2015/09/30 のログ
ご案内:「職員寮の食堂」にアルスマグナさんが現れました。
アルスマグナ > ずぞぞぞぞ~。
食堂で頼んだたぬきそばをずるずるとすする。
器用に割り箸を右手で操り、左手にはスマートフォンを持って親指でくるくるとスクロールする。
食事時に行儀が悪いと言われればそうだが、アルスマグナという男は時たま油断すればながら行動ばかりする。

スマートフォンで眺めているのはついこの間出たばかりの常世速報の記事だ。
内容は連続誘拐殺人の容疑で洲崎という学園の教職員が風紀委員に拘束された件についてだ。

そう、アルスマグナも一度対峙したことがある例の『白い仮面の男』と思われる相手である。

アルスマグナ > 詳しい事件の内容についてまではさすがに風紀委員からも発表がないと公表ができないだろうが
しかしまさか相手が教職員だったとは……。
この一件でまたしても常世学園の教職員の肩身が狭くなる。
ここ最近の事件を振り返ればどうだろう。
直接にかかわりがなかったとはいえ女生徒を襲った容疑で捕まった軍人のシイン教員、
それから身分を偽って保険医として潜入していた指名手配中のサイエル、そして今回の洲崎。

常世学園全体の教師という属性に対する信頼はがくっと下がっただろう。
教師と名のつくグループに属する以上アルスマグナも他人事ではないのだ。

アルスマグナ > まぁ元はといえば、学園の上層部、特に教員を採用するお偉方が
教師の経歴をそう深く問わず、能力と優秀さ次第で手広く集めてしまったことが原因だが……
そのおかげで異邦人であるアルスマグナもなんとかこの島で生活できている以上そこに文句は言えまい。

とはいえ、生徒に危害や不利益を与える可能性がある存在を教師として召し上げるのはこれはこれでやばいのではとも思うのだ。
せめて今後はもうちょっと人格審査というかせめて生徒へ穏便な学生生活を送れるような支援ができる、
そういう人材を発掘すべきではないだろうか。

「まぁそれができれば苦労しないよねー……」

それこそどこで判断するべきか、不明瞭な点である。
人の内面などそれこそ多様で多面体なのだから、その時見せる人格が正常でもその裏面は非情なものを隠しているかもしれない。

ご案内:「職員寮の食堂」に士尺 流雲齋さんが現れました。
アルスマグナ > まぁ個人個人へ向けられる信頼とやらはそれでも揺らがないだろうが……
だが、その個人をよく知らない誰かから見た教師というグループと肩書きは確実に貶められたのだ。
再びそのグループが信頼を得るのにいったいいくらの時間と手間をかければ依然と同じ、いやそれ以上を得られるのだろう。

「ごっそうさまでした」

麺と具をほとんどさらい、きれいに空になった器の前で両手を合わせ
割り箸をそろえてスマホをポケットにしまう。
結局大局を支配しようとするならば個人の力は及ばない。
ただ地道に目の前の生徒へ自分の知識を教示し、それぞれの成長と心に向き合うことでしか信頼は得られないのだ。

士尺 流雲齋 > (夏もいつの間に終わってしもうたわい、剣術の補講も満足にできなんだ。
楽しみにしとった生徒には、申し訳ないことをしたのう。
さて、そうこうしとるうちに神無月が近づいておるの。今年もお呼びがかかっておるが、さてどうするかのう……)

からん、ころんと下駄の音が響く。
こつ、こつと杖を鳴らしながら、背の低い老人が歩いてくる。
空いた手には、湯気の立つ湯飲みをしっかりと持ち、辺りを見回しながら、近づいてくる。

「もうし、隣席、よいかの?」

アルスマグナ > からころと小気味の良い下駄の音が食堂に響くとそちらのほうへと顔を向ける。
声をかけられれば人懐っこそうに笑い

「おうよ、じーさんお疲れさん。もう食べ終えちまったがまぁ茶飲み友達ぐらいならやるぜ」

隣の椅子を引いて相手にすすめると、机の上の器を脇にどけて肘をついて頬杖をかいた。

士尺 流雲齋 > 「おお、これは忝い。
では、有難く座らせてもらおうかのう」

思いがけない親切に礼を言い、杖を脇に立てかけると、
熱い緑茶の入った湯飲みをテーブルに置いて、やれやれどっこいしょと椅子に腰を下ろした。

「最近は次第に涼しくなってきて、すっかり秋の気配じゃ。
温かい食事が有難く感じられるのう。
……ところで学園祭も近い話をあちこちで聞くんじゃが、アルスマグナ先生のところでは何か出し物あるかの?」

