2016/02/15 のログ
ご案内:「部屋」に霜月 零さんが現れました。
霜月 零 > ……そわそわ。

若干落ち付き無く自室にいる零。
何故かと言うと……

「そっち行くから待ってて、っつってもな……」

恋人の雪城氷架から、そのように連絡があったのだ。
バレンタインデー、と言うこともあって期待は高まり……そして、落ち着きは失せていくのだった。

……そわそわ。

ご案内:「部屋」に雪城氷架さんが現れました。
雪城氷架 > 【ぴんぽーん】

呼び鈴が鳴る
ドアの前には、いつもより少しだけ時間がかかったコーデの普段着に身を包んだ氷架

心なしかそわそわしている

少し大きめの紙袋を後ろ手に下げて、
出迎えを待つ

そわそわ

霜月 零 > ガタッ。

弾かれたように立ち上がり、とたたたと慌てて玄関に向かう。これで妹だったら落ち込む。
その可能性は敢えて考慮せず、そのままドアの前に立ち、少し深呼吸して……

ガチャ。

「……よ」

顔をほころばせて、出迎える。

雪城氷架 > 「(化粧崩れてないよな…)」
いうほど厚化粧をしているわけでもないが、今日はなんとなく細かいところが気になる

と、そんなことを考えている間もなくドアの向こうから足音が聞こえる
ふぅ、と気持ちを落ち着けて

いつもどおり、いつもどおり

ドアが開いて、いつもよく見るその顔が覗くとついこちらも表情が緩む

「おう」

小さく片手を上げて挨拶し、後ろ手の紙袋はまだ前にまわさず

「あがるぞー」

声をかけつつ、ドアをくぐるのだった

霜月 零 > 「おう、まあなんもない部屋だけどな」

相も変わらず、質素で物の少ない部屋。目立つ物と言えば、置いてある刀くらいである。
……実は勉強用に購入したアレな本などは棚の奥の奥に仕舞い込んで巫術で封印までしているのだが。

「……あー」

そこで、招き入れて考え込む。こういう時、どういう切り出し方をしたらいいのだろう……?

雪城氷架 > 「おじゃまします」

ブーツを脱いで、丁寧に揃えて
こういうところの諸動作だけは見た目相応に女の子らしい

「さーて、と。零さぁ、今日って何の日か知ってる?」

くすっとした笑みを浮かべて、見返り気味に零の表情を伺う氷架

霜月 零 > 「……バレンタインデー、だろ?」

なんせ妹が妙にハイテンションだったから、いやでも気付く。
それに……期待していなかった、と言えば、間違いなく大嘘になるのだから。

雪城氷架 > 「当たりっ」
にへっと満足気に笑う
これでこのイベントを忘れてたとでも言ったらそれはそれで面白かったのだが

「実は内心期待してたんじゃない?」

テーブルに移動し、よいしょっと腰掛ける
後ろ手に持っていた紙袋は、抱えるようにしてひざ上に

霜月 零 > 「……そりゃあ、な」

期待だってする。
今日はそう言う日だ。イベントを「そんなの製菓会社の陰謀だから」などと言って斜に構えて流すタイプでもない氷架が恋人である以上、期待しない方がおかしいと言っても過言ではないだろう。
抱える様にしてひざ上におかれた紙袋を見て、ぴく、と手が動きそうになるのを我慢する。
流石に、ここで焦るのはみっともない。
そう思って、ここはぐっと我慢。

