2017/01/09 のログ
■黒龍 > 実際の所、彼女の推測は概ね正解に近い。この男は魔術でも素手でも武器でも行けるが…”好みなのは”真っ向からのぶつかりあいだ。
つまり、自然と素手か武器による打ち合い、斬り合いになっていく。
手数は彼女の方が多いだろうが、一撃の重さと何より防御力がこの男は尋常ではない。
「――だぁから、テメェの邪魔してるつもりはねーし、そもそも勝手に敵と勘違いしてんのはテメーだろうが!」
言語が互いにある程度は通じる、となれば双方解析はもうここらが最終段階。
だが、言葉で止まる相手でもなさそうだ。”飛ぶ事を阻む者”を少女は容赦しないだろう。
真っ向から激突する光の刃と斧剣。大きさと出力はこちらが上…だったが、彼女が4本分束ねた事でほぼ互角か。
更に、それとは別に4本の光刃が切りかかるが…。
「――うぜぇ、邪魔だ」
不意に光の刃が4本とも強烈な重力で叩き落される事になろうか。
ノーモーション、そして無詠唱の重力術式でピンポイントに光剣を4本同時に潰したのだ。
…が、同時にその間にも彼女の侵食干渉(クラッキング)が既に展開しているのを感じ取る。
(チッ、別系統の解析術だと割り込みも間に合わねぇか…!)
割り込みで遮断する事も不可能ではないが、そちらに意識を裂きすぎるとこの斬り合いがやや手薄になってしまう。
真っ向から光と光のぶつかり合いを繰り広げながら、こちらも一歩も引かずむしろ相手を押し込むように前進を止めない!
「――違うな、テメェが俺の先を飛ぶんじゃねぇ」
フと笑った。次の瞬間、男の背中から真っ黒なドラゴンの翼が展開する。
同時に溢れ出る魔力…その翼、彼の背後に二つの巨大な術式が高速展開。
(…双発増幅(ツインブースト)…装填(リロード)…)
次の瞬間、術式がまるでロケットブースターのように巨大な魔光を放出する!!
「――テメェを俺がここで叩き落す。歯ぁ食いしばりやがれ!!」
そして、男の背後で二つの術式が破裂した瞬間、爆音と共に超加速…音速超過で己ごと彼女を遺跡の壁に叩きつけんとする!!
■ファウラ > 4振りの剣を撃ち落とされつつもそれを介することなく
猛る猛禽がごとく3次元の剣戟を鳴らす。
彼女にとってこんなものはおまけ程度に過ぎない。
(無詠唱術式、干渉……不必要)
近接能力と出力、そして耐久力ではかなりの差があるが
それを補う機動力と押し切られないだけの火力、そして圧倒的な演算能力を武器に押されながらもほぼ互角の打ち合いを繰り広げる。
「あは」
その最中、巨大な術式と魔術の出現を確認。
平時ならともかく、それに対抗する余力は現状ない。
それでも彼女は無邪気に笑った。
これはもはやチキンレース。
干渉する気も邪魔する気もない。
彼女が間に合えば術式が展開しきる前に相手を薙ぎ、
間に合わなければ、そのまま押し切られるだろう。
「捕まえて見せて?」
まるで星に願うがごとく無邪気な声色でそれは告げ、
打ち合っていた斧剣が刹那、バチリと音を立て、色を失う。
それと同時に一切の躊躇なく光剣をふるう。
同時に閃光と爆音が走る。それは文字通りコンマ数秒の世界。
早かったのはどちらだっただろうか。
大きく大広間を揺らし一瞬で二匹の獣は壁へと叩きつけられた。
…巻き上がる土煙の中、相手の首元を薙ぐように振り切られた細い片腕が
ゆっくりと力を失っていく。
その先に光は宿っていなかった。
その刃が喉を薙ぐ前に出力の限界が訪れていた。
ほんの僅差、僅かな時間、そして絶対的な時間の差。
やはり目測通り間に合わなかったと壁にたたきつけられ、
遠のく意識とともにどこか他人事のように思う。
「……遠いなぁ」
小さく呟くと同時に彼女の周りを漂っていた光子も軽い音とともに弾け
起動音が止まる。
■黒龍 > (クソが、干渉合戦になると流石に俺の方が不利か…”本来の姿”ならそこも埋め合わせ出来るんだが、贅沢言えねぇわな!)
