2015/06/18 のログ
■日乃杜 梢 > このところ優れなかった気分を紛らわせようとやってきた神社。
何度か顔を合わせて馴染みとなった巫女の一人に、何か手伝えることはないかと問うたところ、
「境内の掃除を、と」
一人欠員が出た、というその仕事を二つ返事で引き受けたまではよかったが、その後がいけない。
用意しておいたという巫女装束を半ば無理やりに着せられ、境内に放り出されてしまったという塩梅だ。
「しかもサイズまでぴったりだなんて…」
胸元がきつくないのがまた微妙に恐怖を煽る。
どこで測ったのか。学園と繋がりがあるというし、身体測定のデータでも取り寄せたのか。
それはそれで問題なのではないか、とも思う。
■日乃杜 梢 > しかしまあ、この掃き仕事も確かに気分転換にはなる。
葉を掃くこと以外に、気を向けることも、その必要も薄い。
自然、思考が回転し、雑事が外へと掃き出されていく。
ちょうど、今彼女自身が掃き出している落ち葉と同じように。
一歩、一歩。
葉を掃き、思考を掃き、己の内を清めていく。
そうして雑念を捨てたのちに思うのは、自らの抱えた問題のこと。
ご案内:「常世神社」に東雲七生さんが現れました。
■日乃杜 梢 > 「……と」
歩みと手を止めていた自分に気づき、片手で頬を叩いて気を入れ直す。
少し、思考をそちらへと向け過ぎていた。
反省しつつ、落ち葉掃きを再開する。
今度は先程までより、少しペースを上げた。
ついでに、足運びにも一つ手を加えることにする。
玉石を蹴り飛ばさないように注意を払いつつ、爪先で表面を掠める。
それも、ただ掠めていくのではなく、
「星を、刻む―」
■東雲七生 > ──あれ、巫女さんが居る。
(日課のランニングの折り返し地点として設定した神社に来ると、
どこかで見たような巫女さんが掃き掃除をしていて足を止める。)
……んん?
あの巫女さんどっかで見た気がすんだけど──
■日乃杜 梢 > 爪先で刻む星の名は、北斗に座す七つ星。
その軌跡を強く意識しながら、玉石の画材の上に少しずつ刻み続けていく。
と、そこに物音を聞いた。
顔を上げれば、丁度誰かが境内にやってきたところ。
それも、顔見知りだ。
「こんにちは、東雲さん。今日もランニングです?」
微笑みながら、箒を抱えて小さく頭を下げる。
■東雲七生 > ん、その声は日乃杜か!
なんだ、巫女さんの格好なんてしてるから誰だか分かんなかったよ!
そうそう、ランニングの途中ー。
日乃杜は何してんの?巫女さんのバイト?
(そういうバイトもあるか、と自分の言葉に自分で納得しつつ、そちらへと近寄っていく。)
■日乃杜 梢 > 「誰だかわからないって…まあ、そうなっても仕方ないですか」
普段顔を合わせる時は、お互い学生服だ。
別の装いで、という機会はほとんどなかった気がする。
まして白装束に緋袴、という学園ではあまりない色彩とくれば、得心せざるを得なかった。
…地味だとか言われてるわけではないのだと自分に言い聞かせるのは忘れないが。
「バイト、って感じではないですね。知り合いの手伝い…くらいの感覚で、ええ。
どうですか、補習のほうは。順調です?」
近寄ってくるのを、巫女もどきは足を止めたまま待ち受ける。
■東雲七生 > せっかく気持ち良く運動して忘れてたのに思い出させないでくれよ……
(今日も補習があったようで、笑顔が曇る。
しかしすぐに明るさを取り戻して、改めて少女の姿を眺めた。)
へー、この神社、日乃杜の知り合いが居んのかー。
それにしても、よく似合ってんじゃん。本物の巫女さんみてえだな!
