2016/08/13 のログ
ご案内:「浜辺」に蕎麦屋さんが現れました。
蕎麦屋 > 海水浴場と化した砂浜の隅っこ。
昼間は普段店は出さないのだが、偶にはいいかと行楽気分で来てみたわけで。

蕎麦の屋台を組み立て終えて、一息。『冷やし 300円』の文字が眩しい。

「――いや、客が来るとも思いませんけど。」

屋台はわざわざ目立たないように立ててある。行楽だし。
客が来たらもちろん蕎麦の提供の用意は万全であるけれど。

そんなわけで、泳ぐわけでもなく、麦茶片手に泳ぐ人々を眺めてみたり。

ご案内:「浜辺」に寄月 秋輝さんが現れました。
寄月 秋輝 >  
本日もトレーニングがてらの水泳に来たところ、普段見えないものが目に入った。
蕎麦屋の屋台。
そこに居る女性を見つけ、サンダルをざりざり鳴らしながら歩み寄る。

「こんにちは。
 水泳……ではなさそうですね、商売ですか?」

先日会ったのを覚えていた。
商売ならば蕎麦をいただくつもりだ。

蕎麦屋 > 赤いビキニの女が振り向く。
屋台は目立たないように、とはいえ服装で意味がない。

「おや、毎度――――」

客の顔は覚えているのだが。
どこで会ったのだったか――ええと。

「ああ、アキさん。
 人間観察の片手間に商売でも、と思ったのですけど。」

食べて行かれます?と屋台の張り紙を指さす。
まあ――言うまでもなく、不法営業ではあるのだが。

寄月 秋輝 >  
「なるほど……って、これちゃんと許可を得てますか?
 もう住民登録の申請は返っていますよね?」

ちょっと不安になってきた。
とはいえ、それは咎めるような語気ではなく、どちらかというと心配しているような感じである。

「……まぁ、なるべくばれないようにどうぞ。
 一杯お願いします」

夏の行楽の場だ、うるさく言わないようにしよう。
そんなつもりで、自分から共犯の場へと進んでいく。

蕎麦屋 > 「返ってこないんですよねぇ――まぁ、困るものでもないですし。
 気長に待とうかと思ってますけど。」

流しの蕎麦屋は場所さえあれば別段良い、らしい。
実際にどっちでもいいと思っているのか、ひらひらと手を振って――

「いや、心配していただけるありがたいことですけどね。
 はいはい、少々お待ちくださいな。」

座っていた客用の椅子から立ち上がる。
屋台に引っ込めば、手慣れた手つきで蕎麦の用意。

「あ、麦茶はご自由にどうぞ?」

机には、ご丁寧にも氷の入った麦茶のポットと、いくつかのグラス。
ご自由にお飲みください、ということだろう。

寄月 秋輝 >  
「……確かに、不便だ、程度のニュアンスでしたね……」

個人的には住民登録出来てないとなると、かなり困る気がするが。
自分が動いてなんとかなればいいのだが、結局は風紀委員、それも嘱託の立場だ。
そうも簡単にはいかない。

「あぁ、では麦茶もいただきますか……
 ところでメニューは?
 そこの冷やし一本で勝負、というやつでしょうか」

財布を取り出し、百円硬貨を三枚取り出す。
それを台に置き、麦茶をグラスに注いで一口含んだ。

蕎麦屋 > 「困る理由なんてほぼありませんしね。
 流石に島内の売買は電子貨幣を使います、などと言われれば困ったかもしれないですけれど。」

商売するうえで、貨幣のやり取りができないのは割と致命的ではある。
と、話しながら蕎麦を鍋へと放り込む。
茹でている間に、冷蔵庫から氷水を張った桶と、冷やした器を取り出した。
時代劇に出せそうな屋台のくせにえらく高性能だった。

