2016/06/06 のログ
高峰 司 > 『カァ、カァ』

「んだよ、今日は一段とうっせーな……あぁ?」

フギンとムニンの情報に、耳を疑うものがあった。
曰く『同郷の者がいた』『アレは戦乙女だ』。
信じられるものではない。神々の黄昏によって、戦乙女はほぼほぼ全滅したはずなのだから。
だが、フギンとムニンの生存が、僅かな可能性を残してしまう。
気を取り直そうと、周囲を見渡して……

「あ”ぁ!?」

目を見張る。
北欧には過去に行ったことがある。そこでフギンとムニンに出会ったわけであるし、そこで北欧の神気にも触れてきた。
そして……それと同じ者を持った女が、何故か屋台を引っ張っている。

「ヴァル……キュリア……!」

思わず声に出る。
戦乙女、ヴァルキュリア。主神オーディンに仕え、戦場を駆ける高潔なる乙女たち。
……それが、なんでこんなところで、屋台なんか引っ張ってる!?

蕎麦屋 > 「お――や。お、居た居た。」

特徴的な鳴き声を聞き逃すわけもない。
ぐるん、と屋台ごと振り向けば、声の方向へえっちらおっちら。
近づいてみれば担いでる屋台も相当ヤバい。見た目は江戸時代なのに。

「やっほ、二匹とも元気にしてました?
 ――と、今の主人は貴方ですか。なにもそんなに驚かなくても。」

気軽なものである。それこそ街角で旧知の友人に会ったような。
後半はカァカァ煩い烏二匹の主に向けて。

「はい、今は蕎麦屋なので一応そちらでお願いします?
 いやホントお忍びなので。」

こっそり入り込むのにも苦労したんですから。と。戦乙女、の単語には口に指をあててしーっ。

高峰 司 > 「……いや、オマエ、その、屋台」

分かる。
分かってしまう。
担ぎ棒は主神の槍、グングニル。瓦はトールの手套、ヤールングレイプル。主な素材は豊穣神フレイの持つ船、スキーズブラズニルの木材だ。
その他、目を凝らせばあるわあるわ北欧の宝具達。ほとんどは機能停止もしくは機能低下しているが、全て本物。ざっと見てぱっと見当たらないのは、必断にして必滅の魔剣、ティルフィングくらいか。

「な、なんてモン、持ち歩いて、屋台になんか、してやがんだ……!」

『カァ、カァ』

カラス共が『今はこの主に世話になっている』『住み家を用意して貰って契約した』などと言っている傍らで、その主が愕然としてしまう。

「蕎麦屋、って、おま、オマエ、なんで、そんな」

普段から冷静冷徹な司ではあったが……目の前で雑に再現される神話の世界に、動揺を隠せていなかった。

蕎麦屋 > 「はい?――ああ、ご明察です。
 いや、放置しとくと碌なことに使われませんから、本来処分しないといけないのですけど。
 私だと処分しようにも出来ないのですよ、これ。なら持ち歩くしかないでしょう?」

壊れたガラクタ、とは言っても神話級の物品転がしておいて悪用されないはずがない。
というのはまぁ、建前なんですけど。

「で、なるほど?別段悪い主に捕まってるわけじゃないようで。
 烏二匹も無事で何より、いや、姉妹も上司も友人も親族も纏めて吹き飛んだと思ってましたけど。
 これも巡り合わせですかねぇ……」

しみじみ。なんだかんだで文字通り一人だったところに、烏でも知り合いがいるのは――まぁ、感無量。
これで悪い主だというならぶちのめすところでしたけど。

「なんで、そんな。って聞かれても。美味しいですよね、蕎麦。
 我ながらまず見つからない擬態だと思いますし。……?」

理由なんて決まっているというのに。この烏の主は何をそんなに興奮?動揺?しているのか。
理解に苦しむ。

高峰 司 > 「そりゃあまあ、そう、なん、だろーがな……!」

北欧の宝具は、それこそ神々の武具。そんなモノ、放っておけばどれだけ悪用されるか分かったものではない。と言うより、雑に使うだけでどれだけのことが出来てしまうのか、と言うレベルのものばかりである。
でも。だからと言って。それを。

「蕎麦屋の屋台に、偽造する奴があるか……!」

分かるし。見ればそれと分かってしまうし。隠せてない。ぜんっぜん、隠せてない。

『カァ、カァ、カァ』

のんきにカラスは『こき使われるが、オーディンよりマシだし不満はない』『寧ろこの主、最近見てて面白くなってきた』『同胞がいるとは思わなかった』などと言っているが、主は動揺から脱し切れていない。
高峰司はルーン魔術師。北欧神話は最も重要視する神話体系だ。
その宝具が、目の前で、あろうことか江戸時代風に使われているのだ。
いみが、わかって、たまるか。

