2016/08/13 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に尋輪海月さんが現れました。
■尋輪海月 > 「……あー……あっつかったぁー……」
隅っこの席に座った女学生は、テーブルに置かれたオレンジ味の炭酸水を半分程まで飲んだ状態でテーブルに突っ伏していた。
傍らに置かれた鞄の中から、彼女が今着ている服とは、大分趣の違う色や生地の服が飛び出している。
……要は、アルバイト後の一息中。
お気に入りのこの席で、適当にワンドリンクだけ頼んでぐだぐだと寛ぐのが、この夏休み中での密かな日課になっていた。
最近ここで働いている同じ年くらいの子に顔を覚えられるようになったが、
ドリンク以外の物もたのめと言われるようになったので毎度毎度の言葉に、本日は負けて何を頼もうかと考えかけ、……だらっていた。
「……疲れると、食欲もちょっとなぁ」
それに財布も軽くなってしまうのはあまりよろしく無い。
収入は正直それ程でもない故。
■尋輪海月 > 「……」
時間的に、あまり人の多くない故、それ程このカフェテラス「橘」も、賑わっているという訳ではない。
自分の声も、言った後割と響いているのに気づいて、そっと周囲に視線を巡らせた。……気にされてはいなかったらしい。
「……っー」
一息。炭酸を一口。口の中に広がる炭酸のしゅわしゅわと、柑橘の甘酸っぱさが、疲れた身体に染み渡る。
まぁこの味とて、色々技術の使われた柑橘にあらずな甘味料なのだろうなと邪に考えながら、ふと、視線を窓の外に向けた。
「…………常世島……だっけ。なんか、昔居た街とそんなに、変わらないはずなんだけどなぁ」
――転入してきた理由が、時々雲のように曖昧になってしまうような気がする。
自分の身の上など、あまり人にはしない。厳密にはつい最近、しかけて、やはり止めたのだが。
異能。異人。異邦。様々な「世にあらぬ」物が此処には集っていて、それらを制御か、研究かをしているのだ。
裏表の、『如何にも』ありそうな。
……そう思っていた割、意外と、此処は、平穏だ。
■尋輪海月 > 「…………いやいや」
平和で結構じゃないかと、自分を叱咤した。何を。
「…………」
――炎の異能を操るなんて、割とベターなんだろうなと、柄にもなく、なんだかそっちに偏っているような頭が巡った。
空になりつつある、炭酸の入ったコップを揺らす。
例えば液体なんかを操るような液体があれば、炎の異能なんてマッチの火のように容易く消してしまえるだろう。
「……ふー」
吐息を吹きかける。浮かぶ氷が揺れた。
……氷。風でも。炎といっても所詮は化学だ。
外的要因に敏感な炎は、それはもう、いともたやすく消せてしまうのだから。きっと。
「……私の異能なんて、実は全然、案外、大したことないんだろうな」
■尋輪海月 > 「……雨とか、或いはじめじめとした日とか、……ああ、雪の日でも、そう言えば炎って消えるんじゃないか」
考えだす。自分の異能の、ありとあらゆる弱点を。
別にいい。良いのだ。自分がこの学校に編入してきたのは、
元々――。
「…………あー」
がんっとテーブルに額を打ち付けた。
柄じゃない。柄じゃないんだ。こんな事を考えるのは。
というか考えたところでそこから何かが生産されるとかがこれには全く無い。無い。無駄だ。
「……疲れてると、ホント変な事考えるなぁ……私」
残りの、すっかり氷が溶けて薄くなってしまった炭酸を飲み干す。うえ、と、苦い顔をした。氷の味がしみだした炭酸は、薄くてひりっとして、そして若干苦かった。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に水月エニィさんが現れました。
■水月エニィ >
遅めのご飯に舌鼓を打っていれば、
隣辺りから景気の悪そうな吐息めいた声を覚える。
何を言っているのかは良く分からないものの。
振り向いてみれば一際元気のなさそうな少女。
「――財布でも落したの?」
……何となく。
何となくではあるが、席越しに視線と声を向けた。
■尋輪海月 > 「……へ?」
ふと声が掛かった。突っ伏した際にぶつけた額が若干赤い顔にて、ゆっくりと顔をそちらへ向けた。見ると、何やらこの時間に、晩食にしては大分遅いだろう食事を取る女生徒の姿。
「……え、いや、財布は無事ですけど」
そうでなければ○っちゃんオレンジはオーダー出来ない。
にしてもご飯美味しそうだなと視線がそちらへズレていく。
「……いやぁ、その、ちょっと考え事してて……う、五月蝿かったですよね……すいません」
■水月エニィ >
「そう。落したままオーダーして後に引けなくなった訳ではないのなら安心ね。」
だら、と、ソファーに身体を預けつつ声を発する。
……食べきったパスタの痕。そこそこ盛られているポテトとフライドオニオン。
飲物は山葡萄のサイダーだろうか。夜食にしてはパワーがあり、そして健康に悪そうな逸品達だ。
「悩み事ぐらい誰にもあるわよ。私が気に掛けちゃっただけで、気に病むものでもないわ。
……ああ、こんばんわ。この時間にもなると涼しいわね。」
■尋輪海月 > 「そこまで無茶はしませんね私?!」
二言三言ありまくる質故、そこまでして炭酸を飲みたいとは思わない。そんな位ならお冷で粘る。貧乏根性パーリナイ。
「……あ、あはは……お気にかけていただいてどうも……えと、こんばんは。」
涼しすぎて若干肌寒いですけどね。と付け足した。大分軽装にも見える。
店内はさぞ空調も効いているだろう。
チューブトップに半袖のジャケット、ホットパンツとラフな格好だが、そこまでだとこの店内は涼しいどころじゃあない。
■水月エニィ >
「…たまにいるのよ。」
など、
本当か冗句か分からないような胡乱な声で流す。
大抵の場合ちゃんと言えばなんとかなる、なんて言葉も飲み込む。
「ええ。確かに中は冷えるわね。
……私が言うのも妙な話だけど、相談できそうな教師や生徒は居るの?