アルスマグナ > 「そういやちょっと前まで熱いものなんか食えるか!って感じだったのが
 すっかり夜はこういうアツアツが心地よくなっちまったなぁ。
 あー……そういや出し物考えておかなきゃいけなかったな。
 すっかりよそ事ばっかり気を取られまくって決めてなかった。
 まぁ部活のほうは遺跡研究の展示発表と、去年みたく屋台かなぁ。

 そういうじーさんとこはなにやる?剣舞とか?」

 確か魔法剣の講義とかやってたようなぁとおぼろげな記憶を確かめるように顎をさすった。

士尺 流雲齋 > ずず、と緑茶を飲み、ほう…と息を吐く。
熱い液体が喉から食道を過ぎ、体の芯から温めていくのを、しばらく心地よさそうにしていたが、

「ふうむ、遺跡かの。
転移荒野付近に、海底に、たくさんあるが、なにか気になるものは見つかったかの。
あの辺りも不思議じゃよなあ、もう長いこと発掘されてきておるはずじゃが、一向に終わりが見えてきたという話は聞かぬ。

剣舞もいいんじゃがの、生徒たちにはパーッと楽しんでもらおうと思っとるのよ。
せっかくの祭り、ずっと拘束していてはかわいそうじゃからの。
それに、うちの生徒からも数名、たしか委員会所属じゃったか、
警備やら何やらで忙しそうな話を聞くからの。あまり負担を増やすのも、と思うたんじゃ。

じゃが、展示は人手を必要とせん故、山に入るときの諸注意。
遭難対策や毒キノコの見分け方など、年寄の知恵袋でも披露しようかと思っとる。
今のところは、そんな感じじゃの」

この時期山に入る者も多いでの、とからからと笑った。

アルスマグナ > 「あーなるほど。舞台ものだと練習に時間かかるから難しいよなぁ。
 それに風紀とか生活とか式典だとめちゃくちゃ忙しいだろうし……。」

相手のもっともな理由に納得して頷く。
にしても、生徒思いだなぁとつぶやきながら

「山かぁ、ここだと青垣山か。
 イノシシやシカやらクマに出くわしたらいいほうだけど
 青垣山は下手したら異世界の生物が出てくる可能性あるもんなぁ……。
 マツタケ採ろうとしてマツタケによく似た異世界産毒キノコとか食べちまったらシャレにならないもんな。
 っていうかあそこマツタケ採れる?」

マツタケ、高いけどうまいらしいね。食べたことないけどさと笑う。
遺跡のことに話が及べばやや饒舌になり

「ああ、夏の間に出没する悪魔の岩礁付近の遺跡にはこの間潜ったよ。
 あそこだけ海底遺跡よりもちと構造とかが異なっていて、できれば毎月調査したいんだけど
 海域といい海流が複雑だから、夏の間しか出入り口が現れなくってさー調査がろくろく進まない。
 ほかの遺跡はそれぞれ初期から見つかっているいくつかはもうだいぶ調査が終わって一般開放されているんだけどね」

士尺 流雲齋 > 「式典委員会は、一番忙しいじゃろうなあ。
何せ年に数回の大行事じゃ、張り切り具合も尋常ではなかろうて」

くっくっと笑い、それから少し、遠い目をする。

「武術に関係する学生が多いと、警備の話もよく聞こえて来とる。
今年も、ハメ外しすぎる輩が出んことを祈るしかないのう。生徒も、……教師も」

最近相次いでいる、教師による不祥事。
それと直接言わないが、この老人も、生徒間に広がりつつあるかもしれない疑念に頭を悩ませている一人であった。

「それはそうと、青垣山じゃな。
この前キノコ採りに向かったら、マタンゴが出てきて戦闘になったわい」

あれには参ったわい、と愉快そうに笑う。

「マツタケは、…探せば採れるんじゃないかとは思うが、よほど奥に入らない限り、採りつくされて無理じゃないかのう。
それと、青垣山以外にも、ちと遠いが農業区に小高い山がある。魔物の危険は少ないし、そこでもいいんじゃないかのう。獣は出るが」

お茶を飲みながら、ふんふんと興味深そうにうなずく。

「なるほど、悪魔の岩礁かの。
あそこ、もし潜れればいいんじゃが、潮の流れもあるじゃろし、秋冬は水温も低くて危ないしの。まだ謎が多い遺跡の中、何が起きるかわからぬ。
来年の夏まで、調査レポートをためておくしかなさそうじゃのう。いやほんと、ご苦労様じゃよ」