■日乃杜 梢 > 「う…ごめんなさい、東雲さんの顔を見るとついそれが気になって…」
確かに、少し可哀想なことを告げてしまったような。
反省の意味も込めて、小さく頭を下げてみせた。
「知り合いって言っても、よく顔を合わせるっていうだけですよ。他に行くところもそんなにないですし。
そうですか? こういうのはあまり着たことがないですから…ちょっと、新鮮ですね」
袖を軽く摘まみ、広げてみせる。
褒められることには慣れてないのだろう、その頬が少し赤らんでいた。
■東雲七生 > ………少なくとも他の印象を持ってもらえるように努力するわー。
(あはは、と苦笑しつつ宣誓する。顔合せるたびに補習の人と思われるのはあまりにもあんまりだ。
しかし補習を受けざるを得ないのは自分の責任なので、イメージアップは自力でどうにかする他ない。)
へえ、本当に知り合いって感じなのな。
他にも色んなとこ行ってみりゃ良いのに、面白いとこいっぱいあるぜー?
(子供っぽく歯を出して笑いながら提案する。
これからの季節海とかも楽しいんじゃないかここから近いし、と。)
■日乃杜 梢 > 「…他の、といいますと…ランニングの人?」
小首を傾げて告げる言葉は、これまた身も蓋もない。
とはいえ、梢自身も考えていたことはある。
とりあえず、しばらく前から疑問に思っていたことをぶつけてみた。
「東雲さん、確か寮暮らし、ではなかったんですよね。
どちらにお住まいなんですか? そこからこの神社まで、ランニングしてるんですよね?」
(海とかどうだろう、という提案には、箒を抱え込んだまま笑みを深める。首を巡らせて見遣るのは、浜辺のある方角だ)
そうですねえ、あちらにもあんまり足を運んでいませんし…よければ、今度付き合ってくれませんか、なんて。
■東雲七生 > ……そんなに補習とランニングしかしてないように思われてるの俺……。
(これは骨が折れそうだ、と思いつつ。
実際何をすればいいんだろう、と少し考えて不毛そうな気配がして止めた。
なるようにしかならない、そういうものだ。)
ん?えーと、研究区。ここからだと駅幾つ分だったかな……。
走って大体1時間半くらいだし、そんなに遠くは無いと思うんだけど。
(東雲の走るペースは結構速い。
それに加えたまにショートカットも用いるので実際はもう少し時間が掛かるだろう。)
よっしゃ、じゃあ今度行くか。神薙も誘ったら来るかな。
■日乃杜 梢 > 「え、確かに学園で同じ教室だったりすれ違ったりしますけどー…実習では一緒になったことありません、というか実技さぼってるでしょう東雲さん!」
言い募る顔は、しかしやはり羞恥の色が濃く見える。
自分の他人への興味とかそういうのの小ささを恥じているらしい。
「あ、いえ、付き合ってくれというのはちょっと冗談入ってました、けど…そうですね、何人かで遊びにいったりするのもいいかなぁ…。
でも、研究区に住んでるんですか、東雲さん」
意外、という思いが顔に出る。
その、研究、という単語が、目の前の活発な印象の少年には似つかわしくないと、そう思った。
■東雲七生 > 「い、一応普通の体育とかは出るし!……普通のは、普通の。」
(普通のとは所謂“自分の異能を使う必要のない”ものだ。
まあしょうがないけど、と苦笑いをして頭を掻く。
趣味の話とか、あんまりしたことないもんな、と。)
おう、研究区だぜ。
つっても、学園区との境にあるようなとこだけどさ。
(そこそこ家賃も安いんだよ、と笑いながら答える。)
■日乃杜 梢 > 苦笑している相手を見ていると、自分の羞恥も少し引いていく。
しかしそれとは反対に、自分の不出来を意識してしまうのも事実だ。
本当なら、もう少し他愛のない会話をして気を緩めるのが、友人という間柄なのだろう。
しかし、そういうものにあまり縁がなかった少女としては、新鮮な感覚と、大変な苦労を抱えているのが現状なのだった。
それではいけないと、心を新たにする梢である。
「ふぅん…そうですか、学園区のすぐ側。
じゃああっちのほうを歩くときは、道案内を頼めそうですね」
笑いながら、手を止めていた作業を再開する。
気づけば風がまた強く吹き、枯れ葉が増え始めていた。
「あっちのほうは、結構大きなトラブルが頻発してるみたいですし…歓楽区や落第街も近いでしょう? ボディーガードも頼みたいところです」
■東雲七生 > まー、こっち側に来る生徒ってあんまり居ないもんなー。
面白いものもないし、むしろ殺風景なくらいだし!