無詠唱術式に、更に魔術の同時展開…多重展開術式を併用しての重力魔術の不意打ち打撃。
とはいえ、ウザいから撃墜しただけでそれが決め手になるとも有利になるとも思ってはいないが。
(…速度と火力はあっちが上として…演算で先を行かれるのは面倒だな本当に)
「捕まえる?その程度で済ますか小娘が。叩き落すっつったろうがよぉ!!」
流石に、人間形態で翼だけとはいえ強引に”龍化”したのは少し反動が大きい。
が、そういうのは後回しだ。このチキンレースじみた鍔迫り合いに押し勝つ為に。
無邪気な声とチンピラめいた口調が交錯する。己の頑丈さを利用し、自らが音速超過の砲弾となって彼女ごと遺跡の壁へ激突すれば。
…僅かの差、ほんのコンマ数秒の差でこちらが制する。既に光のハルバードは消されている。
その喉元を薙ぎ切られる刹那に、こちらの超加速による激突と衝撃が先を制したのだ。
――色々と危なっかしくはあったが…”鳥墜とし”は何とか間に合ったようで。
「あーーやっぱ刺激の或る戦いから遠ざかってると我ながらグダグダだぜクソが…。」
そう、悪態を零しながら光子が消え起動音も消えたのを確認する。
それでも、激突して壁に彼女を押し付けたような態勢のままであり。
サングラスはとっくに跡形も無いので、鋭い黄金瞳で少女を見据えながら…。
「……で、会話する気はあるか?もう一度言うが俺はテメェの敵って訳じゃねぇ。
それと、多分ここはテメェの知ってる世界じゃねぇ。…つまりテメェは異邦人(エトランゼ)って訳だ。
……もっとも、そりゃ俺の方もだけどな。」
彼女も、そして己もここでは異邦人なのだと簡潔に告げていこうか。
そして、付け加えるようにこう言っておこう。
「…で、ここは海底神殿…海の底だ。飛びたいならまずはここを出るしかねーぞ?」
■ファウラ > 脳内でエラーコードがいくつも鳴り響いている。
戦闘維持どころか意識を保つことすら正直危うかった。
これは修復にしばらく時間がかかりそう。故に話を聞くしかない。
とはいえこうでもしなければ彼女は止まらなかったというのも事実だが。
「……言っている意味が分からないの。
海……なにそれ?」
彼女の世界に海というものは存在していなかった。
よくわからない単語の上、別の世界と言われたところで理解できるはずもない。
初めて彼女の瞳に困惑が浮かぶ。
「敵性勢力の拘束じゃない?
どうしてこんな場所に?理解できない」
まるで迷子の子供のような小さな声で困った表情のまま
わかりやすく説明してほしいと目をしばたたかせる。
■黒龍 > (…こりゃオーバーヒートっつぅか…元から手負いの状態で無理したから、機能の多重エラーも重なってるな…)
世界が別とはいえ、男の世界にも機械文明はあった。だから、彼女の様子をある程度は把握できる。
もっとも、先ほど戦った事も大きい。解析術式を使わなくても推察はある程度可能だ。
「……あ?テメェの世界は海がねーのかよ?…面倒だな…ったく」
ハァ、と溜息。ある意味で大の大人が10代半ば程度の少女を壁に押し付けてる態勢ではあるが。
残念ながら、ついさっきまで殺し合い凌ぎ合いだったので、そんな色っぽい空気は欠片も無く。
「…言葉で説明するのも面倒なんだよなぁ。言語に関してはそっちも解析済みだろうからそこはまぁいいとして、だ。
…しゃあねぇ。」
そして、まず背中の翼を消して余計な消費をカット。そして解析術式を展開しつつ。
「おい、解析術式展開しろ。クラッキングじゃなくて同調(リンク)してじかに情報を伝えたほうが速ぇしな。
お互い系統が違うがまぁ、そこはさっき戦った時に互いに把握してるから問題ねぇだろ」
同調さえ出来れば、この世界の大まかな文明レベルやこの海底神殿、ひいてはこの常世島についても最低限の情報を男から受け取れるだろう。
(とはいえ、リンク成功してもコイツは今はボロボロだしな…あークソ面倒だな)
こちらが送る情報を処理しきれない可能性も高い。なのでリンクしたら彼女の負担をこっちで引き受ける。
それで、多少なりともマシにはなるだろう。一時凌ぎだが今はそれでいい。今は。
■ファウラ > (連続起動時間……240秒
予備動力に切り替え、周辺探査カット)
ひとまず機能維持を最優先。
そもそも重力からしてこの場所は強い。
重力術式でも働いているのだろうか。
「海、無い」
小さく頷く。
相手に必要以上の敵意がなくなったことを感知して警戒を緩める。
……いやそもそもあまり敵意はなかったけれど。
「指示に従います。高次解析術式展開開始。
既に可変変換式は適応済みのため、3秒後から同調を開始します」
演算能力に関しては並の生態兵器を軽く凌駕しているため
与えられる情報に対する紐づけは非常に速い。
たとえそのリソースの大半を修復に回していたとしても
わずか数秒で共有を終わらせられるだろう。
もしかしたら相手に軽い眩暈を与えるかもしれないが……そこは我慢してもらおう。
「……ええー」