「期待には、応えてくれるんだろ?」

雪城氷架 > 「いやいや零様の肥えたおくちにあいますかどうか…?」

茶化すような言い方をしてしまうのは照れ隠しである
隠れているかどうかは微妙なところだが、ともあれ紙袋をテーブルの上に上げた

チョコが入っているにしては少しだけ大きいだろうか

よいしょっと紙袋から取り出したのは20cm程の幅と15cmほどの厚みがある白い紙箱
蓋は上に乗っているだけで、外側には可愛らしいリボンのラッピングがされている

「開けていいよ」

零のほうへずずいっと押し出すように、その箱を移動させる

霜月 零 > 「はは、氷架の作る料理は美味いからな、世辞抜きで。期待させてもらうぜ?」

こちらも照れ隠し。美味しいと思っているのは事実だが。

「っと、大きいな……どれどれ?」

そ、っと、うっかり形を崩してしまったりしない様にリボンをほどき、蓋を開ける。

雪城氷架 > 「けっこー労力かかってるぞ、マジで!」

準備から考えればほぼ半日以上を費やした
氷架渾身のチョコレートケーキがお目見えである

直径20cmほどの丸いチョコケーキ
しっとりしたチョコクリームにコートされたカカオ色のスポンジ
ふわっとしたメレンゲと生クリームに彩られた表面に、対比するようなホワイトチョコレートのボード
氷架が悩みに悩んだ末にあえて書き記したメッセージは
【ハッピー・バレンタイン
 親愛なる零へ 心から愛しています】

…と、ドイツ語で記してあるのだった

異能がなくとも顔から火が出るようなこの文面以外がまるで浮かばず、
やむなく直接的な表現になるイングリッシュを避けた苦肉の策であった

霜月 零 > 「おぉ……!」

思わず声が零れる。
直系20㎝と言う中々のサイズのチョコケーキで、ざっと見ても非常に作りがしっかりしている。
こういう評価を考えてしまうのは悪癖であるとも思うが、非常によくできた一品であることは間違いない。
愛情補正も相まって、口にすれば間違いなく至高の味であろう。
……が。

「(…………読めねぇ)」

この霜月零、日本語、英語、後ちょっとイタリア語が出来るくらいである。ドイツ語は完全に専門外。
だが、これを聞くのもちょっと恥ずかしい……ので。

「(……『根源接続・統一言語』)」

一瞬、目に蒼い輝きを宿して根源に接続。
……かつて、神が不遜なる塔を砕いて言葉を分かつ前、この世の言語は一つだった。
あらゆる言語は分かたれてから派生したものであり、元をたどれば一つの統一言語に還り往く。
その統一言語に接続し、あらゆる言語を読解し、話す事も出来る根源接続の運用のバリエーションである。
……インチキ臭い上に負担もかかるので、あまりやらないが。
そして、その異能で文章を読んだ結果……

「……!」

顔を真っ赤にして硬直する零。
感極まっている。

雪城氷架 > 「(そういえばコイツそういう異能持ってた!!!)」

完全に失念していたようで、真っ赤になる零の顔を見て
こちらもまるで伝染したかのように赤くなり俯いてしまう

「と、とりあえず、結構大変だったんだから、か、感謝して食べろよな!」

箱の中にはプラスチックのケーキナイフも一緒に入っている
僅かにひんやりとしているのは保冷剤がまわりにあるからのようだ

つまり、おいしくいただける状態である

霜月 零 > 「あ、ああ……」

少し震える手でプラスチックのケーキナイフを手に取る。
後はこれを切って、口に運ぶだけ。運ぶだけ、なのだが……

「(き、切るのがもったいねぇ……!)」

当然、食べてもらうために一生懸命作ってくれた、と言うのは分かっている。
食べて、感想を言うまでが甲斐性。礼儀と言うものだろう。
だが、それを押しのけかねない勢いで、このチョコケーキに切れ目を入れる事を躊躇う自分がいた。
せめて、せめて先に……!

「あ、あの、氷架……!」

かちゃ、とナイフを置いて、真っ赤なままで問い掛ける。

「写真撮って……いいか?」

雪城氷架 > 「ん?」

そんな零の葛藤は露しらず、突然名前を呼ばれて首を傾げる
…が、続く言葉には思わず吹き出して

「っぷ、なんだそれ。写真撮ってSNSにアップでもするのか?」

からからと笑う。なんだかその申し出がツボに入ったらしい

「ふー、別にいいよ写真くらい。
 ヘンなことマジメな顔で言うなよなー」

霜月 零 > 「いや、SNSとか使わねーしアップもしねーから。自分で持っとくんだよ」

心から愛しています。なんて書かれたプレートを、今この一時しか見れないなんてもったいないにもほどがある。写真はいい文明だ。
スマートフォンでパシャ、と写真を撮って、こくんと頷く。
その上で、スマートフォンを横において……

