2017/04/30 のログ
竹林はんも >  
勇気を超える叡智、ご存知でしょうか。そうですね、開き直りですね。

「よし」

かなりしっとりしていますが、少なくともベタついてはいない髪になりました。
ちゃんと確認していませんが、風呂上がりと同じ状態なのであるとしたら、外ハネが落ち着いてストレートみたいになっているはずです。
可愛いですね。私はどんな髪型でも可愛いですけど。
シャツもちゃんと着て、と。ついでにペットボトルも洗いました。持ち手がべたつくと嫌なので。
気分的にはもう、このまま中身を下水へ流したいのですが……。

「……うん」

飲みきることにしました。
思ったより金欠なので、これに掛けたお金を無駄にしたくないのです。



「……わひーっ…………げぇっ……うっ」

たった数百ミリリットルを飲み干すための大立ち回り。
明日以降、学校で変な噂になってないようにと祈るしかないのでした。
私の輝かしいGWはこうして幕を開けたのです。

ご案内:「常世公園」から竹林はんもさんが去りました。
ご案内:「常世公園」に宵町 彼岸さんが現れました。
宵町 彼岸 > 公園の一角に小さな噴水がある。
子供たちの遊び場となる芝生部分の端の方にあり、
あまり目立たない造形であり、有名な作家の物でもない。
加えて水は止められている事も多く、それを明確に意識する利用者は少ないかもしれない。

けれど人魚姫をモチーフにした像から溢れ出す水は
今日のように少し汗ばむような日には丁度良い涼やかさを周囲に振りまいてくれる。
人魚の持つ水瓶から零れおちていく流水と、揺れる水面、涼やかな水音……
飛沫と水面にキラキラと反射する日の光も相まって
GW中という世間の騒がしさに反してまるでゆっくりと時間が進むような、そんな景況だった。

宵町 彼岸 > 正午を過ごし過ぎた頃、そのふちに腰かける小さな姿があった。
両膝を揃え、片手に本のを持ち、少し俯き加減で目を閉じている。
普段後ろに流している髪は一部が肩から零れ、
その腕はなにかを守るかのように抱きしめている。

抱きしめられているのは……彼女と同じように転寝をする少年だった。

宵町 彼岸 > 抱きしめている少女はかなり整った造形をしているものの、
かなり緩いタイプの服を身に付けているうえにそのサイズもあっていない。
見つめる角度によってはかなり危ういところまで見えてしまう様な服装の上に
ゆるーく白衣を羽織っている。完全にちょっとあれなひと。
第一印象は無防備な危なっかしさと、ちぐはぐさを与えるかもしれない。

対して少年は少女の腕の中にすっぽりと納まる程度に小柄で
簡素ながらにきっちりとした服装をしている。
少し長めに伸びた髪や細い腕と小さな体躯から大人しい印象と少々神経質そうな印象を受ける。
年齢としては小学生低学年か幼稚園……その程度かもしれない。

宵町 彼岸 > 少女の手にある本の題名は『Den lille Havfrue』
その表紙は青を基調とした美しい水彩画で、
数ある絵本の中でも割と人気の高かったものの一つ。
描かれているのは日本語ではないものの、
とある人物と出会い陸に焦がれ……といった絵を眺めていけばほとんどの人は
その内容に思い当たるであろう人魚姫の悲恋のお話。
それは途中まで読まれていたのかもしれない。
途中のページに小さな栞が挟まれ、栞に結びつけられたリボンが
少女と少年の髪を揺らす穏やかな風に僅かに揺れている。
もう片方の手は少年の体に回され、包み込むように、守るかのように彼を優しく抱きしめている。

……何も知らない人がそれを見れば、姉弟のように見えるだろうか。
とは言え髪の色も纏う雰囲気もあまり一致しない事から
変わった関係かと勘繰る人や、もしくは事案発生中かと訝しがる人もいるだろう。
それ以上に二人揃ってすやすやと寝息を立てているのはいくら治安の良い地域とは言え
あまりにも危なっかしいかもしれない。

宵町 彼岸 > 「……ん、ぅ」

少女が少しだけ身じろぎをする。
どれだけ眠っていたのだろう。少しだけ冷たい風にゆっくりと瞳を開けた。
何故だかお腹辺りが温かい……と思い目を落とすと
腕の中ですやすやと眠る少年の姿。

