2016/05/24 のログ
東雲七生 > 「あっつかったなぁ……」

公園のベンチに腰掛けて、七生は溜息と共に呟いた。
昨日に続いて今日も一日暑かった。しかも休日の昨日とは違って今日は授業のある日だった。
こんな暑い日に限って屋外演習とか山の様に入ってたのである。

「死んじゃうよ……」

絞り出す様に呟いてから、七生はベンチにゆっくりと体を横たえた。

ご案内:「常世公園」に深雪さんが現れました。
東雲七生 > 「ちょっと夏が来るの早過ぎんよ……」

別に夏が嫌いなわけではないが。
少しくらいは心の準備をさせて欲しいものだ、と七生は思う。
もうすぐ6月とはいえ、気分的にはまだまだ春先のつもりなのだから。

「夏服とか……出さねえとさあ……」

ぶつぶつぐだぐだ。ベンチの上でとろけながらそんな愚痴を溢す

深雪 > 新学期も始まって随分と経ったというのに,この少女を学校で見かけたという話は殆ど聞かれない。
殊に授業に関してはそれこそ完全にフェードアウトしてしまっている。
本人にとって、学校の単位や授業で学ぶ内容など、まったく些細なことであるから気にも留めていないのだろうが……。

「あら、随分と油断しているわね?」

いつからそこに居たのだろう。
貴方を見つけて近付いたのかもしれないし,単に散歩の途中だったのかも知れない。
冬場でも夏服が基本の少女が,貴方を見下ろしている。

東雲七生 > 「ひゃうおっ!?」

掛けられた言葉通り、完全に油断していた。
この暑さでは公園の利用者なんてそうそう居ないだろうと思って居たのだ。
突然のことに、聞き慣れた声にも関わらず驚きの余り変な声まで出てしまった。

「み、深雪!?
 え、なんで、いつからそこに!?」

わたわたと身を起こそうとしながらも少女を見上げ、
そして色々と危うい事に気付いて目を逸らした。

深雪 > くすくすと笑って,特に断ることも無く隣に腰を下ろした。
何が危ういのかきっと本人は気づいていないだろう。
気付いていたとしたらもう少し,からかったはずだから。

