2016/06/02 のログ
ご案内:「常世神社」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 昼下がりの常世神社。
境内に置かれたベンチに座って、放心しきっている七生が居た。
紅い髪が風にそよぎ、赤い瞳は虚空を見つめている。

「………。」

中間テストの成績が悪かったとか、そういうのではなく。
七生がこの手の放心状態にあるのは、この一年間で二度目だった。

東雲七生 > ぽかーん、とか ぼへーっ、とか
そんな感じのどう見ても“心ここに有らず”然とした顔で見つめるのは、ただただ青い初夏の空。
まだ日も沈む前から黄昏ていて、さながらお爺ちゃんめいて見える。

まあ、雰囲気だけお爺ちゃんで見た目は下手すりゃ小学生なのだが。

東雲七生 > そのまま日が暮れるまで不動のままで居るかと思われた七生だが、僅かに眉が動いた。
本当に、本当に僅かだか眉が寄せられるように動いた後、
ぱたり、と。ベンチの上に七生の身体は倒れ伏した。

「うぅ……ああぁぁぁぁ~」

そして呻き声が響く。

東雲七生 > 「なんっ……なんなのっ!ほんっと……!」

ベンチの上に倒れたまま、両手で顔を覆って足をバタつかせる。
その行動自体には照れ隠し以外に意味は無い。

照れ隠し。
そう、東雲七生は今、ものすごく照れている。
照れているというか、恥ずかしがっている。

ご案内:「常世神社」にエリナさんが現れました。
エリナ > 「うーん……良い天気です。」

ぐぐーっと背伸びして、日光を浴びる少女。
天気良く、風も爽やかで文句なしの一日と折角なので散歩をしていた。

そうすると、だ。境内のベンチで何やら面白おかしい動きをしている少年が目に入るではないか。
どうも幼く見える少年の動きが面白くて、申し訳ないとは思いつつも吹き出してしまう。

「……くすくす。」

東雲七生 > 「うぅ……もう、何でこんな事で、こんな……っ!」

じたばた。幼子じみた所作も人が居ないと思っていたが故の事。
人の声がすれば、ハッと我に返って声のした方──エリナを見遣る。
赤かった顔が更に赤くなって、笑われている事に気付くや居た堪れない様にベンチに座り直した。
そして赤くなった顔を隠す様に俯く。

穴があったら入りたい気分だった。

エリナ > 「あっ……。」

こちらと目が合い、少年は俯いてしまう。
しまったと思ったが時既に遅し、バッチリ笑った所は見られてしまっていた。

「ごめんなさい、笑うつもりはなかったのですが……。」

彼には申し訳ないことをしたと思いつつ、素直に謝罪し彼に近寄るだろう。

東雲七生 > 「………。」

先程までとは別の羞恥で身動きが取れなくなる。
玉砂利を睨みつけながら、ひたすら自分が透明になれないか念じたりしていたが、

「……い、いや、その。別に、いいけど……。」

こちらへと近付く足音に顔を上げ、
まだ赤さの残る顔を左右に振ってから再び目を伏せる。

エリナ > 「……良い天気ですね。こういう日はどこかへ出かけたいと思いませんか?」

彼の様子を伺うに何か考え事をしていたようだが敢えて口に出すほどの事では無いだろう。
だから、とりあえず万能な話題『お天気』を切る。
こうして彼のこど……幼い仕草を目撃したのも何かの縁かもしれない。

「あ、隣座ってもよろしいですか?」

東雲七生 > 「えっ……あ、ああ。まあ、そう……だね。」

出掛けた結果ここに居るんだけど。
そう思ったけど、流石に口にするほど空気の読めない男ではない。
彼女も彼女なりに、笑ってしまった事に対し非を感じているのだろう。

「う、うん……良いけど。」

なので甘んじて受けることにして、ベンチを少しだけ横に動いてスペースを確保した。

エリナ > 「………………。」
彼が空けてくれたスペースに座り考える。さあ、どうしたものかと。
必殺のカード『お天気』は使う場所を選ばない便利なものであると同時に会話が発展しないという諸刃の剣。
この難局をどう乗り越えるか、腕の見せ所である。

「え、えーっと……。」

何も思いつきません!

東雲七生 > 「えーっと……」

妙に居心地が悪い。
ここのところ異性関係で色々な目に遭っているので、
出来ることなら極力異性と関わる様な事はしないようにと思って居たところだったのだが。
思ったところで結果的にこうしてまた、女の子と神社で相席する事となって。

(どこの神様に訴えれば良いんだろうな……?)

青息吐息で肩を竦めて、
このまま気まずいのも仕方ない、と口を開く

「俺、東雲七生。二年生……君は?」

とりあえず簡潔に自己紹介。これも何かの縁だというのなら、だ。

エリナ > 「あら、では同級生ですね! 名はエリナ・ハークライトと申します。」

彼から助け舟をもらい、嬉しそうに名乗るエリナ。
正直このまま居心地の悪い状態が続くのは辛かったのだ。
失礼だとは思いつつも、まさか同学年には見えなかった。
きっと彼なりに苦労して来たのであろう。

東雲七生 > 「エリナ……ハークライト。」

ちょっと聞き覚えの無い名前で小首を傾げた。
もしかしたら魔術方面のクラスかもしれない、と見当をつける。
それならば七生とはあまり接点は無かったのも肯けることだった。

