2017/01/08 のログ
ご案内:「大通り近辺【異邦人街】」にV.J.さんが現れました。
V.J. >  
今日はロングのウィッグを着けて、余所行きの装い。
明らかに奇抜なその髪色も、この街にあっては自然に馴染むというもの。
――いやどうだろうか。髪色自体はそれなりに多種多様、桃色なんて珍しくもない感じだが、この女性の場合は、それで馴染んでいると言えるかどうかは怪しいところである。
何がとは言わないが……その……全体的なまとまりというか……雰囲気というか……ね?

「んー、じゃあこのシババラギのフャウとオシユのヌワヌワ……飲み物は……ロョクヮのソーダ割りで!」

大通りのメインストリートから少し入った商店街。そこの露店で買い食いをする姿がそんな感じである。

V.J. >  
こちらの露店の店長はマーマンである。
マーメイドの男版。上半身は人間で下半身は魚。ボロボロになった尾ビレが陸上生活の長さを感じさせる。
シババラギのフャウとオシユのヌワヌワはこの店の看板メニューであり、店名こそ違うが、この店の常連からは概ね『シババラギ屋』と呼ばれているほどだ。
どちらも地球に住む者には馴染みがない食物。店長が住んでいる世界の食べ物らしい。
常に『キリミ』の状態で店頭のクーラーケースの中に入っているので、その正体を知るものは居ない。
当たり前みたいに購入している彼女も当然、シババラギとオシユが何なのか知らないが、美味しくて酒のアテになればそれでいいのだ。

失礼、ここでは酒ではなくロョクヮのソーダ割りだ。

「今日は中で食べられない日だったかしら? そうよね、じゃあ持ち帰りにするわ」

言って、梱包されたシババラギのフャウとオシユのヌワヌワを持ち、空いた手にロョクヮのソーダ割りの入ったカップを持つ。
それから彼女は、ふらりと通りを散策し始めた。

V.J. >  
人間が脳内で想像しうる全ての現象は起こりうる科学事象。
エラ・イヒトの残した一説であるが、それを思うと確かに異邦人街の街並みは、まさしく『想像の範疇に無い』と言うに他ならない。
建物の雰囲気こそ、地球側主体で構築されてあるためか、そこまで突飛なものは存在しないにしても、立ち並ぶ看板の記述や、商店の店先に置いてある品物。
更には聞き馴染みのない音楽や色使い――全てが『想像の範疇』を凌駕しきっている。
それでもこの通りは比較的近い性質、親和性の高い部分が多いのだろう。
更に奥へと入り込めば、ただ地球へ迷い込んでしまっただけの、意思疎通の図りようがない――恐らく人に害をなさないであろうと暫定されているだけの――『アンノウン』だらけである。
島内外の調査団体が絶えず訪れる街。学術的な価値でいっぱいなのだろう。

彼女にとっては、ただ地球が存在していただけではとても口にすることはなかった未知の感動を、表面的に甘受できればいいだけの話で、差異も齟齬も、言ってしまえば偏に――どうでもよかった。

「……アァー!」

だからこそ、異形異人の闊歩する街中で、ロョクヮのソーダ割りを躊躇わず煽れる地球人なのかもしれないけれど。

ご案内:「大通り近辺【異邦人街】」にミラさんが現れました。
ミラ > この町で公式な場所として最も混沌としているといわれる場所
その一角に小さな……いや、今回に限っては比較的大きめな影があった。
完全に見た目だけなら迷子の彼女に誰も声をかけないのは
彼女の様子が大きな原因かもしれない。

『まーくん、あっち』

のんびりと行きたい方向を指示しながら自身はぼーっと周囲を眺めている。
彼女が乗っている……座っているというのが正しいかもしれない生物は
ふわふわの毛に覆われた短い四足のしいて言うならちょっとカエルににた顔つきの
正直言って正体が誰もわからないような生き物で……
その上にペタンと座り込んでのそのそと徘徊する姿は正直に言って異様だった。
この辺りは異文化の交流が盛んであり、学術的に見ても随分と興味深い。
正直治安が良いとも言い切れないものの、彼女にとっては好奇心とはかりにかけるほどのものではなかった。
とはいえ意外と広いこの場所を歩くのは億劫で、
移動用の召喚を利用しているわけだったりするのだけれど、
この無秩序な場所でもその姿は異様な雰囲気を放っており
そのことを気にすらかけない少女と相まってある意味この場所にふさわしい様子かもしれない。

