2015/08/25 のログ
四十万 静歌 > 「まぁ、ですけど、愛と完全で決定的に違うのは――
 愛はあった方がいいですけど、
 完全はない方がいい点くらいでしょうね。」

なんていいながら、既にある飲み物を飲み干して。

「驚かせないでくださいよ。
 使われてこその神器だから、
 そうあるのは必然かもしれませんけど……」

人さし指を口元にあててウィンクして、

「ならば、私は銃を狙われたらほぼ確実に見つけられない場所に――
 ……隠すでしょうね。
 そして、まぁ、元より神器に等しいものをもってる人が多いこの辺りですから、
 今更って感じもしなくないですね。」

あ、ありがとうございますと、モンブランを食べて、
あまーいと幸せそうな顔になる。

「リビドー先生も食べますか?」

リビドー > 「そうかい。」

 短く言葉を切り、苦笑する。
 何処か寂しさを感じるような、苦いものを思い出すような違和感を覚えるだろうか。

「ははっ、そうだ。だからこそだぜ。
 ――元より神器じみたものを持っている存在が多いから、キミもその範疇に入る訳だ。
 ……なんてな。ちょっと脅かして見ただけだぜ……と、貰おうかな。
 ボクの方のショートケーキも、やるからさ。」

 くすりと柔らかく笑って見せて、静歌へと視線を向けた。

 

四十万 静歌 > 「――完全であるって事は、
 とても寂しいことでしょうから。」

と、静かに目を閉じて――

「そう考えると、不完全なのは幸せな事なのだと思いますよ。」

なんていうだろう。

「もー、私驚かしても、
 たいしたものなんて出ませんよ?」

まだマントが帰ってきてないから対した手品なんて出来ませんし。
といって指を鳴らし、その隙にもう片方の手を滑らせると、
テーブルの上に林檎が現れる。
ちなみに3Dアートが書かれた紙をおいただけである。

「こんなものくらいしか。
 では、はい。どうぞ。」

一口サイズにきって、モンブランをはい、あーんと、
上目遣いの笑顔で差し出すだろう。

リビドー > 「……」

 珍しく、何も言葉を返さない。
 林檎の3Dアートを見れば、微笑ましそうに笑ってみせ。

「と言いつつも十分じゃないか。
 ……ふむ。それでは有難く頂くよ。」

 躊躇う事なくあーんと口を開けて、ぱくりと含める。
 味を舌で確かめれば、頬を緩ませた。

「ああ、美味しいよ。久々に美味しいもの食べた気分だ。
 ……と、ボクの方も要るかい?」

 一つ笑ってみせて、同様に切り分けたショートケーキを差し出すだろう。

四十万 静歌 > 言葉を返さねば、静かに首をふって、
静かに微笑み、
3Dアートに微笑まれれば、
嬉しそうに笑う。

「――十分ならよかったです。」

といいながら、
頬が緩んだのをみると、
ね、美味しいですよねと同意をえるように首を傾けるのである。

「もちろん、いただきますよ。
 あーん……」

そして、当然の如く、差し出されたら断れない、
断るはずもなく、
ゆっくりと口をあけて食べて、
美味しいと、両手で頬をおさえ、

「この一瞬がやっぱり最高の幸せを感じますね。」

と微笑むだろう。

リビドー > 「ああ、そうとも。
 こう言う時間は楽しいものだ。」

 食べた様子を見て取れば、軽く笑ってみせる。
 その後は、互いに談笑しながら食事を取った、のだろうか――
 何れにせよ、少しの時間が経ったかもしれないし、経たなかったかもしれない。

四十万 静歌 > 「――やっぱり、
 こうやってすごす日々が、
 一番好きですね。」

ずっと、続けばいいのに、
と少し遠い目をするだろう。

ほんの少し、まだ一抹の不安は――
残っているのかもしれない。

リビドー > 「そうかい。
 ボクも好きといえば、好きなんだけどね。」

 笑みを返して、遠い眼をする四十万を眺めた。
 一つ、瞑目する。そのまま、紡ぐ。

「……何か、悩み事でもあるのかな。」

四十万 静歌 > 「――悩み事というか。」

そうですね。
と一つ頷いて。

「――幸せで、いいのかなって。
 この日常は本当に本物なのかなって。」

たまに、そんな風に思うんですよね。

と寂しく笑うだろう。

リビドー >  
「その答えは、難しいな。少なくとも今は本物だし、幸せで居られる時ぐらい居るべきだぜ。
 ……肯定する事は出来ても、ボクのそれだけでは難しいかもしれないな。
 そうだな、最近は色々あったから不安で、息が詰まっているのかもしれないぜ。
 友達でも誘ったり探したりして、遊びに行ってみたらどうだい。
 お金を使わなくても、遊ぶ手段はあるだろう。海も有りかもしれないな。」

