2015/09/27 のログ
■橿原眞人 > 「自分でも、無茶苦茶を言ってるのはわかってるさ。君が真剣に悩んでたことを、こんなふうにもして。
俺が言ってるのは逆恨みもいいところだ。あの事件がどういうものであったとしても、異能そのものを恨むのはお門違いだ。
恨む先も、何もかもが、ちぐはぐなのはわかっている。
過去の話なんかして、卑怯だとも思う。あんなこと言われて、怒り出す奴もいないだろうさ。
多分、あの事件は俺の異能を狙ったもの……発現させるためのものだった。俺が失った大事な人は、最期にそう言ってた。
だから俺はこの異能が嫌いになったし、その異能のせいでその人がしたことも無駄にした。
そして、この世界が嫌いだのなんだの言っているわけだ。飛躍もいいところだな。
本当に恨むのは、あれを行った奴らだ。
俺が異能のことを言いたくなかったのはそのためだ。
君が、俺の異能を狙う奴ともわからなかったからな……でも、そんなことはないっていうのは、わかったよ。
でもそれは別にいい……俺自身の事だし、君はそんなこと、知りもしなかったんだ」
俺は色々な事を偽ってきた。
ハッカーとして、電脳世界で本当の姿をさらしたことなんてなかった。
そうしていくうちに、日常でも自分を偽ることは苦ではなくなっていた。
でもそれがこうして、誰かを傷つけることになった。
椅子に深く腰かけて言う。
彼女の言うとおりだ。
そしておそらく、俺はかなり彼女に酷いことをした。
多分、同じ無能力者として、共感もしてくれていただろう。
それを、すんでのところで振り払ったことになる。
「君の言うとおりだ。こんなことを言ったって、君が異能を欲しがらない理由になんてならないだろう。
俺を見舞ったような出来事は起こらないかもしれないし、恩恵を受けるだけかもしれない。
俺は、突然降ってきた天災に恨み言言ってる虚しい奴みたいなもんだ。
世界に、それがなければよかった……そういうことだな。
俺は、持つもので、持たざるものである君に、酷いことをしたんだろうな」
彼女の言葉に耳を傾ける。
どうにもならない。
俺も彼女も、望んで異能を持っているわけでもないし、持っていないわけでもない。
突然降ってきた力だ。どうしようもない。
誰を殴るわけにもいかないし、殴ってどうにもなるわけでもない。
だから、世界を恨んだ。
「世界の変容は、誰かが人為的に起こしたものだと思ってた。いや、そう思いたかった。
俺の家族の事件はともかく……世界の変容さえ起こらなければ、俺は平和に暮らしてたかもしれない。
常世財団とか、そういうのが、世界に何かをして、こんな世界になったんだと思ってた。
だから、俺は異能を使って色々調べたし、何か俺たちに知らされていない真実があるんじゃないかと思った。
……だけど、結局はよくわからなかった。目の敵にするのは世界のほかなくなったというわけだ。
……君の、これまで感じてきたことは、真に俺が理解することはできないだろう。
俺はもう異能者になってしまったからな。俺がどんなことを言ったって、空虚に響くだけだと思う。
だけど……」
大事なモノを失って得た力を、他人が軽率に得てほしくないだけ――
そんな言葉が聞こえる。
「それは……違う。別に、ほんとは誰が異能に目覚めようとか、目覚めまいとか、どうでもいいんだ。
ただ、俺は俺の事を考えているだけにすぎない。もし世界が変容していなければ、なんていう仮定の下で、屁理屈をこねているだけだ。
そりゃ、あの時異能が発動しなければ俺は死んでた。それが悪かったとはとてもいえない。
……でも、君だって、もし異能があったら、とか考えることはあっただろう。
それの逆みたいなものだ。
ただ、そうだな。
俺はそういうことがあったから、異能が欲しいとかどうとか、いってほしくなかっただけかもな。
別に君が異能を得たところで、いいことしかないかもしれないのにな。
……思うんだよ。俺は望んで得たわけでもないし、君は望んで得られなかったわけでもない。
異能を羨むというか、あったほうがいいというのは、わかるよ。