V.J. > 人の流れそのものは大して混み合っているでもない通りだが、酷くゴミゴミとしているように感じられるのは、やはり街全体の無秩序さから来ているのであろう。
それでも近寄りたくない存在というのは当たり前にあるもので、そういうものの前では元々空いている道が更に開けていくことになる。
例えば危険な気配を放っているものであったり、面倒な雰囲気を醸し出しているものであったり――。
物理的に近寄りがたかったり、印象的に近寄りがたかったり。
そういうものが歩いていると、必然的に人の流れは支配され、指向性を持つことになる。周囲に多大な影響力を及ぼしながら歩いているならともかく、ただ流されるままに、空いているほうへと歩いていくと……。

「うーん? なんか……何? 何あれ?」

あまり背の高くない彼女にも見える――というか、真っ直ぐに道が誂えられているとも。
正面に居た。
誰もが避けるその……『それ』の通り道から、彼女は避けていないというだけの話。

「あっ、上のはもしかして……?」

下のはともかく、乗っている少女には見覚えが――あった。

ミラ > 『あや……』

ふと前方に見知った顔を見つけ、とんとんと騎乗を叩き方向を指示する。
騎乗は少し濁った……やはり少しカエルっぽい声で答え、
のそのそとそちらへと歩き始める。
彼女は自身がやんわりと避けられて居ることには日常過ぎて気が付いてすらいなかった。
そのため人の流れにもかかわらず実に快適にその近くまでたどり着く。

「……やー?」

実に覇気……やる気の感じられない雰囲気でのんびりと片手をあげ首をかしげる。
珍しいところで珍しい人に会ったのかもしれない。
ただ見る限りずいぶん楽しんでいるように見える。

「貴方、も、散策?
 色々、在る、面白い」

そのままのんびりと声をかける。
よく見ると騎乗の背中にはいくつかフックがありそこに買い物袋がぶら下がっていたりもする。

V.J. >  
「はぁい、お久しぶり」

いつぞや、命の危機に瀕していたところを助けてもらった気がする相手だった。
同じ教員の立場を取るとはいえ、教科も学年もだいぶ離れている。業務上では触れ合わないし、日常でも似たようなものだ。
思えばここは異邦人街だし、この子も異邦人であった――そう、心の中で納得。
その割に、街に馴染んでいるようには見えないけれど……?

「ちょっとね、飲み歩いていたのよ。馴染みの店の馴染みのモノで」

こんな場所へ来る割に保守的なので、新規開拓をあまりしない。
なので、『色々あるから面白い』という部分にはそれほどピンと来ていないのが正直なところだったが、散策は散策。

「ミラは……買い物……ね?」

首を傾げるのは、ミラよりも近い目線にある謎の存在が原因。

「……」

がさがさ。

急に手持ちの袋を探ったかと思えば、ミラの乗るそれにシババラギのフャウを差し出してみた。

ミラ > 「お久し、ぶり」

元々授業以外で研究室と図書館以外にめったに出かけない彼女のこと
そうでなくとも少ない教員同士の交流は他と比べても希薄で……
しかも彼女は確か一定以上の文字に囲まれると
過剰なアレルギーに近い反応が出ると聞いていて。
本の虫の彼女とは生活圏が見事に真逆だった。

「馴染み、ある、良いこと」

一人うんうんとうなずく。
フィールドワークというのは意外と難しい。
馴染みのある場所から広げていくというのはやはり有効な手段。
……別にそこまで学術的な思考はしていないかもしれないけれど。
そこでふと差し出された手に目を止め、とんとんと騎乗を叩く。

『まーくん、良し』

素直にマテをしていたそれに声をかけるとそれは三又の下を伸ばし、
器用に差し出されたそれをぱくんと飲み込む。
そのまま機嫌よさげに少し濁った声を出し体を揺らした。
……どうやらお気に召したらしい。

V.J. >  
「常連になると思わぬサービスも受けられる……良いことよね」

家庭的な思考の独り言だった。

「うわ……」

これでも心はか弱い女の子なので、カエルっぽい顔から出てくる三又状の舌に対しては、流石にちょっと首を引かねばならない。
自分でやっておきながら少し後悔しつつも、多分美味しそうにシババラギのフャウを食べたところを見て、満足そうでもあった。