思いつめると拗らせるもの。」
夜間故か・食後故か、あるいはそのような気分なのか。
話題を拾い直して饒舌に語る。
■尋輪海月 > 「居るんですかそんな人」
自分よりも迷惑なお客さん居るんだ此処。脳裏にて、自覚しつつでも止めない自分を叱咤しろよと後日の朝にてツッコむ事になる思考。
「……え、あ、ええと……」
――これはもう、殆ど自分の独り言、もとい愚痴は聞かれていたということでいいのだろうかと、視線を泳がせ、やがてそちらに戻る。
「……居ると言えば、まぁ、その、心当たりは……風紀委員の人の、先輩に」
この前会ったばかりなんですけどね。と付け足した。
……そう言えば、自分が今までこの学校に編入してきてから出会った人の殆どが、風紀委員の人だったような気がする。
今更思ったことが、転がった。
「……風紀委員の人に、よく会いますので」
『要注意人物にでもなってるんですかね?』と、上記の言葉の直後、声を潜めながら若干引きつった顔で。
■水月エニィ >
「財布を置いてきたまま食べて、その後に気付いたのよ。
……ん、ええ。中身は殆ど聞こえてないから安心なさい。」
……愚痴の内容は大して聞いていない。
断片的には聞いたが、内容は把握していない。
その上でそう言ってのけるのは、偏に一人で突っ走ると拗らせると言った経験に因る穿ったものだ。
絶賛進行中でもあるものの、今の所はそれは告げない。
「そう。風紀委員なら真っ当な見解をくれそうね。
仕事熱心な先輩なら、この島をよく見ているでしょう。
それなら、普通の先輩より信頼できるかもしれないものよ。
とりあえず、貴方が要注意人物には見えないけれど……。」
■尋輪海月 > 「……あ、あぁ、そ、そですか……」
ほっと、安堵の息。正直、聞かれてたらと少し焦っていた。
身の上はあまり知られないに限る。
ちょっとずつ、相手とのペースも掴んだように視線を固定。既に空になったコップを指で弄び、冷たさに落ち着きを受けながら、
「……仕事熱心……ああ、えと、そう、ですね。
……あはは、は」
――この前会った人。若干それっぽくなさそうな気配はあったような気がするなど、口が裂けても言えない。
どこで聞かれているか判らないものだ。故に、さっさと視線を四方八方に飛ばし警戒をしていた。
いや、口が軽いお前が悪いと言われざるを得ない。
「……だ、だと、いいなぁ……」
罪状が幾つかある身故、言われる程にそれらがじわりと疼いた。
いやあれは実は結構でっかく目立ったのではとか、
もしかしたら、いやまさか。邪推が邪推を呼ぶ故、
言われる程に女学生は顔を青ざめさせた。
顔色が一時として同じでない。見ていてある意味飽きない。
■水月エニィ >
「聞かなくたって悩んでいる事には変わりないでしょう。
難易度は兎も角、悩みは悩みよ。」
隣とは言え離れた席越し。
それでも時間や位置が悪くないのか、視線を合わせて話したり、時折ジュースを飲む事は出来る。
「そうじゃない方なの?
