2015/09/17 のログ
四十万 静歌 > 「良かった。」

と少しほっとしてはしゃぐ。

「もう見られるのは仕方ない、仕方ないから諦めます。
 うん。」

授業終わった後眠りに落ちて夜になることもあるのを思い出し、
真っ赤になりながらも、ほっとした表情を浮かべるだろう。

「それにしても、何を聞かれるんでしょうね?」

とわくわくしながら聞いて――
傷つくんですか?といわれて、
きょとんとして、

「傷つきますよ?
 銃で撃たれたら大怪我しますし、
 当たり所悪ければ死にますし、
 刃物で斬られればやはり同じですし、
 そんな凄いものがなくても、
 紙切れで指切ったり、
 針で指差したりすれば血がでますし?」

寧ろ脆弱でさえあると思いますけど?
なんてクスリと笑って――

「……それとも、心が?」

と、じっと目を見つめ、

小突く様子にふっと笑って、

「なるほど、そちらをお望みですか。」

大したものではないですよ。
なんて笑って。

左掌をみせて何もないのをアピール、
次に右の掌をあわせて何もないのをアピール。

そして、両手をこすり合わせると、
掌の中に一枚の千円札が現れるだろう。

「こんな具合に?」

ちなみに右掌を見せてる間に、
左手に仕込むのが手品の鍵である。

流布堂 乱子 > 「そうですか。よかったです、それなりに私と似たようなところがお有りで。
……撃たれた物同士、骨くらい折れるのは存じ上げていますよ」
例え一日でひとりでに治癒するとしても、
あの病室を訪れた時に乱子の片腕は折れていた。静歌と同じように。
それでも、その捉え方は明らかに違った。

「私にとって、傷はそれなりに厄介で乗り越えるべき障害です。
……それと同時に、私が私らしく有るための手段でも有りました。」
すこしだけ肩よりも皮膚の新しい掌を開いて、じっと見つめながら。
ゆっくりと人差し指を立てて握り直すと。
静歌の肩、ではなく。
その胸を指差した。
視線を、真っ直ぐに見返す。

「"川を渡る時に、濡れずに渡ることは出来ない"
……経験というものは残る、というどこかの諺だそうですけれど。」
「こうして話していても、まるでここがあの時の病室そのままのようで。」

「最初から傷つかないのでしたら、それは護ったことになるんでしょうか。」


「え、そんな、準備をしていただくのも悪いですしいきなりは……」
促されて左手を見る。右手を合わせてもおかしな所はない。
そして両手が合わさるとそこから
「お会計が……!」

冷や汗が垂れる。おそらくは視線誘導されたはず、しかし気づけなかった。
致命的にすぎる油断に領収書を持つ手が震えた。

四十万 静歌 > 「まぁ、早く治ったのは、陽子さんに無茶してもらったおかげですけど。」

あれは痛かったですなんて、しみじみと笑って――

「まぁ、でも、そうですね……」

何もかもあの時のままかわってないように見えるならばそれは――

「傷ついてはいますが、
 そういった意味では私は被害者ではなく、
 加害者なのでしょうね。」

なんてことをしれっというだろう。

「私は物理的な被害者ですけど、
 心を触れられ、心を動かされたのは、
 間違いなくシイン先生だったのですから。」

それは、間違いない。

「そして、私が傷ついてないようにみえるならそれは――」

じっと目を覗き込むようにしていうだろう。

「傷ついていないようにみせかけているか、
 傷が大きすぎるか――」

どちらなのでしょうね?と
口角を吊り上げて笑う。
そこに恐怖を見出すかもしれないし、
冗談と流すことが出来るかもしれない。

だが、その笑いは長く続かず、
柔らかい微笑みに取って代わるだろう。

「――ですので、
 傷ついたのでこれ以上傷つかないよう護られたのも確かですよ。
 こっちの意味でも。」

そういって紅茶を飲み干すだろう。

そしてお会計がといった所でくすっと笑って

「まぁ、という訳で、これが手品な訳ですが
 楽しんでいただけたでしょうか?」

と首をかしげるだろう。

流布堂 乱子 > 「そう、ですか。
……やっぱりそうなりますか。」
この人が、加害者で。
赤龍が惹かれるほど強く心を穿たれ、破滅に傾倒させられた、
あるいはその一面が酷く増幅したのなら。
それは確かに被害者と呼ばれるべきだったのだろう。

「そしてその被害者は更生してしまったから、もう誰がそれを問うことも出来ない、
というよりかは罪の償いはしてある、とでも言ったほうがいいのでしょうか。
……やっぱり。獲物は横取りされていたわけです、ね」

まるで牙を剥くようだ、と。
同属を見るように赤龍はその笑みを見つめる。
静歌が微笑みを浮かべれば、視線を切るように目を閉じた。

「どちらでもなく、
いえどちらでも有るというか。
……元々傷があった場所が傷つけられた、とか」
瞑目したまま。そう呟いてから、薄く目を開いた。
視線を机の上に落としたまま。
「ええ、素晴らしいトリックでした。
風紀委員"でない"質問に真相を明かされたのでは、手の出しようもないですもの。
きっと、小説をお書きになれば素晴らしい出来になりますよ、真犯人さん」
今度こそ、すべての意味での敗北を込めて。嘆息とともに呟いた。

「それでは、お題は見てのお帰りといたしましょうか」
領収書を二つつまんで、エプロンの裏に筆記具を片付けて。
椅子を引いて立ち上がり、クリアファイルを持つと、
ようやくもう一度静歌へ視線を合わせた。
「ああ、そうそう。もしよかったら――また今度、占って頂けますか」
ひらひらとクリアファイルを振りながら。
「……ここに書くべきだった、今日提出予定の始末書について。上手くいくかどうかを。」
手遅れそのものの風紀委員は、微かに笑って席を辞した。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から流布堂 乱子さんが去りました。
四十万 静歌 > 「ええ、それではまた。
 まぁ、占うまでもなく、
 上手くいくのではないでしょうか。」

と静かに告げて手を振って見送るだろう。
そして――

「――まぁ、かといって、
 私は何もしてないんですけどね。」

そう、いつものように接して、
いつものようにあっただけである。

「――だから、結局の所――」

――私はただきっかけで、
私はただ事実を突きつけたにすぎない、
それだけなのである。

そして、正確にいうのであれば、
実際におった傷ではない。
傷ついていないようにみせかけているつもりもないのだが、
それは、言うべきことではないのである。

「まぁ、これほど不完全なものもありませんけどね。
 小説にしてもきっと駄作ですよ。」

これほどまでに不確定なものだけを使っているのだ。

それは小説にすらなりえないのである。

そう、一人ごちるだろう。

四十万 静歌 > 「――」

のんびりとケーキを美味しそうに食べる。

「うん、美味しい」

とほっこりするだろう。

四十万 静歌 > 「ご馳走様でした」

そして、やがて食べ終わると、
支払いを済ませて寮へと帰るのである

ご案内:「カフェテラス「橘」」から四十万 静歌さんが去りました。