アルスマグナ > 遠い目をする流雲斎をちらりと横目で見つつ

「……だよなぁ。いくら武に秀でていようと術に通じようと異能があろうと
 まだ殆どが若くって未熟な奴らばっかりなんだよなぁ。
 それが風紀だからとか委員会だからとか言われてもさぁ……あんまり無茶はしないでほしいよな。

 そういう肝心な時にものを教えて導くはずの教師がいなきゃあ良くねえよなぁ」

はあと大げさに肩をすくめて溜息を吐いた。
どうやら同じ思いを抱いていたこの老人に少しばかり親近感がわく。

「まじで?マタンゴ出るんだ。まぁマタンゴ程度なら何とかやれそうだが……
 くわばらくわばら。キノコ採りに来て自分がキノコの餌になっちゃあおしまいだな。

 ああーやっぱり貴重な種類ってのはもう他の奴らが採りつくしてるのか。
 高価な味って苦労するから値段が高いんだなぁ、当たり前だけどさ。
 あ、そっちの山は穴場なのか。へえ、今度キノコ採りの勉強していってみるかなぁ。
 ついでに山菜とかとれたらしばらく食費浮きそうだし」

俺天ぷら好きなんだよね、苦みのあるやつとか酒のあてにいいし。などと
口の中に味を思い出しておっといけねぇと涎を拭う。

「潜水でのアプローチはお勧めできないなぁ。潮の流れが複雑で、その名の通り
 鋭い岩場とか浅瀬とかが入り組み合って、うっかりすると流れてぶつかったり
 深いところに引き込まれたりで面倒なんだよ。
 まぁさすが悪魔と呼ばれるだけはあるというか。

 いやぁ俺の好きでやっていることだからね。じーさんだってそうでしょ?」

士尺 流雲齋 > どうやら、アルスマグナ先生も同じような心であるようだ。
この通り、教師の中にもまだ、生徒を生徒として、ちゃんと見ている者もいるのである。
そのことに気が付けば、安堵の息を吐く。
お茶を飲み終わり、静かに湯飲みを置いた。

「ほっほっほ、まあ…若人は総じて無茶をしたがるもんじゃて。
それをうまい具合に加減して、より本人のためになる方へ向けるのが、良い教師の一つ、なんじゃろうなあ。
儂もまだまだ至ってはおらなんだがの」

「うむ。流石にあれは大きいし動くでの、身構えやすかったのう。
とはいえ不安ならば数人で動くといいというのは、クマ対策とほとんど同じじゃな。
農業区の山は名前が判らぬがの、青垣山のおかげでそれほど注目はされていないようじゃ。
もしかしたら、今のうちならキノコ採り放題かもしれぬの」

山の幸はこれからますますおいしくなっていくだろう。
山菜のテンプラ、それもいいのう、
儂も舞茸御飯、そろそろこさえてみようかの、と老人も顔をほころばせた。

「やはり、不吉な名前は伊達ではない、という事かの。流石に流れにもまれてバラバラになるのは御免じゃわい。

趣味といえば、そうなるかのう。
儂は、特に武術系の生徒たちにとって“壁”あるいは“超えるべき障害”でありたいと思うとるんじゃ。
長生きもずいぶんとしたでの、成長する小童どもの糧になるのも一興と、そう思うわけじゃよ。
……まあ、実をいえば儂も化生の身じゃ、そう簡単には超えられるつもりもないがの。
ただ、“ヒトの限界突破”を見るのが何よりの楽しみなんじゃよ」

ただし、常人の目に映る姿は、相変わらずのどこにでも居そうな、おじいちゃんであろうか。

アルスマグナ > 「若い時の無茶は買ってでもしろってやつ?いや、苦労だっけ。
 でも大抵の場合、そういう無茶しなきゃならない場面ってのは
 未来に傷跡を残す理不尽な出来事が多い気がしてね。

 うまくいなすなんてできない奴らも多かろうし、
 自分の限界を見極めるなんてそんな冷静な選択がとれるようなやつらばっかりでもないからさ
 俺も教師たるものがなんたるかなんてわからないけど、ちょっとぐらいは手助けもしたくなる」

本当なら研究者って、自分の研究のことばっかりで頭いっぱいにしておいたほうが
優秀なんだろうけどなぁとごちて

「異界の魔物をクマ扱いとは恐れ入るねぇ。
 まぁ遺跡でもパーティ組むのが定石、青垣山といえどダンジョンと同程度の難易度とすれば
 仲間募って動くほうがよりいいか。キノコ採るにしたって大勢が楽しいし。