何か用がある時は案内するよ、あの辺も結構走り込んだからさ。
(凡そ島内の地図は頭の中に出来つつある。
掃除の邪魔にならないようにと、二、三歩後ろに下がった。)
ボディガードかぁ。
俺そんなに強くないぜ?もっとこう、派手に異能が使える奴の方が適任なんじゃね……?
■日乃杜 梢 > 「殺風景、じゃなくて、自然豊かって言うんですよ、こういうところは」
やんわりと自分の意見を口にしつつ、掃除を進める。
あまり乗り気ではなさそうな態度を見せる彼へ、視線だけを向けて、
「あはは、強さを期待してるわけじゃない、というのは失礼でしょうか。
でも…友達と一緒の方が、気分が楽ですし」
もちろん、無理強いはしませんよ、とは告げておく。
これが少女なりの、遠回しな友好表明だ。
目の前の彼がそれに気づくなら、今更か、と呆れられそうではある。
「…と、そろそろ私のほうは時間ですね。
着替えてきますけど…石段を下りるまで、ご一緒しますか?」
■東雲七生 > あ、悪ぃ。
こっち側、ってのは研究区の話な。
(ホントに無機質な建物しか無いんだ、と苦笑しつつ訂正する。)
んー、まあ、そういう事なら。
出来る限り危なくないルートを通るとかでも身は守れるしな。
(まあ大丈夫だろう、と笑顔で頷いた。
機微とかそういうのはよく分からないのだ。)
おう、じゃあそうしよっか!
待ってるから、早く着替えてこいよっ。
■日乃杜 梢 > えっ、神社のある方じゃなくて研究区でした!? などと自分の勘違いに赤面しつつ、待っていてくれるという彼の厚意に甘えることにする。
気づけば、足取りが軽い。
掃除を始める前の散り乱れた気分が嘘のようだ。
ありがとうございます、と感謝を告げて、学生服を預けている部屋へと向かっていくのだった。
ご案内:「常世神社」から日乃杜 梢さんが去りました。
■東雲七生 > (その後、待つ間に軽いストレッチや準備運動を済ませ、
戻ってきた日乃杜と共に石段を下りて少し話しながら歩いてからまたランニングに戻ったのだろう。)
ご案内:「常世神社」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「常世神社」に五代 基一郎さんが現れました。
■五代 基一郎 > 緩やかな待ち合わせの中で、小さな絵馬のような札を足に付けた大鳥に豆をやりながら待つ。
傍らにはもちろん黒猫が座り、時間の流れを表すようにゆったりと尻尾を振っていた。
待ち合わせに来る相手がどのような話をするか。
小さな期待と共に待つ。
ご案内:「常世神社」に遠条寺菖蒲さんが現れました。
ご案内:「常世神社」から遠条寺菖蒲さんが去りました。
ご案内:「常世神社」に遠条寺菖蒲さんが現れました。
■遠条寺菖蒲 > 初めて来る神社までの道のりで迷子になりつつもなんとか神社に辿り着く。
その姿はいつものように見える。
境内に入って五代を見つけるとゆっくりと菖蒲は近寄っていく。
「お待たせいたしました、五代さん」
ご案内:「常世神社」から遠条寺菖蒲さんが去りました。
ご案内:「常世神社」に遠条寺菖蒲さんが現れました。
■五代 基一郎 > 「いいよ。大した時間でもないし。」
それがここへの待ち合わせの時間か。返事を待つ時間か。
そのどちらでもあるように答えて立ち上がる。
立ち上がれば大鳥は一声鳴いて、空へ飛び立った。
足に付けられた小さな絵馬……六六六の数字が入れられた絵馬を揺らしながら。
「ここで会うことが答えみたいなもんだけどさ」
答えなど最初からわかっていたかのように語る。
これが楽園からの追放を唆す蛇であったなら。
言葉を待つようにその目が君を見ていた。