「……なんかすげー失礼な事思われてる気がするんだけど。」

じと、と疑いの眼差しをエリナへ向ける。
背丈も彼女と同じくらいで、尚更同学年には見えないだろう。
幼い印象の顔を目一杯疑わしげな色に染めて、エリナを見つめる。

エリナ > 「とんでもない! ただどこか思いつめていたような表情をしていたので心配になりまして……。」

嘘は言っていない、はず。
確かにあの時の伏せていた目は何か考え事をしていたように感じた。
童顔、と言うのだろうか彼の幼い顔つきで疑わしげな目で見られると言うのは……その、微笑ましいものがある。

「ふふっ……。」

自然と笑みがこぼれる。

東雲七生 > 「思い詰めて……?」

いただろうか、と我が身を振り返ってみる。
ちょっと思い出したくない感じの行動は取っていたかもしれない。
だが、そこまで心配されるほどの事は……してたかもしれない。

ふい、と頬を赤く染めて横で笑みを浮かべるエリナから目を逸らす。
大体どんな事を考えられているのかは予想が付く。
今まで何度か、された事のある笑い方だったから。

エリナ > 「あっ……。」

彼の仕草を見てはっとした。ああ、まただと後悔する。
どうも彼の機嫌を── というよりは地雷を踏み抜いてしまうようだ。
このまま居ても彼の迷惑になるだろう。

「その、私そういうつもりでは……ごめんなさい。」

シンプルに謝罪し席を立つ。
彼を傷つけてしまったと自分を責めつつ、申し訳ない気持ちで苛まれて立ち去るだろうか。

東雲七生 > 「別に平気、慣れてるから。」

謝罪に対しても、どこかムスッとした顔で答える。
それはエリナ自身へというよりは、そういう風に見られてしまう自分自身に対して納得がいっていない様だった。

「……去年は、少しは背も伸びるかと思ったんだけどさ。」

口を尖らせながらそう呟き、大仰に溜息を吐く。
そんな動作の一つ一つが子供っぽく見せてる事に七生自身気付いてはいない様だ。

エリナ > 「あ……そう、ですか……。」

少し寂しそうな、曖昧な表情をしつつ再びベンチに腰を下ろした。
彼の内情が何にせよそこまで言わせてしまえばもう何も言えることは無い。

「……ええっと、20歳過ぎても背が伸びたというお話もありますし。もしかしたら東雲さんもそうなるかも……。」

とりあえず、お茶を濁した。

東雲七生 > 「うん……まあ、そんなに気にしないで。」

少しだけ困ったような笑みを浮かべ、隣に腰を下ろしたエリナを見遣る。
上背が無くて困った事はあまりない。……あったとしてもなるべく忘れている。

「……あははー、ありがと。そうなる事を期待しておく。」

望み薄なのは百も承知だったが、七生は笑みを浮かべて頷いた。
あんまり彼女に気まずい思いをさせるのにも気が引けたからだ。

「……それで、ええと……エリナは、何しにここへ?」

エリナ > 「良い天気でしたので気分転換がてらお散歩を、そしたら東雲さんを見かけたものですから。」

そう言って何をするでも無く空を見上げる。
抜けるような青とたゆたう白のコンストラストは実に清々しくて。
そこにそよ風が吹けば、最高のひとときというもので。

と、彼女は言葉を紡ぐだろう。

東雲七生 > 「散歩ね……まあ、確かに良い天気だしな。風も気持ち良いし。」

うんうん、と頷いて目を細める。
色々と考えに耽り過ぎて気付かなかったが、なるほど気分のいい天気だ。
帰る時はのんびり空でも眺めながら帰ろうと密かに決心して、

「それで……まあ、今に至ると。」

エリナ > 「ええ、今に至る……です。」

柔らかくにこっと微笑むエリナ。
聞いて良いものか悩んだが、他に聞くことも無かったのでとりあえず口にしてみるのだった。

「もし良ければですが……ここでお会いしたのも何かの縁。
私で良ければ当事者では難しい事も第三者の目からの視点で悩みが多少楽になるかもしれませんよ?」

東雲七生 > 「えっ……う、ううん……」

突然の申し出に驚いたように目を瞠って、
それから少しだけ悩む様に視線を泳がせる。
難しいというよりは、単に自分の決断力の問題なのだ。
だから、相談するのも、何だか変な話で。

「……い、いや。大丈夫。
 その気持ちだけ有り難く受け取っとくよ。サンキュッ」

にっ、と笑みを返す。白い歯を見せる、子供っぽい笑み。

エリナ > 「……ふふっ。」

彼の笑顔を見て再び微笑んだエリナ。
目の前の彼はきちんと自分で考え自分で答えを出そうとしている。
その姿勢に安心して自然と笑みがこぼれる、先の幼さを前にしての笑みでは決してなかった。

「その様子なら大丈夫、きっと大丈夫です。さて……長々とお邪魔してしまいました。
そろそろ私は失礼致しますね。」

そんな彼に感化され、晴れ晴れとした気持ちで今度こそ立ち去っていくだろう。

ご案内:「常世神社」からエリナさんが去りました。
東雲七生 > 「ああ、会えて良かったよ。
 えっと、エリナ……だったよな、またな!」

笑われた事には少し怪訝そうな顔をしたが、
先の笑い方とは違っている事にはすぐに気付いて特に気にする事は止めた。
立ち去る彼女へと軽く手を振ってその背を見送ると、
少しの間ゆっくりと境内を眺めていたが、おもむろに立ち上がって

「んじゃ、俺も帰ろうっと。」

帰路に、就いたのだった。7

ご案内:「常世神社」から東雲七生さんが去りました。