 長続きした騒動で気が詰まっているのだろうと察する。
 シインと面会した事は知らない故、それ以上の推測は出来ないが――

「――そうだな、銃は預かっておこうか。
 それがあると、非日常を思い出してしまうんじゃないかい。
 それが本当に災厄を呼び寄せるかは冗談として、思い返して、気にしてしまうだろう。キミは。」

四十万 静歌 > 「そうですね。 
 ゆっくりと……自分の身体で、
 心で実感していくしかないんでしょうね。」

なんて、首をふって、
まぁ、ゆったり過ごしますよと微笑む。

「――銃に関しては、
 そのままで大丈夫です。
 確かに思い出して不安になるかもしれませんけど……」

淡く微笑んで――

「託されたもの、ですから」

その言葉はとても儚く聞こえるかもしれない

リビドー > 「……」

 儚く見せたその言葉に、瞳を落とし、哀しみと苛立ちを見せた。

「……あいつめ。呪いを投げてくれたな。」

 苛立った様子で一つ、呟いた。
 儚く聞こえた故に、そう呟く。

四十万 静歌 > 「……」

静かに目を閉じて。

「呪い、ではありませんよ。
 心のあり方です。」

これも私のあり方なのだ、と。

「我ながら難儀な性格だとは――分かってますよ」

と苦笑するだろう。

リビドー > 「キミの心の在り方がそうで有るが故に、そう働くのさ。
 ……そんな儚い笑顔を見せて、そう云うかよ。全く。」

 頭を抑え、息を吐く。

「そう云うドラマも嫌いではないんだけどな。
 ……ボクが話している所に水として刺し込まれるようなそれは、やっぱり好きになれない。
 結局の所、こう言う所は徹底して利己的だ。………そうだな、幻滅したかい?」

四十万 静歌 > 「――そうですね。」

うーん、と少し考えて。

「幻滅なんてしませんよ。
 なんていうか、すみませんね。
 ちょっとしんみりしてしまってという具合に、
 私の方が申し訳ない気持ちが強いでしょうか。」

そうして、目を閉じて――

「――気持ちばかりは、
 やはり、どうにもならないものですね。」

少なくとも――
なんの小細工もしない私だけの力では、とでもいうように。

リビドー >  
「いや、良い。キミは悪くない。
 ……いかんともしがたい、か。」

 ……頭を抑え、粗めに息を吐く。
 感情を抑えようとしているようにも、見て取れるか。

「悪いね……このままだとボクはあいつとボクしか見なくなって、キミを見れなくなりそうだ。
 だから今日の所は、頭を冷やす為にも失礼するよ。悪いね。……ただまぁ、また会おう。
 いや、会ってくれと云うべきか。 落ち着いた時に、口直しにでも付き合ってくれると嬉しいよ。」

 只管頭を抑えながら立ち上がり、伝票を取る。
 そのまま逃げる様に会計を済ませ、立ち去ろうとするだろうか。

「そうだな。改めて、また会おう。四十万静歌。」

ご案内:「カフェテラス「橘」」からリビドーさんが去りました。
四十万 静歌 > 「――悪くない、か。」

でも、きっかけは私なんですよね、
との言葉は飲み込んで。

「ええ、また会いましょう。
 もちろん、いつでもお付き合いはしますよ。」

そういって目を開き、真っ直ぐリビドーを見て、

「改めて、また会いましょう、リビドー先生。
 またいずれ。」

と、頭を下げて、手を振って見送るだろう。

四十万 静歌 > ……コトリ、
と飲み終えた紅茶をテーブルにおいて、
片付ける。

「帰りましょうか。」

遅くなってしまいましたし、と一つ息をはく。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から四十万 静歌さんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に渡辺慧さんが現れました。
渡辺慧 > カチャリ。

コーヒーカップを置く音が、シン――としているわけでもない店内に響く。

カウンター席の、端。端の端。
いつも通り。いつも通り以上のいつも通り。
どことなく、いつも通りのなぜか漏れ出る楽しげな雰囲気。
いつも通りの格好で、いつも通り、コーヒーを飲んでいる。