「隠せてねぇよ、今アタシに全部バレてんだろ……!」

そう突っ込むので、精一杯だった。

蕎麦屋 > 「そうそう、そういうことです。悪用しない分には譲ってもいいんですけどね。重いんで。
 ――我ながら何処からどう見ても江戸前の蕎麦屋台なのですけど。」

よいせ、といい加減担いでいた屋台を降ろしながら。
見た目だけなら完璧なまでに蕎麦屋台である。見た目だけなら。

「いや、でもそこの二匹に言われるまで信じなかったでしょう?
 いきなり目の前にこんなの出てきて信じます?信じられるなら正気疑いますけど。」

完全にわかってて仕立てているのだから、そのツッコミはむしろ予想してしかるべき。
ツッコんでくれる相手が居ない、とは思っていたわけではあるが。
正気を疑うような行動してる奴に正気を疑われるのは中々つらいかもしれない。

「まぁ、私としてもこんなところで同胞と世間話する日が来るとは、本当に。
 あの主神人使いは荒かったですからねぇ――と。ああ、面白いのは見てれば分ります。」

最後の同意にはすごくいい笑顔のおまけ付。

高峰 司 > 「見た目はそうだろうが、だったらせめて神気をもっと隠せ……!」

絞り出すような声。どれもこれも、最高峰の武具にして、無二の魔術礼装だ。それこそ喉から手が出るほど欲しい物ばかり。そんなものを屋台にするなんて。

「そりゃあ、素で見たら贋作を疑うがな……それにしたって、雰囲気が、それっぽすぎんだよ!アタシはルーン魔術師だ、北欧系はある程度判別つくぞ!」

必死。柄にもなく必死である。ショックが大きすぎる。いや、これはあらゆる魔術師にとって刺激が強すぎる光景ではなかろうか。

『カァ、カァ』

「うるせぇ、焼き鳥にすんぞてめーら!」

『ぼっちだったのが、友達も出来たし』『黒幕気取って間抜けするオーディンとは別方向で、見てて飽きない』と色々とんでもない事を言うカラスたちに一喝。
カラスの焼き鳥って美味しいんだろうか。

蕎麦屋 > 「出来たらしますけど、壊れてても私より基本的に上のモノばかりですからね、これ。
 あと一応、同胞探してたりしますので、こんなでも。完全に隠れたらそれはそれで問題なのですね。
 ――で、焼き鳥にします?今ならサービスでタダでやりますよ。」

どれほどの役に立つかはわからないが。万が一にも同胞が生きてるなら目印は必要だろう。
と、屋台から取り出した七輪。灯ってる炎ってそれ終末の火じゃないの。

「と。――まぁ、冗談はほどほどに置いといて。」

とはいえ、いつまでも揶揄うのはなんというか、可愛そうだ。
面白いけど。とりあえずは話を戻そう。

「わざわざ二匹飛ばして何してたんです?
 二匹の話だとぼっち脱却おめでとうございます。友達探し、というわけでもないでしょう。」

そもそも焼き鳥にされそうな二匹にしても並の魔術師なら扱いきれるものではない。
そんなものを目立つように飛ばすならそれなりに理由もあろう、そういう推察は立つ。
――理由までは分りかねるが。

高峰 司 > 「せめて七輪の火は普通のにしろ……!」

絞り出すようなツッコミ。そんなものに終末の火を使うな!

「こ、の……あークソ、そうだな、どーせこいつらがしゃべくりそうだしな……」

『カァ、カァ』

『喋るなとは契約で言われてないからな』『寧ろコイツを雇ってみたら?』
等と抜かすカラス共。しかし、道理ではある。

「……召喚獣探しだ。アタシはエオローのルーンを応用しての召喚術を使う。だから、強い手駒はいくらあっても困らねー。それをこいつらに探させてたんだ」

だが、契約するのは難しく感じる。
なにせ交渉材料が見えない。利害も無しに契約を結びに行くのは悪手だろう。

蕎麦屋 > 「いや、これで炙ると旨いって評判で。」

仕方ないので七輪は片づけよう。

「偵察には向くのですけどいかんせん機密漏洩ガバガバですからねぇ。諦めた方が早いですね。
 で、雇う――ああ。なるほど。」

二匹と契約しているのだから当然と言えばそうだが、召喚術師でもありましたか。納得はした。

「契約自体は別に構いませんけど。
 控えめに言っても、私、姉妹の中でも貴方と――というか個人魔術師と一番相性が悪いはずですけど。
 精々、ちょっと強い一兵士程度、でしょうか。」

二匹が居ないなら契約とか言われても鼻で笑う所ではある話だ。

高峰 司 > 「そ、そうなのか……」

終末の火で炙ると美味しいのか。どうなってんだ終末。

「まあ、だから情報収集にしか使ってねーよ……あ”!?」

いい、って。構わないって。どういうことだ。そんなに軽くていいのか戦乙女。

「オマエ、戦乙女だろ……そんな簡単にOKしていいのかよ。つーか、どー言う事だ?北欧のヴァルキュリアっつったら、個体でもそれなりの戦士だろーが。個人魔術師と相性悪いって、なんか事情でもあんのか?」