でもさ……今、君はそれで普通に生きていけているんじゃないのか。社会で特別な役割なんてになわなくても、そうできるんだ。
異能や魔術のせいで、何か大きなものを失ったわけじゃない。
なら、別になくてもいいじゃないか……なんて。
そんな風に、羨んだ、だけかもしれない」
頭を振る。理論立っていない。
今後彼女が異能や魔術によって、何かに巻き込まれる可能性だってある。
ただ、感情で何かを言っていただけだ。
「……ごめん、今日のことは、悪かった。俺が変に嘘なんてつかなければよかっただけだもんな。
随分、酷いことも言った気がする。……さっき言った、大事な人を失ったばかりでさ、自暴自棄だったんだ。
それでこんな話になって、つい……。
なあ、一つだけ教えてくれ。
君は今後、異能に目覚めないままだったとして……俺たちと、一緒に社会で暮らしていけると思うか」
常世学園の存在する意味。
それは、異能者や魔術師、異世界の者がこの世界と融和することだ。
今は自分のことはどうでもよかった。だけど、このままだと彼女のような存在は、取り残されていくだけだろう。
■茨森 譲莉 > 橿原眞人という少年は、ただ静かに、自分の事を語った。
正直、たまたま相席になっただけのアタシには重たい話だ。
そんな相手に話さないといけないほどに彼には話せる相手が居ないという事なのかもしれない。
そして、それだけ追い詰められていた。自棄になっていた、という事なんだろう。
大切な人を失った直後らしい彼は、心底辛そうに、「そんな事どうでもいい、俺の事だ」と言った。
………確かに、アタシにはどうでもいい事だ。
ニュースで誰かが殺されましたと流れても、犯人を特別憎いと思う事はない。
他人の事は他人の事で、誰かに降りかかった不幸は、誰かに降りかかった不幸でしかない。
「アナタも、疑心暗鬼になってるじゃない。」
ただ、そう感想を漏らした。
橿原眞人はアタシが異能を持ってるかを聞いたのを聞いて嘘をついた。
自分の異能を気にする相手は、自分の異能を狙う人間ばかりだったからこそ、
この橿原眞人という少年は、そういう嘘をつくようになったんだろう。
そんな人間が疑心暗鬼になるのは良くないなんて。この橿原眞人という男は、随分なお人好しらしい。
その後に続く言葉もまた、真摯で、わがままなものばかりだ。
アタシは、ただ、それを無言で聞いていた。
彼の不幸に対して、アタシが言える事は何も無い。アタシには分からないから。
失ったらしい大切な人が誰なのかすら知らないし、アタシは、この橿原眞人という人間を一切知らない。
だから、アタシには無責任な事は何も言えない。分からない事は分からない。
そして、なにより、アタシはその彼の不幸に対して何も出来ない。―――だから、何も言えない。
アタシは正義の味方にはなれないし、スーパーヒーローにもなれない。平凡な女子高生だから。
変容が人為的なものだなんて考えた事も無いし、それを探す為に危険を冒した事もないし、
当然、それによって何かしら不幸を被った事も無い。
「アタシには、悪いけどアナタの言ってる事はよくわからないんだけど、さ。
アタシは、変容が実は人為的なモノなんじゃないかとかそんな事考えた事も無いし。
……でも、なんとなくアナタがこれからもずっと苦労するんだろうなって事は分かるわ。」
色々と思う所はあったけれど、アタシはただそうため息を漏らしてから、
店員が片づけやすいように、残ったオムライスを脇に避けて、上にコップを重ねておく。
残されたオムライスは憐れにも廃棄処分、という事になるのだろうが、
残念ながら、これ以上食べる気にはならなかった。……少しばかり罪悪感を感じるが、仕方ない。
「アタシが、異能者と一緒に暮らせるかどうか。」
そもそも、なんでこの男子生徒がこんな事を気にしているのかは分からないが、
一つだけ答えてくれ、と頼まれたのを「アナタが気にする必要あるの?」と一蹴するわけにも行かない。
彼らと、異能者と、アタシは、いや、アタシのような無能力者は一緒に暮らせるだろうか。
アタシは、深く深く考え込んで、やがて黙り込んだ。
彼のその質問をゆっくりと咀嚼して、吐き出す。