「ええ、基本はかけ蕎麦一本でございますよ。
 駅前蕎麦のように具材を選べます、といった方が受けるのでしょうけれど。
 いやほら、手狭でしょう。」

蕎麦を鍋から上げれば、そのまま氷水で冷たく〆る。
水を切ってから器に盛り、これまた冷たい汁を回しかける。葱と海苔、器の縁にはおろし山葵を添えて。

「まぁ、味の方は――素材も悪くないと思いますし。はい、毎度お待ち。
 天かすとほかの薬味はそちらからどうぞ?」

座って待つ相手の前に置いたのは、見た目どこにでもありそうな蕎麦ではある。
ポットの横、割り箸立てと薬味類の入った小さな器を示した。

寄月 秋輝 >  
「ああいえ、具材が無いのはすごいと思いますよ。
 蕎麦の素材だけで味わわせるなんて、相応の腕と質に自信がおありなのでしょう」

その手際を見ながら答え、手元に来た器を軽く持ってみる。
ひんやりした器が気持ちよく、中の蕎麦と薬味類もまた彩がよい。

「ありがとうございます。
 ではいただきます」

割り箸をぱちんと膝の上で割り、両手を合わせていただきます。
まずは薬味を入れずに、少しネギ絡んだ蕎麦を一口すする。

「……ひんやりしてて美味しいですね。
 そういえばあまり蕎麦は食べないですし、新鮮です」

おろしわさびを汁に溶かすようにかき混ぜ、蕎麦全体を軽く混ぜ込む。
そこからまたずるずると啜り始めた。

蕎麦屋 > 「かけ、だけですと飽きも早いですからなんとか――とは思うのですけれどね。
 手打ちですからね。あんまり数は出せないのですよ。
 少量の具材を、となりますと価格も上がらざるを得ませんし。」

少量を用意するのは高くなりがちである、というのはどこでも変わらない。
店を出すうえでの悩みというのはあるものだ――自分の場合はそこまで深刻でもないが。

「まぁ、機会があれば、偶に何かしら用意があったりはしますので。
 旬のものが多いですけれど。
 ――ありがとうございます。」

うまいと言われれば、素直に礼を。
一応は蕎麦を提供するために店を出しているのだ、うまいと言われて悪い気はしない。
とりあえずは、食べる邪魔はしない程度に、相槌は打ちつつ――

寄月 秋輝 >  
「飽きが来る可能性は否定できませんが……
 これだけ薬味も揃っていれば十分かと」

つるつると啜り、飲み込んでから呟く。
その多少の変化を愉しむための薬味である。
とはいえ、十分な元の味の良さがある。
ちゃんとリピーターを作りやすい状況にすればいいのに、と内心残念がった。
しばらく無言で啜り、汁も最後の一滴まで飲み干し、ことんと器を置く。