蕎麦屋 > 「そうなんです。今度ご馳走しましょう。」

頷く。どうなってるんだ北欧。

「いや、驚くことですか。その二匹が居てそれなりに懐いてるようですし、条件次第なら別に飲みますよ?
 で。事情――まぁ、二つくらい、理由がありますけど。」

同胞は探してた、と言ったはずだし。

「とりあえず、生き延びただけで、神格としては幾つか落ちてる、というのが一つめ。幸いガラクタにはならずに済みましたけど。
 私の権能が軍略、特に後方の兵站に特化している、というのが二つめ。衣料品だ医薬品だ食料だ武器だ兵器だならいくらでも用立てますけれど、個人用の魔術用の触媒となると私の権能の管轄外です。」

指折り数える。まぁ、相性が悪いだけで――
 
「そういうわけで、契約したところでちょっと強い召喚獣、くらいにまでは多分落ちるでしょう。
 必滅の魔剣でも振り回したら別ですが、そんなことすると私でも無事で済まないですし。」

ちょっと=死せる戦士たち一部隊分くらい。たぶん。

高峰 司 > 「……お、おう」

すー、はー。深呼吸。
少しでも落ち着かないと、やってられない。

『カァ、カァ』

カラス共が『お前、後方支援特化だったもんなー』『個人じゃあ並だよなー』と言っているのに首をかしげていたら、事情が話された。成程、そう言うことか。

「つまり、オマエは大規模戦闘の後方支援に特化してるっつーわけか。確かにアタシとの相性は微妙だが……」

それでも、神格のある相手との契約は貴重だ。しかも堕落無し、まるっきりのそれは本当にレアである。

「つってもまー、条件が合えば契約はしてーが……っておい!?オマエ、それってまさか『ティルフィング』か!?」

必滅の魔剣。そして、この場に『素材として使われていない』事を考えるに、恐らくは間違いない。
ティルフィング。ティルヴィング、テュルフングなどとも呼ばれる、必断にして必滅の魔剣。
主神オーディンの子孫、スウァフルラーメがドヴェルグを捕らえ、無理矢理作らせた『黄金の柄で錆びることなく鉄をも容易く切り、狙ったものは外さない』と言うとんでもない剣。
だが、捕らえられたドヴェルグは、恨みから『この剣の持ち主には破滅が訪れる』と言う呪いをこの剣に残した。
それから、スウァフルラーメ、アルングリム、アンガンチュール、ヘルヴォール、ヘイズレク、アンガンチュールと、様々な持ち主の手に渡ったが……その過程で、ヘルヴォールと、二人目のアンガンチュール以外に非業の死を与えている破滅の剣である。
そんな魔剣を持っている、と言うこと自体が驚きだが。
何より、それで死んでいないと言うことは……

「……もしかして、ヘルヴォール、なのか……?」

だとしたら。
その武勇は『ちょっと強い』どころではない。
荒くれ者のヴァイキングを従え、父アンガンチュールの墓が拒絶しても平然と分け入ってティルフィングを授かり、その後も多くの戦いに勝利した武人。
後方支援特化、と言うことが信じられないくらいの、前線向けの人物のはずだが……?

蕎麦屋 > 「ですよねー。前でバリバリ戦う姉妹と一緒にされると結構しんどいんですよ、これ。」

烏二匹に相槌。
まぁ、堕落というか蕎麦に堕ちてる気はしなくもないけど。

「そう、何処かの主神の末裔が打たせた、願いが叶う代わりに必ず死ぬ、悲劇の魔剣です。
 本来なら私が持っているのもちょっと伝承から外れるのですけれど。」

まだ驚く元気があるのに逆に驚くけれど。疑問には肯定で返した。
ヘルヴォルの子孫が持っているはずの魔剣であり、本来なら手元にあるのはおかしい。

「そういうわけで。
 はい、盾持つ乙女、軍勢の守護者、ヘルヴォルですよ。
 ――訝しむ理由は大方想像がつきますけれど、その人間としてのヘルヴォルの武勇は、私にはちょっと。」

もう一度の肯定、と若干の修正。
前線向きというならそうではある。なんせ軍略の要、兵站を無視して軍を動かせるのだから。

高峰 司 > 「そ、そうだな……伝承通りなら、そいつは二人目のアンガンチュールが捨てたはずだ。封じて捨てただけなら、現存しててもおかしくはねーが……」

驚きにまた呼吸を乱しつつ、深呼吸を試みる。動揺しっぱなしである。
そして、また動揺する羽目になった。

「ほ、本当にそうだったのかよ……と言うか、どういうことだ?『盾持つ乙女』ヘルヴォルと、あのヴァイキングのヘルヴォルは違うって事か?」

いや、伝承の中では同一だったような……?と首をかしげる。
ヘイズレク王とヘルヴォルのサガはあまりしっかり読み込んではいないので、どこかで考え違いでもしていただろうか……?