それは、きっと―――。
「アタシの常識に従って考えるなら、無理だと思うわ。
異能者と無能力者、つまりアタシは、どこかで間違いなく争う事になると思う。
どちらかがどちらかを支配する形でしか、共存は出来ないんじゃないかしら。」
そう言ってから、アタシは常世学園で出会った異能者や、それ以外の人達の顔を順に思い返す。
外の人間とは違う、寛容性と優しさに満ちた、アタシから見ればおかしな人達。
「でも、そうね、もし世界に居るすべての人間が、
この常世学園でアタシが今まで会ったような人間ばかりなら、
もしかしたら、一緒に暮らせるかもしれないわね。」
そう言いながら、アタシは伝票を持って立ち上がる。
結局オムライスは半分も食べられなかったし、
課題も終わらなかったが、それは帰ってからゆっくりやればいいだろう。
元からオムライスで遊んでいるくらいにはやる気の無かった課題だ。
「相席ありがとう。
………あと、折角のご飯時に変な話して悪かったわね。」
彼の変色したコーヒーを眺めながら、小さく頭を下げる。
■橿原眞人 > 「……そのとおりだ。全部自分に跳ね返ってきたわけだな」
疑心暗鬼になっていると言われれば、そう答えた。
彼女が俺から聞いたことは、わからないことだらけだ。
初対面の人間に自分の過去がどうとか、何があったとか。
俺は何を言っているのだろう。
俺自身も、向こうの事など何も知らないというのに。
ただ、自分の置かれた状況を、何も知らない彼女にぶつけていただけだ。
彼女はそれを聞いても、どうにもできないだろう。
「……最低だな」
そして結局、異能が原因であれ、自分の行為によって、師匠を失ったことについて、触れることはできなかった。
ただ、それを直視していれば、こんな問答も起こすこともなかったし、彼女に色々変なことを言う必要もなかっただろう。
一人でそう呟いた。
「多分な。そういうことになる。
俺は苦労することになるだろうな。
でも、そんなのはきっと、皆同じだ」
コーヒーカップを机の端に置く。
俺の質問の後、彼女は長い沈黙があった。
そして、答えが口にされる。
「……そうか」
無理だと思う、と彼女は言った。
確かにそうだ。これまでの歴史の中でさえ、人と人は分かり合えなかった。
それが異能などになれば、なおさらだろう。
どちらかがどちらかを支配するような、そう言う形でしか。
「なるほど、それはたしかに……」
夢物語だ。
異能に奢るものだっているだろう。世界全ての人間が、こうなるとは思えない。
それでも、もし彼女の言う様な事になれば。
「俺も、そうなることを願うよ。
異能とか、そんなのを気にせずに生きていけるような世界になることを」
そうなれば、きっと異能や魔術による、理不尽などきえていくのだろうと思う。
彼女のような人々とも、衝突することもないだろう。
「……色々迷惑をかけたな。ごめん。
結局のところ、自分が異能者になってしまって、ムキになってただけかもしれない。
ただ、受け入れてほしくてな。まあ、これも随分と一方的なことだしな。上から目線かもしれない。
随分、子供っぽい真似をした。……嘘をついたことは謝るよ。
ちょっと、冷静じゃないかもしれないから。また、会えたら、何か奢るよ。
こうして普通にしているときには、異能も何もないんだからな……」
自分も頭を下げる。
最初から最後まで、変に気まずいままだった。
変色したコーヒーを口にして、立ち上がる彼女を見た。
「……またな、茨森」
■茨森 譲莉 > 「少なくとも、アタシはアナタの敵にはなれないわ。
最初に自己紹介した通り、普通の女子高生だから。
………だから、何も出来なくていいなら、話くらいなら聞いてやるわよ。」
こうして悩んで、話す相手に事欠いて見ず知らずの他人に、
ペラペラと喋ってしまうほどに追い詰められているのは、どう考えても憐れだ。
せめて、他に話し相手が出来るまでの間くらいは、アタシが話し相手になってやろうと思うくらいには。
「気にしなくていいわよ、アタシも、随分と子供っぽい事を言ったし、
アナタも何やら色々あったみたいだし、それはお互い様って事で。