ま、それならそれで要領の良い解答が貰えるそうね。」
エニィ自身も彼女の動作を見て、思い出した様子でジュースを飲む。
表情を見て取れば、視線の先の彼女は表情をコロコロ変えている。
大抵は後ろ向きのもののように思えた。
「……もしかして心当たりでもあるのかしら。変なものに手を出したとか。」
■尋輪海月 > 「……悩みは悩み……なんか、そう言って頂けると、ちょっと肩が軽いです、はは……」
乾いた笑みしか浮かべられない。それだけにいえば。
……首を小さく振って、深呼吸。
「そ、そですね!あの人、良い人には間違いありませんし、あと、私みたいに、多分、異能が使える人みたいだったので、そこら辺に関しても、きっと詳しいでしょうし……!」
巻き舌になっている。若干言葉の端が聞き取りづらいようなマシンガントークも、そちらの最後の一言に、ジャムを起こしたように止まった。
「そ、そんな訳……!いや、無いですよ、ないない!!」
全力否定。
「図書館の雑誌をどこに置いたか忘れたとかっ、屋上で私服でアイスを食べてたとか、演習場の一つを丸焦げにするところだったとかくらいで、そんな変なも……ぁあっ!?」
口を全力で滑らせていた。一つ目二つ目、あと3つ目。
■水月エニィ > 「落ち着きなさい。
だれも悪い人だなんて思ってないし、そもそも誰の事か分からないわい。
……ポテトでも食べる? あまり行儀は宜しくないけど、食べきれなかったの。」
ポテトの皿を持って掲げてみせ、軽く伺いつつ。
大分口を滑らせているし、どうしようしている。
「前の仏二つは兎も角………演習場を丸焦げにしかける、って相当ね。
怒られるかどうかは兎も角、そこそこ頑丈な作りでしょうに。……貴女の異能かしら?」
言葉の中に”異能に詳しいでしょうし”とあった故か。
頭の中にあった単語と引っ掛け、自然と焦がした原因を異能であると紐づけた風に聞いてしまうか。
■尋輪海月 > 「うぇ?!……ぁ、ああ、えと、はい、いただきマス……」
簡単に冷静さを失う自分の頭に、こつっとキンッキンに冷えてやがってるだろう氷が溶けた後の薄っすら色づいた水が入っているグラスを当てていた。
相手からの勧めに、割と素直にうなずいた。集ってしまったとも言える。
一つもらおうと手を伸ばしながら、
「……え、ええと……」
図星。さくっと刺さった言葉の楔に、指が止まった。
横に視線がそれる、綺麗な水平線上を辿って、すーっと。
「…………」
沈黙が何よりの答えであった。ポテトを一つ頂いて、
もくもくと食べて一言。
「……その、暴走……するんです。私の異能」
■水月エニィ > 「ええ。」
席を立って、彼女の席にポテトとフライドオニオンを置く。
少し冷えたが、まだまだいける。
「暴走、ねえ……。
……貴女の異能は良く知らないから何とも言えないけれど……
確かにそれは悩みの種ね。しかも長期戦になりがちの。
私もろくすっぽに異能を制御できるものではないから、あんまり力になれないわね。
でも、そういう事なら一人で思いつめると尚更拗らせそうね。」
立ったまま頬に口を当て、悩ましげに息を吐く。
空気が重いと感じれば、仕切り直した調子で――
「……ああ、私は水月エニィって言うの。
折角だから、自己紹介ぐらいさせて貰うわ。」
■尋輪海月 > 冷えているが、置かれたポテトとフライドオニオンは女学生には御馳走だった。空きっ腹には特に。
「……い、頂きます……って、あ、えと」
ポテト、フライドオニオン。フォークで刺して口に運ぶ。
絶妙な塩加減と、冷えているから故のしっとり食感。
……目に見えて顔が綻んでいる。
「……長期戦なのはまぁ、だいたい、覚悟はできてるんですけど……やっぱり、その、なんというか。……ぁはは、……はい」
反論という程ではない。それを一人で思いつめるなと言われては、それを一人でつめねばならない理由が、ない訳ではなかった。しかし、
……ふっと何となく、此処ならば割とある事なのではと、
つい首を縦に振る。そうしたら、あっという間に、心はふわっと軽くなった。
「……一緒に、制御、頑張りましょうか?」
なんて、馴れ馴れしいと思われそうな言葉をぽつり。と。
「……あっ、えと、……ひ、尋輪海月(ひろわ みづき)です。宜しくお願いしますっ、えと、水月、先輩?」
■水月エニィ >
「ええ。そうね。お互いに何とかしましょう。
……私も一人で思いつめている訳にもいかないし。」
馴れ馴れしい、言い換えれば親しげな言葉は素直に受け取り、頷く。
続く言葉は、突っ込みどころのあるもの――棚に上げていた事を示す言葉でもあったが。
「大丈夫。私もここに転入したばかりの一年だもの。
だから先輩は付けなくていいわ。と言う訳で宜しく、尋輪さん。
……私のは苗字だけど、貴方のは名前なのね。みづき。」
■尋輪海月 > 「……あはは」
自然と零れたようだった。ちょっとだけ、嬉しそうな、可笑しそうな。
……はっとして、顔を手で抑えながら慌てるのだが。
「あっ、あああいや違うんです!い、今のはただちょっとなんかくすぐったかったようななんというかただそれだけで!?あ、そうですね?!そう言えば私名前がみづきで水月さんは苗字がみづきですね?!って、え?!あ、え?!」
冷静さ is Far away.