蕎麦屋 > 「封じて捨てたはずなんですけどねー……ホント。魔剣って魔剣です。
 あれだけ世界ボコボコになったら一つや二つは解けますよね。」

しみじみ頷く。

「いや、本来同じものだと思いますよ?
 ただ、人間を創造できなかったのか、武人としての能力ごっそり抜け落ちたか。
 結局のところよくわからん、という所です。面倒なら同じでもいいです。
 結局のところ私は私ですので。それ以上でもそれ以下でもなく。」

説明を途中でぶん投げた。
疑問はごもっともだが――結局のところ本人にもよくわかってない。
ただ、武人としての苛烈なまでの武勇は失われているという事実があるだけ。

「で。どうします?
 契約するなら条件言った方がいいです?あ――大した内容じゃないですけどね。」

高峰 司 > 「あ”ー……『大変容』か」

大変容によって、世界は大きく揺れ動いた。確かに、神話の中で封じられたものの一つや二つ、飛び出て来ててもおかしくはない。

「成程な……人間、ヘルヴォルの持つ特性は引き継げてねーっつー事、か?
まあいい、それでもオマエが希少なタレントを持ってるのには変わりねー」

例え個別の戦闘で使いでが無くても、例えば他の契約を結ぶ際にキーパーソンになる可能性だってある。
それに、神格持ち、そして『ティルフィング』持ちとあらば、いくらでも役立つ場面はあるだろう。

「条件を聞きたい。何が条件だ?」

故に。こんな美味しい召喚獣を逃す手も無く。
躊躇いなく、喰いついた。

蕎麦屋 > 「そういうのでしたっけ?よくは知りませんが、それでも人間はよく生きている、と思いますよ。」

うちだけならまだしも、あちらこちらで終末級の異変が起きたというのに。
生存力の高さは折り紙付き、だからこそ見ていて飽きない。

「はい、ご明察。そういう認識で大体合ってます。
 で、条件ですが。さて。」

理解の早い相手は助かる。契約となればなおさら。あとあと虚偽だ欺瞞だと騒がれても困るわけだし――と。
契約の内容。しばし、言いよどみ。

「いや、その――ですね?
 此処の住民票の取り方教えてもらえません?いやもう落第街でしたっけ。あそこからここまで走ってくるのしんどいのですよ。
 交通機関も何も使えないし不便で不便で。」

高峰 司 > 「それはまあ、否定しねーけどな」

司からすれば、それはある種の生き汚さに見えるのだが。
それでも、確かによく粘って生きていると思う。潔さとは程遠いその性質こそが、人類の強みなのかもしれない。
等と、納得していたら。

「………………………はあ?」

思えば、確かに当然の悩みなのかもしれないが。
神代を生き、神々の黄昏を生き抜いた戦乙女が口にするには、あんまりにもあんまりな悩みが飛び出してきた。
そして、それは……結構面倒な悩みでもあった。

「あ”ー…………」

この学園は、基本的に生徒と教師の二種で構成される。
研究員や生徒の家族などもいるが、住民登録をするならば、基本的には生徒になるのが手っ取り早い。
のだが、その分の学費は必要だし、教師になるとしてもなれるかどうか。
食堂勤めの職員になることを勧めるべきか……?

「それ自体は構わねーが、ここで住民登録すんなら、基本生徒か教師だ。オマエ、そのどっちかになるつもりは?」

取り敢えず、聞いてみよう。

蕎麦屋 > 「うん、そういう反応ですよね。」

分ってた。
とはいえ、割と困る内容なのだ。実際。

「ちょっと一っ跳びでこっち潜り込みましたから。
 正規の手続きしようにも場所が分らなくてですね。いやはや。」

たまたま落第街についたからそのまま居付いただけである。

「おや、学業?ほう、勉強ですか。私が教えられるのは自分基準の軍略くらいですけど。」

権能ありきの軍略など本人以外にどう扱えというのか。

「――まぁ、今すぐじゃなくても構いはしません。
 正直条件無くてもいいんですよ。そこの二匹が面白い、っていうならちょっと興味もわくもので。」

肩の烏、偵察に特化した二匹を示しながら。
その二匹が見てきた中で面白がれる人間、となればかなりの逸材のはず。

「そういうわけなので。細かい話は後で構いません。
 ――ああ、但し。他の手持ちの召喚獣で手に負えない案件か、蕎麦の出前なら承りますけど。
 それ以外の要件での呼び出しは応じかねます。と付け加えておきましょう。私みたいなのが居る、と本格的にバレればそれはそれで非常に面倒なことになりますから。お互いに。」

高峰 司 > 「ぁー……」

まあ、困るのは分かる。ここのインフラは全て住民登録しないと使えないのだから。

「偽造……はリスクあり過ぎだしな。困ったら、最終的にアタシの家族って事で何とかねじ込むさ。条件も了解だ、アタシもそうそうに戦乙女を呼ぶ気にはならねーよ」

大雑把ではあるが内容を詰めていく。
まあ、現在本当の家族とは縁を切っている。故に、ここで偽装してもバレる事も無いだろう。

「で、そこまで言うって事は、契約自体は今してもいい、ってことか?」

蕎麦屋 > 「暴れたい気もしますが、暴れるにしても場所は選びたいものです。
 ええ、手段に関してはお任せしますし。――ああ。違法なのはお勧めしません、合法なのでお願いします。」