「……あれ?」

どうしてこんなことになったんだっけ。
ゆっくりと記憶を探りながら少年の頭を撫でる。

「起きて―……そろそろ帰らないと怒られちゃうよぉ」

もうすぐ日の落ちる時間のよう。
穏やかな風はそろそろ体を冷やす風になる。
この島の風は特に冷たいのだから。

「……お寝坊さんはわるぅぃ人に連れて帰られちゃうよぉ」

ああそうだ、思い出した。
たしかあの時は……私は本を読んでいたんだっけ。

宵町 彼岸 > 事の発端は数時間前に遡る。

――彼女はここで本を読んでいた。
絵本ではなく、厚さも数センチあるような
活字慣れしていない人物であれば数秒で頭痛を起こすような内容の物を。
理由は……確かあまりにも転機が良いからとかそんな理由。
最近あまり実験をしていないけれど……それはあまり気が進まないからだった。
元々気まぐれで進めるタイプの上に……表向きの研究の方は
むしろいったんやめて休憩しろと言われる程度。
GW中も楽しく研究しようとすると、研究仲間に

『楽しく休めないからやめろ』

と言われて追い出される羽目になった。
彼らは有休を使って9連休らしい。9日間も研究しないとか
ビタミン不足にならないんだろうかとも思うけれど。

宵町 彼岸 > 「なーんだかなぁ」

別に研究室から締め出されたのは問題ない。鍵は持っているし。
人が一人もいないのも問題ない。一人でできるし。
問題は……主任が言っていた例の一言。

『もしGW中にここに立ち入ったら
 今月冷蔵庫使用禁止にするからな。
 冷凍庫とかも使わせない。というかおやつ休憩を無くす』

……由々しき事態である。
おやつ休憩を楯にするなんてあまりにも極悪非道、冷酷無比な仕打ちだとおもう。
しかも何故か他研究員のそれに頷いていた。

『俺たちの休憩もなくなるからな!
 ちゃんと守るんだぞ!』

「……え、副主任甘いもの嫌いじゃぁ」

『いや其処は気にしない方向で』

どうやら研究しすぎと思われているらしい。
その後いかに高校大学時代……青春時代というものが貴重で
キラキラした青色の季節なのかという事をこんこんと語られる羽目になった。

『特に理系で女子が一人もいない学校なんかなぁ!』

いや貴方今奥さんと子供二人いるでしょう。
そんな事を思うも周囲の同意とその気迫にそう言いだせない迫力があった。

宵町 彼岸 >   
『青春時代を研究で潰してしまうというのは後になって絶対後悔するぞ!?
 良いか、今しかその時代は過ごせないんだ!
 だから大事にしないとだめなんだよ!
 こう彼氏とか作ったり、友達と届か出かけて遊んだりとかな!?』

拳を握って熱弁されているのを小首を傾げながら受け止める。
周囲ではうんうんと頷くものや、俺にそんな青春なかったけどなと呟くもの、
涙を流しながら壁を叩くもの、それを慰めている者すら居る。
いや貴方も先日彼女が出来たって嬉しそうにして……あ、今この場にいるってことは……

「何だこれ……なにこの伏魔殿」

どれだけこのヒト達青春時代後悔してるの。

宵町 彼岸 >   
『そういう訳だから、カナタ君はちょっと研究以外の事しなさい
 GWの9連休中、実験禁止!』

そういわれてそのまま研究所から追い出されてしまった。
何故かハイタッチの音が聞こえたりした辺り、とても盛り上がっていた。

「……なんだかんだで」

良い人達なんだと思う。
ちょっと不器用というか、問題点は多いけれど。
此処だけ見れば何か別の理由があって彼女を追い出したととられかねない。
……彼らはそれぞれ思う所はありつつも
彼女の事を心配してくれているというのも嘘ではないと判ってはいる。
今までも何度か同じような事を言われてもいたし、
どんな理由であれ、忠告してくれているのは間違いないのだから。

宵町 彼岸 > とは言え彼女は友人達からGW中の予定を聞かれた際
既に予定が入ってしまっていると色々断ってしまっている。
そこから誰かに声をかけるというのも何だか面倒くさいし……
何だか誰かを選んだみたいでちょっとめんどくさい。
友達付き合いというのは結構パワーバランスが大事なのだから。

「うん……本でも読もう」

そういう訳で帰り際に独りで本屋に立ち寄り、
抱えるほどの本をもって寮に帰り……
天気が良い事も相まって少し公園にでも行こうと思い立った次第。

宵町 彼岸 >   
――思いを巡らせながら読んでいた本を閉じる。
思い出しながら読んでいたのに読み切ってしまった。
もう一度最初から読み直すにしても、頭の中で読み返せばいいし……
そんな事をぼんやりと考えながらもゆっくりと周囲に視線を巡らす。

カップル……親子連れ……友達連れ……etcetc
疎らながらも周囲には人がたくさんいる。
その誰もが楽しそうで、その誰もがどこかに向かっていた。

ご案内:「常世公園」に東雲七生さんが現れました。
ご案内:「常世公園」から東雲七生さんが去りました。
宵町 彼岸 >   
「……」

考えすぎなのだとは思う。
本当に自分はめんどくさい思考をしているし、
実際経歴からしても面倒くさい。
表向き孤児院育ちで、しかもその孤児院も無くなっていて
帰る場所もないカワイソウな少女……もうこのカタログだけで
普通の人は出来れば関わりあいたくない。

