな魔力を持っていて、無詠唱で魔術をやってのけるが、こいつも大概だったらしい。
あれだけのおかしな魔力を当てられて、これだけの威力と速度をもった魔術を、予告動作はあったとは言え変わり身で回避した。
大きな魔力の流れを感じた。そうでなくとも、このウィザードは何かしらの方法を以て避けていたろうが。)

あっはは!面白いね、キミ。―――ウィザード。
これは、予想外だよ、一本取られちゃったな。

(影も形もなくなった後、散らばった氷塊を一つ拾い上げる。その表情は些かばかり満足そうだ。
こいつは紛れもない化け物だった。英霊なんかではない、仙霊とも、神霊とも言えるくらいだ。
改めて認識する。どうしてこいつがこんなに恐れられていたのかと。)

私がもし、昔のままだったら、昔と変わって居なかったら。キミに友愛の心があったなら、
ここに今キミが残っていたなら、私はこう誘ったんじゃないかな。
"どうかな、私と友達にならない?世界を滅茶苦茶にするんだ、きっと楽しいよ?"って、ね。

(己はもう昔とは違う。彼女に友愛の心がない事も知っている。
だからこれは、実現し得ない話だった。)

残念だなぁ、…残念で仕方がないや。

(だけれど、その表情は全く残念そうではなかった。残った氷を踏み拉く。握った氷を投げ捨てる。
面白い術式に詠唱を使う。四大元素をベースとしながら、変わり身、転移を同時にやってのけたのだろう。
魔術的な才能だけみても、畏れられるに相応しい。本当に面白い、そして合理的な術式だ。パクってやりたいくらいに。
いやいっそ、ここでパクってやろう。その一瞬に流れた、異常な量の魔力の形を見ながら。記憶していく。)

英霊、…否、"神"霊ウィザード。
私は、破壊"神"。名前はね、蒼穹《ソラ》って言うんだ。
覚えておいて、ほしいなっ。
うん、じゃあ。―――"また"ね。

(氷を見ているわけでも、夜空を見ているわけでもない。強いて言うなら虚空を眺めて。
それでも、お前は居ないが聞いているし見ているんだろう?とでも言いたげに。最後に上向き、
朧に見えた月に、元気良く笑って見せた。無邪気とも愉悦ともとれる、そんな笑み。
つまらないことばかりだったが、こういう面で面白い奴もいるんだと思うと楽しい。
…冷静で、実力があって、頭もよくて、冗談も言える。昔の御友達に引き込めなかったのが残念だ。

軈て氷は水になる。)

変わり身、それから転移。
超高等テクニックだよ。これは。…グレートだね。
…うん?…あれは、そうだね。英霊で最強だと思う。今のところ。
魔術師としての、勘…?

(少し予想外だったのは、わざわざこんな大技を使って避けたこと。
如何に早くても"予告線"があった。だから、もっと軽く避ける事だってできたはずだ。なのに、何故?
実力を見せる為だろうか。そんな憶測も、今は無駄だけれど。)

じゃあ、後は宜しく荒事屋さんっ。

(緩い敬礼をする。これだけ場を乱しておきながら、事後処理は任せるらしい。
壊すことや散らかすことや乱すことは大好きだけれど、作ることや片付けることや整理することは嫌いである。
それが、破壊神の本質。

蒼い髪をふぁさりと一薙ぎ。
空間と時間の法則をぶち壊せば、己もまた不要な程魔力を使って、ワームホールの穴をくぐって、何処かへ転移して行くだろう。
詠唱も準備動作もない。さもそれが当然のように、ドアを開ける感覚で。ただし、着実に魔力は消費されているのだが。
要は、余計なコストをかけて単に格好つけただけである。あと、呼び止められると格好がつかないから。)

レイチェル > 「ちっ、話を聞きそびれたか……」
『ウィザード』が居なくなったのを確認すれば、右手の『保険』から手を離す。
そうして、深く溜息をつき。すっかり場を乱してくれた同僚に対しての悪態は
胸の内に仕舞い込む。
この神も風紀という立場で遊んでいる内は問題無いだろうが、やはり危険な
存在であることに変わりは無い。
しっかり気を配って注意しておくべきだ、と改めて思うレイチェルであった。
きっと、そんなことは無いだろうが。
神と二度も対峙するのは御免だな、などとぼんやり思いながら。

「やれやれ……じゃあま、改めて報告はあげときますか」
残るライガに手を振ると、レイチェルもクロークを翻し去っていく。

ライガ > 「ああ、お疲れ様だよ」

無理やり転移していった蒼穹に、あっけにとられる。
結局魔術一つ使っただけかい。
自由人過ぎる振る舞いに、軽い頭痛を覚え、風紀も大変だな、と他人事のように思う。

報告に向かうレイチェルに、こちらも手を振り返すと、公園には氷が解けたあとの少々の水と、ライガだけが残った。
ポケットのどこかからスポイトと試験管のようなものを取り出し、しゃがみこんで水を掬う。
まあ、十中八九ただの水だろうけど、魔力の残滓がないかどうか調べるためだ。

(さて、考察してみよう。
その場で氷像を作成、攻撃を受け止めさせて、自分は転移。
予め別の場所に待機させておいた、氷の人形と自身を入れ替えた。
後者の可能性もなくはないけど、『ウィザード』の保有魔力、おそらくとてつもない量だろうから、どっちもあり得る、のかな)

それでも詠唱速度が異様だけど。無詠唱て。
ため息をついて立ち上がると、試験管に栓をしてから、スポイトとともにポケットに戻す。
それから、ため息をつき、公園を後にした。

ご案内:「常世公園」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「常世公園」から蒼穹さんが去りました。
ご案内:「常世公園」からライガさんが去りました。
ご案内:「常世公園」にレイチェルさんが現れました。
ご案内:「常世公園」からレイチェルさんが去りました。