「ミラのペット……ペット? 召喚獣? まあなんでもいいけど、かわ――」

可愛くはないなぁ……。

「変わってるわね。……ミケランジェロ、こっちも食べる?」

取り出したるはオシユのヌワヌワ。こちらも異世界の食べ物であるため大変形容し難い味をしている。
強いて言えばさっきのよりは苦くて塩辛めの、酒飲み向け食材と言える。
ミケランジェロはもちろん彼女が勝手につけた名前である。

ミラ > 「ん」

小さくうんうんとうなずく。

「んー……
 ペット?近い、
 賢い、強い、便利。座り心地、いい
 あと……きも、可愛い?」

微妙にちょっと変なのは気が付いているらしい。
一切気にしていないだけで。
何よりも気に入ってるのは座り心地だったりする。
決してセンスがちょっとおかしいというわけではない。
……多分。正直かわいいと思っているけれど断じて可笑しくはない。

『ぐぇぅ』

続いて差し出されたものも器用に舌でからめとり、飲み込む。
体の大部分が口に見えるが一体どこに食材が消えているのだろうか。
割と謎である。
どうやら苦いものは少し苦手だったらしい。
けれど健気に出されたものは食べるように教育されていた。
主に飼い主による何が食べられるかという実験のせいで。

『よかったね、まーくん』

そしてその主人はその様子を一向に介さない主人でもあった。
哀れまー君改めミケランジェロ。

「乗って、みる?
 移動、便利」

か弱い女の子なら一もにもなく断りそうな提案をサラッと提示してみる。
本人からすれば親切のつもりだが、見た目がもう少しどうにかならなかったのだろうか。

V.J. >  
強い、賢い、便利。
ペットと呼ぶよりは、軍馬とか猟犬とか、そちら側の存在価値を認められている気がした。
可愛いと評されているのが救いだろうか。要らない冠詞も付いていた気がするけれど、ともかく彼女は興味深そうにまーくんだかミケランジェロだかを見ていた。
生理的に――というか地球育ちのレディ的にやや忌避しておきたい部分があるものの、確かに賢いし、人を運べるほど強そうだ。

「乗ってみようかしら。騎馬くらいなら経験はあるけど、異世界産の生物に乗ったことは――あんまり無いわね」

マーマン店長の背中に乗って海に行ったのはまあどうでもいいだろう。

「でも乗れるかしら。この子どれくらい強いの? 私これでも0.1トンあるんだけど」

レディハートな割に体重の公開は気にならないのか、見た目より重いことに定評があり、生徒への罰としてお姫様抱っこを強要することも辞さない彼女である。
短い四肢は如何にも強靭です! という雰囲気を醸し出しているが、さて。
乗れたら立ち話から優雅な相乗りトークへランクアップ出来るけれど。
……揺れたら酔うかな……?

ミラ > 「2Tまで、確認、した。
 軽い、じどーしゃ、余裕」

軽くうなずき大丈夫返事を返す。
つまりは無理な可能性を考慮しつつ載せてみたという鬼畜の所業だが
幸いにも彼は無事耐えきったらしい。

『……段階開放、クラス1』

呟きながら騎乗を叩くとその姿が二回りほど大きくなる。
二人どころか3人は軽く乗れるだろう。
……というよりこの生物実は実際はかなり大きかったりする。
今でこそお手軽サイズだがいろいろと利便性の関係で"圧縮"しているだけで
素のまま呼び出すとそれこそ軽自動車クラスの大きさはある。
とはいえその姿を見るともはや完全にモンスターなので
街中で使えるものではなくなってしまうけれど。

「どーぞ?」

その言葉とともにミケランジェロ……(以下ミー君と呼称しますが)は
四肢を折り乗りやすいように身をかがめる。
周囲の人々が少々ぎょっとした姿でこちらを眺めているのには
主従ともども気が付いてすらいなかった。

V.J. >  
「へー、この子と結婚しようかしら」

明らかに冗談めかして笑いながら――目は本気だ。
目の前でやや巨大化するミケ。必然的に顔の迫力も鬼気迫るそれであり、片足を半歩後ろへ。
野生ではないにしても、流石に喧嘩したら負けそうなサイズになったなぁと思いながら、いやそれでも……? 頚椎はあるのか……? あんまり顔に打撃入れたい感じじゃないなぁ……と、恐らく実践にはならないであろう思考実験。

「お邪魔します」

乗ることへの抵抗があまりないのは、乗ってしまえばむしろ顔を見ずに済むからという部分が強い。
顔さえ見なければふわふわ起毛の冬にぴったりな魔法の絨毯な感じに違いないのだ。