しかし,別段学校に通いもしないのに,いつも制服を着ているのだから,不思議なものだ。

「私はただそこを通りかかっただけ。
 でも貴方の独り言が多すぎるから,つい気になったのよ。
 貴方こそ,こんなところで何をしてたのかしら?」

東雲七生 > どうにかこうにか身を起こした後は、動悸を落ち着かせるために深呼吸。
胸に手を当て、吸って吐いて、吸って吐いてした後に隣に座った少女を見る。

「別に、何をっていうほどの事はしてないよ。
 今日の授業で疲れたから、帰る途中に一休みしようと思っただけ。
 深雪こそ、なんでこんな所を通りかかるのさ。」

学校帰りなのだろうか、制服着てるし。
でも学校で見かけた覚えが無いな、とぐるぐる考えつつ。

深雪 > 随分とオーバーな反応をする貴方を見て,楽しそうな表情を浮かべたまま,
そんな貴方をじっと見つめている。

「そう…相変わらず,忙しく色々やってるのね。
 私にはちっとも意味が分からないし,何の価値があるのかも分からないわ。」

実際のところ,最後まで受けて単位を認定された授業は今のところ3単位のみである。
貴方がそれを知っているかどうかは分からないが…

「あら,私はいつもこの道を通ってるのよ?
 どうしてって聞かれても,理由は無いから勝手に想像していいわ。」

…完全に,行動が不登校かつ不良少女のそれである。

東雲七生 > 「ま、まあね。強くなんなきゃだし。」

ふん、と腕組みをしてそっぽを向きつつ。
隣の少女の出席状況や単位の取得状況などは全然知らないけれど、
そもそも進級できたのかすら知らないけれど、

「いつも通ってるったって、何処行くのに通ってるのさ。
 学校に行くために、ってわけじゃ無さそうだし。」

変な事してるわけじゃないよね?と眉根を寄せて深雪を見る。
疑う訳じゃないが、最近何かと厄介な噂もあるし心配の芽は早めに摘んでおきたい。

深雪 > 学務室へ行って進級情報を確認してはいけない。
予想通りに輝くナンバーワンが,堂々と印刷されているはずだから。

「そう…で,努力した分,少しは強くなったのかしら?」

くすくすと笑いながらも,その勤勉さには素直に感心していた。
尤も,この少女は学校の授業で強くなれるとはこれっぽっちも思っていなかったのだが。

「あら,私が出歩くと何か困る事でもあるの?
 別にどこに行くわけでもないけど,一日中部屋の中に居たら,息が詰まって仕方ないのよ。」

疑惑の視線を向けられれば,さぁ、どうかしらね?なんて意地悪に笑って見せた。
この公園からは歓楽街も近く,その先には落第街もある。
というよりも,深雪の家からこの公園に来るためにはそこを突っ切るのが一番の近道だ。
この少女の正体を知っている貴方なら,心配するのが当然だろう……この少女のこともそうだが,この少女と出会ってしまった悪漢たちの事を。

東雲七生 > 「まあね。
 ふふん、何せ俺ってば成長期だからさー」

少しだけ自信ありげに胸を張る。
最近では自覚できる程度には腕力も付いてきたし、武器の扱いにも長けてきた気がする。
何しろ共に授業を受ける異能使いや魔術師たちの中で敢えて異能を使わずに食らいついているのだから、成長しない筈も無かった。

「いや、別に出歩くなってわけじゃないけどさ……」

深雪本人も、悪漢も、どちらもそれなりに心配ではある。
ただ、学生としての生活態度を含めてそのうち二級学生にされてしまうんじゃないかというのが一番の心配だった。

深雪 > 「ふーん……そんなに自身満々なら,私がテストしてあげるわよ?」

胸を張る貴方を見て,少女は意地悪に笑った。
貴方の努力に関心しつつも,どこかでやはり“人間”を見下しているのだろう。
その成長を,愛おしげに見ている。

「……………?」

この島のシステムについても,あまり真面目に学んでいるわけではない。
だからこそ,貴方の不安をこの少女は理解できずにいた。
尤もこの少女なら,二級学生になったところで何も変わらず生活するような気もするのだが…。

東雲七生 > 「えっ……」

突然の申し出に戸惑いの表情が浮かぶ。
自信が無い訳ではなかったが、テストがどの様な物か見当がつかない。
単純に戦闘なのだろうか、と軽く首を傾げる。

「いや、ううん。
 ……ともかく、危ない事とか変な事してるわけじゃないなら良いの。」

一緒に住んでる身にもなれよな、と小さく息を吐いて深雪から目を逸らす。
一緒に住んでる事を積極的に誰かに話したりする訳じゃないので、飽く迄七生自身の気の持ち様なのだけど。

深雪 > 「あら,自信あるんじゃないの?」

意地悪な表情のままである。
だが,明確にルールを指定することもなく,テストがどのようなものなのか示すことも無い。
この少女も,“強さ”とは何なのか,深く考えているわけではないのだ。
とは言え“戦闘”をするのなら,色々と覚悟した方が良いかもしれないが……。

「ふふふ…七生が迷惑だって言うなら,言う通りにしてもいいわよ?
 でも,そうね……やっぱり,強い人の言うことじゃないと,聞けないかもしれないわねぇ?」

実際のところ,深雪が歓楽街や落第街を徘徊しているのは事実である。
だが,そこで問題を起こすことはもはやなくなった。
誰も近づかないのだから,問題など起きようもないのである。
……だからこそ,深雪はここのところ,少しだけ退屈してもいるのだった。