若いのに道を踏み外させるのは、年長者ととしてあまりいい気分のものではない。故にその部分は明確に否定しておく。
確認には頷き――

「ええ、構いませんよ。
 ――何か私の方からすることはあります?」

高峰 司 > 「わかった、合法で何とかしよう」

こくん、と頷く。契約は絶対、何としても履行する。
……困ったら、凛霞に相談でもするかな。などと無意識に考えている自分のほだされっぷりには気付かぬまま、話しを進めていく。

「じゃあ、掌出してくれ。そこにアタシがエオローを刻んで、後はアタシの胸に手を当てて契約詠唱をしてくれればいい。
『我、ヘルヴォルは、高峰司を真なる友として認め、彼女が窮地に陥りし時、あらゆる障害を越えて助けに向かう事を此処に誓う。此処に契約は成れり、我等は断金にして永久の友なり』ってな」

ちなみに、この『胸に手を当てる』が上手く出来ない相手には別口の方法を使うのだが、それは些か面倒だ。
故に、問題ない相手ならこの方式を多用するのである。

蕎麦屋 > 「はい、それでよろしいです。――寝覚めが悪いのは勘弁願います。
 と、まずは掌ですか。――これで宜しいです?」

左の掌を差し出す――遠目には細くしなやかに見えても、実際は黄昏の戦場を駆け抜けた武人の手。

「ああ、契約とは関係ない個人的なお願いなんですけど。
 その二匹、一晩借りても構いません?終末以来の同胞なもので。」

ふと。断られたならそれでもかまわない。そんな話を切り出した。

高峰 司 > 「了解した。ああ、それでいい」

言いながら、掌にエオローのルーンを刻み、魔力を込める。
これで準備は整った。

「あ”ー……?」

その後の願いには、少し考え込む。
……高峰司は、同胞との友情など信じない。
そんなものは具体性のない感傷であり、時がたてば忘れ去られるもの。明確な契約と利害こそが、人を繋ぐものである。
だから、本来なら馬鹿らしいと一蹴する話ではあるのだが……

「……分かった、貸してやる。いけ、テメーら」

『カァ、カァ』

カラス共が『ここで俺らを貸し出す辺り、変わったよな』『あのお嬢ちゃん様様だな』などとうるさいが、否定は出来ない。
……家族のために、妹のために、どこまでも姉を張り通す馬鹿がいた。
ソイツを、友達だからと利害無視で助けようとした馬鹿がいた。
だから……人は、利害と契約だけでは、無いのだろう。
ならば、それくらいは聞いてやってもいいか。そんな気分になったのだ。

蕎麦屋 > 「――おや、ではありがたく。
 はいはい、では、えーと。契約でしたね。」

積もる話もあるが。この契約者がどう面白いのか。
この二匹なら一部始終を見ている事だろうし――面白い話が色々聞けそうだ。
そんなことを思いつつ、二匹の主人の胸へと左手を当て――

「えー……
 『我、ヘルヴォルは、高峰司を真なる友として認め、彼女が窮地に陥りし時、あらゆる障害を越えて助けになる事を此処に誓おう。
  ――此処に契約は成れり、我等は断金にして永久の友なり。』
 ……ああ、なるほど。司ちゃん?司君?なのですね。」

契約する前に名前くらいは聞いておけ、という話である。

高峰 司 > 「……言い忘れてたな。高峰司、女だぞ?」

そう言えば言っていなかった、と迂闊を反省しつつ。
……一応、本当に一応、僅かだが、胸には膨らみがあるはずなのだが。
その上で『君』などと言っているのであれば、コノヤロウと言う話である。

蕎麦屋 > 「あら、これは失礼。――司君?」

はい、わざとです。
いやなるほど。二匹が面白いというのも分る。

「さて――契約は終わりましたけど。
 基本的には契約しただけのぷーさんになっちゃいますし。」

実際ぽんぽん気軽に呼び出せるわけではないのだから、しばらくは所謂ニートみたいなものである。
そういうわけで、屋台をごそごそ。あれは何処に使ったか。

「粉砕するのと貪り食うのならどっちがお好み?」

高峰 司 > 「…………」

ぴくぴく、と口の端が引き攣る。わざとやってるなコノヤロウ。

「で、オマエはなんの好みを聞いてんだよ」

そして、呆れたようなイラついたような、そんな声で質問に質問を返す。
いや、いきなりそんな事聞かれても困るに決まってる。

蕎麦屋 > 「好みというか。いや、どっちがいいかと思いまして。
 私が持ってるとただのガラクタですが、私と契約できる魔術師なら使えるでしょう?
 ちょっとした契約のおまけです。」