その中から海の情報を引き出し小さく頭を振る。
湖以上の大きさでしかもしょっぱいってどんな冗談ですか。
そしてもう一つ大きな問題があって…。
「……あの、私泳げないです」
そもそも今はまともに動けないことを棚に上げてちょっと涙目。
防水加工はされているうえに理論上は水中移動も可能だが……
泳ぐ訓練はしてないというか正直水に沈むのがたいへん怖かったりする。
それが今は水底だと言われればもう涙目にもなるというもの。
■黒龍 > 取り敢えず、何時までも壁に押し付けたままなのも流石にアレだと今更ながらに思い立ち。
右手一本で彼女の体を支えながら破壊されてない壁面へと彼女の身を一度寄り掛かるように座らせておこうか。
男自身は少女の前で座り込む形だ。まぁ、同調をするならなるべくこの方がやり易い。
「おぅ、じゃあカウントな。3…2…1…同調(リンク)開始、と」
異なる世界同士で解析の術式を同調させるのは流石に初めてだ。
軽い眩暈を流石に覚えるがそこは直ぐに持ち直して安定させる。
ただ、同調(リンク)した事で互いに経路(バイパス)が構築されてしまったかもしれない。
まぁ、リンクしたのだからそれはしょうがないだろう。案外これはこれで後に役立つ可能性もある。
「…ってか、真っ先に引き出したのが世界情報じゃなくて海かよ。まぁいいが…あぁ?」
泳げない、という彼女の言葉に胡乱げな声が漏れる。が、直ぐに把握したのか溜息。
「取り敢えず、こっから地上に出るなら俺が手を貸してやる。海中適応は流石に泳げねぇなら直ぐには無理だろ。
ここで機能回復していくなら、それでもいいが…そうすっと次に誰か来るまで下手すると出られねーぞ?」
と、いうかそもそも根本的な事を聞くのを忘れていた気がする。
名前は…と、尋ねようとして即座に同調している故に彼女の名前を把握した。
逆に、彼女にはこちらが普段は名乗らない真名…ニグレイド・エンデの名を知られてしまうだろうが。
「どっちにしろ、多分このリンクで俺の魔力とかそっちで変換して燃料や自己修復に使えるだろ多分。
面倒だがここで機能修復するなら俺もここに居てやる」
変な所で義理堅いというか、まぁ彼女を機能不全にまで追い込んだのは間違い無い訳で。
■ファウラ > ゆっくりと壁にもたれかからせられる。今のところ直立はおろか
バランスを保つだけでも精いっぱいなほどボロボロになっているので
どこかに身を預けられるのはとても助かった。
ついでにこつんと額を当てて同調回路を短縮する。
「えと、大体把握です。
重力加速度が9.81なのはおどろきました。
気圧もかなり高いです。
空気抵抗の計算をもう一度し直す必要があるです。
でも海は嫌です」
ふるふると涙目で首を振る。
出来る事とやりたい事は違うのだ。
「きのー回復もこの状況下だと、ふこーりつです。
せめて日の当たる場所をてーあんするです」
あと置いていかれるのは嫌。特にこんな狭くてじめじめしたところに。
相手には伝えていないけれど実は先ほどの戦闘の衝撃でこの場所の崩壊が早まっていたりして……
推定で長く見て2時間後にはこの広間は水中に没している予定だったりする。
「変換はかのーです。
ただかなり吸うことになるです。それでもかまわないですか?」
多分ぐったりつかれることになると暗に告げながら
琥珀色の瞳で相手の瞳をのぞき込む。
それはひな鳥が見知らぬ何かをのぞき込むような表情で
期待しながらもどこか心配しているようなそんな色を宿していた。
■黒龍 > 額をコツンとされて「あ?」と、声を漏らすがまぁ、直に接触してる方が効率は更に増すだろうから問題は無い。
そもそも、背中を壁に預けさせているとはいえ…下手するとこの少女は多分倒れそうなので、軽く支える必要もある訳で。
「まぁ、”猛禽”としちゃ空気抵抗とか気圧とかは大事だろうからな…」
彼女のイメージがほぼ光の猛禽で固定されてしまっているが、イメージ的には間違いではないと思いたい。
あと、涙目になっているが、先ほどの戦闘モードと態度がかなり違う気がする。慣れない。
「日のあたる場所も何も、それならさっさと俺がテメーを担いで地上に出たほうが速ぇわな…。
つか、ここ俺らの激突で水没するだろ多分」
彼女は伝えなくても、流石に男も先ほどのバトルの余波が齎す結果は予想はしていた。
取り敢えず、男が少女を地上まで運ぶのはほぼ決定事項となるだろうか。
「あぁ、もう好きなだけ吸っていけ。このリンクでどうせパスがもう繋がってるんだしよ。
だったら有効活用するのは別に問題ねーだろ」
琥珀色の瞳で覗き込まれれば、右手を伸ばしてポムポムと少女の頭を軽く撫でておく。
能力そのものは申し分無さそうだが、何となくこの少女は危なっかしい空気がある。
乗りかかった船というヤツだ。最低限の面倒は引き受けるつもりであり。
■ファウラ > 「大事です。飛ぶときの空気抵抗は特にです。
亜音速地帯では馬鹿にならないです」