「よーし……ここは――異邦人の生活区ではあるけど、ミラの家もあったりするんだったかしら?」

ミラ > 「ベッド、代わり程度、なる
 便利。特に、研究後」

乗り心地は控えめに言って……
いや、控えめに言わなくてもかなり良かった。
たとえるなら心地よい柔らかさの柔毛が生えた
人がだめになるクッションとでも例えるべきだろうか。
見た目はかなり固そうに見えるが背中はふわっふわだった。
程よく沈み込み包み込むような感触は冬でもかなり快適だろう。
惜しむらくは全体の迫力が強すぎることだが……乗ってしまえば一切気にならない。

「ごー」

指示に従いのそのそと行く当てもなく歩き出す。
ほとんど振動がないのはその歩き方とその柔らかさゆえか。

「家?」

その背中できょとんとした顔を返す。
彼女の場合研究所=家に近い感覚なので
特定の住処を持ってすらいなかった。
そういえば自身が異邦人だったと今更思い出しつつ

「異邦人、殆ど、ここいる?
 私、ここ、すんだ方、いい?」

小さく首をかしげた。

V.J. >  
でかくなった謎生物の背中に、それを使役する少女と地球人。
異邦人街において殊更異様な雰囲気を醸してしまっているせいか、すっかりあたりは閑古鳥だった。
往来に居た人は手近な店に詰め込まれ、まあ、降って湧いた書き入れ時と言えなくもないか。

「あー……これは……これはいい……寝る……」

歩き始めて数分の出来事である。
ロョクヮによって程よく気持ちよくなっていたところにこの快適さ。罠だ。罠でしかない。
これは用がなくても背中に乗って歩き回りたくなるかもしれない。
いや、なっている。

「住んだほうがいいか、悪いかと言われたら――良いわね」

その心は――。

「もう帰るのが面倒になるくらい飲み倒した時、近い距離に友達の家があるともう……助かるどころの話じゃないから」

ハチャメチャに自分勝手な理由でいたいけな少女をこの治安の悪い――というと住んでいる人に失礼だが、まあ、あまり法治の行き届いていない――街へ誘い込んでいる、実に魔王の所業だ。

「異邦人、っていう括りで、十把一絡げにまとめて放り込んでいる場所だから、別に住まなきゃならないってことはないでしょうけど」

各々で住み分けが出来ているのも立派なことで、部外者が治安が悪いなんて言ってられない。そもそも職員には職員寮があるのである。――うん?

「ミラ、職員寮にも居ないわよね?」

ミラ > 「背中、孵化する生き物
 すごく、快適」

その光景は正直言ってかなり怖いが乗り物としては非常に便利。
その様を実際に見なければ特に問題ない。
のそのそと歩きながら時折店をのぞき込み、
何か面白そうな物がないかと探しつつ
のんびりと会話を進めていく。

「何処、届ける、良い?
 職員寮?」

特に眠っても構わないと暗に告げる。
実際よくベッド代わりにして眠っていたりもするのだから。
眠ってしまったところに何かあっても大体のことは対処できる自信もあるし。
とはいえ近くに休める場所があると便利という話には……

「なるほど。一理ある」

確かに適当な場所にベースキャンプになる場所があれば便利かもしれない。
教員にしては意外と良いお給料をもらっていることだし
このあたりに間借りするのはよいかもしれない。

「申請して、ない。
 研究室、籠る、から」

何事もないように告げる。
部屋を借りている代金が浮いているが別にそれが目的でもなかった。

「元々、塔、暮らし。
 年単位、出ないこと、多かった。
 最低限、有る、十分」

完全にダメ研究者の言い草だが
事実元の世界では彼女は機密情報扱いだったため
その殆どを人気のない場所にある高い塔の上の研究室で過ごしている。
寝る場所とシャワー室さえあれば実質どこでも気にならないのが当たり前の感覚になってしまっていた。

V.J. >  

「そうね、職員寮まで行ってもらえると助かるわね」

あそこに住んでいるのは、その辺の一般人と違って鍛え抜かれた心臓を持っているから大丈夫だろう。
さて、背中と孵化なるワードを聞いて、あまりない知識の中にあるそういう虫のそういうのを想像しそうになった。
うんうん、と無意味に頷くことでなんとなく納得。
納得とはコレすなわち思考停止のことである。

そしてこの生物の持ち主と目が合ってしまった店員の心中は察するところだ。

「研究室に……籠る……なるほど……」

胡乱な目をしている。程よい眠気でテンションアップだ。

「それはダメね……そんな生活を続けていたら……一生……一生……」

すぅ、と。ふわふわのドレスを着ていながらも、衣擦れ音の一つさえ起こさない静かな動き。
拳法の予備動作のようにして、両腕を開いて。

「慎ましやかなままに――なる!」

がばりと。軍隊上がりの接近格闘スキルを遺憾なく発揮して、その上体をホールドさせてもらおうじゃないか!