蕎麦を伸ばすのし棒――にしてはやけに短いもの。
或いは風鈴を吊るしていた、細くしなやかな紐。

はい、どっち、と。

高峰 司 > 「……まあ、その二択なら、粉砕、か?」

めっちゃくちゃ困り顔で返事をする。
というか あれ ミョルニルと グレイプニルじゃ

蕎麦屋 > 「はい。まぁ、有効に役立てて下さい。
 ガラクタでも使われなきゃ悲しいものですから。」

推察の通りかどうかはともかく。はい、とのし棒を手渡した。
推察の通りだったところで、その神性は失われて久しいのだから大した問題ではない。

「さて。じゃあ、二匹は借りていきますね。翌朝には帰しますので。」

よいしょ、と屋台を担ぎ上げる。

高峰 司 > 「あ、ああ……」

ミョルニル、の、柄だろうか、これは。
一応魔術礼装としては最上級ではある。残骸だが。
自分でも持てる辺り相当劣化しているのが分かるし、これで何が出来るかと言えば難しいのだが……

「えっと……じゃあ、な」

困りに困った顔のまま、ヘルヴォル……いや、当人の希望によれば、蕎麦屋……を、見送るのであった。

蕎麦屋 > 「はい、では後程。
 あ、蕎麦の出前で呼ぶ分には何時でもどうぞ。」

屋台の屋根に二匹の烏を乗っけたまま、公園を出ていく。
――とりあえずは朝までこの二匹から主の話を聞くことにしよう。

そう思えば、住み家までの道のりなど徒歩でも軽いもの。

ご案内:「常世公園」から蕎麦屋さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から高峰 司さんが去りました。
ご案内:「常世公園」に浅田扁鵲さんが現れました。
浅田扁鵲 >  
【学校内に治療室を構え、様々な事情を抱える生徒たちに手を貸すつもりの浅田だが。
 偶には治療室に居られない事情がある日もあるのだ。
 端的に言えば、自分が治療室にいる事で訪問してくる患者や客に不利益を与えかねない日なんかは、学園に申告して休業させてもらっている。
 ……まあ、その主な原因といえば】

「あー……楽しそうだな……」

【公園のベンチにぐったりとすわり、コーヒーを飲んでだらだらとする浅田。
 傍から見れば、その様子はまるで休日のお父さんのような。
 その視線の先が、遊んでいる子供たちに向けられているのがそれっぽさを加速している。
 数人で追いかけっこをしたり、缶蹴りをしたり、ボール遊びをしたり。
 そんなまだ幼さの残る少年少女を眺めて、浅田はやはり退屈そうにぐったりとしていた】

浅田扁鵲 >  
【楽しそうに遊ぶ子供たちの中に、一人、角を生やした少女が混ざっている。
 やや太い木の枝のような角を生やし、明るい緑の甚平を着て、青い髪をした少女。
 彼女、シャオと浅田が名づけた子竜の少女は、普通の子供たちに混ざって遊んでいた。
 そして、そのシャオこそ、浅田が今、こうして公園でぐったりとしている原因である】

「遊びにつれてけと煩いと思えば、いざ遊び始めると俺なんざ目に入らないんだからなあ」

【相手はまだ幼い子供、とはいえ純粋な竜種の娘である。
 仕事だからとあまり構わずにいて癇癪を起こされたら堪ったものではない。
 というわけで、治療室はシャオのご機嫌伺いのために休業と相成り、公園に連れ出してやったのだが。
 同年代の子供たちと遊び始めれば、大人なんて邪魔なだけというもの。
 かといって放って帰るわけにも行かず、保護者という体で、様子を眺めているのだ。
 だがしかし】

「……退屈だ」

【楽しそうな子供たちを眺めているのは、あまり悪い気分ではないが。
 それはずっと退屈せずに居られるようなものじゃない。
 浅田は子供たちを眺めながら、どうやってこの退屈な時間を乗り切るか考えていた】

ご案内:「常世公園」にクロノさんが現れました。
クロノ > (保健医勤務と工務員勤務の合間、貴重な休憩時間。少年型ロボットはそのつかの間の時間に給油を済ませて、機械としての食事は完了。けれども男の子としてのお夕飯は、その手に提げた鞄の中のお弁当。)

「…ん、このくらいの季節が一番過ごしやすいよね。」

(いつも通りに賑わう公園をのんびりお散歩するロボットは、元気に遊ぶ子供たちを微笑ましく見守りつつ、手近なベンチを探しながら歩く。…と、公園の一角、ベンチの一つにはお疲れMAXな人影の姿。はしゃぐ子供たちと、魂が抜けかかる途中みたいなその人影のテンションの格差に、男の子は一瞬くす、と微笑んで。)

「…こんにちは。ここ、いいかな?」

(少年の形をした、いかにもな感じのロボットが、ベンチの彼に話しかけた。)

浅田扁鵲 >  
「……え、ああ。
 かまわないよ」

【完全にぐったりとし、危うくそのまま寝てしまいそうになりかけたところで、幸いにも声が掛かった。
 やはり気だるげな視線を声の元に向けると、その姿はいかにもとしか言い様のないロボット。
 いや、頭部が非常に人間的に見えるのもあり、なんとも奇妙な風体と思えた】