東雲七生 > 「あるにはあるけど……」

言い淀みつつもそこは否定しない。
ただ、本当に何を以てテストとするのか読めないのだけが気掛かりだった。
まあ、奇を衒った内容ではないのは確実だと思うのだが。

「……むぅ。
 分かったよ、それで、テストって何するのさ。」

どうせなら万全のコンディションで挑みたいところではあるが、
この少女の気がいつ変わってしまうと分からないので早めに聞くだけ聞いておくことにした。
内容を聞いてから、やれるかどうかの判断をすればいいのだ、と。

深雪 > 何するのさ。と言われて、少女は表情を歪めた。
強さの証明なら戦うべきなのだろうが……七生と,戦う?
そんなこと,全く想像もできない。
七生が戦っているところを見た事があれば,別だったのだろうが…。

「そうねぇ……。」

困ってしまった。

東雲七生 > 何も考えてなかったんかーい。

思わず声に出しそうになり、慌てて飲み込む。
まあ、突拍子もない事を言い出されるよりはよっぽどいい。
疲労困憊の体で勝負事、ましてや戦闘行為なんて自殺行為にも等しい。

「……まったくもう。」

変に気を張った所為で徒労感が身を苛む。
ついつい家に居る時の様に、隣の少女の肩に頭を載せる様に寄り掛ろうとしてしまった。

深雪 > 飲み込んでも顔に出ているし,事実,考えてなかったこちらが悪い。
なので今日のところは,素直に申し訳なさそうな顔をしておいた。

「ふふふ,でも…そうね,貴方が疲れてない時にでも,演習室の模擬戦とか,やってみるのも良いわね。」

寄り掛かってくる貴方を拒むことはない。
深雪の身体に触れれば,それはまるで雪のように冷たく,この暑苦しい季節には心地良い。

東雲七生 > 「模擬戦かあ……うん、良いかもねえ。」

少女の体から発せられる冷気に、はう、と心地良さげに目を細めながら頷く。
模擬戦、と自ら銘打った以上、お互いに大きな怪我を負うほどの事はしないだろう。それなら安心だ。

「はー、こういう急に暑くなった時とか深雪がそばに居ると重宝するなあ……」

ゆったりと目を細めたままそんな事を呟く。
知り合いに見つかれば何かと面倒な状況なのだが、季節外れの暑さにそこまで頭が回らない様だ。

深雪 > 「それじゃ,私が負けたら七生の言う通り,もう危ないことなんてしないわ。
 でも,七生が負けたら,その時は七生が私の言う通りにするのよ?」

くすくすと楽しげに笑いながら,そう提案する。
自分の方は負けても全くもって弊害は無い条件をさらりと作っているのが恐ろしいところだ。
もっとも,自信満々のこの表情からは,負けるつもりなど1マイクロメートルも無さそうなのだが。

「あら,私の事を何だと思ってるのかしら?」

七生の表情を見れば,愛おしげに笑って…やさしく,吐息を吹きかけた。
香水だろうか…かすかな甘い香りと,それから,火照った身体を冷やす冷気。

東雲七生 > 「一体何させるつもりなんだよ……」

今でも十分言う通りにしてる気がするのだけど。
というか、「負けたら」しないって事は、やっぱりしてるんじゃないかとか思ったが口をつぐむ。
余計な事を言って悪化されてはたまらない。

「えっと……おか……お姉ちゃんみたいな存在かなあ。」

ちょっと口が滑りかけた。
吐息を吹きかけられ、擽ったそうに身を竦めるがその表情はとても満足げな笑顔である。

深雪 > 「ふふふ,私が勝ったら考えるわ。」

酷い命令をしようというわけではない。
ただ,どんな命令をしたら困るだろうか、と考えてしまわないでもない。
貴方があえて口を噤んだことには気づきもしないだろう。後ろめたいことは,最近は全くないのだから。

