2018/10/05 のログ
ご案内:「浜辺」にツェツィーリアさんが現れました。
■ツェツィーリア > 「ハッ」
穏やかな秋、天然の防風林や岩に阻まれ人目につかない場所で
ばしゃりと言う水音と共に海中から顔を出した人影が一つあった。
何やら巨大な物体を背負ったその人物は周囲を確認すると
体を引きずるように海岸へとのろのろと上がっていく。
タンクトップにジーンズのみと言う決して泳ぎに来たような恰好ではないその人物は
カシュっという空気の抜ける音共に口にふくんでいる金属筒……
小型の酸素ボンベを吐き捨てるとその隣に背負っていた巨大な物体
黒の棺を投げるように降ろすと暫く肩で息をする。
『計画外ってのはホント好きじゃねぇなぁ全く』
何がどうしてこうなったかと言うとれっきとした密入島です。
本来ならば船旅で優雅に入島するはずが色々なトラブルに見舞われた挙句、
こうして遭難者もかくやと言った有様でそれを果たすことになったというのが顛末。
幸先が良すぎでため息しか出ない。
『なーんでこうタイミングが悪いかねぇわたしゃ』
学園都市などうたっているがれっきとした最先端研究群でもあるこの島は他と比べれば警備がしっかりしている。
と言っても比較論でこうして海から上陸できる程度にはざるだけれど。
まぁそれはそれでしょうがない。
上級移転術式などが使える相手等であれば瀬戸際検疫なんてそもそも意味が無く、そういった意味ではそういった化け物が集まるのがこの島だ。
その中で良く仕事をしていると称賛されこそすれ、咎められることはないだろう。厄介な事に。
『警邏なんかさぼってるくらいがちょうどいいんだっつの……
ったくどさくさに紛れてケツ触りやがったあのじじい
次会ったらただじゃおかねぇぞ』
島に渡る船に乗り込んだのは良いものの運が良くないとでもいおうか。
どうやら同じように島に入り込もうと思ったそこらの馬鹿が足を残しやがっていたようで……
その馬鹿を探しに警備隊が乗り込んできたため
急遽予定を変更し海伝いに
”土足”で島への上陸を果たすわけになったというわけ。
一応事故の形で海に飛び込む形にはしたのでブツを回収されるのは避けたが……
『ったく。泳ぐのは好きじゃねぇっつのに』
名目上は上流階級のパーティーの来賓のうち一人
荒事なんてまるで出来なそうな偽装証書を見た時はげんなりしたが
今思えばあれがそのまま使える状況であれば今よりはずっとましだったはずだ。
『あ―……ったく。』
手を伸ばすと棺の留め金を片手で外し中を弄る。
程なく目当ての物を見つけ出すと再び留め金をかけ……
「――」
棺に腰掛けると取り出した箱の底をトントンと叩き、
そこから引き出したものにライターで火をつけ
一息吸うと紫煙が細く風に流れていく。
■ツェツィーリア > 濡れて張り付くシャツが、ジーンズが非常に煩わしい。
特に煩わしいのは髪から滴り落ちる海水の雫。
天気もどこか曇模様で、癖のある銀髪から滴る雫に眉をひそめた。
煙草が濡れて火が消えたら面倒だ。くそ。
『ぁ―……ったく。マジだりーな』
煙草を銜えながら両手でタンクトップの裾を絞る。
この天気だ。こうしていても服は中々乾かないだろう。
何はともあれ島にたどり着いたことは喜ばしい。
ひと先ず都市部に向かって”コレ”を置けるかつ
ある程度の暖がとれる基地と水、そして食料が必要だ。
幸い金にはある程度余裕がある。前金を貰っているのもあるし
その前金が上手い事1.2倍ほどに化けた。何でって?賭け事に決まってんだろJK。
現金なら足はつきにくい。最悪カードが使える場所ならいくらでもやりようが……
『……ねーじゃん』
ポケットを弄るが財布の影も形もない。
そりゃそうだ。よく考えたら財布は船の自室の中でドレスと一緒。
船の中でいちいち金とか使わないし。
『(放送禁止)』
思わず悪態が口から飛び出す。
ご案内:「浜辺」からツェツィーリアさんが去りました。
ご案内:「浜辺」にツェツィーリアさんが現れました。