「…………」

【が、まあそういう人もいるか、常世島だしと欠伸を一つして】

「子供ってのは、どうしてああも元気なものかねえ」

【話しかけている、というよりは独り言のようなトーンでこぼす。
 視線の先にはボールを蹴って遊ぶ子供たち。
 角付きの少女もボールを追って駆け回っていた】

クロノ > 「…ん。ありがとう。」

(相手の返事に男の子は嬉しそうにぺこ、と小さく会釈ひとつ。機体の節々からジージー、ヒュンヒュンと駆動部品が動く音を鳴らしながら、しかし滑らかに、でも人間の挙動よりは直線的な身動きで隣に腰をおろす。)

「…ふふふ、そうだね。…きっと、未来を生きるためのエネルギーがいっぱい詰まってて…溢れてるんだよ。」

(相手の独り言のような問いかけに、男の子ロボットも少し離れた子供たちを見守りながら、どこか少し遠い眼差しで、でもそんな子供たちを羨ましそうに、優しく呟く。そうして少し一緒にボーッとしたら、鞄からお弁当箱を取り出して蓋を開ける。ごくごく平凡な、手作り感たっぷりのお弁当。)

浅田扁鵲 >  
「まあ、そういった説はどこでも良く聞くものだな。
 また年を重ねて落ち着くのは、そういったエネルギーが成長に使われて余分がなくなるからだと。
 ちなみにそのエネルギーを東洋医学では『原気(げんき)』と呼んでな。
 ああいう『元気』と通じるものがあるのは面白い。
 まあつまり、年を重ねても落ち着きがなく子供のように動き回る大人は、そういった生まれながらの両親から受け継いだエネルギーが未だ豊富に蓄えられているというわけだ」

【あまりに退屈だったのだろう。
 相変わらず独り言のようなトーンで、視線は子供たちに向いていたが。
 薀蓄といえるような内容がだらだらと喉から滑り出していた】

「……しかし、ロボットも弁当を食べるのか」

【ふと鼻腔を掠めた匂いに視線を向ければ、そこには手作りっぽいお弁当。
 『随分とSFチックな光景だ』と、感心したように漏らした】

クロノ > 「…へぇ。…ふふふ、詳しいんだね。東洋医学の専門家?」

(子供たちを見守りながら紡がれる相手の言葉に、ふんふん、と頷く相槌を打ちながら聞く男の子。おでこに小さく、パソコンみたいにチカチカと点滅するインジケータランプ。瞳孔の奥に、小さく光るセンサーの明かり。)

「…ん。僕はエンジンとバッテリーで動くロボットだけど、人間の食事もできる構造だから。水の中を泳ぐ以外は、人間の出来ることはだいたい出来るよ。」
(せっかくできるなら、人間らしい暮らしをしたい、と静かに話す男の子。SFチック、と言われつつ、男の子ロボットは「いただきまーす♪」とお弁当箱の上で一度両手を合わせて、ぱく、もぐもぐ。とっても人間くさい挙動、見た目がもう少し人間っぽかったら、多分機械だとは気づかれなさそうだ。)

「…ね、きみは何してるの?一休み中?」
(さぞかしお疲れな様子の相手と、その視線を辿って遊んでいる子供たちとを交互に見遣り、尋ねてみる。)

浅田扁鵲 >  
「ああ、一応な」

【そう素っ気なく返しつつも、隣の機械的な部分に少なからず興味は惹かれているようで、ちら、と盗み見るような視線が向けられる。
 これでもかつては男の子だったのだから、やむを得まい】

「なるほど、その様子じゃ水には浮けないだろうな」

【『なるほど、確かに随分人間らしい』と、その様子にコメントし】

「俺は、ただの保護者だよ。
 あそこに混ざって遊ぶわけにも、いかないしな」

【望まれるでもなければ、子供の世界に大人が混ざるのは、あまり好ましくない事が多い。
 非常に気だるげな様子の浅田の視線は、子供たちの中でも少々目立つ、角付きの少女に向いているのが分かるだろう。
 格好からして作務衣の男と甚平の少女である。
 共通点として申し分もないところだろう】

クロノ > (一応、と返す相手には、お手製の卵焼きをもぐもぐしながら「お疲れさま」と。続く相手の話を静かに聞きつつ、目と鼻の先から聞こえてくる子供たちのはしゃぐ声に男の子もニコニコ顔だ。)

「…ね、きみたちって、もしかして東国の出?」
(がっつり機械の自分が言うのもなんだが独特の風貌の二人を交互に見比べて、そんな疑問を尋ねてみる。)

「…僕もね、東国の製品なんだ。今はこの街で、医師として働いてる。…いろんな人たちが入り交じりながら暮らしてる、良い街だね。」

(自らを保護者と言った相手、恐らく角の少女とは血の繋がった親子ではないのだろう。けれどもそんな人々をも受け入れ、こうしてほかの人々とも分け隔てなく住まわせてくれるこの街の空気感は、異国の機械にとっても居心地が良いようだ。)