額をつけたままうんうんとうなずく。
彼女の中で重要度が高いことは空にまつわることで……
ほかの情報はとりあえず取得するだけ取得して圧縮。
データベースとして保存をしておこうと考えている。
「あー……えと、二時間くらいでどんぶらこになります。
海月気分は味わえるかもですけど。
その、私重いかもですよぅ?」
情報によれば今は冬に相当する期間の筈で……
そんな中泳ぐのを寒中水泳というらしい。
健康には良いかもしれないけれど
同じくらい心臓が止まっちゃう人もいるそうなので
結果としてはあまりよろしくない気もする。
一応体重は軽くできるけれど……なんだかちょっと恥ずかしい。
そんなことを思いつつ投げやりに出された了承に
ぱぁっと笑みを浮かべた。
「ありがとーなのです。
なるべく普段関係のないところに影響が出るようにするです」
ちょっと数日たたなくなったりするかもしれないけれど。
お爺さんはやめて!?って言ってましたけどたぶん大丈夫。多分。
■黒龍 > 「……とはいえ、この世界だとテメー…つか、ファウラ?どっちにしろ適応しても飛行性能はどうしても制限が出るだろ」
額をコツンとしながらリンク中。取り敢えず、彼女が情報を圧縮して保存するまではそうしていようか。
「…重力術式で軽量化すりゃいいだけだな。あと、俺が服を濡らさずにどうやってここに来たと思ってんだ。
そういう術式なんてとっくに使えるに決まってんだろ。
…俺としちゃ、むしろ反動というか影響の度合いが気になるンだがな…」
種無しになるよりは、まだ数日立たなくなる方がマシといえばマシか。
そして、残念ながら彼女のほうにも影響は確実に出てしまうだろう。
何せ、別世界とはいえドラゴン…それも龍王だ。魔力の質だけでなく色々と”濃い”。
「…しっかしまぁ、興味本位で遺跡に来たらとんでもねぇのと遭遇したもんだな…」
異世界の機械仕掛けの猛禽と遭遇するとは。まぁ、久々に真っ向からぶつかり合い出来たのは良かったが。
「…で、修復が済んだらどーすんだ?島の散策でもすんのか?情報はもうある程度は纏まってるだろ」
■ファウラ > 「効率は落ちるですー……
ただ計算上は音速の壁は簡単に超えられそうです。
それに揚力を得やすいともいえるですよぅ。
高くまで上がってしまえば気になりませんし」
何よりこの世界の空はとても高い。
早くも飛んでみたい欲求でうずうずしている。
球体上の世界でどこまでも飛んでいけるなんて
彼女にとっては文字通り天国に最も近い。
「ん……いただきます、です。
ちょとしんどいかもです……け、ど」
声の端々に少々艶めかしい響きを含めながら魔力等必要要素を取り込んでいく。
ある意味最上級のエネルギーを取り込んでいるともいえるわけで……
自然に吸収するよりかなり効率よく作用するはずだ。
同時にほかにも影響は出るものの……彼女にとっては些細なこと。
「んとー……飛んでるだけじゃだめですか
ちゃんと帰ってくるですよ?一周ほどしてくるだけで……」
ひな鳥には刷り込みという現象がある。
ある意味この世界に”転生”した中で初めに見た相手に
なつくというのはある意味とても自然なことで……。
そもそもセーフティとして設けられた制御機構の一つでもある。
バイパスができてなおかつ特殊なリンクができれば猶更だ。
ご案内:「海底遺跡群」に黒龍さんが現れました。
■黒龍 > 「飛ぶのはいいが、そのまま戻ってこなくなるとかいうオチは止めろよな…一応、ここ俺らの世界とは別なんだしよ」
飛ぶ事が好きなのも生き甲斐なのも執着するのも勿論構わないが、ここはあくまで別世界。
対して自分達は異邦人…空を自由に飛べても異端の目で見られるだろう。
この島は例外としても、主にその外から。まぁ、それは今は置いておくとしよう。
若干艶かしい声はまぁそれとして、魔力を中心として色々と彼女の法にリンクとパスで流れ込むのを感じる。
とはいえ、元から体力も魔力も桁違いな為、思ったよりはこちらも影響は少ないかもしれない。
…少なくとも暫く立たなくなる、という点はまぁ大丈夫そうだ。
「…あぁ?飛ぶのは止めやしねぇけどよ…この島の外側は色々と厄介そうだだから程ほどにしとけよ」
そこは彼女の好きにすればいい、と男は語る。
しかし…何だ、何となくだが懐かれてしまったような妙な感じがある。
こういうのはあまり慣れていないので、男としても対処がよく分からない。
まぁ、一応男に出来る範囲では彼女のフォローをするのは吝かではないが。
「…ったく、ガキもいやしねぇのに娘でも突然出来た気分っつぅのかね…」
溜息と共に、右手で魔術で物質を変換して赤いリボンのような物を作り出し。
「取り敢えず、その長い髪の毛は飛ぶときに微妙に邪魔だろ。これで髪の毛とか必要に応じて纏めとけ」
と、押し付けるように赤いリボンをプレゼントしておいた。まぁささやかな機能不全の侘びだ。
■ファウラ > 「計算では軽く見積もって30時間ほどで一周できるですよー?