「ふふふ……まぁ,許してあげる。
 でも,さっきは“重宝する”って言ってたわよね?」

少女が意地悪な笑みを浮かべると,吹きかける吐息の温度が急激に下がった。

東雲七生 > 「そこも何も考えてなかったのかよっ」

それでも勝てる気で居るのだから性質が悪い。
はぁ、と溜息を吐きつつも七生自身も負ける気はしなかった。
それに負けたところでそんなに無理難題を押し付けられる気もしなかった。
一緒に住んでるだけである意味それに近いのだから。

「寒ッ!
 ……え、だって、するもん!しょうがないじゃん!」

暑い時は涼しいし、そうでない時は居心地良いし。
そういう意味で言ったつもりだった七生だが、果たして少女はどう受け取ったのだろうと上目がちに顔色を窺う。

深雪 > 「良いじゃない,全部分かっちゃうより分からない方が新鮮よ?」

まさかこの可愛らしい少年が“負ける気がしない”などと思っているなんて,知る由も無かった。
そもそも,この少女は力を失ってなお,絶対の自信とプライドを保っている。
きっと,どんな相手に対しても内心は見下して戦いを挑むはずだ。
……失った力の大きさを知り,傲慢の代償を支払うときが,来なければいいのだが。

重宝する,と言われれば,まるで道具にでもなったような気分だった。
けれど,あまりに他意のない貴方の言葉を聞いて,苦笑をうかべる。
「…まぁ、いいわ。」
優しく微笑んで,静かに立ち上がった。深雪から離れればまた,暑い空気が身体を包むだろう。
「そろそろ帰るけど…一緒に行く?」

東雲七生 > 「それはそうかもしれないけどさあ……」

負ける気はしない、されどそれが勝てる自信であるかと言えばそれも肯き切れない。
だが、負ける気はしないのは紛れもない事実だった。
そう思えるほどに、七生は自分自身に対してかなり無茶な鍛錬を課していたのだから。
ただ、この少年はそれを表立って主張する様な性格では無い。

「うあぁ、暑い~……やだー、一緒に行くー」

深雪が立ち上がれば、一瞬支えを失って倒れかけた体を起こし、
不平の声を上げつつその背に縋るように、背後から抱き着こうとする。
だが、すぐに今居るのが家では無く公園である事を思い出して、咳払いをしつつ離れた。

「んんっ、ついでだから、夕飯の買い物も付き合ってよ。」

僅かに赤くなった頬を隠す様に、商店街の方へ顔を向ける。

深雪 > 少女はそれこそ,余裕の笑みを浮かべている。
かつてこの少女が超越者だった頃と同じように。
他の生き方は知らないし,ほかの生き方をしたいとも思わない。
本人も自覚してはいないが,己のプライドに殉ずる覚悟さえあるのかもしれない。
生き方を変えることなく,本来の力を取り戻すことが幸福なのか。
それとも,新しい生き方を見つけることが幸福なのか。
それは誰にも分からない。

「あらあら、七生,貴方本当に弟みたいね。
 可愛いからそのままでいいのよ?」

抱きついたままでも少女は一向に気にしないのだ。
それどころかそれを推奨してくる有様である。

「そうね…それじゃ,商店街ね。」

くすくすと笑いながら,おいで、なんて言って,弟を先導するように歩き出す。
穏やかな時間が,静かに過ぎて行った。

東雲七生 > 「ぐっ……べ、べつに!しないし!」

顔を真っ赤にしながらぶんぶんと首を振る。
その後小さく、「外では」と付け足したのがはたして聞こえるかどうか。

「そういやさ、深雪って肉と野菜と魚ならどれが好きなのさ。」

一緒に住んでる割に嗜好とかはさっぱり知らないで居た事を思い出し、
商店街までの道すがら、そんな話をしたのだろう。
家に帰ってからまたじゃれ付く様に甘えたかどうかは別の話である。

ご案内:「常世公園」から深雪さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から東雲七生さんが去りました。