ただ、しいて。違いを上げるとするならば。

その雰囲気がどことなく。本当にどことなく、ぎこちない事と。
その、コーヒーには。
ミルクが加わって、白く濁っている――それぐらいだろう。

渡辺慧 > その姿は、まさしく強がりに写るかもしれないし。
ただの違和感、でしかないのかもしれない。
そもそも、何も目にすら入らない姿なのかもしれない。

事情を知る者は、少なくとも誰もいない。

「…………ふぅ」

その内面を映したのか、どうかは定かではない。
ただの、吐息。一つ息を吐いただけ。

それだけなのに、どこか、それはため息のように。

渡辺慧 > 気弱な内面が、言ってしまえば、隠している内面が。
うわべには映りがたいそれがにじみ出そうになる。

少しだけ、コーヒーカップを持つ手が震えた。
いつまでも引きずる。
――いや、たとえそれが他の事でも、引きずっているからこそ。自由、という言葉へ逃げ込んだ。

もう一度、深く。
――今度こそ。それは、深い溜息のように。
うわべの、いつも通りとは矛盾した、息を吐き出した。

渡辺慧 > ――いっそ。それからも。
この思考からも逃げてしまえ、と。
忘れてしまえと。そうしてきたのだから、と。

それも、きっとありだろう。ひどく、どうしようもないし。
どこにも、一歩も前へ進んではいないのだろうけど。

元々、何処に行けば分からない状態を彷徨っていたのだから。

でも、きっとそれをするにも時間はかかるだろう。

ご案内:「カフェテラス「橘」」にサイエルさんが現れました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に磐野 州子さんが現れました。
サイエル >  
――いらしゃいませー……

店員が、入店のコールをして。
愛想笑いに満面の笑みを返して。いつもの席を示す。

学校が始まってからというもの、特に仕事はない。
うむ、ないといったらない、ためにこうして見回りという建前の元。
サボりに来てるわけだが……

しんきくさーい、少年をみた。見つけてしまった。

――見なかったことにしよう。

そっと、端が見える、近場のテーブル席に腰掛けて。
小声で――

「コーヒー。ちょっと濃い目で」

そう店員に注文した

磐野 州子 > 「お疲れでしたー」

バイトの時間が終わりあの暑苦しい服装から解放されてグッと背伸びをしながら控室を出る。
まだこの時間ならある程度客もいるし、丁度今入った客がいるが…

『コーヒーちょっと濃い目で』

あの声は聞き覚えがある。時計塔であったあの胡散臭い保険医であまり仕事をしたがらない男。先生ではなく男
そして彼奴は州子のとんでもない秘密を知っている。この公の場で会話するのは不味い。
そして州子の取った行動は

―――見なかったことにしよう

そっと目を逸らしてテーブル席から目を逸らして真っ直ぐカウンター席へ行こうとすれば
見覚えのある違う男がネコのモノマネかと言わんばかりに猫背で落ち込んでいる。

「……ケイ?」

その猫背になっている男を背後から呼びかける

渡辺慧 > ピクリ、と背が震えた。

何処となく久しい声。
――もう一つ、なにか。そんな声があった気がするが――
そう、いつも以上に。余裕がない自らの思考では。

いつも通り、そんな虚勢を張っている――つもりではある。――
だから、本当にわずかばかりのぎこちなさを添え、いつも通りの、態度。

顔だけで、そちらを見遣り。

「……あー、と。やぁ、久々。磐野」

――。

サイエル >  
――変だな

遠目から確認しながら。ぎこちない声。
心拍数、過剰。ふむ、いつもの彼ではないように見える。
そして視線の先――
なるほど、女か。しかも、いつかあったことのある女生徒。

――なるほど、失恋でもしたか。そののちばったりであってしまってギクシャクしている、か
それとも何かしらの、ハプニングがあってポロリイベント的なものを観てしまって云々か。

まぁ、どちらにせよ……

……青春だなぁ

静かにやってきた熱いコーヒーを口に運んだ

磐野 州子 > 何かに見られてる気がする―――大凡あの男なのだろうが、どうせ盗み聞きでもしているのだろうか
少なくとも、今は自分から構う利点は何も無い



磐野、イワノ、いわの。
そう呼ばれたのはここ最近無かったような気もする。そう呼びかけた男は恐らく初めて磐野という名を呼ばれた気もする。
だから少し仕返しとばかりに―――