ミラ > 「わかった」

なんとなく似たような生き物がいたとこの世界の図鑑でも見た気がする。
あれは彼女からしてもちょっとアウトな感じだった。
主にビジュアル的な意味で。いや、あれよりちょっと怖いけど。
お願いだからよそを見てくれと心から願っているような店員を気にも留めず時折足を止めるみーくんに先導され
なぜか人通りの少ない通りを進む姿はまさにそんなことを気にも留めていないようで…
彼、もしくは彼女に進駐は察するに余りある。南無南無。

「移動、しないで、いい。便利」

相乗りの相手がゆっくりと所作を始めるのを眺めた後
そのまま音もなくホールドされたまま首をかしげた。

「……何故、拘束されて、いるのだろう?
 あと、つつましい、悪いこと、違う」

控えめに抗議する辺り地味に気にしている事が伺える。

V.J. >  
「悪いわ、ミラはこのまま私の抱きまくらとして生きていくんだから……
 もう少しけしからんわがままな身体を手に入れる必要があるのよ……
 研究者たるもの抱き心地を追求しなくて何が研究者なのか」

呪詛のようにぽつりぽつりと、悪代官も魔教皇も引いてしまいそうな表情で告げる大人。
それからふっと、いやにやっと笑って、そのホールドを解除。

「でも、食事のバランスを整えることはいいことよ」

子どもを諭すようになるが、他意はない。

「異邦人の体の作りなんて全然知らないけど、大体はちゃんと食べてちゃんと寝たら大きく育って長く生きるの。私を見なさい」

※大きいのは態度だけで、身体は言うほどない

「でも……」

ふわりとあくびを一つ。そして避けられないならばそのまま、当たり前のように、もう一度ミラの身体を抱いてしまおう。

「ミラが寮に住むなら、このままのミラでも許しましょう……これはこれで……」

これはこれで、となかなかな言い草なのだが。

「そうしたら……私も近くに部屋を借りて……寝……」

そんな、自分の思う、願う、我侭な展望ばかりをつぶやきながら。
ついに彼女は本日の活動を休止する。
多分寮に着いても起きないし、寮に彼女の部屋はない。
――寮長へ事情を説明する、ミラのコミュニケーション能力が試されることになるかもしれない。

ミラ > 「……ぇー」

第三者から見ても彼女はかなり歴戦の猛者である。
戦場で一瞬で敵軍を吹き飛ばし、同様に吹き飛ばされた経験も幾度もある。
たいていのことは無表情で流せる自信はあった。……が
その浮かぶ表情には正直ちょっと怖いという感覚を覚えた。
主に理解してはいけないと思う方向で。

「あの……その……」

じんわりと冷や汗を滲ませながらどうしようと考えていると
人の悪そうな笑みを浮かべて拘束が解かれる。

「……一理はある」

どうせ大した違いはないと食事自体を怠りがちだが
彼女が言うことは間違ってはいないと思う。
栄養バランスは大事だし、やっぱりこう……

『ないよりはあるほうがいい』

ぽつりとつぶやくのは気にしているから。
発育が悪いのは仕方がなくとも気になるもので……。
そのまま抱きかかえられ、困惑しているうちに相手が動かなくなる。

「……快適、すぎた」

一つため息をついて指先で空に円を描く。
それに伴うように道の真ん中にみーくんごと通れるような門が出来上がり、その中へと歩を進めていく。
そうして寮にたどり着くが……

「拾った、話してた、寝た」

寮長への説明は大体こんな感じだったという。
その後一応部屋を借りる申請だけはしていたのだから彼女も思うところはあったのかもしれない。
その部屋が今後どのような使われ方をするのかは……また別のお話。

ご案内:「大通り近辺【異邦人街】」からV.J.さんが去りました。
ご案内:「大通り近辺【異邦人街】」からミラさんが去りました。