「……まぁどっちでもいいんだけどね」

それでもステレオタイプに振舞えば
ある程度の人脈や人望というものは出来てくる。
学校では話す人も多いし、クラスメイトには受け入れられている。
けれど……

「……」

皆行く先があるというのは少し羨ましい気がする。
此処も、今も通過点に過ぎなくって、
皆それぞれ何かに向かっている。
それはこの島も、他の場所も大して変わらない。

宵町 彼岸 > ……ふと周囲を見渡していた視線が一人の少年と合った。
こぎれいな格好をしてはいるものの……
たった一人でとぼとぼと歩いているように見える。
周囲のどこか浮ついた印象の中ぽっかりと沈み込む様な
いかにも一人きり…といった雰囲気。
彼はこちらと目が合うと此方をじっと見つめていた。
目が合ってしまったのだからとほほ笑み、小さく手を振る。

宵町 彼岸 > それに安心したのかもしれない。
それともどこか、同じような雰囲気に見えたのかもしれない。
その動きに少年は少しほっとしたような表情を見せると
ゆっくりと近づいてくる。
……見たところ、小学生低学年前後と言ったところ。
かなり小柄で、独りで出歩くよう年齢にはあまり見えない。
例えるなら……初めてのお使いに出てきそう。

「んー…?どったのー?しょーねん
 おかーさんとかおとーさんとはぐれたのかい?」

近づいてきた少年に小さく首を傾げながら
笑みを浮かべ声をかける。
明らかにこちらに向かってくる以上、無視するのもどうかと思って。

「なんならぁ、ボクが何処か電話してあげようかぁ?
 一人で歩いてるとぉ、こわーぃ人に捕まって色々されちゃうかもしれないよぉ?」

この辺りはそう治安が悪いわけではない。
とは言えこの程度の年の子供が出歩くというのは
どんな場所であれ、あまり安全とは言えない。

宵町 彼岸 > それはただ、緊張をほぐすために投げかけた言葉。
半分本心が混ざってはいるけれど、それを聞いたところで推察できるようなものでもない。

『はぐれて……なぃ
 はぐれてなんか、ない』

けれど少年はその言葉を聞くと俯き、小さな声を震わせた。

『お父さん…、お母さん』

ぽたぽたと雫が地面を濡らす。
ああ、この少年は……

『ずっと、ずっと……かえって、来ない』

独りぼっちになってしまったのだろう。

宵町 彼岸 > 「……あっちゃぁ」

いきなり地雷を踏み抜いた事に正直困惑していた。
……この島にはいくつか孤児を預かる施設がある。
異能、魔術の最先端であり、同時にその牙がどこに向くかもわからないような場所では
孤児というものは意外に身近だ。
スラム街辺りでは毎日何人も人が死んでいるし、
この島では財力と能力に比例して身の安全が確保されると言っても過言ではない。
また、それら能力者や魔術師を支える為この島に定住している無能力者等々、"被害者要員"はかなりの数がいる。

『あさって、お父さん、誕生日だったのに…
 お母さん、楽しみにしてたのに』

この少年もそうした被害を受けた人物の関係者の一人なのだろう。
溢れる涙を腕で目元を拭う少年の
胸に付いたワッペンが彼が孤児であることを周囲に示していた。

宵町 彼岸 > 「……どしよ。これ」

正直言って子供は苦手だ。
どうも子供に好かれやすいタイプらしく、
子供向けの授業に出た時なんかもうそれはそれはもみくちゃにされた。
それにすぐに泣いちゃうし、すぐに笑うし、
なんかもう、意味が分からないほど元気だったりへこんでたりする。苦手。
けれど……

「あ、えっと、ほら、駄目だよぉ
 とりあえず泣き止んで?」

少年に近づき、困ったような表情でその頭を撫でる。
このままぎゃんなきされたらもうそれはそれで心臓に悪いし、
なんだかこう、無意味に泣かせたみたいでいや。
それに何よりめんどくさい。

「えっと、ほら、院のみんなが心配してるよ?
 帰った方が良いよぉ」

内心汗を浮かべながら優しくなで続ける。
やがて泣き止んだ少年を見てほっとするもつかの間

『時間まで帰れない。
 本読んでたら、外で遊んで来いって』

ああ、インドア系少年だった。
しかも帰れないそうです。年齢考えて遊びに行かせなよぉ……
庭とかそんな発想はなかったんですか院のヒト。
内心そんな突っ込みを入れながらため息をつく。
そうなると一人で遊びなさいと言う訳にもいかなくなってくる。
はぁ、めんどーだなぁ。