 へー、キノコ採り放題ねぇ。じゃあマツタケ自分で食べる分以上取れたら誰かに売りつけよっかなぁ。
 じーさん買ってくれる?」

冗談めかして笑いながらそういう。
流雲斎の秘密の暴露に、やや目を丸くしながらまぁ異世界人がいれば妖怪もいるよなという風でさして気にも留めず

「まだまだお若く見えるけどね。俺よかじーさんのほうが実力行使でいえば手ごわいだろうし。

 ……生徒が望んであんたを”壁”とするなら文句はない。
 あんたもそれが本望だろうからな。
 人が成長するにはある程度の苦難が必要だし、民俗学的にも妖怪の類は人の恐怖心や自然に対する畏怖を具体化、具現化して
 ある程度の納得や理解をするための形づくりや区切りとしてあるんだろうし。

 恐怖心を克服する、その役割に爺さんたちはぴったりともいえるよな。
 克服あれ、人の歴史は実にその通り出来なかったことを出来るようにするための積み重ねだ。

 ただ、望んだ壁として適切な位置で現れるものならいい。
 克服できるかできないかのレベルで来るのなら問題はない。
 世の中は理不尽だからな、チャレンジャーが克服できるかなんて気にもしない災厄並みの”壁”ってのが突如降りかかったりしてさ
 そうすると、若い未来なんかそれこそ木端のごとくバラバラにされたりしてさ。

 俺はそういうネガティブなことを時たま考えちまうよ。
 じーさんは……そういうことが絶対に起こり得ないだろうけどな。」

この男にしては珍しく、いやに暗い視線をともしてじっと食堂の壁面を見据えた。
と、それも一瞬のことで瞬きをすればもとの人懐っこそうなにやけ顔を向ける。

「それじゃ俺はそろそろ行くぜ。じーさんも長居して風邪なんか引くなよ。
 今度は山菜でも採って天ぷらで酒盛りしようぜ」

そばの器を持ち上げて席を立ち、そのまま返却口へ戻す。
ぶらぶらと軽く手を振りながらアルスマグナは食堂を後にした。

ご案内:「職員寮の食堂」からアルスマグナさんが去りました。
士尺 流雲齋 > 「苦労、じゃな。
しかし何事も限度はある、死んだり大けがするまでやる必要はないじゃろう。
無茶というより、無謀というやつじゃ。
それよりは逃げ足を鍛えておくのも、一つの手段じゃろうて。
生き延びれば勝ち、そういう言葉もあるくらいじゃし」

研究者がすべてそう言うわけでもなかろうがの、仮にも教える立場じゃし、と
くっくっと笑う。

「例えじゃよ、たとえ。
儂とて、異界の魔物すべてがクマ程度だとはさすがに思っとらんわい。
多すぎず少なすぎず、人数揃えていくのが安全策じゃろうな。よほどの自信があれば単独でも
……いや、山に至っては単独行動は死を招く。野生に返っているか、よほど慣れていない限りは、やめたほうがいいじゃろうなあ。

マツタケは高いからの、売ればちょっとした副次収入にはなるじゃろう。
儂は、自分で採るから遠慮しておこうかの。人の踏み込めぬ領域にゆけるし」

相手も遺跡研究者だ、魔物とやり合ったこともあるだろう。
妖の類だと打ち明けても驚きが少なかったのは、そういうせいもあるとみる。
まあ、見た目からして明らかな化生もいるし、実際珍しいことではないのだろうが。

「ほっほ、絶対などあり得ぬよ。
そんなものは、ひっくり返されるためにあるじゃろうて。たとえどんなに強大であろうと、な。

おや、もう行くのかの、酒は生憎絶っておるが、山の幸祭りもいいじゃろうな。
また会うのを楽しみにしとるよ」

アルスマグナの後ろ姿を見送り、小さくつぶやく。

「……儂とて、わかっておるとも。
それこそ災厄。広い世界、理不尽な神魔の類もごろごろ出てくる世の中になった。
じゃからこそ、せめて、小童どもに予行練習くらいはさせてやりたいんじゃよ。
それが、この時代まで生きながらえた怪異のひとつである、儂の責務じゃと思うでの。
……他の化生は知らぬが」

席を立ち、湯飲みを片づけると、杖をつき、下駄を鳴らしながら、ゆっくりと歩きはじめる。

ご案内:「職員寮の食堂」から士尺 流雲齋さんが去りました。