浅田扁鵲 >  
「ああ、俺は日本、あいつは大陸の出だよ。
 数年前に大陸で会って、面倒な事に俺が預かる破目になった」

【などと、面倒とはいいつつも、嫌そうな様子は見えないだろう。
 少女を見る視線は、すっかり親が子を、兄が年の離れた妹を見るようなそういう視線だ】

「なるほど、そいつは奇遇だな。
 俺も東国出身で治療家だ。
 ……ああまったく、この島は本当に何でも受け入れる。
 あいつを気兼ねなく連れて歩けるのは、俺にとっても中々ありがたい環境だよ」

【良い街だという言葉にはっきりと同意を見せて、微かに笑みを見せる。
 やはり気だるげで、退屈そうではあったが、こういう平和と言って差し支えない時間は好きなのかも知れない】

「……浅田扁鵲、教員兼、治療家だ。
 一応、東洋思想の講義を受け持っている。
 あいつはシャオ、見ての通り竜の子だ」

【そしてようやく、まるで事のついでといった風だったが。
 世間話程度の自己紹介をして、缶コーヒーを呷った】

クロノ > (面倒、という言葉とは裏腹、こうして一緒に公園に来て、他の子供たちと無邪気に遊んでいる少女と、それを静かに見守る相手の雰囲気は実に穏やかで。家族というものを持たない工業製品の男の子は、血の繋がり云々というのはさほど気にせず、それでいてこういう自然な“家族”と呼べそうな彼らの様子を見て、幸せそうに微笑んでいる。)

「…そっか。…扁鵲、シャオ…。ふふふ、反抗期になったら大変そう。頑張ってね。」

(竜の仔、と紹介された角の少女と、隣に居る相手と。きっと二人が生きる時間もずいぶんと規模が違うのだろうし、この先も苦労は多そうだ。けれども、そんな彼らのこれからが幸せであってほしいと願うのは、そう願うようにプログラムされたAIだからなのか、それとも機械仕掛けの魂の、心の声なのか。)

「…僕はクロノ。型式はA1101S 製造番号8928327。学校の保健医と、設備維持補修の工務員を兼任しているよ。」

(東洋の出ではあれど、どちらかと言えば西洋医学中心の医師である男の子。相手に応えるように男の子も手短に自己紹介しつつ、ロボットお手製のお弁当を食べ進める。)

浅田扁鵲 >  
「……考えたくもないな。
 そのときはさすがに、死ぬかもしれん」

【一瞬、鳥肌を立てたように肩を震わせたのが分かるだろう。
 寿命だけでなく、生物としてスペックが根本的に違うのだ。
 そのときするだろう苦労を思い描いてしまったのか、がくりと首を倒してため息を吐いた】

「クロノ……保険医か。
 工務は分かるが、少しばかり意外だな。
 まあ同業として、手を借りることもあるだろう。
 その時は、それなりによろしく頼む」

【片手を挙げてよろしくと告げる。
 そして、よっこらせと腰を上げた。
 それと同時に、子供たちの群れが解散し、角の少女が他の子供たちを見送っていた】

「……そろそろお開きのようだ。
 暇つぶしに付き合ってもらえて助かったよ」

【そう、帰る様子を見せつつ言い薄く笑った】

クロノ > 「ははは、…大丈夫、きっとね。」
(ヒトに近しい姿の竜の仔、そんな少女を一緒に並んで見守りながら「竜は、強くて優しくて、賢いから。」と静かに続ける。)

「…ヒトも機械も、あとは動物医や植物医の認証も取得してるから。…何か困った事があったら、その時は助太刀させてもらうよ。よろしくね。」

(解散する子供たちと、残った彼ら親子。相手の礼に、男の子も食べ終えたお弁当箱を片付けながら「どういたしまして」と頷く。少し離れた竜の仔の少女に、ロボットは金属の手をゆらゆらとのんびり振りながらニコ、と微笑んで。)

「…今日はありがとう、気をつけて帰ってね。」

浅田扁鵲 >  
「……かもな。
 はは、そいつは頼もしい。
 俺にはちょいと足りない分野でもあるからな」

【返礼を受けて頷き返せば、少女のほうへ再び振り返り歩いていく。
 少女へと手を振るのなら、それにキラキラとした青い瞳を向けてブンブンと手を振り返すだろう】

『扁鵲っ、あの人なに!?』

「ん、頼れる同僚だよ」

【二人が去っていく時、そんな会話が聞こえたかもしれない】

ご案内:「常世公園」から浅田扁鵲さんが去りました。
クロノ > (あれだけはしゃいで他の子供たちと遊んでいた少女は、それでもまだ溢れんばかりに元気いっぱいに手を振り返してくれた。ロボットは嬉しそうにニコニコ顔でそんな少女と、並んで歩く彼を見送る。)

「…頼れる同僚、か。僕も頑張らなきゃね。」

(そうのんびりひとりごちて、片付けたお弁当箱の入った鞄を片手に、ロボットもベンチから立ち上がって歩き始める。バッテリー駆動からエンジン駆動に切り替わったロボットが歩いていった後には、僅かに排気特有の熱気と臭気が残る。)

ご案内:「常世公園」からクロノさんが去りました。