むしろ脱出速度に到達しないように気を付けないとですー
領空的な何か関係は捕捉されなければいけると思うのですよぅ!」
第一宇宙速度まで到達すれば飛んでいるというより延々と落ちているに近い現象な気がする。
それはそれで気持ちいいかもしれないけれど。
異能保持者の中にはそれくらいの速度で飛べるものもいるかもしれない。
誰かに聞いてみようかしら。
実にいい笑顔である意味剣呑なことを言い放つ彼女は生粋の空の住人だった。
「すごくたのしーですよ?貴方は空を飛ばないですか?」
いろいろ流れ込んでいるにもかかわらず基本的に飛ぶことしか考えていなかった。
もちろん相手の真名はおろか、術式解析やその結果等本来流れ込んではいけないものも流れ込んでいたりするが
余りある演算能力で処理しきり思考の遥か彼方に置き去りに。
先ほどの戦闘できている服もかなり危うい感じになっているにもかかわらず既に意識は空を飛んでいて……
ついでにこの世界の空気摩擦なら文字通りメテオライドキック的な何かができそうとか変なことも考えている。
某昆虫系バイク乗りと似たようなキックだが威力は段違いになるだろう。
主に速度がすさまじすぎて。それこそ衛星が落ちてきた的な騒ぎになるかもしれない。気にしないけど。
しかしその宙に浮いた思考も目の前に差し出されたそれに引き戻された。
「あ、えと……」
圧縮データベースからリボンの結び方を検索する。
蝶結びはなんだかこう違う気がするし……
一瞬考えた後器用にリボンを編み込みながら長い髪をまとめていく。
数分後には伸び放題だった髪がまとめられ、その下の琥珀色の瞳と
整った顔が露になる。
そうして見上げた後、土と泥に汚れてはいるものの
花が咲くように、にこーと微笑む。
その表情だけで喜んでいるのは伝わるだろう。
■黒龍 > 「まぁ、猛禽がずっと海底や地上に居るのもってのはあるわな…。
あと、領空侵犯は洒落にならないから、飛ぶならステルスとか併用してバレないようにだな」
等といいつつも、凄く良い笑顔をしているこの少女は実行に移すのだろう。
それを止める気は正直あまり無いし、それで拗れて会話も出来なくなるのは困る。
と、いうより笑顔で何か剣呑な事を申しているコイツはもう手遅れだな、とか思ったとか何とか。
「…もう把握してると思うが、本来の龍の姿なら兎も角、この姿じゃあんましな。
勿論、翼生やさなくても魔術の類の応用で十分に飛べはするけどよ。」
そして、リンクを現在進行形でしている今だから分かる。この小娘、本当に飛ぶ事が何より最優先なのだと。
そして、冷静に考えたらこちらのスーツもボロボロなのに相手はもっとヤバイ。
正直我ながらよく押し倒しをしなかったな…と、つくづく思う。
ともあれ、パスが完全に確立されてしまうは、最初にこの世界で遭遇した人物だからか。
しかも、リボンまでちゃっかり詫びとはいえプレゼントして自分からむしろ歩み寄っている有様である。
さて、まぁ自分が見かけた時はフォローや諌め役に徹する事になるのだろうな、という漠然とした予感を感じはしつつの。
「…成る程、伸びっぱなしで分かり辛かったが悪くはねぇわな」
と、ファウラの髪の毛が纏められ、整った顔立ちが露になる。
こうやって改めてみればかなりの美少女であろうというのが明白で。
「…あーまぁ、取り敢えず俺に用がある時はメールなりパスから呼びかけるなりしろよな。
テメーがこっちの世界の連絡手段を手に入れたらでも構わんしな。」
と、言いつつ彼女の顔の汚れを右手の指で拭っておいてやろうか。
出会いこそ唐突な戦闘ではあったが、気が付けば半ば彼女の暫定保護者的な感じになっているように錯覚しそうで。
■ファウラ > 「この世界程度なら認知されないですー。
だいじょぶですー」
領空侵犯したところでほとんど流れ星を捕えるようなもので…
なおかつ空中戦でこそ彼女は真価を発揮するタイプなのだから