またね。橿原眞人。あと、奢らなくても割り勘でいいわよ。」
しれっと次に会う時の約束をする彼に僅かばかりの馴れ馴れしさを感じるが、
あれだけお互いに色々と話をした仲だ、下手な友人よりも踏み込んだ事情を知ってるんじゃなかろうか。
鞄を蹴りあげるように持つと、アタシはゆっくりと歩き出す。
異能とか異邦人とか、そういうものが一切関係なく過ごせる世界。
そんな世界になれば、アタシも異能を欲しがらなくなるんだろうか。
きっと、そんな事は無い。
アタシが異能に憧れるのは、その常世学園という場所に憧れているからだ。
アタシが異能に嫉妬するのは、その常世学園という場所に嫉妬しているからだ。
だから、アタシはきっと世界がどうあれ、異能に憧れ続けるだろう。
「……さむ。」
アタシは、外の冷たくなってきた空気に目を細めて、学生街を歩き出した。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から茨森 譲莉さんが去りました。
■橿原眞人 > 「……そうかい、そりゃ助かるよ」
そう言い返した。
話を聞いてくれるということ、割り勘でいいということ。
きっと俺はかなり、変な奴に思えただろう。
秘密にしておきたかった異能の事も、色々とべらべらと話したのだから。
去っていく彼女を見ながら、空を見上げる。
「……なあ、師匠。俺はこんなだぞ。
初めてあった奴にもこんな、わけのわからないことしてさ。
……全く、ほんとに子供だな」
コーヒーを飲み欲し、机に置いて伝票を持つ。
精神的にも疲弊して、どうしていいかわからなかった時とはいえ。
随分と身勝手なことをしたものだった。
だが、ここまで世界や異能について話したのは初めてだったかもしれない。
「……夢や理想には違いない。
だけど俺は、そういう世界がいい。
そういう世界になれば、またここで生きることも、悪くないと思うだろうからな」
誰に行ったのか。
既に消えた師匠にだろうか。
わからない。
今日会った彼女の気持ちも真に理解できていない。
だが、次はもっとマシに話せそうな気はしていた。
「……行くか」
立ち上がり、出口へ向かう。
「誰かを羨んでも仕方ない。世界がどうとか言っても仕方がない。
それができるのは……俺だけだ」
ご案内:「カフェテラス「橘」」から橿原眞人さんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に四十万 静歌さんが現れました。
■四十万 静歌 > 「えーっと。」
とりあえず、いつものように空いてる席探しから。
いつも人気というか、混雑してるあたり、
このカフェテラスは凄いと思う。
なんて益体もない事を考えつつ、
きょろきょろと店の中を見回す
■四十万 静歌 > 「うん。」
そして、やがては視線は一点に。
丁度いい席があいている。
まぁ、お一人で座るような席ではないのだが、
めぼしい席もないので座って、
メニューを広げる。
なんにしようかな?
なんてちょっとうきうきしてみたり。
■四十万 静歌 > 「――よし。」
メニューを閉じて、
オレンジジュースとオムライス、
そしてホットケーキを注文する。
のんびり本を開いて注文を待つ。
「――♪」
頼んだものの到着の楽しみで
思わず楽しげな鼻歌が出てしまったのは悪くないと思う。
■四十万 静歌 > やがてやってきたもの確認すると、
本を閉じて、
ゆっくりと食べ始める。
「~~♪」
部屋をシェアしてからは、
家でなるべく食べるようにしているけど、
外食がやめれないのである。
だって美味しいんだもん。
「~~♪」
幸せそうにゆっくりと味わいながら、
オムライスを堪能する。
■四十万 静歌 > 「――♪」
やがて、オムライスを食べおえて、
次はホットケーキ。
もぐもぐとほおばるように食べながら、
これからどうしようかな?
なんて
考えて思わず首をかしげた。
■四十万 静歌 > 「ご馳走様でした。」
食べ終えると支払いを済ませて、
カフェテラスを後にするだろう……
ご案内:「カフェテラス「橘」」から四十万 静歌さんが去りました。