2015/09/12 のログ
ご案内:「常世神社」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 夕日に照らされる石段を上る。

特に目的があってきた訳じゃないが、少しだけ早足で。
近頃放課後もまとまった空き時間が無かったためか、日課になっていたランニングもしなくなって久しい。
しかし、本格的に授業が再開されたので、運動不足になっているという訳でも無く。石段を上り切っても息一つ切らしていなかった。

「んー、神社に来るのも久し振りだな。」

いつ以来だっけ、と記憶を辿る。
確か、先月の末。くらいだったはずだ。

東雲七生 > 鳥居をくぐって境内を見渡す。

以前来た時に居た、友人の一人は今日は見当たらない。
此処を根城にしている、と言っていたけれど、何処かに出かけているのだろうか。
あるいは、もっとちゃんとした雨風凌げる場所を見つけられたのだろうか。

後者である事を願いながら、玉砂利の上をずかずか歩いて行く。
別に参拝をしに来たわけでは無い。そもそも神頼みをする様な性分じゃない。
もし本当に、破壊神や創造神を自称するでも無く、正真正銘の神様が居るとしたら。

(──まず最初に恨み言をぶつけてやる。)

あまりにも理不尽な記憶の消滅。
深雪は記憶喪失、と言ったが。七生自身は喪失というより消滅だと思っていた。

何せ、消えていく過程をしっかりと知覚していたのだから。

東雲七生 > 「はぁー」

備え付けられたベンチに腰を下ろして、一息つく。
海の方から吹いてくる風が、紅い髪を揺らしていく。

そういえば、随分と気温も下がって過ごしやすくなったような気がする。
このまま本格的に涼しくなって、少ししたら今度は寒くなっていくのだろう。

そんな事を考えながら、橙色に染まる空を眺めた。

東雲七生 > 「記憶、かー……」

すっかり常世島に来る以前の記憶が無くなって。
むしろ一周回って清々しささえ感じられる。
過去が無くなっても、まあ自分には現在が残ってるし、未来まで消え去った訳じゃない。
──支えてくれる人たちも居る。

「名前だけは、憶えてるんだよなあ……」

自分の名前。 しののめ ななみ。
きっと両親も東雲姓だと思うのだが、何故だかそれは思い出せない。
今自分の中に有る最も古い記憶と思しきものを手繰り寄せる。

──そこは病院の診察室の様な白い部屋だった。

東雲七生 > 真っ白い部屋の中で、白衣の女性と何やら話をした、のが一番古い記憶。
その部屋のある建物の事も、女性の事もよく知っていた。
東雲異能制御研究所の研究主任・東方仙子。
常に半笑いの様な顔の黒髪で眼鏡をかけた女だった。

──そういえば、あの研究所にも夏休みに入ってから出向いていない。

元々呼び出された時だけ出向いていたのだけど、夏休みに入った頃から何の連絡も無かったので気にしていなかった。
まあ出向いたところで少しの献血に協力する程度なのだが。

『──そうでもねえよ?』

──不意に、遠くの方から聞こえる様な、不思議な声がした。
自分の考えを否定する声。もしかして読心能力でも持つ人間が近くに居るのか、と辺りを見回す。

……しかし、その様な人影は、無い。

東雲七生 > 若干の気味の悪さを感じて小さく身震いをした。

──実のところ、妙な声を聞いたのは、これが初めてでは無い。
ここ数日の間に、何度か。一人で考え事をしているときに限って聞こえてくるのだ。

「……ったく、何なんだってのホント。」

何かに憑りつかれたのかも知れない。
もしかしたら、記憶の消滅もそいつが原因で──

「まさかな。……色々あったから幻聴だろ。」

どうやら思ってた以上にストレスが嵩んでいるらしい。
睡眠時間も増え、毎日三食しっかり食べて運動もしているというのに、何が原因だろう。
──やはり、記憶が無いという事が不安なのだろうか。

溜息を一つ零して、ベンチから腰を上げる。
そろそろ帰ろう。少なくとも、今は居候先のソファが一番心安らぐ場所だ。
そう思いながら大きく伸びをして、石段へと向かう途中──

東雲七生 > .

──突然、天地が引っくり返るような眩暈と共に、七生は玉砂利の上に倒れ伏した。


.

ご案内:「常世神社」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「常世神社」に嶋野陽子さんが現れました。
嶋野陽子 > 恋人の死と向き合えず、忘れられる
場所を求めて、最初は訓練施設でトレーニングに励ん
だが、筋肉の一つ一つに、それを愛でてくれた敬一君
の記憶が結び付いていて、却って辛い思いをしたので、
トレーニングを切り上げて神社に足を向ける陽子。
神社に参拝するにあたり、果たして何を祈願すれば良
いかと悩む陽子。成仏を願うなら寺だし、魂の平安を
祈るなら教会だ。暫し考えた末、ステラの安全な帰還
を祈ることにする。

嶋野陽子 > 祈りを終えると、境内のベンチに座り、
海を見つめる陽子。この海のはるか向こう、アメリカ
で客死した恋人の葬儀がどうなるか、陽子は知らない。
当局がいくら探しても、敬一君の親族は皆故人であり、
生存する唯一の関係者は恋人の陽子だ。恐らく今日中
に本土から学園に連絡が行くだろう。
敬一君の事だから、万が一の場合の遺言状も用意して
いるかも知れない。

嶋野陽子 > 報道の流れからして、犯人達と一緒に
転移して、警官隊の前で倒れて救急車で運ばれて行っ
たのが敬一君だ。つまり、陽子は目の前で恋人が死ぬ
瞬間を衛星中継で目撃した事になる。確か、9.11の時
も、同じような事が起きている。2機目の突入を中継
で見ていた人の中には、家族や恋人がその飛行機に乗
っていた人も少なくなかった。
海を見る陽子の表情はどこか虚ろだ。自分の今の表情
を見れば、白崎先輩の自殺を告げた際の綾瀬先輩の表
情と似ている事に気付いたかも知れない。

嶋野陽子 > 頭の中を空っぽにして、
ひたすら海を見つめる陽子。

嶋野陽子 > そのまま時間だけが過ぎていく。
ご案内:「常世神社」に嶋野陽子さんが現れました。
ご案内:「常世神社」に嶋野陽子さんが現れました。
ご案内:「常世神社」に嶋野陽子さんが現れました。
嶋野陽子 > 心の整理をつけられないまま、
境内を去る陽子。

ご案内:「常世神社」から嶋野陽子さんが去りました。