侵犯された国の防空部隊は完全に事故にあったようなものだろう。南無。
「龍はこちらでは一般的でないですか。そーですか…」
楽しいのにと小首をかしげながら足をパタパタと動かす。
早めの回復と同時にある程度体が動くかどうかの確認。
先ほどはピクリとも動かなかった足が動くようになってきたあたり、
だいぶ回復してきたようだ。
「ふふー」
先ほどまで命をも刈り取ろうとしていたことがまるで嘘のように
優しげな笑みを浮かべ、離れないようにと服の裾まで握っていたりする。
飛ぶことが大好きで、良くも悪くもそれ以外に無関心だからこそ
その姿は非常に無邪気に映るかもしれない。
リボンで手遊びしながら実に上機嫌に見える姿は年相応よりも幼く見えるだろう。
「連絡ですかー?所持されてるのは衛星電話ですー?」
短い一言にあ、こいつ衛星ジャックするつもりだとか
最悪軍の通信網を利用して連絡するつもりだとか気が付いてしまったなら
気が付かなければよかったと己が不幸を呪ったかもしれない。。
良くも悪くもその程度造作もなく可能な存在で……そして倫理観に関しては軽くぶっ飛んでいた。
ある意味彼女の世界では彼女こそが空の女王だったのだから。
この世界ではどうかはわからないが……少なくとも嬉々として自由に振舞うだろう。
それは保護者役にとっては将来の受難を約束する一言でもあった。
「ちゃんと帰ってきてほーこくするですよ?」
すでに無意識化で帰えるべき巣と刷り込まれているからか
当たり前に帰ってくる宣言をするあたり、その受難者は目前の男で確定だろう。
■黒龍 > 「…ああ、ハイハイ。感知できるのはそんなに居ないだろうな…うん(俺は多分可能だがぶっちゃけしんどい)」
そもそも、今回は彼女が手負いで限られた空間…閉所空間での戦闘だった。
これが、自由に空を飛べる…つまり空中戦だと圧倒的に彼女が有利だったかもしれない。
勿論、男も正体は龍なので飛行は当然得意ではあるのだが。
流石に、加速性能だけはまず彼女には及ばないだろう。
「あ?いや、この常世島には割と龍関係のは居るっぽいぜ。
俺みてーに生粋の龍種がどの程度居るかは知らんけどな」
と、肩を竦めてみせる。元々左腕が無い隻腕状態なので、少々不恰好な仕草になってしまうが。
そして、彼女の体も足が動く辺り回復は結構してきているらしい。
完全に動けるようになれば、まぁ水没する前にここから退散する事になるだろうが。
「……あー…ったく。俺もまだまだ詰めが甘ぇ」
上機嫌のファウラとは対照的に、こちらは何ともいえない感じで宙を仰いで溜息。
先ほどの殺し合いなどは別にいいとして、今は何でか服の裾を掴まれたりニコニコとした笑顔で懐かれ中。
おまけに、解析術式を介したリンクによるパスも繋がっている。
少なくとも、もう完全な赤の他人などというのは無理なのである。
リボンを手で弄びながら上機嫌そうな姿の少女を一瞥して。何とも無邪気だとは思うが…。
「…いや、んなの持ってねーよ。ガラケーってヤツだ。つか衛星ジャックしようとすんな。
俺はテメーを束縛するつもりはねーけど、ある程度自分で節度は守れって。
あくまで俺らはこの世界では余所者なんだからな…ハァ」
ガシガシと己の頭を掻いて。少なくとも、彼女の倫理観がすっ飛んでいるのは理解できた。
最優先されるべきは矢張り空に関する事、飛ぶ事なのだろう。
そして、完全に刷り込み状態になっている訳で…猛禽の保護者ポジになっている黒い龍王。
もう、この海底神殿に来て彼女に遭遇した時点でこの受難は確定したも同然だったのだ。
「まぁ、取り敢えず程ほどにな。…つかやりすぎたら押し倒すからなお前」
と、脅し…になってないなこれ。つまりは受難はどう足掻いても変わらない。
空の女王様は中々に手強いらしい。
■ファウラ > 「んと、見つからないように、気が付かれないように、ですね?
