2015/08/07 のログ
■深雪 > この少年はどう感じているのだろうか、楽しいのか、それとも不快なのか。
私ならきっと、こんな風にからかわれたら不快に思うだろう。
それこそ、そんな相手は・・・からかわれた振りをしつつ、捻り潰してやる。
「あら・・・。」
そんな風に考えながら少年を見ていれば、そっぽを向かれてしまった。
仕草が幼く見えるのはいつものことで、それが可愛らしいのもいつものこと。
「あらあら……嫌じゃ、ないのね。良かったわ。」
良かった、と、言ってから理由を自分で考える。
・・・・・・拒絶されなかったことが、嬉しかったのだろうか。
けれど、その先の言葉は、
「面倒な事って、どんなことかしら?」
本当に理解できていないような表情で、首をかしげた。
■東雲七生 > 「どんなことって、そりゃあ……」
怒り泣きのような変な顔で振り返って、
赤い顔のまま口を開き、そのまま暫し停まる。
(……そりゃあ、何か、変な懐かれ方するとか。)
頭の中で言葉を並べてみたけど、いまいち要領を得ていない気がする。
何とか懸命に言葉を探すが、こういう状況すら初めての事で前例がない。咄嗟に言葉が出て来ない。
「それは、ほら……
男ってのはバカだから、深雪みたいな奴にそんな事されたら変に気があるんじゃないかって思うんだよっ!
……お、俺は違うけどなっ!?」
(──なんだこれ)
少し背の高い相手を上目で迫力無く睨みながら。
男という生き物の愚かさを説いたつもりに、なってみる。
■深雪 > この少女は確かに世間知らずだが、そういう機微に疎いわけではない。
ただ、何故それを連想できなかったかと言えば・・・
「あぁ・・・なるほど、そういう事ね。」
・・・それはきっと、少女が“人間ではなかった”からだろう。
愚かな男は何人も見てきた・・・いや、遊んでやったという方が正しいだろうか。
楽しんでいられるうちは良い・・・男がもし変な気を起こせば、その時には“処分”すればいい。
……それはこの少女にとって面倒でも何でもなかった。
壊すのも、楽しいのだから。
「あら、貴方・・・自分は賢いんだって言いたいのかしら。
その割には、随分顔が真っ赤になってたわよ?」
人間として楽しさを感じている自分と・・・・・・嘗ての自分。どちらも確かに、自分なのだろう。
■東雲七生 > 「……かしこいもん。」
少女の過去も胸中も正体も知らずに返されるのは拗ねた声。
まさに今男の愚かさを説いたその口で、
愚かも通り越すほど真っ直ぐな、感情をそのまま載せた声。
「赤くなったのは暑いからで!
そもそもどうして俺がお前に気があるんじゃないかって勘繰らなきゃなんねーのさ!
こんな! 見るからに! からかわれてるのに!」
怒るぞ、と最後に搾り出す様に呟いて。
上目のまま眉根を寄せる。それでも迫力は無い。
■深雪 > まさしく、少年の感情が素直に声になっていた。
撫でてあげたいくらいに可愛らしいが、続けられた言葉は・・・これも、素直な感情の表出だっただろう。
隠すこともなくからかっていたのだ・・・僅かも不快に思わぬ人間など居るはずも無い。
ごっこ遊びは終わり・・・要らない玩具は、最後にもう一度だけ楽しく遊んで、捨ててしまえばいい。
普段ならそうしていたところだろう。
けれど、少女は少年を真っ直ぐに見て・・・その表情から、笑みを消した。
「・・・そうね、ごめんなさい。」
はぐらかすようでもなく、少女は素直に、自分の行為を謝った。それがどれほど珍しいものなのか、少年には分かるまい。
「けれど、そんなに怒らないで・・・」
その時の少女は、少しだけ悲しそうな顔をしていたかも知れない。