「えぇ、久しぶりですよ、『ワタナベクン』。海以来です?」

あくまで笑顔。悪戯は好き好んでやる訳ではないがあくまで慧と冗談を言い合う時の笑顔。
ただ、それも冗談ではなく慧に何かあった様子というのはいつもの州子呼びから磐野呼びに変わっているだけで分かってしまう。
だから何も遠慮なしに州子は隣のカウンター席へ座り、自分のグラスを確保して冷やを注いでいき、慧の方へ向き直る。

「で?『ワタナベクン』は何かあったんです?
 洗いざらい全て吐き出せとは言わないですから自分の社会的地位が揺るがないぐらいの事は言っていーんですよ」

両袖でグラスを持ったそれを口まで運び、飲み干す。
仕事明けの冷たい飲み物は良い物だ

渡辺慧 > 無意識、というわけでもない。
ただ――距離感の開け方、間違ってしまった、それ。
だから、せめて、そのぐらいは、それだけだ。
相手が、合わせてくれたことを――まぁ、凡そ。それは正確には正しくはないのだろうが。少し感謝しつつ。

あくまで、笑顔。
こちらも、きっと“いつも通り”の、猫のような笑み。


「いやいや。なんのことやら。なにもありはしませんよ磐野」
「磐野こそひと夏の思い出でも作れそうなことを過ごされたことでしょうし」
「体調大丈夫? もっと水いる?」

それは、言いたくない、というわけでもない。
だけれど、いつも通りだから、いつも通りの軽口を――。

だけれど。明らかにいつもより。饒舌に、焦るかのように口が回る。
それには、あまり頓着出来てはいない。

サイエル >  
――はぁん。軽口もらしくないときました。コレはもしかするともしかしますねぇ……

そして、あいての彼女が何かしらぎこちない動作ではなく
かるい感じに冗談っぽく、苗字呼びを強調してきた。
つまりは、二人の間のアクシデントではない。
少年側に何か、焦るような”人付き合い”で距離をとるようなことがあったと推測できる。

口の滑りもいい。意識しすぎるあまりらしくない。

ふむ、まるで隠し事が下手だな彼は。

逆に女の方は落ち着きがある。
弱点を突けば焦るタイプであったと記憶しているが
なるほど、女性としてダイブ良い女と評されるタイプ。
まぁまだまだ子供っぽいところはあるが……

さて――どうなるのかしら……

磐野 州子 > ネコのような笑み、軽い口調、この頭の温度をふつふつと上げてくる感覚も久しぶりな気もする
ただ、それ以上にイライラというより、違和感というものもある訳だがそれをぶつけるかのように口を開く

「残念ながら『ワタナベクン』と海に行った以外はここでアルバイトしてるか研究所に引き篭もってたんですよ?
 体調は1回倒れたっきりはけんこーですよ。けんこー。
 そういう『ワタナベケイクン』はどうだったんです?」


敬語、自分も敬語『らしきもの』を被ってはいるのだが慧の場合は少し事情が違うだろうが――
ただ、とても突きたくなる。自分と似た口調を持ち出す、いつもと違う口調の真似方に

「州子の口調の真似をするの、そんな下手じゃないですよね?」

至って真顔で慧に言葉を投げかける。
慧がいつも自分の口調を真似する時はもう少し煽る風に『○○です~』って感じに…

思い出しただけでもイライラしてきた。今度何か奢ってもらうことにしよう

渡辺慧 > 「……ヒ。あ、ッハハ」

笑い方、すら。いつも通りのはずなのに。なにもかすりはしない。

「そら。……実に学生、らしい休日だねぇ」
「俺は、なにもないよ。うん………なんにも、なんにもない」

いつも通りの皮。ここ最近でやっと、かぶれたはずのそれは。
手抜き工事。耐震補強なんてまるでなっていない。
笑い乍ら。否定する。

「…………い、つも通りデスよ」

思わず、その顔に目線を前に戻した。
そうして、コーヒーを、口に含む。
――今は、苦いのは、取りたくなかった。

サイエル >  
――ほう、海。あの少年、なかなかやりおる。しかも会話の流れ的にはふたりきり。やろう、爆発しろ

けっ……っと、妬ましい視線を注ぎつつ。コーヒをおかわり。
そして、少し。女性の方も若干脈が早くなった、流れ的には不機嫌か
イライラしてるのか――さてさてそれは本人のみぞ知る。