それはそれで楽しーのです。
ちゃんと気を付けるのですよぅ」
一応迷惑にならないよう気を付けようと思う。
こんな也でも一応そういったことには配慮することは可能で……
「でも捕まらなければ問題にならないのですよ?」
訂正。当たり前のように言うあたりかなり末期だった。
あながち間違いではないが胸を張って言うことではない。
捕まらない自信がたとえあったとしても。
「はーぃ。そう仰るのであれば侵入する程度に収めておくのです。
光学兵器とか搭載されてるでしょうか?
作ったり改造しちゃったりは許され…なさそうですね。
こっそりすることにするです。」
当たり前のように衛星攻撃を使いこなしていた彼女からすれば
かなり使い勝手が良い兵器なのだけれど、
各国首脳が聞いたら顔が青くなりそうな所業である。
領空以前の問題で。
「ほどほど……ほどほどにするですよ。だいじょぶ。だいじょぶです」
裾を握ってうんうんとうなずく。どこまで大丈夫かは……神のみぞ知る。
「今度は空中戦ですか?今度は押し倒されてもぶつかるところがないですから
もう少し楽しめると思うですよ?」
どこまでも空の住人だった。
■黒龍 > 「……嗚呼、もう俺に変なとばっちりがこなけりゃそ構わねーよ?
ここで俺が何を言っても、ファウラの空を飛びたい欲求と本能は止まりはしねーだろうさ」
この短時間でのバトル含んだやり取りでそれを悟ったのか、男はそう溜息と共に告げる。
ある意味で諦めたとか開き直ったとも言える。と、いうか仮に補足されても逃げ切りそうだから困る。
「……だろうな」
そして末期だった。自分も大概ではあるが彼女はそれに輪を掛けている気がしないでもなく。
とはいえ、あまり人の生き方にあぁだこうだ言うのは好みではなく。
だから、ツッコミを入れたり呆れたりしつつも止める、という事だけは口にしない。
「…やれやれ、俺も中々にぶっ飛んだ娘を拾ったようなもんかねこれは。
あと、そうじゃねーよファウラ。性的に押し倒すって事だっつぅの。…ったく」
やれやれ、と呟くが彼女を放っておいたり見捨てる気がサラサラ無い辺りが甘いところで。
■ファウラ > 「さーぃぇっさー」
びしっと敬礼するが彼女がどういう意味で受け取ったかは……
いや、どのような意図であれ碌な事にならない事だけは約束されていた。
そのままぴょこんと立ち上がり、くるくると回ってみせる。
「特にエラーは検出されないですー
これなら暫くは行動に支障は出ないはずですー」
同時に彼女の翼に再び光子が宿り辺りに舞い散り始める。
そこだけ見ればとても美しく様になる光景なのだが……
今の彼にしてみれば災厄そのものに見えるかもしれない。
しかもその災厄はかなり彼になついていて……
「あー……えと、お望みであれば構わないですよ?
ただ私に繁殖機能があるかは保証されていませんので
そういった目的で使用できるかはわかりませんー
また、仮にその機能があったとして
戦闘能力等を受け継ぐかも疑問ですー」
上目遣いに見上げながらさらっとそんな返事すら返したりする。
良くも悪くも生体兵器で……だからこそそれ以上の倫理観などは与えられていなかった。
一応教育はされているものの……その期間はそう長くない上に
彼女にとってのお気に入りになってしまっているのだから。
それはたとえ見捨てられたとしてもよほどのことがない限り変わらないだろう。
■黒龍 > 「……やれやれ」
ある意味で根負けした、というよりも諦めたに近い溜息を一つ零してみせる。
ビシッと敬礼するファウラをジト目で眺めてみたりしつつも、ピョコンと立ち上がってくるくる回る彼女は大物だ。流石空の女王。
「そうか、じゃあボチボチ行くとすっかねぇ。ああ、あと会場までは俺の魔術で行くから離れたりすんなよ」
と、一応だがそこは念を押しておく。とはいえ、泳ぐのが苦手な彼女には言うまでもないか。
どちらにしろ、一人分くらい増えたところで己の術式に亜kんしては問題ない。
とはいえ、ある意味でパンドラの箱を開けたようなものか。光子が再び周囲に舞い散る雪のような景色は幻想的ではあり。
「……いや、お前いいんかいそれ。と、いうか地味に生々しいなオィ。
…とはいえ、こっちも結構溜まってるんでヤる時はヤるぞ本当に。それでもいいのかお前は」
懐かれてるのは、まぁ慣れないけれど別に悪くは無い。悪くは無いが。
肝心の倫理観に問題があるような、無いような…彼女が生体兵器だというのは既に悟っている。