■東雲七生 > 「……へっ?」
笑われると思った。
少なくとも、今まで何度か話して知ってる深雪は、笑うと思った。
しかし今自分に向けられてるのはどこか悲しげな顔で。
予想してなかった反応に、一瞬思考が停まり。
「……お、怒ってねーよ。」
それだけ辛うじて呟く様に告げて。
おもむろに片手を上げると、少し自分より高い頭を、銀色の髪を。
ぽんぽん、と宥めるように撫でた。
■深雪 > 何が悲しいのか、どうして謝ったのか。
きっとそれは、この少女の中の“人間”としての感情がそうさせたのだろう。
“怪物”なら意のままにならない相手を噛み砕き、悲鳴を楽しんだはずだ。
けれど・・・
「………そう。」
まさか、頭を撫でられるとは思っていなかった。
そしてそれは、案外と、屈辱的でもなく…これも、悪くないと感じるのだ。
撫でられることに抵抗するどころか、
「……もう少し、低くしてあげた方がいいかしら?」
そう言って楽しそうに笑う。その姿は、もう、普段どおりの少女だろう。
■東雲七生 > 七生は少女の内の事情なんか解らない。
詮索する気もあんまりない。
ただ、こうしてたまに会って、話して、笑って
それだけで十分楽しいと思える。そしてその時間が好きで
「だから、そんな顔すんなよなぁ。」
俺も悪かったよ、と困った様に八の字なった眉。
そして飾りっ気も洒落っ気もない、愚直な言葉が口から零れる。
「……って、お前結局そうなのかよッ!!」
一瞬でも戸惑った自分がバカみたいだ、
そう言って笑いながら、
彼女の見事な銀色の髪を他に人が居れば傍から咎められそうなくらいに乱した。
■深雪 > 旧友も、この島にきて“変わった”と言っていた。
同じように自分も、随分と変わってしまったと思う。
美しく滑らかな髪を乱暴に撫でられても、ぼさぼさに乱されても、
「…あら、やってくれたわね?」
今すぐ綺麗に戻しなさい。と、睨みつけながら命令する。
それだけで済ませてしまうのだ…しかも口元には、笑みが浮かんでいた。
このまま時間が過ぎていけば良いとさえ思う。
手首や首に結ばれたリボンのことも、何もかも気にせずに“人間”として楽しく過ごせる時間。
■東雲七生 > 「へいへい。元々そのつもりですよーだ。」
にひひ、と悪戯っ子ぽく笑った後は、言われた通りに乱した髪を整え始める。
その最中、
そういえば、と手櫛で深雪の髪を直しながら。
「深雪さあ、もう海行った?」
海開きからもう早くも一ヶ月が経って。
七生も一度しか泳いでいないとはいえ何度か足を運んでいるのだが。
この少女はどうも海や砂浜といった風景に重ねることが難しく思えたのだった。
■深雪 > 「ふふふ、従順な子は好きよ。」
手櫛で髪を整えれば、1本1本が銀の絹糸のように、柔らかく滑らかなことが改めて分かるはずだ。
そして、香水とシャンプーの優しい香り。
尋ねられれば、視線だけをそちらへ向ける。
案外と、貴方を信頼して髪のことは任せきっているようだ。
「浜辺には行ったわよ・・・でも、泳いでないわね。」
以前、気紛れで訪れたことがある…ただ、海に入ろうとまでは思わなかった。
実は水着も持っていない。けれどそこまでは聞かれていないので、答えず。
■東雲七生 > 「へいへい、そりゃどーも。」
軽く流したが、その言葉は少年の胸を打った。
それでなくても自分から勢いでやってしまった事とはいえ、
異性に触れ続けるという事に慣れてはいない。火中の栗を拾うよりも大事なのだ。
ほのかに漂う香りも緊張を和らげるどころか秒刻みで増加させる。
「へ、へぇ……何で泳がなかったのさ?
今の時期海の水も結構暖まって来てて、結構気持ち良いもんだぜ?