■ツェツィーリア > 『とにかく……着替えてぇのは山々だが』
仕事用の服を着て街中を歩くわけにもいかないしなぁと
独り言ちながら二本目を銜える。
ぶっちゃけこんな家業にも拘らず覚えられやすい容姿で
加えて目につく厄介な代物を抱えて歩いてるのだから
平素の自分ならそいつ馬鹿かと真顔で言う自信がある。
残念ながら現状を鑑みるにその通りだが。
ひと先ずは周辺を見て回るしかない。
落ち着ける程情報が集まるまでサバイバル生活になるだろう。
戦場や僻地なら兎も角、町が目の前にあるのにも関わらず、だ。
『あ―……きっちー』
今の所お荷物にしかなっていない棺を見下ろしため息をつく。
今回の用事に必要なものでなければそもそも持ってこようとは思わなかった。
こんなものを担いで泳ぐなんて意味自殺行為以外の何物でもなく
これを持っていると行動を大幅に制限されてしまう。
……けれど捨てるという選択肢はない。これは捨てるには大事すぎる。
『それを捨てるなんてとんでもない!ってやつかねぇ』
むしろ捨てられない程執着しているのは自分自身なのだが。
下手な冗談に口を歪めると視線を水平線に戻し思案を巡らせる。
■ツェツィーリア > 『ぁ―……シャワー浴びてぇ。
どっかにいねーかなぁ。この見た目に騙されて
居候させてくれそうなお人よし』
いるわけないかと現実逃避の雑さに苦笑する。
体型や顔の作りだけであればかなり整っている自信があるが……
右手をみ降ろすと具合を確かめるように少し握りこむ。
光を照り返さない黒い右手は時々青い光が指先から肩へと走る機械のような造形をしている。
肩口まで黒に染まった姿はさぞかし不気味だろう。
確かオートメイルとかいう名前で似たような見た目の腕付けてる主人公の漫画があったなと
ぼんやりとそれを見下ろして考えた。義手と言えば信じられるだろうか。一応嘘ではないのだけれど。
『錬金術よかお前の方がたちが悪いわな』
一見して異形化している片腕と顔の1/3程を覆う眼帯は
一般人には少しハードルが高すぎる。
それに我ながら喰っちゃ寝する自信がある。
『どうせならどっかの馬鹿が襲ってくれねぇかな
その方がまだ可能性があるわな』
考えているのは正当防衛と称してのカツアゲ返し。
どっちが悪党だと言わんばかりだが模範解答は”どっちも悪党です。”
『どっちにしても町の近くに行くっきゃねぇか。
馬鹿に出会えることを期待するか。金持ちの馬鹿が良いな。』
そうと決まれば行動だ。
棺の中からひと先ずコートと
二丁の異なる拳銃を取り出す。
コートを纏い死角に拳銃を吊り下げると……
『よっと』
棺の留め金をかけるとそのまま背負い、歩き出す。
ご案内:「浜辺」に神代理央さんが現れました。
■神代理央 > 『不法入島を試みた船舶有り。公安委員会と共に、協力者、及び不法入島者の捜索に当たるべし』
と、珍しくドンパチしない任務が重々しく告げられたのは放課後直ぐだったか。
とはいえ、やることは変わらない。本庁で装備を整え、連絡車で海岸まで移動。後は、各々の委員が担当するエリアに散らばって不審者の捜索。
自分が担当するエリアは桟橋や灯台等、比較的人の目につきやすい設備が整っている事もあり、此処を選んで上陸する様な入島者はいないだろうと、本庁も自分も考えていた。
それ故に、人気の無い場所を散策している時も、特に警戒する事無く足音を消すことも無い。
「…異形を召喚して捜索させた方が楽かな。一々岩陰の隙間だの、倒木の裏だの探すの面倒………」
そんな暢気な感想と共に周囲を見渡した視線の先に、どうにも風紀案件な人影が一つ。
この時期に海水浴というのも考えにくいし、旅行鞄にしては些か大きすぎる荷物も気になるところ。
「……いや、観光客の類だろう。流石に、単独捜査中に引き当てるなんて運がないなんてレベルでは無いぞ…」
一応、己の従僕たる異形を召喚し、げんなりした様な溜息を吐き出した後、街の方角へと歩いている彼女に早足で近づいていくだろう。