黒猫の瞳も君の姿をみていた。
■遠条寺菖蒲 > これは儀式のように思える。自分がこういう場所をメールで指定して選んだのも。
「それでも、私はこの間の答えを……」
自分を見つめる五代と黒猫を見て、小さく息を吐き捨てる。
「先ず最初に私は、自分すら守れるかもわかりません。それは自分でも嫌というほど理解しました」
困ったような顔で菖蒲は言う。
思い出したのはこの数日間の戦いとも呼べない一方的に負けて辱められた自分の記憶。
不意打ちをしてでもあんな強い相手に自分が勝てる可能性は低いなんていうのはよく分かるから菖蒲は先ずそう言った。
■五代 基一郎 > 五代が、黒猫が……空を飛ぶ大鳥でさえも。
この神社という空間そのものが遠条寺 菖蒲という一人の言葉を待つような
静かな時間。
遠条寺菖蒲という一人の少女ではなく、一人の人間としての言葉を
聞き逃すことないように。じっと静かに言葉を待った。
儀式。
まさしくその最初の試験を見届けるかのように。
■遠条寺菖蒲 > 「それはある意味当然で、私は異能使い同士の戦いにも魔術戦も素人で勝てていると優位であると錯覚させられ踊らされて負けるのが精々かと思います」
それはようやく客観的に自分の実力を判断できるようになった少女の悔しさにも似た言葉で、
「だからといってその経験の差を今から訓練して埋められるものとも思うほど自惚れても、もういません」
しかし、諦めたわけではないと瞳は語っていて、その蒼色は優しくも強く。
「なので誰かを守るために、なんてテレビドラマの主人公のような事は声に出しては言えません」
夢を見ずに現実を見つめようと五代の目をしっかりと見つめる。
「私に出来るのは、せめて生き残るくらいです」
その判断に恐らく間違いはないと菖蒲は考える。
そもそも即死されられるような相手や状況ならば『何が出来る』など考える余裕すらないから。
自分が何か出来るとすれば自分の命をなんとか守るくらいだと言う。
だが、それでも、と。
「ですけど、それでも誰かが理不尽に侵されるのを見て見ぬふりなんてできないし知っていながら何もしないなんて出来ない。それは自己満足で自分勝手な話ですけど」
その後に続く言葉を少し言葉に悩んでから頬を指でかいて
「後味が悪いじゃないですか、そういうのって」
曖昧に微笑み菖蒲はそう言った。
■五代 基一郎 > 「そうだ」
肯定するような言葉と共に一歩、歩み寄る。
「人間だけじゃない。神であっても存在が一つであるなら出来ることは限られる。」
黒猫もまた、ゆっくり歩幅を合わせるように近づき。
「両の手や体一つで出来ることは思っているよりずっと少ない。」
天限り知らずと夢見る少女ではなく
今冷静に自分が何か、どうしているか。何が出来るか。
それを客観視し正答せしめた少女にまた一歩歩み寄る。
戦いの世界は定められた勝負の世界とは違う。
勝った負けた、出来た出来ないの世界ではない。
生きるか死ぬかの世界である。
目の前の少女はその真理を知って尚生き残る、と言う。
「それで自己満足であり自分勝手であると知りながらも、見て見ぬ振りなど出来ないとするなら」
あと一歩。それで少女と距離が無くなるという所まで来て
腕を組み君を見る。答えを待つようにして、そして問う。
「どうする、遠条寺菖蒲。」
生徒会所属の幹部役員候補ではなく。
敗れ、無力さを嘆き、刃を手にした一人の少女に問う。
ならばどうするのかと。
■遠条寺菖蒲 > 「だから私は戦う――
……なんては言いません。それは風紀や公安のお仕事で私のすべきことではないですから」
態々、自ら進んで破滅の道に行くのはただの愚者で英雄ではない。
そもそも菖蒲が英雄になる必要はない。