男は……これは惨敗かぁ?
いや、惨敗ならこんなにも沈まないか。
なにかしらのトラブルが合ったのは間違いない。
そして、彼の環境からだれかしらが事件に巻き込まれたようにも見えない。

ということは、自分が起因となる何かがあった。
考えられるとすれば――

振ったか、振られたかだ。

もしくは、株に失敗したとか事業も考えられるが
まず、年齢から排除してそこに行き着く
なにより――その姿が。

自分が離婚された時とよく似ていた

磐野 州子 > 今まで頭に溜まった熱気を全て吐き出すかのようにハァと溜息をつく。
爆弾の導火線についた火を自然に消えるのを待つかのようにクールダウン。そうクールに、クール。

いや、何かあったのは間違い無いは確かなのだろうが――

「フーン…」

意味ありげな音を喉と鼻で鳴らしてジーっと慧の様子を眺めている
言わば今この話は慧に取ってトラウマのようなものなのだろう。
今更起きた事をどうこうしようとして修正出来るような異能を持ちあわせてはいない。
故に、州子はずっと前へ走って行く事しか出来ない。

人にして欲しくない事は自分もしない。
だから州子も今まで慧に起きた事に関して深く掘り下げる事はしないで、ただ前へ走って行く為の助走台を作る事にしよう。友達なんだしね

「それで?慧はこれからどーするんです?
 何かあったのは分かるですけど、それに関しての解決方法は目星ついてるんです?」

ジッと慧を眺めていた視線をいつの間にか天井に逸らして、そっとグラスを呷る

渡辺慧 > ――――。

一つ。大きく息を吐いた。
虚勢を、いつも通りを。そっと、吐き出した。
肩を落とす。こんなに弱かっただろうか。

――いや、それも。いつも通りか。

先程とは違い。……少しだけ、幼い笑み。
どことなく。鼻のなる音に、コーヒーに再び口を付けることで返した。

――どうすれば、いいんだろう。
なにもわからない。

ただ――出来ることは、そう多くない。

「…………さっきから、言ってる様に」
「なんにもないんだ。なんにも」

「――だから、いつも通りを、つづけるよ」

それは、前へ進むための、いつも通りか。
それとも、ずっと停滞、後退。
それを続けるための、いつも通りか。

――そうしていたら。……この、友達だと言ってくれる、磐野 州子 という少女も、自分の周囲にはいなくなるんだろうか

サイエル >  
――女は強い……

これは良い女(ひと)だ。異性とか云々ではなく。
良い縁に少年は恵まれているようだ。そう思う。
未熟でありながらも、ぐっと自分の何かを抑えた動作が。
今のため息にはたしかにあり。手を差し伸べ、先に進むことを
提案している、さらにはなにか自分で手伝えることがあるかと
密かに模索もしている――とても、微笑ましい。

年齢が幼かろうと”異能”というアクシデントを秘めたものはやはり
早熟してしまうのだろうか。いい意味でも、悪い意味でも。
この大人の階段の登り始めは、自分には眩しく見えた。

対して、少年は――

――まぁそうなるな

何かしらの失敗をしてから人は失敗を恐れるようになる。
故に、前という。いつも通りという正常。
元に戻りたいという願望――
それにすがる。それもたまにはいいし
選ぶのは”彼ら”だ。
悪かったか、よかったなんか”先になってみないとわからない”

これも若いゆえの特権だ。まだ時間はある。
どちらの思いも、あくまで推察だが、わかるがゆえに……
ただ静かに、澄み切った黒を口に含んだ。

しかし、時は無情にも過ぎていく。
結局のところ、”変化のない”などというのは無いのだ。
何かしら少しずつわずかに変わっていく。
それを知るのも――勉強だ

磐野 州子 > 「いつも通りですか」

ぽつりと呟く
いつも通り、慧はこの落ち込み具合がいつも通りだというならどれだけダークで、ブラックで後ろ向きで武士の恥と言える背中を傷を受けて生きてきたのだろうか。
本当に後ろに傷があるかは知らないが、それだけいつも通り逃げる事案が多いのだろう。

今回もそうやって逃げてきたのか。
しかし州子にそれを咎める権限は持ちあわせてはいない
それはその現場を直接この目で見た訳ではないし、慧とはただの友達という間柄なのだから

「…いつも通りなら、しょうがねーですね
 ほら、コーヒーだけ頼んだって楽しいカッフェ生活は楽しめないですよ?」

奢ってやるです、と言わんばかりメニューを開いてデザートやスイーツの頁を慧に見せつけている

本来なら、普通の『ヒト』ならここで慧の頬を抓りながら白状しろーとかも言いたいが、それも出来ないから我慢するしかない。
慧と自分では生きている場所は違うのだからいつも通りを過ごし続けるのは中々難しいものである