あ、それとも深雪はあれか?川の方が好きな感じ?」
自分は美容師だ美容師だ美容師だ。
心の中で念仏のように唱えて緊張をほぐしながら、世間話を続ける。
何故だか今日は、一分一秒でも言葉を交わさない時間が勿体なかったから。
■深雪 > 貴方が髪を梳かし続けていれば、いつしか、やりやすいように座り込んで、段々と少女も貴方に身を寄せていく。
寄りかかるような感じで、段々と、少しずつ。
「みんな水辺で騒いでいたけど・・・・・・何が楽しいのか、よく分からなかったの。
でも、そうね、今度は泳ぎに行ってみようかしら。」
貴方も行く?なんて、自然に聞き返した。
1人で行っても、きっと同じ結果になってしまうだろうと、思ったのだろう。
もうその頃には、貴方に体重も預けつつあるくらいに身体を寄せている。
・・・・・・髪を梳かしてもらうのは気持ち良い。
■東雲七生 > 「何が楽しいって……みんなと居る事が、かな。
広い場所で気心知ってる仲間とバカ騒ぎして、ついでに水浴びして涼んで。
……きっと、それが何よりも楽しいんだよ。
だから深雪も友達誘って行ってみ──え、俺ぇ?」
ぽかんとした顔で少女を見る。
そしていつの間にかすっかり身を寄せられていた事に気付く。
たちまち頬が赤くなるが、ここで無理に突き放してまた“あんな顔”されても困る。
──困るというか、嫌だ。
結果、多少手の動きはぎこちなくなるが、
少女の重さを感じつつ髪を梳くことを続けた。
■深雪 > 「みんなと居る事…ね。貴方はきっと、沢山友達が居るでしょう?
私はあんまり友達って居ないから。」
友達が居ない、けれどその言葉には一切の悲壮感も、負い目も無い。
それは強がりでも何でもなく、友達が欲しいとは思って居ないようだった。
「……あら、駄目なのかしら?」
貴方の同様と、配慮に気付いたのか、すっと身体を離して貴方を見上げる。
殆ど髪は綺麗に整っている。自分で軽く手を入れて・・・仕事ぶりを確認した。
それから、くすくす、と笑って…静かに立ち上がる。そろそろ、戻らなくては。
「でも私、まだ水着も無いのよ・・・買ったらメールで連絡しても良い?」
■東雲七生 > 「沢山、ってほどかな?
あんまり気にした事ねえけどさ、そりゃあちょっとは多いかもな。
……おいおい、何言ってんだ。
居るだろ、少なくとも、ここに一人。」
俺はそのつもりだけど?と少し拗ねたように口を尖らせる。
名前を知ってて、言葉を交わして、笑顔も交わせばそれは友達以外の何なんだ?と、ふん、鼻を鳴らして少女を見据える。
「べ、別に、ダメというか、外は……ほらぁ!」
何が『ほら』なのか自分でも分からない。でも、ほら、なのだ。
心境を察せられたことに少し気恥ずかしさを覚えながら、立ち上がった少女を見上げる。
「えっ、あ、……お、おーう!全然構わないぜ。
何なら試しに来てみた姿を写メで送ってくれたら品評してやるしっ!」
虚勢だった。あまりにも見え透いた虚勢だった。
■深雪 > 「友達・・・・・・ふふふ、ありがと。」
貴方が拗ねたように主張すれば、少女はどこか嬉しそうに、微笑んだ。
旧友たちとは違うが、確かに、教室に居るほかの生徒たちとも違う。
これを友達と呼ぶのだろか・・・・・・だとしたら、友達も悪くない。
「写メ・・・そうね、使い方、また教えてくれる?」
数日後にはきっと、鏡を撮った試着の自撮り写真が送られてくるだろう。
きっと、深雪らしく、シャープで大人びたデザインの水着を着て。
だけれどそれはまた、別のお話。
■東雲七生 > 「べつに、礼を言われるってのも変な感じだけどな。」
友達なんて作ろうと思って作るもんじゃない、自然になってる者だよ。
そんな事をのたまった破壊神の友人が、共通の友人である事を七生はまだ知らない。
多分、その事実を知れば三者三様に驚くのだろう。
「お、おう!またメールに使い方書いとく!」
少し虚勢を張った。しかし、それでも笑顔で。
快諾した結果、夏の間中悶々とさせられる内容が端末に届くのだが、
それはまた別の機会──
ご案内:「常世神社」から深雪さんが去りました。
ご案内:「常世神社」から東雲七生さんが去りました。