「じゃあ……いただきます」

さくさく、と小さく切れ目を入れて、ぱく、と口に運ぶ。

雪城氷架 > 「割りとヘンなことするよな、零」
やはりそんな男心は微妙に理解ができなかったようで、くすくすと笑われる

零がケーキを口に運べば、ほんの少しどきどきしてその反応を待つ
不味くはないはずだ、決してまずくは

手順通り作ったし、材料の配分も完璧

ほどよい温度に冷えているため外側のチョコは薄くパリッと割れて、
やわらかな3層のスポンジの間には口どけの良いチョコクリーム
甘すぎない程度の生クリームとほんのりビターなカカオが丁度よい
手作り故のスポンジの多少の粗さはあるものの、なかなかの出来栄えであろう

霜月 零 > 「嬉しいんだから仕方ないだろ……?」

説明になっているようななっていないような事を言いつつ、口の中でしっかりとチョコケーキを味わう。

「(……これは)」

温度良し。口当たりのバランスも良し。スポンジは若干粗いが、大して気になるほどのものでもない。
総じて……

「美味い……凄いな、これ」

うんうん、と頷きながら、もう一切れ。うん、美味しい。
美味しさゆえに笑顔と言うより真面目な顔になって賞賛する。

雪城氷架 > 「ホントか?!」

ぱぁぁ、と一気に明るい表情になる氷架
身を乗りだしてしまうその様子はどこか子供くさい

そして再び背凭れに背を預けて、ふーっと大きく安堵の息

「良かった、心配だったんだよ。
 男の子にチョコレート作るなんて生まれてはじめてだもんなー」

素直な賞賛を受け、嬉しさと安心感がその表情いっぱいに現れる

霜月 零 > 「いや、これは凄いな……ありがとう、氷架」

相当しっかりと計算や時間管理等をして作らないと、こうはいかない。
細かい仕事を雑にすればするほど、味の繊細さは損なわれ、噛み合いが悪くなっていくのだ。
それが無いと言うことは、本当にしっかりと、手抜き無しで作ってくれたという事。
それが読み取れるが故に、感動もひとしおだった。

「プレートの文字もそうだけど……この味で、気持ちが伝わってくる。正直感動してる」

と言うか若干泣きそうである。

雪城氷架 > 「ん、残さず食べてもらえそうで嬉しいよ」

にこっと笑顔を返す
といっても相応のサイズ。一度には食べきれないだろうけど
最終的に全部食べてもらえそうなだけでもやはり嬉しい

「ウッ…あ、あれはだなぁ、その…」
プレートの文字、と言われれば再び赤くなって俯き、もじもじしはじめた

直接的な表現が気恥ずかしくてわざわざドイツ語で書いたのに、妙に裏目に出てしまった

霜月 零 > 「そうだな、これはどんどんイケそうだ」

なんせ、しつこくない味わいなので途中で重たく感じる事が無い。
パクパクと進める事が出来る、ある意味魔性の仕上がりなのだ。

「……あ、えっと、だな、氷架……」

もじもじされれば零も赤くなり、それでも意を決したように口を開く。

「俺も……俺も、心から愛してる。ハッピーバレンタイン。そして、ありがとな、氷架」

口にしてから、真っ赤になって俯き、誤魔化すようにケーキを口に運んでいる。

雪城氷架 > 「無理して一気に食わなくてもいいよ」
赤面するままに、苦笑して
テーブルに両手で頬杖をついてその様子を見ている

「ん…?」

改めて名前を呼ばれて、なんだろうと目線を合わせれば…

「………………」

零の口から出てきた言葉に開いた口がふさがらない氷架
みるみるうちに耳まで真っ赤になっていく

そうだ忘れていた
人がうんうん悩んだ末に直接的に伝わる言語を避けるなりしたような言葉を、
この男は平然と…というわけではないにしても、口にできる男なのだ

「れ、礼なんて別にっ、ほ、ホワイトデー楽しみにさせてもらうから!なっ!」

まっすぐ目が見れなくなってしまった

霜月 零 > 「……よし、ホワイトデーは覚悟しといてくれよ?」

顔を真っ赤にしつつ、まくまくとケーキを食べる。
……ホワイトデーは、自分の全力で最高の物を用意しよう。こう、所謂「3倍返し」とやらに相当するレベルのを。
そんな覚悟を決めつつ、でもやっぱりおいしいなあ、と食べながら若干顔がにやける零である。