渡辺慧 > 「そ。………………いつも通り」

――そう。
その距離感で、いいのだ。
どこかしら、他人で、一線を引いて。

そうして、傷つけたのは誰だ。

いつもと違って。苦味は薄れたコーヒーの筈なのに。
じゃあ……どうすればいいんだろう。

「うん。……ありがとう」

広げられた、そのメニューを少しだけ眺め。

「……前、ここで。磐野が頼んでたケーキ」
どれかわからないから、と困ったように笑って。

「………………あのさ。…………君と、俺は、友達でいいんだよな」

サイエル >  
――コーヒーと同じ味の春……

これもまた、特権だなと頷く。
これが、大人になっていたなら。
春ではなく闇になる可能性もある。

恨みつらみ、怨恨。拭い切れないものに。

そうならないことを願いながら――

”お互いに一歩引いたやりとりに”

ひとつため息を落として、席を立つ。
コレ以上はいても、おそらくじゃまになるだけだろう。
そっとカウンターに行き

――あそこの端の席の二人分も含めて。諭吉置いてくね?

お釣りは受け取らず。静かにその場を跡にした。

野暮ったい話をしたければ、自ずと。時はやってくるだろう

ご案内:「カフェテラス「橘」」からサイエルさんが去りました。
磐野 州子 > 「また懐かしいですね…」

慧と初めてあった時に食べていたケーキ。
そういえば食べずにそのまま慧に上げたはずだからどんな味だったかも覚えてはいない。
しかし名前はちゃんと覚えている

「苺乗せホイップクリームパンケーキ。お願いするです」

同僚ではないが、バイト先である顔見知りに少し申し訳無さそうな表情で注文する。
いつも自分が注文取る訳ではない故に申し訳無さは増えていくばかりである。

注文が終わった頃に慧が呟くかのようにか細い一言に州子は振り向いて答える。

「なんですか。友達じゃねーなら奢ったりもしねーですし、海に遊び行ったりもしねーですよ?
 それとも何か上の関係でも考えてたんです?」

これ以上重苦しい空気を吸わせるつもりはない、と言わんばかりに冗談と州子のいつも通りの笑みを浮かべる。

渡辺慧 > 「それしか食べたことなかったからね」

……ただ。
いつも通りの皮は、少し厚くなった。
良い事とも、悪い事ともいえる。
どちらともいえない……だけれど、少しだけ、どこかへは、行けるようになった。

「…………上っていうとなんだろうな。係長と平社員とか」

いつも通り。――ぎこちなさは、少しだけ消えた。
友達と、言ってくれるなら。
せめて、この距離感は。

だから、猫のように――…………シシシ。

磐野 州子 > 「え?…あぁ、慧ってコーヒーしか飲まないんですよね」

それはちょっと寂しいとは思いつつもそういえばコイツファミレスでオムカレー食べてたから食べる所では食べてるみたいだから問題はない。
そこから繋がって研究所でオムカレーを食わせて―――そういえば慧も秘密を知ってる事を思い出す

なりふり構わず頬を抓ってやろうか。慧にとっては理不尽だが、州子にはただ、ただ頬を抓りたい感情だけが湧き出てくる

「…慧はまだどっかの組織とか所属してる訳じゃねーんですから係長とか関係ねーでしょ。」

ただ、そんな感情もいつも通りの慧の口調を聞けば収まる。
きっと彼なりに助走台の上に乗ることぐらいは出来たのだろう。
だから州子は笑みを浮かべる。眼鏡越しの瞳は笑ってはいないが

渡辺慧 > 「…………なに、その。いかにも俺の頬を抓りたそうな顔は」

非常に具体的。
この場の、和らぎ始めた空気には最適な顔、とでも言うべきか。
「……………あぁ、誰にも言ってないから、うん」

余計な言葉、というのをわかりつつ。
わかりつつも。

「あー…………」

一応シテル、とでも言っといた方がいいのやら。
別に隠してるわけでもないが――態々いう事でもあるまい。

もちろん。メガネの奥の、笑っていない瞳には気づかずに。
どうしようもなく、張りつめていた、何かを。
少しだけ落とすように。肩の力を抜いた。

「人使い荒らそうね、磐野は」