2018/03/31 のログ
ご案内:「常世公園」に黒峰龍司さんが現れました。
黒峰龍司 > 「……参ったな。思わぬ出費で地味に金銭がヤベぇわ」

と、そんな呟きを発しつつ、火の点いた煙草を口の端に銜えながら常世公園へと何となく足を運んで来る。
前回、とある転移者の女帝様に振り回された挙句、予定外の出費が出てしまったので懐が寂しい。
とはいえ、人間とはそもそも体の頑強さが違うので、別に飲まず食わずでも割と持つのだが。

(…生活習慣をこっちの世界になるべく合わせると地味に金が掛かんだよなぁ)

と、ボヤきながら一息。それに、こちらの世界に来て1年半くらい経過しているが…。

「未だ元の世界に戻る手掛かりも無し、ついでに失った力を取り戻す算段も着かず、と」

仕方ないといえば仕方ない。そう楽に解決できる問題でもないのだから。
もっとも、当初この世界に来た時に比べれば正直元の世界への執着心は薄れてきている。
失った力も、それはそれでハンデみたいなものと考えれば丁度いいだろう、とも思えるし。

黒峰龍司 > 「…しっかし、俺以外の龍種か…やっぱこの島みたいな特異点的な環境でも数は多くねぇんだな」

ついこの前出会ったばかりではあるが、矢張り元々、幻想種でも上位に位置づけられる龍、ドラゴンというのはこの世界では希少らしい。
男も、別に自分の素性を特に隠す気は無いのだが、バレると面倒にしかならない場合も多々ある。

自販機で無糖の缶コーヒーを購入しつつ、片手でプルタブを器用に開けつつ一口。
しかし、懐が寂しいのもそうだが少々退屈でもある。刺激的な出来事が欲しい所だ。

「…単純に体がどうにも鈍ってる感じも否めねぇしな…。」

それに、”力を失った”今のニグレイド・エンデという黒龍がどの程度までやれるのか。
その限界点を見極めておきたい気もする。…が、まぁそれはそれだ。
結局、単に平和な日常というのものに馴染みきれていないのだろうな、と思ってもいる。

黒峰龍司 > 「取り敢えず、金はどうすっかな……あー予備で確保しといた分があった気が」

こういう事もあろうかと、手持ちの金とは別にある程度溜め込んでいて矢張り正解だった。
情報屋の端くれでもあるし、ある程度の収入もあるにはある。
どのみち、生活に過度に困る事態には今すぐになならないだろう。
何処かのロボットは弾薬費用とか色々嵩むだろうから、むしろあっちの方が地味に大変そうだが。

「…そういや、桜…だっけか。花見とかいう風習がこっちの世界にゃあるんだったな」

既にこの辺りもその桜の花とやらが鮮やかな色合いを見せてきている。
風流を全く解さない、という訳でもないのか桜の木々を眺めながら黄金の双眸を細めて。

「…まぁ、こういうのを素直に綺麗だと思えるだけ、まだまだ俺も捨てたモンじゃねぇってこったな」

僅かに自嘲気味に呟いて苦笑を零しつつ。桜を肴にコーヒーと煙草で一服、と。まぁ悪くない。強いて言えばコーヒーより酒が良かったが。

黒峰龍司 > そうして、暫くは桜を一人眺めつつ、コーヒーを合間に飲みながら煙草を蒸かしていた。
平和や怠惰な日々は退屈だが、こういうのも偶には悪くないと思える。
はてさて、丸くなったのか怠惰に取り込まれつつあるのか。それもまた良し、とすればいいのだろうが。

「……行くか。」

踵を返しつつ、空き缶を無造作にゴミ箱へと放り投げる。綺麗な放物線を描いて飛んでいくその先を見るまでもない。
見事にダストシュートされたゴミ箱の音を背後に、黒ずくめの龍は歩いていく。

ご案内:「常世公園」から黒峰龍司さんが去りました。
ご案内:「常世公園」にイチゴウさんが現れました。
イチゴウ > 明るい月が照らす夜空のもと、夜桜が人々の憩いの場を彩り
時折吹き付ける心地よい風が枝を揺らし鮮やかな桜吹雪を舞い起こす。
ここでは幾多もの桜が短い間、自らの姿を輝かせるわけだが
この公園の奥、やや裏手の場所に一本の大きなしだれ桜があった。
辺りに人間は居らず聞こえてくるのは自然の環境音のみ。
時刻のせいもあるだろうが恐らく穴場というやつだろう。

「サクラ、バラ科の植物。
この時期になると多くの人間を寄せ付けるらしいが
人間の認識に影響を与える能力でも保持しているのだろうか?」

しだれ桜の根元に妙な影。
それは満開の花を見上げるべく大きくその顔を上に向けている。
まるで何かを祝福しているような忙しい桜吹雪は
ロボットの背中をいつの間にか淡く彩っていた。

イチゴウ > 桜は春を表す良いマーカーと言えるだろう。
種類にはよるものの基本的に春の訪れの間でしか
その花を開けることはない。だからこそ人々の印象に残るし
その儚さを謳ったものが数多く残っている。

「常世島に渡来してから1年が経過。
ボクはこの島でたくさんのものを学習できた。」

このロボットが桜を見るのは二回目だ。最初に見たのは
ちょうど一年前のこの島に来たばかりのこと、
ここに来た経緯、理由は自分でも全くわからない。
あの時は人工知能もひどく破損していた。
思考論理は乱れていて言語中枢も損傷していたため
記録されていた会話データを切り貼りして
コミュニケーションを成立させていたほどだ。

丁度一年分の記憶をまとめがらロボットは動きを見せる事無く
ただただ鮮やかな花をつけたその木を見ていた。
変化する機械を見下ろす大木は正反対に何も変わらない。