(…まぁ、生体兵器が皆こんな感じではないな。あくまでこれも個性っつぅ事かね)」
等と思いつつ、上目遣いに見上げてくるファウラを見下ろしていて。
そして、男も男で関わった以上、彼女を見捨てるという選択肢は結局無いのである。
「…ああ、クソったれ。俺もつくづく甘ちゃんだな」
そう己へと呟いて、もうリンクも大丈夫だろうとそっと完全に同調を止める。
が、一度繋がったパスは残っているので消える事はない。
(興味本位で遺跡に来たら、異世界の猛禽に懐かれる…って何じゃそりゃ訳からん)
■ファウラ > 「はーぃ」
小さく手をあげ出発の号令にこたえる。
まだ少し体幹がくらくらするものの、これは吸収源の問題で。
日の当たる場所に出ればある程度調整できるだろう。
小首をかしげたまま見上げ、小さく口をとがらせる。
「水中で投げ出したら泣きますからね。
ついでに音響兵器使うです。水の中なので強烈ですよぅ」
脅迫めいた事を言うほど苦手らしい。
というより塩水の大きな湖の中に投げ出されるというのがすでに怖い響きに満ちている。
いざとなったら水面まで届く砲撃をして無理やり飛ぶつもりですらいる。
そんな考えをよそに呆れたように吐き出された言葉に明朗に答えた。
「はぃー。問題ないですよぅ?
特に性能実験はしていませんがー」
……いずれ羞恥心やその他諸々大事な感覚を身に着ければ
もしかしたら今後反応は変わるかもしれない。
どこまでも生理現象として受け入れている限り簡単に身を任せかねない危機感があるというのは間違いないだろう。
「……あー……やっぱり泳ぐのは嫌いです」
裾を強く握り、さらにぴっとりと身を寄せる。
襲うぞと言われた後にこの所業な辺り
本気で特に問題だと思ってすらいないのかもしれない。
■黒龍 > 小さく手を挙げて返事を答える少女を眺めつつ、やれやれと溜息をもう一つ零すだろう。
そして、彼女の言葉に「んな事しねーから安心しろっての」と、そこは投げだ利したりはしないとしっかり答えており。
むしろ、至近距離で音響平気なぞ使うなといいたい。耳もそれなりに良いのでダメージがデカそうだ。
ともあれ、脅迫めいた彼女の言葉にも、それだかえ苦手なのだろうという事が感じ取れて。
もっとも、別に脅迫されるまでも無くそんな事はしないのだけれども。
「…ったく、戦闘と空を飛ぶ事以外は殆ど無知…って訳でもねーだろうに危なっかしいな」
やれやれ、と肩を竦めてみせつつ。裾を掴まれてピッタリと体を寄せられる。
そこは素直に彼女の体を抱きとめつつも引き剥がしたりはせず。
「…さて、んじゃ行きますかね…俺から離れるんじゃね^ぞ、ファウラ」
と、帰り際にそう命令をしてからゆっくりとした速度で。それでも十分早く遺跡から脱出しただろう。
空の女王に懐かれた黒い龍の大変なのはこれからである。
■ファウラ > 「なら安心なのです。
私も余計なリソースを割かなくて済むですし」
ある意味無防備すぎるほどの信頼を置いてその言葉に頷く。
それに刷り込み以外でもある程度人格に関しても信頼を置いている節があった。
いくら制御機構の一つとはいえそれがなければここまで懐くことはなかったかもしれない。
「無知じゃないですー。しっかりデータベースにはあるですよ?
ただそういった試験運用データが一切開示されてないだけですー」
小さく頬を膨らませた。
知識と理解しているは別物で、
知識はあっても理解していない部分が大きすぎた。
今のところただの情報に過ぎないのだから羞恥以前の問題である。
それはさておき……離れるなという言葉に笑みを浮かべてうなずき
ゆっくりと初めての世界へと足を踏み出し始める。
ここから先は彼女にとって未知……
情報として与えられていても初めて見る世界で
「ん。一緒に行くです」
しっかりとくっついたまま海へと踏み出していく。
道中魚を見つけてはしゃいだり水面に上っていく泡がきれいだと言ってみたり
それなりに海中散歩は楽しんでいた様子で……
その後海岸に戻ったところで外見上ボロボロの二人をみた生徒に
やたら心配されたり変なことをされなかったかと聞かれたときに
変なことはされなかったけれどそれ以外はたくさんとか
誤解を招く回答をして周囲を慌てさせたりと色々あったものの……
それはそれでお互いにどこか楽しんでいたのかもしれない。
ご案内:「海底遺跡群」からファウラさんが去りました。
ご案内:「海底遺跡群」から黒龍さんが去りました。