「私は、私に振りかかる火の粉だけを。
目の前で理不尽に潰されそうになっている知り合いの為に戦います」
それしか出来る事はないしそれ以上は菖蒲の容量を越えていく。
それこそ今五代の言ったように手も足も身体も足りやしない。
『誰もを助ける』なんて個人でやろうとするのは『ただの夢』でしかないのだから。
「戦うのが無理ならその子と一緒に逃げて風紀や公安の人に助けてもらいます」
恥じらいもなくそう言ってみせる。
「戦ってるのは私だけじゃないから」
そう、私がこうして悩むよりも前から戦い続けている人達がいる。
それは公安委員だったり風紀委員の人だったり、今目の前にいる先輩だったりまだ名も知らぬ人だったりする。
だから、一人で無理なら誰かに頼ろう。何も一人で戦えだなんて誰も言わないだろうから。
「私は『この現実』で生きていきます、五代さん」
そうハッキリと言って、どうでしょうとでも言うかのように首を軽く傾げた。
■五代 基一郎 > 「そうだ」
再び肯定する言葉が返される。腕は組まれたままに。
「現在、いや常世学園が始まってから風紀委員会や公安委員会がこの島の治安を担っている。」
大なり小なり違反部活や落第街の問題だろうとそれで解決してきた。
時間や質、解決するまで等は千差万別だろうが十分事足りている。
「自分が世界を変えるんだ、なんて驕りを持つこと事態こ社会を理解していない証拠であり、暴走する者の根本だ。」
有志はさておき、風紀や公安としての職務を逸脱した思想を持てば
それはただの愚者であり。暴走した権力である。
健全な体制装置とは言い難い。事実そうした思想を持ってしまい狂人と化し破滅を辿るものは幾人か出ている。
「いい答えだ。『現実』をよく知った人間の、正しい答えと言える。」
首を傾げて答えを問う遠条寺にそれが正解であるように頷きつつ。
組んでいた右手を外し、胸の前で君に向けて小さく指を差し問い始める。
「では『現実』を知った君が、その『現実』の中でこの”社会の枠組みの外”にいる脅威を知った時。」
それはこの島の社会の枠組みの中での戦い。公安や風紀と違反部活との捕り物劇等。
身近な脅威、それら司法やそれらの下の武力等でどうにかなるものではなく。
それではどうにもならないものが存在し、それを”知ってしまった”君が
”戦うことのできる”君が直面した時に
「どうする、遠条寺菖蒲。」
どうするかを。問うた。
それは常世島の学生という生活の中にいて帰る者へではなく。
一歩外れた外の世界を垣間見て、過酷で冷たい『現実』へ踏み出した者への問い。
もはやそれは学生である遠条寺菖蒲への問いかけではなかった。
戦う力を持ち、『現実』を見て振るうことの出来る戦士への問いだった。
■遠条寺菖蒲 > 「その時は、きっとどのような方法になるかは分かりませんが戦うのでしょうね」
しかし、戦うのならば手段は選ぶ必要がある。
西園寺忍のようにやってはいけない。
それがどんな相手であっても、それは間違いなのだから。
「それが生徒会としてならこの学園の法を持って」
この学園の司法である生徒会としてソレを学園の敵であると上に通して『学園』に呼びかけて、個人ではなく組織としてしっかりと戦わなければならない。
しかし、この彼がした質問はきっとそういうことではない。
「もしも、どうしても私が戦わなければならないのなら、
生き残るために。倒せるかどうか逃げれるかどうかは恐らく問題ではありません」
戦うことが自分の最もすることではないのだから、
相手をどうこうすることに固執するのは二の次であるとかんがえるべきだ。
「明日、笑って知り合いに会うために戦って生き残るだけです。……こうして」