「ごちそうさまでした」

両手を合わせて、しっかり食材と調理者に礼を述べた。

蕎麦屋 > 「おや、それはうれしいですね?」

行儀よく啜る様子に満足そうです。
薬味も自家製、とはいかないが。用意できる範囲では手を入れている。
食べ終えたのを見れば――

「はい、毎度、ありがとうございます。
 ――あ、そうそう。出前もやってますのでよろしければどうぞ。

 普段は夜しか出してませんからね。最近はこっちがメインになってる気もしますけど。」

空の器を下げる代わりに、はい、と電話番号の記されたメモを置いた。

寄月 秋輝 >  
「出前はありがたいですね。
 やっぱり一杯三百円ですか?」

つゆを飲み干したので、後で喉が渇くのはわかりきっている。
そんなわけで麦茶を飲みながら、そのメモを受け取った。
たまに頼ろう、などと考えている。

「しかしいい蕎麦でしたね。
 この島の素材……ではないんでしょうか?」

相手が超常の存在であることは理解している。
正直別世界のもの、と言われても驚かない自信がある。

蕎麦屋 > 「温そばだと200円ですよ。冷やはお値段据え置きです。
 どうせ暇を持て余してますからね、気軽にどうぞ。

 ――あ、でも。海の底とか遺跡のど真ん中とか殺人現場への呼び出しはやめてくださいね?」

特に出前の追加料金は取っていないらしい。
最期の注釈には「実際会ったんですよ、もー」などと付け加えた。

「ああ、変な素材や薬品の類は一切使ってませんよ。
 正真正銘、この世界の無添加の食物です。出所は乙女の秘密ですけれど。」

問われれば、返答としてはこんなもの。
あんまり信用されないのは自覚があるが、これ以上説明できるものでもなし。

寄月 秋輝 >  
「安っ! 大丈夫なんですかその値段!?
 ……まぁ、それでいいなら僕も活用させていただきますが……
 呼び出すのも常識的な場所にしますよ」

ぐいっと親指で軽く口を拭い。
殺人現場への呼び出し、という話は聞かなかったことにしておく。
これ以上厄介な話に巻き込まれるのは御免だ。

「……別に変な素材がどうとかではないのですが……
 まぁいいでしょう、あなたがそう仰るなら」

あっさり信じた。
別に変なものを食べさせられたなんて思っていない。

蕎麦屋 > 「よく聞かれるのですよね……
 いえ、まぁ、ちょっとお叱り受けましてね?それで今の価格ですよ?

 別に私としては。おいしく食べて貰えるならワンコインでも構わないのですけどねぇ……」

あ、やっぱりそういう反応になるんだな、という様子。
反応をもう見慣れた、といった感じである。

「で――まともな場所でしたらどこでも。
 出前のついでに暇つぶしに付き合え等と仰るのでしたらそちらの承りますよ。」

実際そういう目的で呼び出されたのも何度かあった。が、蕎麦喰うなら別段問題のない話ではある。
なのでそんな注釈もいれつつ。

「まぁ、食物に変なもの混ぜるような愚行は致しませんので、そこは信用していただければ。
 なんでしたら屋号に誓いましょう?蕎麦屋がマトモな蕎麦出さないなんて名折れもいいところです。」

どーん、と胸を張る。
まさにどーん。

寄月 秋輝 >  
「……生活成り立ってます?」

中身よりそっちの心配だった。

「ではまぁ、自宅に呼んだり……
 公園あたりでもいいんですが、あまり表だって活動出来ないなら、
 僕が異邦人街のあたりまで足を延ばしてもかまいませんし」

蕎麦屋の方に無理をさせるわけにもいかないが、その辺りの兼ね合いが難しい。
まぁ適度に考えよう。

「大丈夫、信頼していますよ。
 今後も美味しい蕎麦を期待しています」

この大きさの胸は目に毒だなとか思いながら、胸を張ったその女性に応えた。

「……ではそろそろ失礼します。
 泳ぐのもトレーニングの一環ですので」

そう言って席を立った。

蕎麦屋 > 「あ、そこは心配なさらず。
 私こう見えてとてもエコロジーですので。」

意味の分からない返答を返した。
特段存在そのもの以外で警戒されていないあたり、非合法でない生活手段はあるのだろう。

「あ、私の方の都合はお気になさらず?
 流石に場所も言わずに切られると探し回らにゃなりませんけれど。
 割とあっちこっち行ってますし。研究区とか3日に一回は出前してますしね。」

客の都合優先でそこは構わないのですけれど。
そういう店側の都合考える客は良い客です、などと頷いた。

「おや、トレーニング。ならもう少し精のつく具の一つも用意しておければよかったですね。
 はい、では今後ともごひいきに――。」

蕎麦だけ、では少しばかり足りなかったかもしれない、と。
視線には気付いたか否か。――笑顔で見送る構えだ。

寄月 秋輝 >  
「……あ、研究区でもいいんですか。
 なら僕もあそこにはたまに行くので、一人で食べるときはあそこでもいいですね」

店側も人間ですから、と呟いて、そういえばこの人厳密には人間じゃないな、と思い至った。
とはいえ、困ることもあるようだ、こちらから配慮して損はないだろう。

「いえ、十分小腹が満たされました。
 ごちそうさまでした、本当においしかったです」

微笑みを浮かべ、ぺこりと礼をしてその場を立ち去った。
これはいい間食のお供が出来たな、と少し上機嫌気味だった。

蕎麦屋 > 「あまり気を使っていただかれると恐縮しますし、構いませんよ?
 はい、ご注文お待ちしておきますね――?」

本当に礼儀の正しい子である。
見送り、去るその背に声をかけて――

此方はと言えば、再びのんびりと人間観察に興じる構えだ。

ご案内:「浜辺」から寄月 秋輝さんが去りました。
ご案内:「浜辺」から蕎麦屋さんが去りました。