「そっかぁ。それならしょうがないねぇ
 ……おいで。時間まで本でも読んであげるよ」

ため息の後、少年に笑いかけ、その手を引きながら噴水へと帰っていく。
そのままそこにおいてあった本を仕舞うと……

「この噴水の像のお話知ってるかぃ?」

お気に入りの絵本をどこからともなく取り出し、視線を合わせて問いかけた。

宵町 彼岸 > 『……知らない
 最近ここに、来たばっかりだから……
 でも、その、いいの?』

不安げに揺れる瞳を覗き込み、返礼の変わりに二コリとほほ笑む。
彼女自身、長らく孤児院に居た。
彼らはいつだって不安がっていて……

「うん。おねーさん慣れてるからねぇ……
 ちょっとの間だけだけど読み聞かせしてあげるよぉ」

そう、こんなことは何度もあった。
何らかの形で保護される"孤児"はたいてい何か能力を持っている。
保護する価値がないと思われた子供の大半は捨て置かれる中で、
そう出来ない事情を持った者だけが孤児院に送られるのだから。
それ故に怯えきったそれらは危険で……
死なない彼女しか対応できない子供も多く居た。
だからこそ、そういった役割は彼女の役回り。

「……おいで?」

絵本を片手に噴水に腰かけ、膝元をポンポンと叩く。
大き目の胸がかなり邪魔にはなるけれど、子供が座ることくらいは問題ない。

「これはねぇ……とある遠い遠い国のお話。その海の底に……」

絵本を広げ、小さく、けれど聞こえるようにゆっくりと読み始める。
名前も住所も知らない初対面だけれど……そんな事は正直どうでもよかった。

宵町 彼岸 >   
「けれど、お姫様はその王子様の事が忘れられません
 海の底には何でもありました。
 船に積まれていた金銀、綺麗な宝石、美味しい食事……
 けれど、そこはヒトはすむ事が出来ません」

『何でも?お父さんかっこいいくるま、ほしがってたけど
 それもあるかなぁ?』

「うんー。多分あったんじゃないかなぁ。
 海底をぎゅんぎゅん走る車ってかっこいいよねぇ
 多分そんなの作れる人ってすごいっていうのもあったんじゃないかなぁ…
 ――人魚も地上には棲む事が出来ません。」

自身に無い物に憧れるのはいつの時代も変わらないのだから。
内心そう思いながらも腕の中の少年の問いに時折答え、賛同しながら読み聞かせていく。

「魔女は言いました。声の代わりに貴方に足をあげましょう……」

ゆっくりと、彼だけでなく、他の小さな子供に語り掛けるように。

宵町 彼岸 >   
「日の出前に、このナイフで……」

……そこまで読んでふと言葉をとぎらせる。
腕の中の少年は随分静かになってしまっていた。
安心したのか、お話がつまらなかったのか……
どちらにせよ眠ってしまっているそれを眺めながら少し困惑する。

「……起こしちゃうわけにもいかないしなぁ」

別に知らない人なのだから、
起きるまで付き合う義務もない。
このままおいていっても……別に罪には問われない。
けれど……

「起きた時に誰もいないの、寂しいもんね」

その胸を締め付ける強さは思っている以上に強い。
いるべき人が居ない事……それはきっと
とても大きな喪失感。
それが例え、見知らぬ誰かであっても。

「……まいっか」

別にこの後予定があるわけでもなし。
小さく呟くと、栞を取り出すと絵本に挟み
少年を抱えるように小さく俯く。
そうしてしばらく後……小さな吐息が聞こえ始める。

宵町 彼岸 > ――そうして目を覚ませば、もう日も随分傾いていた。
勿論完全に休んでいたわけでもない。誰かが近づけば即座に目を覚ました。
けれどそうならなかったという事は……独りぼっちが二人、寄り添った場所を
世間様は暖かく見守ってくれたのだろう。
正直事案になってもおかしくない世の中だけれど。

「しょーねん。晩御飯の時間だよ。
 そろそろ起きないと食べ損ねるぞぉ」

ゆさゆさと揺り起こし、少年が膝から降りるのを手伝う。
まだ幾分寝ぼけ眼の少年は彼女を見上げ……小さな声で何かを呟く。
それに何度か目をしばたたかせると

「あはは、違うよぉ。ボクはまだ若いんだからぁ
 院まで帰れる?……そっか。
 一緒に帰ってあげるよぉ。心配だからねぇ」

本を仕舞い、小さく言葉を交わしながらその手を取る。
毒を食らわば皿までなんて言うのだから……この子は送り届けてあげよう。
悪い夢に、攫われてしまわないように。

「じゃ、いこっかぁ」

まるで本物の姉弟のような表情で微笑むと……彼女は公園の外に向かって歩き始めた。

ご案内:「常世公園」から宵町 彼岸さんが去りました。