恐らく五代にもとっくに報告はいっているだろうが菖蒲は退院前日の夜に再び“害来腫”と遭遇し、協力者の助力もありこれを撃退している。
「何が来ようときっと変わりません。それが知り合いなら殴ってでも止めます」
そう笑顔を五代に向ける。
「私、後悔しない為に『現実』でも笑って過ごせるように『戦う』んです」
■五代 基一郎 > 遠条寺菖蒲が考えている通り。生徒会の人間としてではない。
組織として、ではないのだ。そういった枠組みの外にいる連中は確かに存在し
またそれらが確かにこの社会を、学園に存在している。
内にて外にいる脅威となる存在が確かにいる。
「いい答えだ。」
その目は以前病院で見せたような目であるが、それは遠条寺を咎めるような目ではない。
それは、今目の前にいる相手を認めるような目である。
戦うことは最ではないだろう。だがそうとも言えない。
戦う力が無ければ信念を通せぬ世界。
信念が無ければ戦う力が暴力になる世界。
現実を知らなければ道化で終わる世界。
立ち上がったことは報告で聞いている。そこに立ち会った者が誰であるかも。誰と戦ったかも。
戦う力こそ未だ非力かもしれないが、その力と自らの信念
そして何より現実を知った上でそのどちらも持つ者がいる。
「君の答え、決意は十分に伝わった。」
差していた指は再び組まれた腕の中へ。
顔は笑っていた。歯を見せるほどではない。
だがしっかりと表情がわかるような、顔だった。
「だからこそ遠条寺菖蒲。君をスカウトしよう。」
■遠条寺菖蒲 > 五代のそんな言葉は予想外で、認められればいいとは思っていた。
自分の『覚悟』が伝えられたら拒絶されてもそれはきっと考え方が違うものだと諦めただろう。
だけれど、
それは想定外であった。
「……スカウト、ですか?」
一体何のだ?
自分は、仮にも生徒会の人間である。
そして幹部候補生だ。
そして彼は風紀委員会警備部の特殊警備一課の第二小隊の隊長。
委員会の鞍替えなど……いや、目の前に実例の人物がいるか。
いや、しかし、と先程までの決意に満ちた顔などは消え失せ困惑の色を顔に浮かべていた。
■五代 基一郎 > 「役職の話じゃないさ。生徒会でも風紀でも公安でもない。」
困惑する遠条寺に説明のような、そうでもないような概要をそれとなく伝える。
「ここだと聞かれている可能性もあるしな。あまりおおっぴらに言えないんだ。
だが、まぁ。”どういうものに”スカウトするかはなんとなくわかるだろ」
今まで話してきたこととは無関係ではないというニュアンスを含めて菖蒲に伝える。
それがどういうものなのか。どういう組織なのかは伏せたままに。
「こういうことも含めて、だから自宅が都合がよかったんだけどな……
まぁ、もしその気があるなら後日になるけど。ウチに来てくれれば話すし
その気がないなら忘れてくれて構わない。」
言ったろ、スカウトだって。断ることもできるんだから。
と付けつつ。組んでた腕を伸ばして伸びをした。
困惑する菖蒲などどこ吹く風で。
■遠条寺菖蒲 > 「…………」
委員会ではない?
そんな組織、いや大っぴらに言えないと言うことは何かあるのか。
西園寺偲のようなやり方を否定する彼ならそれは恐らく違法なことではないのだろうが、知られたくはないような……事?
「……わ、わかりました。ではお話は後日お伺いするという形にしましょう」
次々に出て来た単語に脳が一瞬の混乱を生じさせたが、そう答え。
しっかりと返答するように。
「私が『ここ』で生き残る可能性が高まるのなら」
なんであれ、ここまで色々喋らせてそれと関係ないことはないだろうから。
菖蒲は少しは察して、真面目な顔つきでそう答えた。