雪城氷架 > 「めちゃくちゃ期待しとく」
にんまり笑顔に戻って、そう宣うのだった

──それからしばらくの刻の間、他愛のない世間話や、
本来ならどうでもよいような話、お互いのとりとめのない近況
本当につまらないような話題でも、花が咲く

気づけば陽も傾いて──

「あ、もうこんな時間か」

男子寮は女子寮ほど時間も出入りも厳しくはないが、それでも男子寮は男子寮である
楽しい時間はあっという間、というのは本当だなと噛みしめる

「(こういうバレンタインデーだったら毎年でもいいな…)」

霜月 零 > 「OK、度肝を抜いてやる」

にや、と挑戦的に笑って応答する。さあ……素材の厳選から完璧にやらねば。



「ん……もう、か」

色んな話に花を咲かせていて、時間を忘れてしまっていたようだ。
名残惜しいが……これ以上は、流石にちょっと問題になってしまう。

「あっという間だったな……」

とは言え、名残惜しそうにしている。

雪城氷架 > 「どーせまたガッコで会えるじゃん」
名残惜しそうにしている零に苦笑して

「あんまり夜遅くなるとまた括流なんかに怪しまれそうだしな。
 …でも、うん……なんか良いバレンタインデーだった。
 男の子とふたりきりで過ごしたのなんて初めてだよ」

椅子から立ち上がり、スカートの折り目をなおす

今までは大体は家族でチョコレートを作って、家族で過ごしていた
少しずつ、少しずつ、巣立ちの階段を昇っているのを感る

霜月 零 > 「……そだな。ただこう、なんか……今日が終わるのが、ちょっと惜しかったんだよ」

苦笑を返しつつ、情けない事を口にする。

「俺もだ。いつもは芙蓉のダークマターなチョコをどう処理するか悩む日だったからな……いい、バレンタインだった」

立ち上がって、玄関の方に歩いていく。
思えば、この一年で本当に自分の周囲の環境は変化した。
急な変化は驚きや疲れも伴うが……そのすべてに心地よさを感じている以上、やはり、良い変化が続いているのだろう、と感じる。

雪城氷架 > 「芙蓉かー…そういえば芙蓉もなんか作ってたっけか…な?」

普段はルームメイト含めさせないようにしているのだが、こういうイベントはさすがに止める理由がない

「楽しかったよ。あ、そうだ」

玄関でブーツを履き、何か思い出したようにくるりと振り向いて、

「ん♡」
かなりの不意打ち気味に、背伸びして唇を重ねる

「んー、やっぱり甘い。んじゃ、また明日な、零」

くすっと小悪魔のような笑みを残して、
手をひらひらと振ってドアの向こうへと氷架は去っていくのだった──

霜月 零 > 「芙蓉のチョコ、に限らず料理には気を付けろよ。アレは見た目だけ整えた暗黒物質だからな……」

はぁ、と溜息を吐きつつ氷架を見送る。

「おう、俺も楽しかっ……」

楽しかったよ、と言われ、自分もだ、と返そうとしたその時……言い切る前に、唇が重ねられる。

「~~!!」

顔が真っ赤に染まる。不意打ちの口づけに完全に意識が止まったまま……

「ま、また明日、な」

呆けたような状態のまま、小悪魔の笑みを見送るしか出来なかった。



―――そして一晩中、零は落ち着きなく悶えていたという。

ご案内:「部屋」から雪城氷架さんが去りました。
ご案内:「部屋」から霜月 零さんが去りました。